メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bytabitogohanto

構造デザインの講義【トピック6:用途と構造のデザイン】第5講:ターミナルの構造とデザイン

    人々が集い、国・街の玄関口として、旅情を高める空間を演出

    東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



    構造美で演出する大空間ターミナル

    空港や駅、港などのターミナルは、多くの人が訪れ、出発する、その地の玄関です。
    出発前や到着後の時間を過ごす大切な空間であり、旅情を演出する空間的工夫も見られます。
    大空間・大スパン建築を支える多様な構造と表現があります。

    ↑ローマ・テルミニ駅(カバー写真)、ロンドン・スタンステッド空港、などの構造デザインを解説しています


    力学の美を構造デザインに取り組む

    構造物に作用する力により、骨組や部材に応力が生じます。
    例えば、直方体の空間の柱・梁の骨組には、曲げやせん断、軸力が作用します。
    特に、建築材料は曲げによる断面応力に対して損傷することがあります。
    コンクリートや木材は圧縮、鉄骨は引張の力に対して、断面効率の良い抵抗を得ることができます。
    つまり、柱や梁による直方体の骨組と空間は、力学的な合理性からズレています。
    建築空間を考え、用意する上で、避けられないことです。

    古代のアーチやドームも、一見すると構造的合理性があるように見えますが、いずれも鉛直荷重に対して曲げとせん断が生じ、組積やモルタルの目地に損傷が生じることがあります。
    これまでに見てきた双曲線関数による形状、すなわち、カテナリー曲線に配置すると、曲げやせん断が生じない構造となります。

    鉛直荷重を受けるアーチには、曲げが作用します。
    脚部の固定度によりますが、頂点などに大きな曲げが作用します。
    力の分布に対し、部材を配置することで、安定した大空間とする事例が世界中で見られます。

    画像
    シドニー・オリンピック会場鉄道駅
    2ヒンジ・アーチのモーメント図に合わせた構造フォルムは、力学美を感じさせる
    (写真:MSN news)
    画像
    画像
    ベルリン・中央駅
    2ヒンジ・アーチのモーメント図に対し、ラチスを配置。
    曲げ応力の大きな部位に、せいの大きなラチスを設けて曲げ剛性を高めている
    (写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
    画像
    札幌ドームの展望室
    鉄骨アーチは、内側にストラッドとテンション材が配置されている
    アーチに生じる曲げによる引張力に抵抗する

    建築材料の選択と空間の演出

    鉄鋼材料が歴史上登場して以降、これまでとは異なった表現による大空間建築が世界中で出現しました。
    多様な構造形式が提案され、内部空間を演出しています。

    一方、鉄鋼材料だけでなく、その他の建築材料、すなわち、RCや木造による大空間建築の事例も見ることができます。
    特に、今日では、木造建築の流行・潮流により、木による大空間建築が登場しています。

    古代、教会建築や大聖堂における尊厳な祈りの空間を演出した石材やコンクリートから、現代では、透明でアクロバットな鉄骨+ガラスによる大空間、そして、温もりの空間を演出する木造+鉄骨におる大空間建築がたくさん登場しています。

    画像
    東京駅の印象的なレンガによる組積造は、鉄骨骨組により適切にサポートされている
    画像
    高輪ゲートウェイ駅の、折り紙をイメージした折板の立体空間は、膜材の明るい内部空間を阻害しないように木造仕上げの意匠を表現しつつ、鉄骨により構造体が構成されている
    画像
    鉄骨のスペースフレームによる表現により、京都駅のコンコースには光がさす明るい内部空間を、力強さとともに演出している

    構造形式と空間の演出

    ゲストを迎え入れるその地を代表するターミナル駅や空港は、その国・地域を象徴する空間と構造が用いられていることがあります。
    あたかも、構造デザインの博覧会さながら、建築技術、構造技術を持って、おもてなししています。

    大阪を代表する大阪駅と関西国際空港は、立体的に組まれたトラスを、特徴的な曲線のアーチで骨組を構成しています。

    画像
    大ターミナル・大阪駅の特徴的な空間を支える曲線の大スパン構造
    (写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
    画像
    立体的に構成されたトラスを、曲線のアーチで大屋根を支える
    画像
    世界へ・世界から、の人々の旅情を演出する関西国際空港の大屋根
    画像
    テンセグリック構造による庇が特徴のスタンステッド空港
    (写真:saffron walden reporter, https://www.saffronwaldenreporter.co.uk)
    画像
    テンセグリックトラスにより透明で軽快な立体大空間を表現した金沢駅・おもてなしドーム
    画像
    前衛的で独創的な、カラトラバによるリヨン駅
    2本のキールアーチによる大空間建築は、世界中に事例があるが、その他の部材を用いた構造表現により唯一無二のターミナルである
    (写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)
    画像
    リヨン駅の内観
    カラトラバの世界観を見ることができる
    (写真:Pixabay, https://pixabay.com/ja/)

    <<前の記事 | 次の記事 >>


    研究室のSNS

    鉄骨構造の教材(電子書籍)

    東京理科大学・鉄骨構造の授業で使用している電子書籍です。
    どなたでもご利用いただけます。 →説明のページ
    (リンク先のページ中段のpdfアイコンをクリックしてください)

     
     
     
    東京理科大学工学部建築学科・伊藤研究室です。建築構造デザインなどの講義テキストを公開します。 主宰者は、建築構造学者、大学教授、株式会社preArch・取締役、株式会社コイシ・顧問、BCJと日本ERIの評価員です。 鉄骨、木、合成、耐震、制振の研究・設計・施工、IoTが専門です。

    あなたへのおすすめ