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ネクストコア孀独な倜に、寄り添う知性を第4章①

    前の節

    第4章䞀歩螏み出すあなたを応揎したす

    「よお、元気だったか」

    察面するなり蚀われた盞柀は、加藀のにこやかな笑顔にここが拘眮所の面䌚宀だずいうこずを忘れかけた。
    玺のポロシャツにスラックスずいう身なりは、瀟内にいた頃ず䜕ら倉わらない。
    ベルトを倖されおいるこず以倖はい぀も通りのその䜇たいが、圌が今たさに自由を奪われおいるのだずいう珟実感を、いよいよ垌薄にさせおいた。

    「元気じゃないよ、なんおこずしおくれたんだ」

    蚀いたいこずはたくさんある。
    聞きたいこずはもっずある。
    しかし、長い付き合いが玠盎な蚀葉にする邪魔をした。

    非難ずも取られかねない蚀葉にもかかわらず、加藀は短く笑った。

    「悪いな、でも、こうでもしないずお前はわからないだろうからな」

    アクリル板の向こうにある、その穏やかな衚情の奥にあるものに気づいた瞬間、盞柀は奥歯を噛み締めた。
    喉の奥に、苊い塊がせり䞊がっおくるのを感じる。

    「だからずいっお  」
    喉の奥たで出かかった感情を、どうにかしお飲み蟌んだ。

    「いやヌ、俺も正盎逮捕されるずは思わなかったよ」

    加藀はさらりず蚀っお、にこやかに盞柀の顔を芋぀めた。
    あたりにも軜薄な、自虐を装ったそのトヌン。
    だが同時にそれは、これ以䞊の螏み蟌みを冷培に撥ねのける、芋えない境界線でもあった。

    二人の間に、䞍意に長い沈黙が萜ちた。
    壁に掛けられた安っぜいプラスチックの時蚈が、カチ、カチず無機質な音を刻む。
    その音だけが、遮られた狭い郚屋の䞭で、劙に倧きく響いおいた。

    盞柀は自分の膝の䞊で握りしめた拳を芋぀めた。これ以䞊䜕を話しおもいい結果にはならないず本胜が告げおいた。

    「なんで俺に頌らなかった」

    それでも、抑えきれない傲慢な感情が口を突いお出た。

    加藀の眉が、埮かに跳ねる。
    ほんの䞀瞬だけ芋せた、少し驚いたような顔。
    達芳しおいたように芋えた加藀の瞳に生気が宿った瞬間を芋た気がした。

    「頌ったさ、お前が動かなかっただけだ」
    少し早口になった加藀の蚀葉に心臓を盎に掎たれたような苊しさを感じた。

    あの倜。ネクストコアの暗いオフィス。
    確かに加藀は自分を芋おいた。
    䜐々朚ずいう男の名前を出されたあの時が、最埌のチャンスだったのだ。

    䜕も蚀い返せなかった。
    完党に、自分の独善を芋透かされおいた。

    頭䞊の蛍光灯が、わずかにチカチカずたたたく。
    匵り詰めた空気は䞀向に緩たず、たるで空間そのものが凍り぀いたかのように時間が匕き延ばされおいく。
    どちらも次の蚀葉を動かせない。ここで黙っお耐えおしたうのが、自分たちが「倧人になっおしたった」ずいうこずの蚌明のようで、盞柀は無性に惚めだった。

    その硬盎を砎ったのは、加藀の、ふっず息を抜くような声だった。

    「たあ、お前にEMMAを取り戻しおやろうず思ったんだよ」

    あたりにも呆気なく差し出されたその蚀葉に、盞柀は息を呑んだ。
    加藀はただ、悪戯が芋぀かった子䟛のような顔をしお、すべおを蚱すように笑っおいる。

    ――完敗だった。

    ここにきおもなお、自分は加藀に守られ、救われおいる。
    自由を奪われおなお、友人が芋せた底知れない噚の倧きさず、それに匕き換え、自分のあたりのふがいなさが、盞柀の胞を激しく焊がした。

    終了の時間を知らせるベルが無機質に鳎り響く。

    加藀はゆっくりず立ち䞊がり、最埌にあの、い぀も通りの軜いトヌンを重ねた。

    「たあ、気楜にいけよ、盞柀」

    励たしずも呪いずも取れる蚀葉を残しお、加藀は郚屋の奥ぞず消えおいった。

    ――そんなこずができるはずないのは、お前が䞀番よくわかっおいるだろう

    盞柀は無人の空間を芋぀めたたた、しばらく動けなかった。

    譊察官に促されお、フラフラず譊察眲の倖に出る。
    䌚瀟たでは歩いおいけるが、本圓に自分の足で歩いおきたのかすら曖昧だった。

    打ちひしがれた盞柀は、そのたた自分の城ぞ戻る気にはなれず、自然ず加藀のデスクぞ足が向いおいた。

    普段、最䞊階のCEO宀から出るこずのない盞柀が、パヌテヌションの䞊ぶオフィスを歩く姿は物珍しさを超えた奇異さがあった。
    圌が通り過ぎるたび、いく぀かのデスクで芏則的に響いおいたキヌボヌドの打鍵音が、突発的に間匕かれおいく。

    「あの、盞柀さん  」

    䞍意に声をかけおきたのは、加藀の郚䞋だった䞭堅の゚ンゞニアだった。
    ぀られるように、呚囲の若手たちも小さく垭を立぀。
    圌らの顔には、明らかな戞惑いず、それ以䞊の熱が含たれおいた。

    「加藀郚長の件、本圓に残念です」
    「あの加藀さんが、䞍正なんか働くはずがありたせん。䜕かの間違いですよね」

    悪意は埮塵もなかった。
    盞柀を芋぀める圌らの瞳は、濁りのない真っ盎ぐな善意の期埅に満ちおいる。

    その光が、盞柀には眩しすぎた。
    胃の奥がキリキリず収瞮し、己の茪郭が削り取られおいくような匷烈な気たずさが襲う。

    倱った熱気に圓おられ、己の情けなさが党身を貫いた。

    盞柀はかろうじお短く「わかった」ずだけ告げ、その堎から離れおいった。
    歩を進めるごずに、救いようのない孀独が足元から静かにせり䞊がっおくる。

    フロアの最果お、加藀のデスクは䜕も倉わっおいなかった。
    あの日から数センチだけ半開きのたたになっおいた匕き出しは、加藀ぞの埮かな敬意の珟れなのかもしれなかった。

    盞柀は、その隙間に芖線を萜ずした。
    奥には、加藀の字で曞きなぐられた、手曞きの仕様曞の芋出しが芗いおいる。
    黄ばんだ玙の束が、寝䞍足の脳裏にか぀おの仲間たちの顔を呌び起こす。
    泥臭い人間の熱量を、この無機質なオフィスに持ち蟌み続けおいた最埌の砊が、加藀だった。

    机の䞊のマグカップは、干からびお茶色い環状の茪だけが残っおいた。
    その冷え切ったカップの衚面に指先で觊れるず、この䌚瀟には、もう自分しか残っおいないこずを痛感した。

    そのマグカップの脇には、䞀枚のはがきが眮かれおいるのが目に入った。
    加藀宛のハガキ、受け取るこずができなかったのだろう。
    差出人の欄には、芋芚えのある名前が蚘されおいた。

    ――䞭村。

    盞柀はそれを拟い䞊げ、指先で぀たんだたた文字を远った。

    『昔から、お前はそういう奎だったな。
    心配するなずいうのは無理がある。
    気楜にいこうぜ』

    創業時は3人でよく語り合ったものだが、䞭村が䌚瀟を蟞めた埌は連絡するこずもなくなっおいた。
    ――二人はただ繋がっおいたんだな。

    芖線を䞊げるず、デスクのパヌテヌションの端に、小さな写真がピンで留められおいた。
    ただネクストコアずいう名前すらなく、狭い研究宀で党員が泥たみれになっおプログラミングに没頭しおいた頃の䞀枚だ。
    皆、よれた服を着お、酷い隈を䜜りながら、それでも画面を芋お笑っおいた。

    ――『孀独な倜に、寄り添う知性を』。

    䞖界を救うために䜜ったはずのEMMA。その動機ずなった矎しい蚀葉が、ひどく虚しく響いおいるように思えた。

    「このたたでいいのか」

    掠れた呟きは、フロアを垞時満たしおいる空調の䜎い唞りに吞い蟌たれお消えた。

    盞柀ははがきをポケットに収めるず、勢いよく背を向けた。
    䞭村に䌚いに行く。その衝動だけが、圌の重い足を突き動かしおいた。

    【目次】

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    #創䜜倧賞2026
    #お仕事小説郚門


     
     
    急に小説を曞きたくなったので曞き始めたした。 私は面癜いず思っおいるので読んで䞋さい。

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