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話 第䞊行䞖界の歎史

    前ぞ

     神官が柔和な笑みを浮かべながら芋孊者を芋る。だが、トラベラヌに芖線を向けた時、䞀瞬だけぎょっずしたような衚情を浮かべた。すぐに元の衚情に戻るものの、こころなしかぎこちない様子だ。

    「芋孊䌚に来たのは倱敗だったかもしれたせん」

     トラベラヌが俺にだけ聞こえるようささやく。

    「どういうこずだ」

    「案内圹の神官の反応。もしかするずこの䞊行䞖界における私ず面識があるのかもしれたせん」

     ホリヌずの戊いでメガネ型の認識阻害装眮が壊れたので、今はトラベラヌの人盞を認識されおしたう。

    「前にも蚀っおた、䞊行䞖界の同䞀人物っおや぀か。けど、考えすぎじゃないか 䞖界の䜕凊かにいるもう䞀人の自分やその関係者ず遭遇のはほがありえないだろ」

    「たしかにそうなのですが、偶然では説明できないほど私は䞊行䞖界の自分ず遭遇しおきたのです」

     俺に実感はわかないが、トラベラヌが少なからず䞍安に思っおいるのは確かだ。

     ずはいえ、いきなりこの堎を立ち去っおは䞍自然に写る。䜙蚈なトラブルを起こすわけには行かない。

     最初に連れおこられたのは、およそメヌトルにも枡っお描かれた長倧な壁画だった。

    「この壁画は今から幎前、ルヌゞャテグメント倧聖堂の建築事業の䞀環ずしお、これたでの歎史を残すため圓時の教皇が盎々に筆を執られたした」

     それから壁画を教材に歎史の解説が始たる。

    「たずはこちらをご芧ください」

     神官の芖線の先には二人の王がそれぞれ犍々しい火の玉を掲げお睚み合う姿があった。

    「我々の歎史は倧きく分けお぀の歎史がありたす。これは第歎においお楜園の東ず西をそれぞれ玍めおいた二人の王の姿です。二人の王は楜園の支配を巡っお争っおおり、やがお犁忌の力ずされる恐ろしき火に手を出しおしたいたす。二人の王が互いに恐ろしき火を䜿った結果、楜園は滅んでしたいたした」

     次は黒髪の少女が民衆の先頭に立぀姿ず、その埌ろで倧きな癜い船が䞭に浮かぶ堎面だ。

    「ここに描かれおいるのは女神様ず方舟です。楜園を倱った人々を哀れんだ女神様は、圌らを方舟に乗せお、我々が今生きおいる䞖界に連れおきたのです」

     次の堎面は説明されなくずもなんずなくわかった。

    「女神様はこの䞖界で人が生きおいけるよう、スキルを授け、新しい皮族を生み出したす。さらには数々のマゞックアむテムや玠晎らしい街を䜜り䞊げたした。第歎ず呌ばれる時代の始たりです」

     そこからたた戊争の堎面だ。悪魔が率いる魔族の軍勢ず、女神様が率いる人々の軍勢が戊っおいる。

    「第歎は女神様の寵愛により第歎以䞊の楜園ずなりたしたが、悪魔の出珟によっお終りを迎えたす。悪魔は人々の心を操っお再び争いを起こしおしたったのです。操られた人々は戊ううちに人の心を倱い、やがお悪魔に近しい姿に倉身しおしたいたす。この人々こそが、今日における魔族の始祖ず蚀われおいたす」

     それたで神々しく描かれた街が、䞀転しお犍々しく描かれるようになり、たた女神が眠っおいる堎面に写る。そしお黒い倧陞ぞ枡っおいく人々もあった。

    「魔族ずなった人々の闘いは女神ず正しい心を持぀人々によっお止められたした。悪魔は蚎たれ、魔族は魔倧陞ぞず远攟されたした。しかし、平穏は完党には戻らたせん。女神は力を䜿い果たしお長い眠りに぀き、街は悪魔の呪いによっお迷宮ず化しおしたったのです」

     そこからは女神ず文明を倱った人々が過酷な日々を過ごしたず䌺える堎面が続く。

     終盀になるず、冒険者らしき者達が迷宮に挑戊し、魔物ず戊う堎面が入っおくる。

    「人々は長きに枡っお苊難の日々を過ごすこずになりたす。やがお冒険者たちが珟れ、圌らが迷宮から持ち垰った僅かなマゞックアむテムから少しず぀文明が埩興しおいきたす」

     そしお長倧な壁画の終点、光を济びる冒険者たちが描かれおいる。パヌティヌのリヌダヌらしき人物は、剣ず王冠を掲げおいた。

    「そしお圓時最も優れた冒険者アベル・アドルずその仲間たちが迷宮の螏砎を初めお成し遂げたす。そしお呪いから開攟され迷宮から元の姿に戻った街を瀎に、アドル王囜を䜜り䞊げたのです。こうしお我々が生きる今の時代、第歎が始たったのです」

     そうしお壁画に描かれた歎史は締めくくられた。

     壁画を描いた昔の教皇はけっこう䜜品を残しおいたらしく、ルヌゞャテグメント倧聖堂は矎術通でもあった。

     次に芋せられたのは抜象化した女性を描いた絵だ。

    「こちらは女神様を描いた䜜品です。先皋の壁画もそうですが、このように抜象化されおいるのは理由がありたす。もずもず、女神様は埡身の偶像を䜜るのを犁じられおいたした。ですが女神の最初の信奉者である初代教皇が、女神様の存圚を埌䞖に䌝えるのに必芁ず䞉日䞉晩土䞋座ず祈りを捧げ、぀いに抜象化した絵姿や像ならば䜜るこずを蚱されたのです」

     なにしおんの初代教皇  それに女神もちょっず劥協しおくれんだ。

    「なお、この出来事が由来ずなり、土䞋座は盞手に誠意を瀺す䜜法ずなったのです」

     ヘヌ゜りナンダヌ。

     なんずいうか神話䞊のやり取りなはずなのに劙に人間味がある。

     䞍定の迷宮ずか英霊の墳墓はかなり高床な技術で䜜られおいた。それにさっきの神話を螏たえるず、女神っおのはもしかするず叀代文明の科孊者だったりするのかな

    「たた描かれおる女神様が右手にお持ちになっおいる物にご泚目ください」

     描かれた女神の右手にはタブレット型端末みたい道具があった。

    「あれは茝く聖板ず蚀いたしお、女神様が持぀党おの叡智が収められおいるずされおいたす」

     あれがアカシックの蚀っおいた「面癜いもの」か

    「茝く聖板は今もあるのですか」

     芋孊者の䞀人が神官に尋ねる。ナむス質問 俺たちも知りたかった。

    「はい。女神様が長い眠りに぀かれる時、初代教皇に蚗されお以来、代々の教皇が保管しおおりたす。もっずも、茝く聖板は女神様のみが扱える神具ですので、我々はその叡智に手が届かないでしょう」

     女神だけが䜿える あれが叀代文明のコンピュヌタか䜕かだったら、トラベラヌの䞇胜ツヌルでハッキングずか出来るず良いんだが。

    「持ち䞻なき茝く聖板は力を倱っおいたす。ですが、女神様が長い眠りから埩掻されれば、再び茝きを宿すでしょう」

     神官は䞀瞬だけトラベラヌを芋た。圌はよほど圌女のこずが気になるらしい。やはり、この異䞖界におけるトラベラヌの同䞀存圚がいお、その人を知っおいるのか

     その埌は、長いスキル教の歎史で聖人認定された人たちの逞話や、スキル教にずっお重芁な出来事や倉革に぀いお解説された。

     ちなみに、やはりずいうか管理掟に関係するこずは䞀切觊れなかった。特にホリヌはスキル教ずしおはなかったこずにしたいくらいの汚点だろう。勇者の仲間ずか聖女ずか持ち䞊げたのに、魔王偎に付いおしたったからな。

     芋孊䌚の埌、俺たちは王郜にある倧衆食堂で倕食を取るこずにした。

     流石に王郜だけあっおただの倧衆食堂でもそこそこ高玚だが、王族ずの食事䌚よりは気持ちが楜だ。

     やっぱり食事っお料理の質だけじゃなくお堎の雰囲気も倧事なんだなずしみじみ思う。いくら超垞的な成長をもたらすむレギュラヌでも、王族ずの食事䌚でマナヌを守り぀぀リラックスしお食事を楜しむ神経の倪さはもたらしおくれない。

    「なあ、なんで぀けられおるんだろうな」

    「わかりたせん」

     実は芋孊䌚の埌から誰かが俺たちを぀けおいる。案内圹の神官の䞍自然な挙動を考えるに、ルヌゞャテグメント倧聖堂の人間か

    「どうする」

    「盞手の意図が読めたせん。䜙蚈なこずはせず、玠盎に戻ったほうが良いでしょう」

     王宮ぞ戻るず、流石に尟行の気配は消え去った。

    ●Tips
    ルヌゞャテグメント倧聖堂
     アドル王囜成立時に建蚭されたスキル教の本拠地。スキル教においお女神が奜んだ神聖な色ずされおいる赀いの屋根を持぀。
     聖堂内にある壁画を描いた教皇は元冒険者で、建囜の祖であるアベル・アドルのパヌティヌで回埩圹を努めおいた。

    次ぞ

     
     
     
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