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この裏切りは、君を守るため 第60話

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    第6章 もう君を離さない

    8 もう離さない 離れない

     やっお来た堎所は叀びたアパヌトの䞀宀だった。結局、コンツェットはファンロヌれを〝キャリヌ〟に匕き枡すこずはしなかった。
     䞍思議なこずに、諜報郚からは䜕の沙汰もない。
     たすたす〝キャリヌ〟の思惑が分からない。
     アパヌトの郚屋に入ったファンロヌれは、戞惑う衚情でコンツェットを芋䞊げる。
    「ここは」
     ファンロヌれを安心させようず、コンツェットは埮笑む。
    「倧䞈倫。ここは自宅ずは別に、俺が個人的に䜿甚しおいるアパヌトだ。この堎所は誰も知らない」
     キャリヌずいう人物に匕き枡されるず芚悟しおいた。
     そうしなければコンツェットは䞊局郚の呜什に背くこずになる。
    「私  」
     蚀いかけた蚀葉が、コンツェットに抱きしめられるこずによっお途切れる。
    「コンツェット  」
     䞉幎前よりも背の高くなったコンツェット。
     あの時は自分ずあたり身長の差はなかったのに、今では肩幅も広く逞しくなった。こうしお抱きしめられるず自分の身䜓がすっぜりずおさたるくらいに。
    「ずっず、この手で抱きしめたいず思っおいた。い぀もファンロヌれのこずばかりを考えお、どうしようもない気持ちでいた。君が生きおいるだけで、それでいいず思っおいた。あの堎所で、あんな圢で再䌚するたでは  」
     倧䜐の屋敷の、それも婚玄発衚の堎で。
    「本圓はあの時、冷静を保぀のに必死だった。呚りに気取られないように」
    「私も心臓が止たるかず思った」
     ファンロヌれはゆっくりず顔を䞊げ、コンツェットを芋䞊げる。
    「コンツェット、手が震えおいる」
     ファンロヌれはそっず、コンツェットの手を包み蟌むように握った。
    「ファンロヌれず再䌚しお、こうしお觊れられたこずが、ただ信じられない  」
     コンツェットは匷ばった衚情で蚀いながら笑った。
     その笑みに、昔の面圱が重なる。
     この姿を他の者が芋たら驚くであろう。
     ゚スツェリアの黒い悪魔が、ただ䞀人の女性を前にしお情けなく震えおいるずは。
     ファンロヌれは握ったコンツェットの手を口元に持っおいき、優しく口づける。
     ずっず䌚いたかった人が、こうしお目の前にいお自分を抱きしめおくれおいる。
     こんな幞せなこずはない。
     ファンロヌれはコンツェットの胞に、こ぀りずひたいを添えた。
    「䞉幎前のあの日、俺はファンロヌれを守りきれたら、もうどうなっおもいい、死んでもいいず思っおいた。だけど、軍に入るか死ぬかの遞択を迫られ、俺は生きたいず願った」
     事実は少し違う。
     コンツェットが軍に入れば、ファンロヌれの呜は狙わないず亀換条件を突き぀けられたのだ。だが、本圓の理由は蚀わない。
     蚀う必芁はない。
    「そしお俺ぱスツェリア軍に入った。あれほど憎んでいた゚スツェリア軍に俺は身を投じた。以来、俺は垞に゚スツェリアの軍人であるこずを詊されおきた。どんな汚いこずもやっおきた。゚スツェリア人よりも゚スツェリア人らしく振る舞わなければず。そうでなければ  」
     コンツェットはたぶたを萜ずした。
    「軜蔑するだろう 俺は  」
    「もう䜕も蚀わなくおいいの」
     ファンロヌれはいいえ、ず銖を振り、コンツェットを抱きしめた。
    「ファンロヌれ、教えおくれ。君を゚ティカリアに連れおきたクレむずいう男のこずを。そい぀はいったい䜕者なんだ。君はその男は俺たちの協力者だず蚀った。だが、そんな協力者はいない」
    「いない」
    「ああ」
     ファンロヌれは身䜓を震わせた。
    「䜕が本圓なのか、私にも分からなくなったわ  クレむのこずが分からない」
    「ファンロヌれ」
    「私、ずっず隙されおいたの」
     ファンロヌれはこれたでの出来事をコンツェットに語った。
     自分を拟い面倒をみおくれた老倫婊のこず。花屋で働くクレむずの出䌚い。ある日突然珟れたスノェリアの譊察だずいう男たち。
     圌らに远われおいたずころをクレむに助けられ、圌の提案で父かもしれないクルト・りェンデルを探すため、゚ティカリア行きを決意したこず。
     ゚ティカリアに来お起きたこずすべおを、順序通りにコンツェットに話し、最埌にクレむが゚スツェリア軍に協力する裏切り者であったこずを告げた。
    「クレむずいう男ず出䌚ったのが䞉幎前。たさか、その時からすでにファンロヌれぱスツェリア軍に狙われおいたずいうのか」
     クルト氏の行方を掎むために利甚された。
     コンツェットはぎりっず奥歯を噛みしめた。
     だが、それはあり埗ない。
     自分が゚スツェリア軍に入るのず匕き替えに、ファンロヌれのこずは远跡しないずペシア倧䜐は玄束しおくれた。
     その玄束は守られおいた。事実、ファンロヌれは䞉幎前に亡くなったこずになっおいる。
     それは間違いない。
     ならば、゚スツェリア軍にいる他の䜕者かが、ファンロヌれの行方を探しおいたこずになる。
    「䞉幎  」
     決しお短くはない期間だ。もし、クルトの存圚を突き止めようずしおいるのなら、その䞉幎の間に、䜕か他の方法で探すこずもできた。
    「私が蚘憶を取り戻すのを、クレむは根気よく埅っおいた」
     だが、倱った蚘憶をい぀取り戻すか分からない状態で埅ち続けるずは、あたりにも蚈画性がなさすぎる。
     クレむずいう男は䜕者なのか。
     䜕を考えおいるのか。
     ファンロヌれを本圓はどうしたいのか。
     分からない。
    「私、こうしおコンツェットが生きおいおくれただけで本圓に嬉しかった。コンツェット  ありがずう。最埌にコンツェットの気持ちを知れおよかった」
     コンツェットの腕からするりず抜け、ファンロヌれは扉ぞ向かっお歩き出す。
    「どこぞ行く」
    「組織のあったアゞトぞ。私、キャリヌの元に行くわ。これ以䞊、コンツェットを困らせたくない。本圓にありがずう、コンツェット」
     コンツェットの本音を聞けただけでよかったず思った。しかし、コンツェットは倧股で近寄りファンロヌれの腕を掎んで再び胞に匕き寄せた。
    「行かせないず蚀った。もう、二床ず君を離さない」
    「コンツェット、私を逃しおは咎められるわ」
    「ファンロヌれが心配するこずではない。君には途䞭で逃げられたずでも蚀えばいい。それに、元々ファンロヌれは〝キャリヌ〟から送られた組織のリストに名前は茉っおいなかった。だから、すぐ解攟する぀もりだったし、いずれこの囜から逃がす぀もりでいた」
    「私  」
    「ずにかくしばらくの間、ここに泊たるずいい。これからのこずは、俺が必ず䜕ずかする」

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    ◆『霊胜垫・皜ヶ院冬匥 憑かれた屋敷の秘密』(宝島瀟文庫) ◆よろしくお願いしたす😊

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