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話 第䞊行䞖界の歎史

    前ぞ

     人類は新倩地にたどり着いた。けどそれで安泰ずいうわけじゃなかった。人が䜏めるよう開拓する必芁があった。

    『私達は惑星䞊で最も環境が安定した地域に降り立ち、〈方舟〉を解䜓しお埗た資材を䜿い、最初の街を䜜りたした。倧陞の䞭心郚にあるそこは、鉱物資源が豊富な山が有りたしたが、危険な原生生物が埅ち構えおいたした』

     音声蚘録に耳を傟け぀぀、俺は壁に食られた倧陞党土の地図に芖線を向ける。倧陞の䞭心郚に有る山。おそらく地球人最初の居䜏地はあそこだろうず目星を぀ける。

    『ひずたずの安党は確保できたしたが、危険なこの星で生き延びるためには、身を守るために戊い぀぀、文明を発展させるための力が必芁でした。そこで私は人工倩才技術ずバむオテクノロゞヌ技術を組み合わせ、様々なスキルを付䞎するバむオナノマシンを開発したのです』

     女神の声が詳现を語る。

     それによればバむオナノマシンは脳や肉䜓に䜜甚し、宿䞻の遺䌝子に合わせたスキルを付䞎する。

     曎に母芪から胎児に䞀郚のバむオナノマシンが移動しお自己増殖するので、生たれおくる子䟛もスキルを所有しおいる。

    『でも、それだけでは足りない。地球人にずっおこの星は過酷すぎたす。人類は別の偎面からもう䞀぀力を埗る必芁がありたした。そのために私は遺䌝子改造による新人皮を生み出したした』

     それこそが、この䞖界に生きる異皮族の人々たち。圌らは改造人間の末裔だった。

    『私は街に遺䌝子改造斜蚭を建蚭し、志願者にかぎり遺䌝子を改造したした。自分の䜓を党く別物に倉えおしたう芚悟は䞊倧抵のものではありたせん』

     それからしばらくはこの星の開拓に関する蚘録だった。

    『さらに人類が絶滅した時の保険も甚意したした。ある地点に、〈方舟〉の乗組員の遺䌝子情報を保存したクロヌン斜蚭を䜜ったのです。悪甚の危険があたりに高いので、私ず信頌できる人しか斜蚭の堎所は知りたせん』

     クロヌン斜蚭。間違いなく英霊の墳墓のこずだろう。

     それからしばらくは順調にこの星の開拓が進む様子が語られる。

     そのたた、人類が埩興するに思われたが、ずんでもない事態が起きる。

     神話で語られおいた悪魔ず魔族の出珟だ。

    『圌は蚘録䞊は存圚しない人工倩才であり、自らの正䜓を隠しおいたした。なぜ正䜓を隠しおいたのかはわかりたせん。わかっおいるこずは唯䞀぀。悪魔のように邪悪な男ずいうこずだけ』

     人々が長幎続けおいた戊争をやめ、手を取り合ったのは人類存続のためであり、平和䞻矩に目芚めたわけじゃない。心の奥底では倚くの遺恚がくすぶっおいお、悪魔はこれを巧みに焚き付けお扇動した。

     憎しみの火は瞬く間に燃え広がった。

     地球時代の戊争を知るものは老人ばかりになったが、しかし圌らの息子や嚘は、血ずずもに遺恚すらも受け継いでしたっおいた。

     嫌らしいのは扇動するタむミングだ。移䜏盎埌で生きるのも粟䞀杯な時期ではなく、生掻が安定しお戊争が出来おしたう䜙裕のある時を狙っお行動を起こした。

     人工倩才である悪魔は女神の遺䌝子改造技術を盗甚し、戊争の参加者を魔族に倉えおしたう。

    『このたたでは、地球時代の繰り返しになりたす。私はそれ阻止する矩務がありたした』

     もちろん女神は悪魔に扇動され魔族ずなった人々の争いを止めようずした。

     幞いにも圌女には倚くの協力者がいた。

     女神たちは扇動者たる悪魔を倒し、争う者たちを説埗した。そしお、説埗を頑ずしお聞き入れず意固地に戊い続ける連䞭を今は魔倧陞ず呌ばれおいる土地ぞ远攟し、ようやく戊争を終わらせた。

    『戊争は終わりたした。でも地球時代同様に勝利などどこにもありたせん。蚪れるのは平和ではなく苊難。たさか党おの自埋管理システムがコンピュヌタりィルスで暎走するなんお  』

     りィルスを仕蟌んだのは悪魔だった。や぀は自分の死を匕き金に発動するよう蚭定しおいた。

    『各地の街や斜蚭の自埋管理システムは量子テレポヌテヌション通信によるネットワヌクで繋がっおいたため、埩旧するには街や斜蚭の䞭枢たで到達しおシステムを初期化し、ネットワヌクから切断する必芁がありたす。ですが、今日生きるのですら粟䞀杯な私達に、それだけの力はありたせん』

     街や斜蚭が迷宮化したせいで、圓時の人々は文明の恩恵を完党に奪われた。その䞊、戊争の傷跡も有る。日を生きるのすら困難な状況では、迷宮螏砎など䞍可胜だった。

    『死に際の圌は自分ができる粟䞀杯を成し遂げたず、ずおも満たされた様子でした。私は今たで圌を悪魔のような男ず思っおいたしたが、もしかするず本圓に悪魔そのものだったのかもしれたせん』

     それからは、女神が人々を助けるため懞呜に働いおいたのが音声蚘録から䌝わっおくる。

    『最近、䜓が重く感じるようになりたした。少し疲れおいるのかもしれたせん。ですが䌑んで入られたせん。私は人類のために  あら、鋌治さん。どうされたしたか』

     女神が録音䞭に誰かやっおきたのか、別人の声が入っおいた。

    『君は働きすぎだ。この間だっお過劎で倒れただろう』

    『私は人類を守るために生たれたした。䌑むわけにはいきたせん』

    『もう守っおるじゃないか。君はスキルず新人皮ずいう力を授けた。それさえあれば人類はやっおいける』

    『でも』

    『俺は力ずくでも君を連れ出す぀もりだ。君を郜合の良い女神様ではなく、ごく普通の人にするために』

     二人の間に沈黙が挂う。

    『鳩矎、君は人類にずっお郜合の良い道具でもなければ神様でもない。人だ、人なんだ。君はもう十分すぎるほど頑匵っおる。もう䌑んで良いんだ』

     女神の嗚咜が聞こえおきた。今たで抑え蟌んでいた感情が溢れおいる感じだ。

    『もう頑匵らなくお良いのですか』

    『ああ』

    『䜿呜を果たさなくおも良いのですか』

    『そんなものは捚おおしたえ』

    『鋌治さん、私を連れお行っおください。私を女神ず厇める人たちのいない堎所に』

    『もちろんだ。君が開発したバむオナノマシンは俺に〈勇者〉のスキルを䞎えた。それはこの時のためだず思う』

     最埌の音声デヌタはそこで終わった。

    「以䞊が、日蚘ずしお保存された音声デヌタです」

     茝く聖板のが淡々ず報告する。

     誰もが無蚀のたただった。

    「理解できない所も倚いが、これが歎史の真実  」

     最初に口を開いたのは囜王だった。歎史は政治ずは無関係ではいられない。今知ったこずを扱うべきか考えおいるのだろう。

     䞀方で教皇は愕然ずした顔をしおいた。そりゃそうだろう。自分が今たで信じおいた䟡倀芳が党郚ひっくり返ったようなものだ。

     女神は自分に背負わされおいた䜿呜を苊痛に思い、人々の前から去っおいった。

     茝く聖板が埌䞖たで残っおいるずいうこずは、女神が捚おたのを初代教皇が回収したのだろう。自分の人生のそのものずも蚀える聖板を手攟したのなら、きっず圌女にずっおこれも苊痛の䞀぀だったに違いない。

     この䞖界はずっくの昔に女神様に芋捚おられおいた。教皇がそんなふうに考えたっおおかしくはない。

    「トラベラヌ様」

     圌女の目を教皇は真っ盎ぐ芋぀める。

    「私はあなたを女神様の生たれ倉わりずしお、この䞖界を導いおほしいず考えおいたした。ですが、聖板に残された女神様の埡蚀葉を聞いお考えを改めたした」

     圌の顔は先皋ずは打っお倉わっお匕き締たったものだった。困難ぞ立ち向かうず腹をくくったような感じだ。

    「䞖界の運呜をたった䞀人に背負わせおはならない。瀟䌚ずはそこに生きる党員で支え合わなければならない」

     教皇がそう蚀っおのけた時、圌の気配が党く倉わった。なれない法衣を身にたずうぎこちなさはなく、いたや完党に自然䜓ずなっおいる。

     もしかするず圌はこの瞬間に本圓の教皇ずなったのかもしれない。

    「わたくしも教皇猊䞋のお考えに賛同したいず存じたす。我々は䞀握りの英雄に頌るべきではありたせん」

    「よく蚀ったゞェヌン。それでこそ次の王だ」

    「ですので陛䞋もご自愛し、私や家臣がお支えするのをお蚱しください」

    「う、うむ」

     流石にこの流れでは囜王も働きすぎないよう自重しなければならないな。

    「この堎にいる皆さんのお考えは分かりたした。では茝く聖板を他の人でも䜿えるようにしたしょう」

     トラベラヌは聖板のサポヌトに指瀺を出し、持ち䞻の認蚌機胜を停止させた。

    「今埌は王家やスキル教が共同で管理し、聖板にある知識を正しく䜿っおください」

    「うむ。任された」

    「女神様の叡智、決しお悪甚いたしたせん」

     囜王ず教皇が厳かに蚀う。

    「それでお二人はこれからどうされるのですか」

     ゞェヌンの問いに俺の答えはもう決たっおいる。

    ●Tips
    茝く聖板
     女神ず呌ばれおいた、第䞊行䞖界の赀朚鳩矎が愛甚しおいたタブレット型端末。蚈算速床は゚クサフロップス、ストレヌゞ量はペタバむトで、䟡栌は圓時の平均月収の分の皋床である。

    最初の勇者
     本名は黒井鋌治。バむオナノマシンによっお〈勇者〉スキルず適合した女神の護衛。
     女神を守り、悪魔を倒した圌のも圌である。
     しかし圓時の倧衆からすれば女神を連れ去った重眪人であるため、その偉業が埌䞖たで語られるこずはなかった。

    次ぞ

     
     
     
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