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2025年2月 さぬき旅2

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     まずは展示予定のコンテナ内について、さぬきの若者二人からお話を伺いながら、至るところを撮影していく。中は、荒廃そのものである。まぁ、その場に合わせた展示って結構好きなので、腕というか頭が鳴る感じ。今朝方の上空からの津田の写真も見せ、「すごくね」と自慢をする。うむ。
     その後お互いの話をしつつ、津田の町を練り歩く。横道からカートを押してきたお婆ちゃんに、三人で「こんにちはー」。うーん、ほんと。まず向かったのは、海の図書館。私設の図書館といった感じで、海関係の書籍が集まっていて、全国から寄贈された本ばかりとか。少し明かりを落とした部屋は、哲学というかタイトルの羅列をぱっと見た感じ内省的な言葉が目に着いたので、深海をイメージしているようで。こちらの『海の図書館』。宿泊施設としても運用されているとのことで、昔の漁師の邸宅を活用しているのだとか。立派な中庭もあり、お部屋の色合いもブルー系でカラーリングされていてオシャレだなぁと。見学させてもらっている中、色々な若い方と話をしたけれど、町興しってこんな感じなんだ、楽しそうだなぁ、ということをしみじみ。そういえばこんな話も聞いた。津田は昔、遠洋漁業の盛んな町だったのだけれど、排他的経済水域が制定されたために漁が制限されて次第に漁師町としての雰囲気も……という歴史があり、(詳細は忘れてしまったけれど)その他諸々の影響もあって、この町の人々は外因に振り回されることに慣れていて、だからこんなにも大らかな気風を持っているんじゃないか、と。なかなか実感のこもった興味深いお話でした。次いで、藍染めの工房にも立ち寄らせていただく。藍染めの作業手順には明るくないので今も調べながら書くけれど、丁度灰汁(あく)を作られているところで、木灰をお湯でかき混ぜていらっしゃった。その上のほうにアルカリ性の強い液体が出来るようで、それを『上澄み液』と呼び、これと藍染め液と混ぜて、藍染めを行うのだとか。しまいには藍染めした布を干すための洗濯ばさみまで青く染まっていた。ちなみに木灰は同じ津田のピザ屋さんからもらっているそうで。お店である『Khimaira(キマイラ)』のほうにも移動して、藍染めの品々と、店内に今年の瀬戸内国際芸術祭の大きなポスターが貼られていたので、瀬戸芸についてもあれこれ話す(自分が展示するのは瀬戸芸じゃないけれど、連携事業です)。そうしてお店をあとにして、『ウラツダ』と看板の立っている松並木沿いの通りを歩く。ウラツダ。近年、海岸沿いに若い人たちがお店をオープンさせているようで、地元の人たちで何か名称を決めようとなり、そのときに決まった名前だとか。ちなみに今年は瀬戸芸のエリアにも津田が含まれるようなので、気運が高まっているような気がします、津田。さて、タンクトップが描かれたコンテナのある家具店『アジアンファクトリー』まで、歩いて戻ってきた。もはや16時。2時間色々とお喋りしておりました。時間を割いていただき、どうもありがとうございました。こういう経験がきっと作品に活かされることだろうし、ぜひともそうであって欲しいなぁと(作品は自分の思惑外のことが出てくることもあるので、他人事みたいな表現です)。津田を案内して下さったお二人と握手をして手を振って別れ、自分は一人宿へと向かう。少し陽の傾いてきた津田の町。田畑の合間を抜けて、小高い丘の上へ。ちょっと道を間違えて、畦道?を歩くようなこともしつつ、ようやく宿に着きました。まるで一軒家のような外観。「ごめんくださーい」とチェックインです。部屋へと通されれば、大きな窓からは津田の町並みが一望できます。「向こうに薄く見える山が淡路島です」と宿のご主人よりご案内。瀬戸内海って、海に浮かぶ小島が淡くかすんで見えて、穏やかな内海で、どことなく夢のような情景です。というか、空港から一宮まで歩いたこともあって、結構疲れています。というわけで、畳の上に体を横たえ少し休憩。夕飯どうしよう。
     18時前。気怠い体を起こして、外へ。坂を下りながら、夕陽に沈んでいく津田を眺める。宿で色々とお店を教えてはもらっていて、鉄板焼きレストラン、ハンバーグ、ラーメン屋というラインナップ。ご飯だけでさくっと終わらせるのもいいけれど、せっかくだしもっと津田の町──というか、津田の人たちの雰囲気を知りたい。それがきっと、作品にいい影響を与えてくれるような気がしている。というわけで、歩を伸ばして先ほどの漁港近くの飲み屋へ。ドアを開けると掘りごたつタイプの円形に近いカウンター席。内側に焼き台やら。うわぁ、良さげな造りだ。一本指を立てて上がれば、そのカウンター席に座っていた多分女将さんが、少し横にずれて「ここ座んなさい。温めておいたから」と座席案内。きっと品出しがしやすい位置なんだろう、と同時に「おっと、そういう感じの店か」と内心ほくそ笑む。というわけで「まるで秀吉と信長みたいですね」と応じつつ、温まった席に着く。さて、何を呑もう。ちょっと冷えてるし、燗酒といこうか。「今週の地酒」との表記……「どこのです?」と聞けば、他の店員さんが瓶を出してくれて秋田県。香川を旅して秋田の酒を飲むだなんて、ちょっと間抜けだなぁ。ただ『讃水山海』という銘柄は、津田ではないけれど香川の地酒のようなので、そちらを燗で注文する(秋田の酒を地酒として紹介するということは、ここは地元の方向けのお店ということだね)。グラス? お猪口? と問われたけれど、旅情を感じたいので断然お猪口で。ちびちびやりたいのです。つまみは……本日のおすすめと書かれた黒板を見上げて、まずは軟骨の唐揚げと、炙りたらこで。で、会話である。向こうから口火を切ってくれたようなものなので、話しやすい。東京から? 津田には何をしに? みたいな話になったので、あっちのほうのコンテナで夏頃展示をするので下見に来ました、アーティストみたいなもんです、と自己紹介(みたいなもん、って文字にしたら軽薄そうに見えるかもだけれど、実際自分はただの人間だと思っているので、「アーティスト」というわかりやすくも特殊な肩書きよりは「みたいなもん」程度がいいのです)。今日はどこ泊まってる? 図書館じゃないの? と聞かれて、あっちの丘の上の、と返せば、今度は隣に座っていたご夫婦が、「津田に図書館ってあるの?」と会話に参加される。楽しくなって参りました。ご夫婦は二つ隣の町である牟礼から飲みに来ているとのことで(奥様はノンアルコールのようで)、会話の感じからしばしばこの店には来られているようでした。というか家族連れやら、会社帰りのグループやら、平日だというのに少し賑わってきました。聞けば、このお店は元スナックで、(確か)20年くらい前に居酒屋に切り替えたのだとか(道理で、女将さんの接客がエキスパートだったわけだ)。昔は漁師町だったけれど、今は近海で小さな漁をしている人が多い、なんていう歴史も伺う。『海の図書館』は昔の漁師長の家だったという話も出て来て、あの立派な中庭を思い返し、やっぱりなぁ、と。そうして津田で展示するだろう作品を意識しつつ、質問を投げかけてみる。「津田って、どんな町ですか?」と。「静かな町だね」と返ってくる。自分の印象では「穏やか」だった。この言葉の違いは、もしかしたら津田の過去を見てきたということも影響しているだろうか、なんてことを今書きながら思う。ちなみに隣のお客さんは「津田といえば、松原」と返答されていました(広大な松林があるのよ)。というか、軟骨の唐揚げが美味い。その後、立て続けに注文が入っていました。自分は続いてだし巻き卵を注文。酒も二合目となり興が乗ってきて「今朝、高松空港から一宮まで歩きました」と自慢話を披露する。そこから健脚ということで話が広がり、隣の方から四国といえばのお遍路を勧められる。88箇所巡ってみればと。流石にそこまでは時間がなぁ、と応じれば、その方はお遍路ではないけれど、四国三十六不動を巡られたとか(車で、と仰ってたかな)。善光寺に行ったときも思ったけれど、日本には本当色々な巡礼がありますね。そうしてだし巻き卵に、炙りたらこを乗っけて頬張る。美味し。もう少しこの飲み屋の雰囲気を感じていようか。でも、ここから宿は結構離れてるから、早めにお暇しとくか、とお会計。丁度、よく話した隣のご夫婦と同じタイミングで席を立つ。女将さんは最後は忙しそうにされていてあまり話せなかったけれど「口は悪いけれど、また来てね」と送って下さったので、「口は良かったよ。また展示のときに来るから、顔憶えといて」と返して店を出る。うん、いいお店でした。そしたら「車で送ってってあげるよ」と今し方お店を出た隣の席のご夫婦が。えっ? と吃驚。マジカヨ。まぁ、真っ暗な中、多分見えるだろう星を見上げながら小高い丘の上まで歩いて行くのも悪くないなぁ、とか考えていたけれど、20分近くかかるし、まぁ、じゃあ、お言葉に甘えさせていただきましょう。というわけで、後部座席に乗車。運転はノンアルコールだった奥様が。「少し行ったところにある、工務店の角でいいですよ」と、行きに目印にしておいた看板のことを伝えるが、宿の名前を問われ、こんなところに宿があったんだ……、とスマホで調べられナビ設定。ものの数分で宿の前まで送っていただく。「またさっきの飲み屋で会えたら会おう」と手を振られ、「6月にまた伺います」と車を見送る。あぁ、僥倖に恵まれました。疲れていたからレストランか飲み屋で悩んだけれど、行ってよかったなぁとしみじみ。搬入に来るときは、また同じ飲み屋で飲もう。
     館内に「ただいま」をして、部屋へ。風呂へ。浴衣じゃないけれど、用意されていたパジャマの中からサイズが合いそうなのを選んで、寝床へ。布団が分厚く、温か。でも展示のことを自然とぐるぐる考えてしまって、なかなか寝付けず……。おやすみなさいませ。
    (続→)

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    言葉や小説をアートにしています。たまに旅に出ます。 watanabe.genkisan@gmail.com

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