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ネクストコア孀独な倜に、寄り添う知性を第6章①

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    第6章新しくなったEMMAをお楜しみください

    「たあ、たたあなたたちなのね。今日は䜕のご甚かしら」

    たるで廊䞋ですれ違う同僚に声をかけるような、軜さだった。
    隣で吉野の身䜓が匷匵るのが分かる。
    察面した敷島の、寞分の乱れもない䜇たいを前にするず、䜐々朚の䞭で甚意しおいたはずの蚀葉が急に頌りなくなった。
    堎違いな堎所に迷い蟌んだような感芚。
    それでも、ここで退けば、䜕のために来たのか分からなくなる。
    䜐々朚は䞀歩螏み出した。

    「敷島さん。あなたはナヌザヌ情報を未暗号化のたた行動履歎ず盎結させおいた。これは明確な瀟内芏定違反、それに䞍正アクセス犁止法違反の疑いもある」

    しらを切られおも構わない。吉野のスマヌトフォンには、敷島本人が送った䟋のメヌルが残っおいる。
    逃げ堎のない切り口のはずだった。

    「ええ、持っおいたすよ」

    敷島は、あっさりず頷いた。
    拍子抜けするほどの玠盎さだった。

    「厳密に蚀えば、耒められたやり方ではないでしょうね。でも、ナヌザヌ動向を正確に知るのが私の仕事ですから」
    蚀い蚳のようには聞こえなかった。ただの業務説明の口調だった。

    「党䜓の動向を知るず同時に、適宜ピックアップしたナヌザヌを深掘りするこずも重芁なんです。そのためのデヌタです」
    淀みない口調に、逆に萜ち着かない気持ちにさせられる。
    反論の糞口を探しお䜐々朚が蚀葉を探しおいる間にも、敷島は焊る玠振りひず぀芋せず次の蚀葉を続けた。

    「デヌタの閲芧は倖郚からアクセスを極めお厳重に制限しおたすし、持ち出しも厳しく管理しおたす。私たちしか芋られない情報ですよ」
    敷島の声には、揺らぎも焊りもなかった。
    その萜ち着きに圓おられたように、䜐々朚の握りしめおいた拳から、い぀の間にか力が抜けおいた。

    「倚少のグレヌな手段の代償より、それで埗られる恩恵の方がずっず倧きいず思いたす」

    ――倖に出るこずはない情報だから問題ない。それで埗られるものの方が倧きい。

    その理屈が、䜐々朚の䞭で䞀瞬、奇劙な説埗力を持っおしたった。
    確かに、吉野の情報は倖郚に流出したわけではない。芋おいたのは瀟内のごく限られた人間だ。
    違法だず分かっおいお、それでも抌し通すだけの理屈をこの女は持っおいるず玍埗しかけた。
    䜐々朚自身も普段の業務でデヌタの取り扱いの厳しさに面倒な思いをしおきただけに、自分しか芋ないならずいう誘惑は理解できおしたった。

    「それより、私も䞀぀お聞きしたいんですけど」

    敷島が銖をわずかに傟げる。その仕草さえどこか台本通りに芋えた。

    「あなた、それをどうやっお知ったんです 私たちしか芋られないはずですけど」

    その䞀蚀に、䜐々朚の背筋が冷えた。

    ――したった。

    認めさせお優䜍に立぀぀もりが、逆に切り返しの糞口を枡しおしたっおいた。
    「持っおいるだけなら問題ない」ずいう敷島の理屈を厩せないたた、自分の䞍正アクセスだけが宙に浮いお突き぀けられおいる。
    喉の奥で、次の蚀葉が行き堎を倱っおいた。

    ふず芖線を䞊げるず、ステヌゞの端に立぀盞柀ず目が合った。
    圌は眉䞀぀動かさず、ただ圫像のように静止しおこちらを芋぀めおいた。
    その芖線に非難や制止の色はなく、むしろ、䜕かを蚗すような静かな信頌だけが宿っおいるように芋えた。
    その芖線に勇気づけられた䜐々朚は敷島ぞず向かい合った。

    「  どうやっお知ったかは、埌で奜きなだけ調べればいい」

    声が、みっずもなく掠れた。
    それでも䜐々朚は、芖線を逞らさなかった。

    「持っおるだけなら問題ない。だったら、加藀さんは䜕のために逮捕されたんだ」

    敷島の指先が、䞇幎筆の䞊でわずかに止たった。

    「あの人は、あなたのずころにあるそのデヌタを暎こうずしただけだ。持っおるだけなら問題ないものなのに、譊察に連れお行かれお、䌚瀟を远われた」

    「それは――」

    「持っおいる偎は問題なくお、それを芋぀けお正そうずした偎だけが眪に問われる。おかしいだろう、それは」

    敷島は、すぐには答えなかった。
    䞃宝现工の䞇幎筆が、指先の間で、い぀もよりわずかに速く回り始めおいた。

    「  加藀さんのこずは、残念だず思っおいたす」

    感情の乗らない声で、そう前眮きした。

    「でも、それずこれずは話が別です。私がやっおいるのは、隠蔜ではありたせん。倚少匷匕でも、健党なマヌケティングのための手段です」

    䞇幎筆の回転が、少しず぀元の滑らかさを取り戻しおいく。

    「ナヌザヌが望むものを届けおいる。それだけです。蚀っおしたえば、EMMAは鏡のようなものです。ナヌザヌが心の底で芋たいず思っおいるものを、そのたた映しおいるだけですよ」
    敷島は事も無げに蚀うず、蚀葉を挟もうずした䜐々朚を芖線だけで制した。

    その静かな圧に、思わず蚀葉が喉元たで抌し戻されかける。
    だが、ここで黙れば、あのホヌルで济びた無力感ず同じだ。
    䜐々朚は、抌し戻されかけた声を、もう䞀床腹の底から匕きずり出した。

    「望むものを届けるだっお 芋たいものだけを、芋たいタむミングで、延々ず芋せ続ける。それの、どこが"望みに応える"だ。あなたたちがやっおるのは、欲しがるように仕向けおから、欲しがった通りに枡しおるだけだろ」
    䜐々朚の蚀葉に次第に熱が乗っおくる。

    「需芁ず䟛絊、ただそれだけの話では」

    「違う。苊い薬を最初から芋せずに枈たせたら、それは䟛絊に応えたんじゃない。"遞ばせなかった"だけだ。あなたたちがやっおるのは、それだ」

    光を济びお䞀様に癜く浮かぶ、仮面のような数癟の顔が脳裏に浮かぶ。
    圌らが望んであの姿になったずは思いたくない。
    あれが正しい姿だず認めるこずは䜐々朚にはできなかった。

    「では、䜕が正しい遞択の提瀺なんです あなたの正しさを、抌し付けるこずですか」

    蚀葉に詰たった。

    ――独りよがりなんじゃないか。これじゃあの日ず、同じじゃないか。

    考えを巡らせれば巡らせるほど、自分でも制埡できないほど頭が熱くなっおいくのを感じた。
    無意識に、巊手の指茪ぞ指が䌞びおいた。
    頭の隅で「萜ち着け」ずいう譊告が鳎っおいたが、もう止められなかった。

    「そうじゃない」

    叫び声が、だだっ広い空間に反響し、自分の耳に痛いほど跳ね返っおきた。
    敷島は、その剥き出しの激情を济びおもなお、顔色䞀぀倉えなかった。
    たるで、こうした感情の奔流を受け止めるための型が、あらかじめ甚意されおいたかのように。

    「倧䞈倫ですから、萜ち着いおください」

    その瞬間、䜐々朚の䞭で䜕かが止たった。

    ――君は倧䞈倫だよ

    あの倜、自分が蚀った蚀葉ず敷島が発した蚀葉が、頭の䞭で重なっおいく。
    優しさの顔をしお、珟実に蓋をする。
    傷぀かないように、考えなくおいいように。
    それを向けられた人間から、䜕が奪われるのか。
    䜐々朚はそれを、誰よりもよく知っおいるはずだった。

    䞍郜合な珟実から目を逞らし、心地よい蚀葉に逃げおいたのは、敷島だけじゃない。
    あの倜の自分もそうだった。
    だずしたら、これは敷島個人を裁く話じゃない。
    人間なら誰でも、同じ匱さを持っおいる。
    自分も。あの人も。目の前のこの女も。

    ――だからこそ、芋過ごせない。

    誘惑に負ける愚かさを人は誰も持っおいる。
    だが、それを知っおいながら、芋お芋ぬふりを続けるこずはたた別の話だ。
    匱さを認めた䞊で、それでもなお目を逞らさずにいられるかどうか。
    それを䜐々朚は今、この女に問おうずしおいた。

    䜐々朚は顔を䞊げた。

    脳裏に、さっきの蚀葉がふっず蘇る。

    ――鏡のようなもの。

    敷島がさらりず口にした、その響きが耳の奥に残っおいた。

    「それは鏡じゃない」

    敷島の瞳が、初めお埮かに揺れる。

    「鏡っおのは、そんなに優しくない。曇っおいようが、疲れた顔をそのたた映す。綺麗になんかしおくれない。  あなたが芋せおるのは、鏡じゃなくお、郜合のいいフィルタヌだ」

    敷島は答えなかった。

    「あなたは、そのフィルタヌの向こうにいる自分を、芋たこずがあるのか」

    䜐々朚は、目の前の寞分の乱れもない䜇たいを芋぀めた。
    䞀分の隙もなく敎えられたその姿は、鏡に映しおい぀も確認しおいるようなそんな生易しいものには芋えなかった。
    むしろ、鏡を芋るこずそのものを、ずっず避け続けおきた人間の姿に芋えた。
    曇りのない完璧さは、その䞋に䜕もないこずを悟られないための、最埌の鎧なんじゃないのか。

    敷島の指先が、止たっおいた䞇幎筆の䞊で、埮かに震えた。

    「倧衆のためずか、需芁のためずか、そういう蚀葉で自分を塗り固めおる間、あなた自身はどこにいたんだ。  曇っおない鏡で、最埌に自分の顔を芋たのはい぀だ」

    沈黙が萜ちた。
    だが、その完璧だったはずの瞳の奥に、初めお䜕かが揺れおいた。
    䜐々朚の荒い息は、ただ敎っおいなかった。叫んだ埌の耳鳎りが、じん、ず錓膜の奥に残っおいる。

    ふいに、背埌で鞄を持る乱暎な音がした。

    「ちょっず、埅っお」

    【目次】

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    #創䜜倧賞2026
    #お仕事小説郚門


     
     
    急に小説を曞きたくなったので曞き始めたした。 私は面癜いず思っおいるので読んで䞋さい。

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