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2025年2月 さぬき旅4

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     階段。また階段。さらに階段。そんな感じの参道をひたすら上り詰めていく。道中にも立派な神社はあったのだけれど、自分も含めてほとんどの方が奥社を目指しているので、まぁじっくりと参拝するわけでもなし。ただ本宮で手を合わせたら引き返す人が多いようで、奥社へは比較的静かな気持ちで臨めます。それにずっと階段というわけではなく、途中途中で平らな道を行くところもあるので、疲れはさほど溜まらず。若い人たちは話しながら上っていく、という感じで。自分も個人的には、那智山のほうが堪えたなぁという印象。あれはずっと上りっぱなしだったからね。というか奥社に千回参拝したという個人の記念碑が建てられいて、凄まじいや。体力よりも千回分の時間を捻出するほうが大変だろうなぁと。いうわけでちょっと肩で息をしながら自分も辿り着きました、金比羅山の奥社──嚴魂(いづたま)神社。地上から1368段の道のりだったようで(まぁ自分は脇道を行ったから少し違う)。手を合わせ参拝。小ぶりな社務所の脇から、(たぶん)讃岐平野の町並みが見渡せます。まぁ、景観としては本宮展望台のほうが広々としててインパクトはあったかな。とりあえず他の参拝客同様に、奥社前のベンチに腰掛け休憩。ベンチの足下には残雪がちょびっと。初日に飛行機から雪の見える一帯の上空を通過したけれど、四国にも雪が降っていたとは。というか山の上ではあるので、空気は冷えている。背中の汗が冷たくなってきた、ので、下山をすることに。
     とんとんたんたんたと両手でバランスを取りながら、リズミカルに階段を下っていきます。もはやトレランです。だもんで、先を行く人々を追い抜かし、そのまま置き去りでさあ。で、金比羅山に参拝して一つ大きく気になったことがありました。古来よりここまで人気を集めた金比羅山、なのに讃岐の一宮という名誉を賜ったのは初日に詣でた田村神社。建築はどちらも目を瞠るものがあったけれど、境内の広さも、現代の参拝客の多さも、圧倒的に金比羅山のほうなのに、どうして一宮に選ばれなかったのだろう……これ、尋ねるとしたら社務所だよな。そんなわけですたこらさっさと、本宮の大きな社務所前まで下りてきました。各種販売や受付という業務をしているだろう巫女さんたちが数人並んでいる。「どうして金比羅山が一宮ではないのですか?」って、結構際どい質問だよなぁ。受け取り方によっちゃ「どうして一位じゃないんですか?」みたいなあの政治的なワードっぽくも聞こえる。そもそも一宮から漏れた金比羅山が、その理由を知っているとも思えないしなぁ……。社務所前で行きつ戻りつを演じては、さすがに何の接点もなしにこの質問だけを切り出すのは無礼だろうなぁと思い、そのまま下山を続行しました。というか行きも前を通ったけれど、現代的な資生堂パーラーが境内にあるって何よ。そうして行きは潜らなかった大門を抜け、帰ってきましたお土産参道。そういえば昨日、津田の若者との会話で紹介されたお店があった。金比羅山に行くのならそこが知り合いなので、という話。五人百姓、という古くから参道で商売を営んできたことから、境内での商売を許可されている五軒の由緒ある商家、その内の一つとのこと。参道を下りながらその五人百姓を探すことにする。五軒しかないのだから、そこまで難易度は高くないはず。『五人百姓』と屋号の前に冠したお店は一つ二つ……。そうして紹介のお店を発見。何というか他の店舗に比べて、明るくオシャレな空間。昔からの名物だという加美代飴(かみよあめ)も気になったけれど、さぬきゴールドという品種のキウイ、そのドライフルーツが飴漬けにされた小振りのお土産を求める(あとで食べたらめちゃ美味でした)。そんでもってレジで、津田で紹介を受けて、という感じで昨日の若者の名前を出すと、28代目の当主である方がわざわざご対応下さる。自分もどんな感じで話が発展するのか何も想定しちゃいなかったので「紹介受けて来ました。どうも」くらいの挨拶で終わるかなと思ったのだけれど、まぁ長らく興味深いお話を聞かせて下さり恐縮でした。五人百姓の歴史。参道にお店はたくさんあっても、境内=大門内で唯一というか唯五営業を許可されているお店がこちらとのこと(境内では高級な茶屋の軒先にあるような野点傘(のだてがさ)を広げて営業しているとのことだったが、自分は行きは脇道を通って大門を通らなかったし、帰りは時間が遅かったこともあって、もう店が退いたあとのようでした。残念)。次いで、金比羅山の段数や、曲がり角に込められた意味等も教えて下さる。歴史について質問をしてくるお客さんが訪ねてこられて30分近く問答をしていたら、漫画キングダム作者さんでサインをいただいたなんて話も。そうして奥の茶店へと案内して下さり、ご自身も関わっている四国の古い街道の道標等をまとめたガイドブックをいただいたり、小学校での講演の話や、小学校の遠足で先生が「今日は金比羅山の参拝がんばろう!」みたいなノリで話されるけれど、金比羅山がハイキングのように扱われていることに対して「そうじゃないんだよ」といった思いも聞かせて下さり、仕舞いには屏風の前で二人で記念撮影まで(「そんな大した人間じゃないですよ」と前置きはしたけれど)。話の合間にこの機を逃してはならぬと、先ほどから気に掛かっていた一宮問題も切り出してみた。特に詳細を知っているわけではなかったけれど、数々の興味深いお話を伺えた時間でありました。「続膝栗毛を読みながら旅してる」と伝えたら、即座に「金比羅山!」と返されたのは流石でした。どうもありがとうございました。
     ようし、これにて金比羅山、下山完である。あとはホテルへと向かいましょう。というわけで参道をひたすらに遡って、観光客の姿が消える町中、地元スーパーの目の前に大浴場付きのホテルはそびえておりました。チェックイン後は無論温まる。で、どうして金比羅山が讃岐の一宮じゃないんだ問題、やっぱり気になったのでAIに質問してみたら、ざっくりと以下の回答でした。全国の一宮が制定されたのは平安時代あたりで、制定には朝廷や地方の豪族との関係も影響があり、そういった点から田村神社が一宮として選ばれたのではないか。また金比羅参りが流行したのは江戸時代以降なので、制定された時代よりも大分遅れてのことだった。加えて、金比羅山は神仏習合の聖地として注目を集め、修験道的な信仰もあったようなので、そのことが正統な一宮のイメージからは外れたのではないか、といった感じ。AIなので全てを鵜呑みにしない慎重さは必要だろうけれど、特に修験道的な性格の神社だったからというのは個人的には頷けるポイントだった。とはいえ、どうして自分は金比羅山を修験道的だと感じたのだろうか。鳥居の形も伊勢のものに近いシンプルな形状だったし、細かく由緒書きを読み込んだわけではないけれど、修験道を彷彿とさせるものはあまりなかっ……あぁ。その参拝の形だ。金比羅山だ。修験道といえば山岳信仰だ。金比羅は山そのものじゃないか、と腑に落ちる(そういえば奥社の脇の崖にも天狗の面が飾られていた)。そんなわけで少しすっきりしたところで、ご飯を食べに出かける。が、昨日から歩きまくりで今日は山登りなのでもうあまり歩きたくありません。とりあえず旅先で恒例になりつつあるスーパー巡りを行おうと、向かいにあるスーパー、マルナカへ突撃する(今調べたら、香川県発祥のスーパーのようで)。まずはお馴染みの牛乳と納豆の銘柄をチェックして(この二品は地域の色が出やすいと思っている)、次いで総菜コーナーへ。お好み焼き、餃子、唐揚げ……ちょっと立ち止まって考える。近くにうどん屋や焼き肉店はあるが……もう考えるのが面倒だ。ホテルにレンジもあったし、今日は地元スーパーの味を堪能しよう、というわけで、麺入りのお好み焼きと、瀬戸内海の塩が使われているとかいう唐揚げと、あとは金比羅にいるし、きんぴらゴボウを買い求める(またまたAIに聞いたら、発音が似てるだけで何も関係ないとのこと)。あとはホテルでチンして、部屋でいただく。まぁたまにはこういうのもいいね。特に唐揚げはスーパーの中じゃかなり美味い部類だと思いました。ごちそうさまでした。というわけで今日はもう早々に寝ちまいましょう。
     が、なんかときおり廊下が騒がしいね。エレベーター前の会話は良く聞こえてくるね。しまいには近くの部屋から歓声も上がるね。偏見だけれど、大学生の集団でも泊まってるのか(翌日知ったけれど、サッカーのなでしこジャパンが優勝を決めた日だったようで)。とりあえず、寝させておくれ。

    3日目

     7時半頃に起きて、大浴場で顔を洗う。眠気覚ましには丁度いい。そんでもって朝食バイキングの会場へ。うどんや、瀬戸内レモンゼリー、おいり(ひなあられに似た甘いお菓子)、といった郷土食も出されていました。自分は食後にレモンゼリーにおいりを振りかけて、かりぽりやってました。結構合った。ごちそうさまでした。
     さて、何だかよくわからないけれど、申し込んだツアーの特典でチェックアウトが12時までとなっているので、ゆっくりと過ごします。というか薄らとした雨雲が通過しているので、過ぎるまで続膝栗毛を読みながらごろごろしときました。10時過ぎに宿を発つ。ホテルのフロントでもらった観光地図に鞘橋(さやばし)というのが載っていて、あれどっかで見たなこの字、と続膝栗毛をひもとけば、弥次喜多が金比羅でまず訪れた橋でもありました。というか、金比羅山の神社よりも鞘橋のほうが描写はしっかりしていた。そんなわけで小雨の中、きったねぇ膝栗毛の聖地巡礼と参りますか。
    (続→)

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    言葉や小説をアートにしています。たまに旅に出ます。 watanabe.genkisan@gmail.com

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