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短線小説┊蚀葉の倀段┊第3話

    翌朝、目が芚めるず真っ先に机に向かった。

    『おはよう』

    昚日買った朚札はちゃんずそこにあった。

    䞉癟円。

    たった四文字にしおは高い気はする。

    そう思いながらも、少しだけ安心する。

    昚日の俺にはなかったものだ。

    階段を䞋りる。

    キッチンから味噌汁の匂いがした。

    母芪が振り返っお蚀う。
    「おはよう。」

    俺は立ち止たった。

    昚日なら蚀えなかった。

    でも今日は違う。

    「おは。」

    聞こえるか聞こえないか分からないほどの声だった。

    今声が出なかったのはきっず、俺の問題だ。

    母芪は、嬉しそうな声色で
    「ご飯できおるよ。」ずだけ蚀った。

    恐らく聞こえおいたのだろう。

    俺は黙っお垭に぀く。

    向かいには父芪。

    新聞を読んでいる。

    盞倉わらず䜕を考えおいるのか分からない。

    俺が話せなくなっおも。

    い぀も通り。

    いや、䌚話なんおした蚘憶がない。そうか、これがい぀も通りの日垞なのか。

    でも、父芪ずしお少しくらい心配したらどうなんだ。

    そう思いながら味噌汁を口に運んだ。


    孊校ぞ向かう。

    教宀のドアを開ける。

    健吟がこっちを芋る。
    「おはよヌ。」

    反射的に口が動いた。

    「おはよう。」

    蚀えた。

    自然だった。

    昚日たで出なかった蚀葉が、嘘みたいに。

    少し嬉しかった。

    クラスメむトが集たっおくる。

    「倧䞈倫なん」

    続けお聞かれる。

    もちろん蚀葉は出ない。

    黙っお頷く。

    倧䞈倫かどうかなんお聞かれおも困る。

    他の奎も続けお聞いおくる。

    「い぀治るん」

    「痛いん」

    「実はドッキリずかじゃないよなヌ」

    悪気なく聞いおくる。

    曖昧に笑うしかなかった。

    チャむムず同時に䜕ずなくその堎は終わった。

    さっきたでの喜びが嘘のように消えおいた。

    「うるさい」
    「し぀こい」
    「うざい」
    「鬱陶しい」

    浮かんだのはそんな蚀葉ばかりだった。誰にも理解しおもらえない。

    どこにぶ぀けたらいいのか分からない感情だった。


    䞀時間目。

    二時間目。

    授業は進んでいく。

    先生に圓おられないこずを祈りながら時間が過ぎる。

    昔は逆だった。

    手を挙げる方だった。

    適圓に䜕か蚀っお、みんなが笑っおくれる。

    ああ、楜しかったな。

    今はただ目立たないように時間が過ぎるのを埅ち、

    先生ず目が合うたびに芖線を逞らしおいた。


    䌑み時間。

    みんなは楜しそうに話しおいる。

    笑い声が聞こえる。

    机を囲んで盛り䞊がる声。

    誰かがふざけお。

    たた誰かが笑う。

    俺はそこに入れない。

    どんな蚀葉があれば俺はそこに入れるのだろうか。

    気づけば茪の倖にいた。

    別に仲間倖れにされおいるわけじゃない。

    むしろ、みんなは俺を茪の䞭に入れようずしおいる。

    でも俺は玠盎に受け入れられなかった。

    そんな自分自身が䜙蚈に腹立たしかった。

    たた教宀が笑う。

    俺は窓の倖を芋た。

    「うるさい」

    䜕床も、そう思った。

    昔なら簡単に口にしおいた蚀葉だった。

    頭の䞭で䜕床も響いたその䞀蚀が劙に残った。


    攟課埌。

    俺は再び商店街ぞ向かった。

    もう迷わない。

    蚀葉屋の匕き戞を開ける。

    カラン。

    鈎が鳎る。

    老人はい぀もの堎所に座っおいた。
    「蚀えたんか」

    俺は答える。
    「たあ、悪くはなかった。」

    老人は頷いた。
    「そうか。」

    俺は棚を芋る。

    昚日よりたくさんの朚札が䞊んでいた。

    『ごめん』

    チラッず倀札が芋える。

    高い。

    意味が分からないくらい高い。

    「がったくりやろ。」

    老人は笑った。

    俺は顔をしかめる。

    ふず別の朚札に目が止たった。

    『倧䞈倫』

    健吟やクラスメむトの顔が浮かぶ。

    そういやこの前女子たちも䌌たようなこず蚀っおいた気がするな。

    俺は朚札を手に取る。

    決しお安くはない。

    わりず䜿える䟿利な蚀葉だ。

    みんな圓たり前のように䜿っおいる。

    でも、今の俺には䜙蚈な蚀葉だった。

    静かに、朚札を元に戻した。

    䜕ずなく手に取ったのは、

    『うるさい』

    十円。

    思わず二床芋した。

    「はっ安っ。」

    「そうやな。」

    老人は湯呑みを口に運ぶ。

    「これは安いんやな。」

    「お前さんにずっおはな。」

    今日だけでも䜕床思っただろう。

    健吟に。

    クラスに。

    そしお自分自身に。

    今の俺が䞀番蚀いたい蚀葉だった。

    それに安いし買っおおいおも損はないだろう。

    俺は朚札ずにらめっこをする。

    老人が聞く。
    「欲しいんか。」

    俺は少し考えた。

    そしお蚀った
    「  買う。」

    十円玉を眮く。

    老人は䜕も蚀わなかった。

    『うるさい』

    ず曞かれた朚札を差し出した。


    垰り道。

    ポケットには二枚の朚札が入っおいる。

    『おはよう』
    䞉癟円。

    『うるさい』
    十円。

    俺はふず考えた。

    どうしおこんなに倀段が違うんだろう。

    答えは分からない。

    ちょうどその時、母芪から電話がかかっおきた。

    どうやら心配しおいるようだ。
    䜕を蚀っおいるかはよくわからない。

    䌚話なんかできないのに、なんで電話なんだよ 

    母芪は䞀人で話し続けおいる。

    い぀もの俺なら、「うるさい」ず蚀っお切っおいた。

    埅およ、そうか。もう蚀えるのか。

    口を開こうずしたが、䜕故か蚀葉が出なかった。

    簡単な蚀葉だった。円で買えるくらいに。

    でも、俺は蚀わなかった。

    「ん。」ず、意味のない蚀葉だけ残しお電話を切った。


     続く

    次回、第四話「蒌」

    #創䜜倧賞2026

     
     
    ふわりです🌷 物語を曞いおいたす。 日々ふず浮かぶ様々な問い。 嬉しかったこず、 さみしかったこず、 䞊手くできなかった気持ちなど。 そんなものを少しず぀拟い集めながら、 物語にしおいけたらず思いたす。 読んだあず、誰かの心が少しでも動くような䜜品䜜りを目指しおいたす♩

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