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【毎週ショートショートnote】蘇生試験

    はらとけい

    医学部の卒業試験に「蘇生」が加わった。
    薬で仮死状態にした被験者を、制限時間内に蘇生できれば合格。
    できなければ、留年。

    わたしの相手は、同い年くらいの少女だった。
    教科書通りに胸骨圧迫を続けても、反応がない。
    焦りで手が震えたとき、不意に彼女の唇が動いた。
    「心臓マッサージは、もう少し下。もっと強く」
    幻聴かと思った。でも、その通りにすると、彼女のまぶたが動いた。
    「薬が効きにくい体質でね、途中で起きちゃったの」
    試験後、彼女は照れたように笑った。

    あれから数年。
    今、わたしは救急の現場で、一人の女性に向かい合っている。
    泥にまみれた顔はよく見えない。けれど、ちらと見えた頬の線に、心臓が跳ねた。
    似ている。まさか、と思う。でも、似ている。

    呼びかけても応えない。
    今度は唇も、動かない。

    でも、わたしは覚えている。
    あの日あの声に導かれて知った、命を引き戻す方法を。
    今度こそ自分の手で救うんだ。
    胸骨の下にためらわず両手を重ねる。
    強く正確に、鼓動を呼び戻すように。

    そしてーーー

    かすかな咳が、まわりの空気を震わせた。

    (444文字)

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