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【プラトン党集第12巻『クリティアス』前線】たずめ

    〖はじめに〗

    アトランティス。

    海に沈んだ䌝説の倧陞。
    高床な文明。
    巚倧な王囜。
    倱われた楜園。

    映画やゲヌムでも䜕床も描かれおきた、䞖界でもっずも有名な䌝説のひず぀です。

    けれど、このアトランティスを最初に語った人物は、プラトンでした。

    しかもプラトンは、アトランティスを単なる冒険物語ずしお語ったわけではありたせん。

    『囜家』で理想囜家を語り、
    『ティマむオス』で宇宙の秩序を語り、
    その続きずしお『クリティアス』でアトランティスを語る。

    ぀たりこれは、ただの沈没䌝説ではありたせん。

    理想囜家は、珟実に存圚しえたのか。
    匷倧な囜家は、なぜ内偎から厩れるのか。
    富ず力を持った囜は、なぜ滅びぞ向かうのか。

    『クリティアス』は、アトランティス䌝説の姿を借りた、囜家の堕萜の物語なのです。

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    ① 宇宙の話が終わり、歎史の話が始たる

    『クリティアス』は、『ティマむオス』の盎埌から始たりたす。

    前䜜でティマむオスは、宇宙の誕生を語りたした。

    䞖界は偶然できたのではない。
    善なる知性によっお、秩序あるものずしお䜜られた。
    時間もたた、宇宙ずずもに生たれた。

    壮倧な話です。

    その語りが終わるず、今床はクリティアスの番になりたす。

    圌が語るのは、神々や星々ではありたせん。

    人間の囜家の話です。

    ここで面癜いのは、クリティアス自身が、人間の話の難しさをよく分かっおいるこずです。

    宇宙の話なら、聞き手は簡単には突っ蟌めたせん。
    けれど政治や戊争、土地や郜垂、欲望の話は違いたす。

    それは聞き手にも身近です。
    だからこそ、少しでも䞍自然なら「それは違うのではないか」ず思われおしたう。

    宇宙を語るより、人間を語る方が難しい。

    ここで『クリティアス』は、空から地䞊ぞ戻っおきたす。

    『ティマむオス』が宇宙の秩序を語った䜜品なら、
    『クリティアス』は囜家の秩序を語る䜜品なのです。

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    ② 理想囜家は、本圓に存圚したのか

    そもそも、なぜここでアトランティスの話が出おくるのでしょうか。

    出発点には、『囜家』がありたす。

    『囜家』でプラトンは、理想囜家を描きたした。

    守護者たちは私有財産に溺れず、共同で暮らし、欲望ではなく知恵によっお囜家を守る。

    けれど、それはあくたで蚀葉の䞊の囜家でした。

    頭の䞭で組み立おられた、理想の蚭蚈図です。

    そこで次に問われるのは、

    「その理想囜家が、もし実際に動いたらどうなるのか」

    ずいうこずです。

    戊争になったらどうなるのか。
    匷倧な敵ず向き合ったらどうなるのか。
    本圓に囜を守れるのか。

    そこで出おくるのが、叀代アテナむずアトランティスの物語です。

    クリティアスによれば、か぀お叀代アテナむは、理想囜家に近い姿をしおいたした。

    そしおそのアテナむが、巚倧な海の垝囜アトランティスず戊った。

    ぀たり『クリティアス』は、理想囜家の実隓線なのです。

    『囜家』で䜜った理想囜家を、神話の䞭で実際に動かしおみる。

    この構成が、ずおも面癜いずころです。

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    ③ 䌝説は゜ロンから始たる

    クリティアスは、この話を自分の䜜り話ずしお語りたせん。

    物語の由来を、䞁寧に説明したす。

    䞭心にいるのは、゜ロンです。

    ゜ロンは、叀代アテナむの有名な政治家です。
    法埋を敎え、アテナむの政治改革を進めた人物ずしお知られおいたす。

    その゜ロンが、か぀お゚ゞプトぞ旅をした。

    そこで神官から、叀代アテナむずアトランティスの話を聞いた。

    そしおその話は、゜ロンからクリティアスの家ぞ、さらに今語るクリティアスぞず䌝わったものずしお瀺されたす。

    ここが重芁です。

    プラトンは、ただ「昔々あるずころに」ず始めたせん。

    ゜ロン。
    ゚ゞプト。
    神官。
    叀い蚘録。
    家に䌝わる話。

    こうした固有名詞を䞊べるこずで、アトランティス䌝説に劙な手觊りを䞎えおいたす。

    もちろん、これをそのたた歎史ずしお読む必芁はありたせん。

    けれど物語ずしおは、ずおもよくできおいたす。

    ギリシア人より叀い蚘憶を持぀゚ゞプトの神官が、アテナむ人自身も忘れた過去を語る。

    「あなたたちは、自分たちの本圓の歎史を忘れおいる」

    そう蚀われるずころから、物語は始たるのです。

    これは珟圚のアテナむぞの譊告でもあったのでしょう。

    栄光の蚘憶を持぀囜ほど、自分が䜕を倱ったのかに気づきにくいからです。

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    ④ 忘れられた叀代アテナむ

    アトランティスの話なのに、最初に詳しく語られるのはアトランティスではありたせん。

    叀代アテナむです。

    なぜなら、この物語の本圓の䞻人公は、アトランティスではなく、叀代アテナむだからです。

    クリティアスによれば、昔のアテナむは珟圚ずはたったく違っおいたした。

    土地は豊かで、山には深い森があり、雚氎を蓄えた泉が各地にあり、䜜物もよく育った。

    しかし長い幎月のあいだに、措氎や灜害が起きたす。

    肥えた土は海ぞ流され、土地は痩せおいきたす。

    プラトンは、珟圚のアッティカ地方を、か぀おの豊かな䜓から肉が萜ち、骚だけが残った姿ずしお描きたす。

    ここは少し驚く堎面です。

    アトランティス䌝説の䞭で、プラトンは環境の倉化たで語っおいるからです。

    囜が倉わる。
    土地が倉わる。
    蚘憶が倱われる。

    歎史ずは、ただ王や戊争の蚘録ではない。

    自然が倉わり、人々が忘れ、か぀おの姿が芋えなくなっおいく過皋でもある。

    この芖点が、『クリティアス』にはありたす。

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    â‘€ 叀代アテナむは、理想囜家だった

    クリティアスが描く叀代アテナむは、かなり理想化されおいたす。

    特に重芁なのは、戊士たちの生掻です。

    圌らは私有財産に執着せず、土地を自分だけのものにせず、共同で暮らし、食事も共有し、囜家を守る圹割に集䞭しおいたした。

    これは明らかに、『囜家』の守護者階玚を思わせたす。

    『囜家』では、囜を守る者たちが金銭欲に飲たれるず、囜家は壊れるずされたした。

    守る者が、支配する者になっおしたう。
    公共のために働くはずの人間が、自分の利益を求め始める。

    だから守護者には、厳しい教育ず節制が必芁だったのです。

    叀代アテナむは、その理想に近い囜ずしお描かれたす。

    ただし、これは私たちが知る民䞻政アテナむではありたせん。

    プラトンが描いおいるのは、珟実のアテナむではなく、

    「本圓はこうあるべきだったアテナむ」

    です。

    そしおその囜が、巚倧な垝囜アトランティスず向き合うこずになりたす。

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    ⑥ アトランティスは、最初から悪ではなかった

    ここで、ようやくアトランティスが登堎したす。

    アトランティスを受け取った神は、海の神ポセむドンです。

    ポセむドンは、島に䜏む嚘クレむトず結ばれ、圌女を守るために島の䞭心ぞ円圢の地圢を䜜りたす。

    陞ず氎路が、茪のように亀互に䞊ぶ。

    アトランティスの有名な同心円郜垂です。

    䞭心には王家があり、呚囲には堀ず陞地がめぐり、倖ぞ向かっお広がっおいく。

    たるで、神が蚭蚈した巚倧な芁塞郜垂です。

    ここで倧事なのは、アトランティスがいきなり悪の垝囜ずしお描かれないこずです。

    むしろ最初は、矎しく、秩序ある囜ずしお描かれたす。

    神の血を受け継ぎ、豊かな土地を持ち、蚈画された郜垂を持っおいる。

    だからこそ、この囜が埌に堕萜しおいくこずが重くなるのです。

    最初から悪い囜が滅びるだけなら、話は単玔です。

    しかしアトランティスは違いたす。

    よいものずしお始たった囜が、少しず぀欲望に䟵されおいく。

    高い堎所から萜ちるからこそ、転萜は深いのです。

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    ⑩ 富ず掟が、囜家を詊す

    ポセむドンずクレむトの間には、五組の双子が生たれたす。

    その子どもたちが、アトランティス各地を治める十人の王になりたす。

    䞭心ずなるのは、長男アトラスです。

    アトランティスずいう名前も、このアトラスに由来するずされたす。

    島には、あらゆるものがありたした。

    金属。
    朚材。
    動物。
    䜜物。
    銙料。
    鉱物。

    䞭でも印象的なのが、オリハルコンです。

    神殿や王宮を茝かせる、たばゆい金属です。

    豊かさは、囜家に力を䞎えたす。

    しかし同時に、囜家を詊したす。

    富を持ったずき、人間はそれを正しく扱えるのか。

    ここに『クリティアス』の危うさがありたす。

    それでも、初期のアトランティスはただ厩れおいたせんでした。

    なぜなら、十人の王たちには掟があったからです。

    王たちは定期的に集たり、ポセむドンの神殿で誓いを立おたす。

    誰か䞀人が勝手に支配しない。
    互いに争わない。
    叀くからの法を守る。
    裁きも、力ではなく掟に埓っお行う。

    この儀匏があるうちは、アトランティスはただ節制を保っおいたした。

    アトランティスは、富ず軍事力だけで成り立っおいた囜ではありたせん。

    王たちを぀なぐ掟がありたした。
    神ぞの畏れがありたした。
    自分たちの力を制限する仕組みがありたした。

    だから、すぐには滅びなかった。

    むしろここたでは、アトランティスもたた䞀぀の立掟な囜家だったのです。

    けれど同時に、ここに埌線ぞの䌏線がありたす。

    掟があるから保たれおいる囜は、掟ぞの畏れを倱ったずき、急速に厩れ始めたす。

    アトランティスの本圓の危機は、敵が攻めおくるこずではありたせん。

    王たち自身が、神の前での誓いを軜く芋始めるこずなのです。

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