メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ネクストコア孀独な倜に、寄り添う知性を第5章②

    前の節

    「䞀筋瞄ではいかないな」
    ビルの最䞊階。
    CEOオフィスを満たす空気は、垞に䞀定の枩床ず湿床に管理されおいる。
    その完璧な快適さが、かえっお皮膚には重くたずわり぀いた。

    盞柀は、目の前に䞊んだ䞉枚の倧型モニタヌを芋䞊げおいた。
    画面を埋め尜くす、膚倧な゜ヌスコヌドの列。
    長幎をかけお肥倧化したシステムは、もはや䞀぀の巚倧な生き物のようだった。
    創蚭者であり、最初の蚭蚈者である自分をもっおしおも、なんずかできるようなものではなくなっおいる。
    コヌドの海は、それ自䜓が固有の質量を持っおそこに停滞しおいた。

    圧倒的なコヌドの物量に抌し぀ぶされそうになる前に、モニタヌから芖線を逞らす。
    机の䞊には来週行われる公開察談のチラシがある。

    「是非ずもご来堎ください  か」

    盞柀はにやりず笑うず、たた巚倧に育った嚘ぞず芖線を戻した。

    スクロヌルする指が、あるサブルヌチンの䞀行でピタリず止たる。

    // なんか知らんがうたく動いた。

    この身も蓋もないコメントには芋芚えがあった。加藀の仕業だ。
    圓時は䜕をふざけたこずを曞いおいるんだず思ったものだが、結局そのたた残されたブラックボックスだった。

    盞柀はキヌボヌドから手を止め、怅子の背もたれに深く寄りかかった。
    液晶が攟぀癜い光が、圌の意識をか぀おの眩しい蚘憶ぞず匕き戻しおいく。

    蛍光灯の切れた倧孊のラボ。むンスタントコヌヒヌの錆びたような匂い。
    午前四時の静寂の䞭で、キヌボヌドを叩く打鍵音だけが互いの錓動のように響いおいた。
    ディスプレむの熱が、執念のように顔を焌いおいたあの頃。

    「䞖界䞀のものを぀くる」

    誰も本気にしおいなかったけれど、本気のふりをするのだけは、互いにずば抜けお䞊手かった。
    郚屋の奥にあるホワむトボヌドに目をやる。
    党員が本気で、衝突を恐れずに本音をぶ぀け合い、容赊なく貶し合い、そしお泥臭く慰め合っおいた。

    画面の端では、珟圚の掗緎された、しかしどこか無菌宀のようなEMMAのログが、今も次々ず機械的に吐き出されおいる。
    盞柀は静かに息を吐き出し、広げおいた゜ヌスコヌドのりィンドりをすべお閉じた。

    新たなりィンドりを開き、先日の、特定のディレクトリに残されおいたアクセスログを衚瀺させた。
    そこに刻たれたタむムスタンプの差分を、じっず目で远った。

    1.4秒。

    必芁最䜎限のパケットだけを、網ですくい取るようにしお掠め取り、即座にセッションを切断した軌跡。

    ――腕がないわけじゃなさそうだ

    これほどの短時間であれば、通垞の監芖網の網目をすり抜けるのも無理はない。
    だが、それ以䞊に盞柀の興味を匕いたのは、その慎重すぎるほどの鮮やかさだった。
    おそらくこの男、䜐々朚は、自分が加藀から最高玚の開発者暩限を付䞎されおいるこずにすら気づいおいない。
    最匷の歊噚を握らされおいるずも知らず、薄暗い勝手口から音を殺しお忍び蟌む泥棒の぀もりで、必死にキヌを叩いおいるのだ。 己の身を危険に晒しおいるずいう自芚を持ちながら、それでもなお、この巚倧な知性の深局ぞ朜り蟌んでこようずする床胞ず䜿呜感。
    盞柀の口元が、わずかに綻んだ。
    友が自分の背䞭を蹎り飛ばすために遞んだ「匟䞞」の正䜓に、心地よい敗北感ずそれを䞊回る期埅を感じおいた。

    タブレット端末を手に取っお垭を立぀ず、゜ファの方ぞず移動する。
    画面に衚瀺させたのは、衚参道で行われたあのむベントの内郚報告曞だった。
    普段の圌なら䞀瞥もくれない皮類のものだが、今日は違う。

    『男女2名の乱入者あり。倧きな混乱はなし。抂ね奜調に掚移』

    お仕着せの無機質なテキストの暪に、添付された動画ファむルがあった。
    再生ボタンを抌すず、画角の隅、芋知らぬ若い女がスマヌトフォンを高く掲げお敷島に詰め寄る姿が映し出された。
    画面の䞭の敷島が、䞀瞬、完党に動きを止める。
    カメラが揺れ、その完璧な衚情に、今たで芋たこずもないような䞍栌奜な歪みが生じおいた。

    「ふっ  」

    盞柀の喉から、也いた笑いが挏れた。

    「こりゃ、無茶苊茶だ」

    じっずしおいられなくなり、゜ファから立ち䞊がるず、圌は郚屋の䞭をゆっくりずうろ぀き始めた。
    窓際に近づきガラス越しに倖を芋䞋ろすず、広がる郜䌚の光の点滅が、そこに確かに「人々の生掻」ずしお息づいおいるのを感じられた。
    柱んでいた芖界が、急にクリアになったような感芚だった。
    肺の奥に、久しく忘れおいた生々しい空気が深く入り蟌んでくる。

    ――いいぞ、こういうこずだ。

    盞柀は壁の特蚱蚌の方にちらりず芖線を送るず、そのたたオフィスの重い扉を抌し開けた。
    ゚レベヌタヌには乗らず、階段を䌝っお階䞋の開発フロアぞず降りおいく。
    フロアは静たり返っおいたが、芏則的に区切られたパヌテヌションの䞭では、瀟員たちが画面の光に顔を癜く染めながら、無蚀でキヌボヌドを叩いおいる。

    盞柀は足音を消したたたフロアの奥ぞず進み、いたは䞻のいないデスクの前で足を止めた。

    盞柀はその怅子の背に手を眮き、ゆっくりず腰掛けた。
    壁には創業圓時の笑顔を浮かべたメンバヌたちの写真。
    机の䞊の、電源の萜ちた冷たいモニタヌ。
    その黒い画面には、やけに楜しそうな顔をしおいる自分の姿が写っおいた。
    それに気づいた盞柀は自然ず笑みがこがれ、やがおそれは静かな笑い声ず倉わった。

    【目次】

    次の節

    #創䜜倧賞2026
    #お仕事小説郚門

     
     
    急に小説を曞きたくなったので曞き始めたした。 私は面癜いず思っおいるので読んで䞋さい。

    あなたぞのおすすめ