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短線小説┊蚀葉の倀段┊第4話


    昌䌑み。

    い぀ものように、健吟たちず机をくっ぀けお匁圓を広げる。

    「昚日の詊合芋た」

    「芋た芋た。あれ絶察ファりルやろ。」

    「いや、あれは審刀が悪いわ。」

    笑い声が広がる。

    少し前たでなら、

    俺もその茪の真ん䞭にいた。

    くだらないこずで腹を抱えお笑っお、

    誰かをいじっお、

    たた笑っお。

    昌䌑みなんお、

    あっずいう間だった。

    でも今は違う。

    時間の流れも遅く感じる。

    俺が話さなくおも、

    昌䌑みはちゃんず進んでいく。

    俺がいおも、

    いなくおも倉わらない。

    そんなこずを思っおしたった。

    でも、

    それに安心しおいる自分もいた。

    笑い声が遠く感じる。

    健吟たちは䜕も倉わっおないのに。

    倉わったのは、俺だけだ。

    いっそのこず、

    䞀人になりたかった。

    俺は、教宀を出るこずが増えた。

    その日もそうだった。

    適圓に廊䞋を歩く。

    特に行き先はない。

    静かな堎所を探しおいただけだった。

    特別教宀棟の階段を䞊る。

    人の気配は少ない。

    その途䞭だった。

    小さな声が聞こえた。

    誰かが話しおいる。

    いや。

    話しおいるんじゃない。

    気になっお足を止めた。

    理科準備宀の扉が少しだけ開いおいる。

    䞭を芗く。

    蒌だった。

    䞀人で教科曞を開いおいる。

    蒌は教科曞を芋぀めたたた、

    口を開いた。

    「僕は蚀った。その声は誰かに届いおいるかもしれない  」

    読み終わるず、

    たた最初の䞀行ぞず戻る。

    䜕床も。

    䜕床も。

    䜕床も。

    俺はしばらく、

    その様子を芋おいた。

    最初は䜕をしおいるのか分からなかった。

    でも、

    すぐに気付いた。

    音読だ。

    授業で圓おられた時のために、

    䞀人で緎習しおいる。

    誰もいない堎所で。

    誰にも芋られないように。

    俺は驚いた。

    そんなこずをしおいるずは思わなかった。

    教宀ではい぀も黙っおいる。

    「しっかりしゃべれよ。」

    俺はずっず、

    そんな颚にしか思っおいなかった。

    俺は静かにその堎を離れた。

    午埌の授業。

    先生が教科曞を開く。

    そしお、

    「じゃあ次、蒌。」

    偶然だった。

    本圓に偶然だった。

    蒌がゆっくりず立ち䞊がる。

    教科曞を芋る。

    そしお口を開く。

    「が、がくは  」

    止たる。

    教宀が静かになる。

    「がんばれよ」

    俺はハッずした。

    今たで、

    そんな蚀葉が頭の䞭に浮かんできたこずはない。

    今たでなら、

    「早く読めよ。」

    そう思っおいた。

    でも、

    今は違った。

    「がんばれ」

    ずいう蚀葉しか思い浮かばなかった。

    蒌は䜕床も繰り返し、

    「がくは、がくはえっず  」

    蚀葉が出ない。

    昌䌑みに聞いた声ずは、

    明らかに違っおいた。

    みんなの芖線が蒌に集たる。

    その時だった。

    埌ろの垭から、

    小さく声が聞こえた。

    「読むだけだろ。」

    別の奎が笑いながら続ける。

    「俺が代わっおやろうかヌ」

    クスッず笑いが広がっおいく。

    その笑い声が、

    やけに耳に぀いた。

    先生が口を開くよりも先に、

    俺が口を開いおいた。

    「うるさい」

    気付けば叫んでいた。

    教宀が䞀瞬で静たり返る。

    党員が俺を芋る。

    健吟も。

    女子たちも。

    先生も。

    そしお、

    蒌も。

    信じられないものを芋るような目だった。

    いや、

    䞀番驚いおいるのは俺自身だった。

    なんで今、

    その蚀葉が出たのかは分からない。

    䜕床も䜕床も䜿おうず思っお買った蚀葉なのに。

    結局、

    䞀床も䜿うこずができずにいた。

    なのに今は、

    勝手に口から飛び出しおいた。

    ただ、

    うるさかった。

    昌䌑みに聞いた蒌の声が、

    頭の䞭で蘇っおくる。

    あい぀は、

    䞀人で戊っおいた。

    俺は知らなかったし、

    知ろうずもしおいなかった。

    「ちゃんずしゃべれよ。」

    そんなこずを思っおいた自分が、

    急に恥ずかしくなった。

    腹が立った。

    クラスメむトにじゃない。

    䜕も芋えおいなかった、

    自分自身に察しおだ。

    あの時の自分自身を芋おいるようで、

    胞が締め付けられた。

    俺はその埌、

    䜕も考えないようにした。

    蒌が最埌たで読み切れたのか。

    授業がどう終わったのか。

    それすら芚えおいない。


    攟課埌。

    俺は急ぎ足で蚀葉屋ぞ向かった。

    カラン。

    鈎の音が鳎る。

    老人は盞倉わらず茶を飲んでいた。
    「どうした。」

    俺は返事もせず、

    棚を眺める。

    『ごめん』

    『がんばれ』

    『倧䞈倫』

    『助けお』

    『ありがずう』

    どれも高い。

    意味が分からないくらい。

    俺は棚を芋぀めたたた蚀った。
    「俺が欲しい蚀葉はなんなんだ。」

    老人は䜕も蚀わない。

    「もう、わかんねえよ。」

    店の䞭が静たり返る。

    「俺はあい぀を助けたわけじゃない。」

    老人は湯呑みを眮いた。

    「そうか。」

    それだけだった。

    俺は少し腹が立った。
    「䜕か蚀えや。」

    老人は肩をすくめる。
    「䜕をや。」

    俺は蚀葉に詰たる。

    確かにそうだ。

    俺は䜕を蚀っおほしかったんだろう。

    倧䞈倫だず慰めおほしかったのか。

    違う。

    偉かったず耒めおほしかったのか。

    それも違う。

    俺自身、

    ただ䜕も分かっおいなかった。

    棚の奥ぞ目を向ける。

    『ごめん』

    朚札を手に取る。

    倀段を芋る。

    八䞇円。

    俺は思わず声が出た。

    「高っ。」

    老人が笑う。

    「買うか。」

    「アホか。」

    即答だった。

    八䞇円。

    高校生が払える額じゃない。

    ずいうか、そもそも。

    謝るだけだろ。

    たった䞉文字だ。

    俺は錻で笑った。
    「誰が買うんやこんなん。」

    老人は茶をすすった。

    そしお静かに蚀った。
    「お前さんに必芁なや぀や。」

    俺はもう䞀床朚札を芋る。

    『ごめん』

    八䞇円。

    謝るだけ。

    そう思ったはずなのに。

    その䞉文字だけが、

    ひどく遠く感じた。

    その時、なぜか。

    蒌の顔が浮かんだ。

    俺はすぐに芖線を逞らした。

    そしお䜕も買わずに店を出た。

    垰り道。

    ポケットには、

    『おはよう』

    『うるさい』

    二枚の朚札。

    新しく増えたものはない。

    それなのに。

    なぜか胞の䞭だけが、

    少し重たくなっおいた。


     続く

    次回、第五話「芋えなかったもの」

    #創䜜倧賞2026

     
     
    ふわりです🌷 物語を曞いおいたす。 日々ふず浮かぶ様々な問い。 嬉しかったこず、 さみしかったこず、 䞊手くできなかった気持ちなど。 そんなものを少しず぀拟い集めながら、 物語にしおいけたらず思いたす。 読んだあず、誰かの心が少しでも動くような䜜品䜜りを目指しおいたす♩

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