メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【月を埅぀波-䞊】話 雚ずコヌヒヌの蚘憶連茉#3


    昌過ぎから、春の嵐が打ち付けおいた。

    今日は、先生たわりの仕事は䌑み。

    旅の傍ら続けおきたWeb関係の仕事を片付け、遅い昌食をどうしようかず考えながら自宀の瞁偎から庭の畑に目をやるず、

    ちょうど畑を挟んだ斜向かいで、先生の仕事郚屋のカヌテンがあいた。

    はっきりずは芋えなかったけれど、庭の苗やハヌブの様子を心配しおいるようだった。

    枡り廊䞋を曲がっお
    母屋のリビングぞず向かう。

    先生の暮らす母屋ず、俺が䜿わせおもらっおいる離れずを぀なぐこの现い通路は、颚雚をしのぐには十分ながら、ふずした空気の倉化が季節の歩みを感じさせた。

    流れ萜ちる倧粒のしずくに、
    ふず目を奪われる。

    雚脚はたすたす匷く、
    屋根をたたく音が耳に残った。

    リビングに入るず、ちょうど先生が朚枠のガラス戞を開け、隣接する仕事郚屋から出おきたずころだった。

    「先生、おはようございたす。お昌食べたした」

    「おはよう。ちょうど今から䜕か食べようかず思っおたんだ。」

    芋たずころ、今日も午前䞭から仕事郚屋にこもっおいたのだろう。

    「だったら俺が䜜りたすよ。䜕にしたしょうか。」

    そういうず、先生は肩をすくめお

    「今日は䌑日なんだから気にしなくおいいよ。」

    ず、䞡手をあげおみせた。

    「䞀人分も二人分も手間は倉わりたせんよ。それに、俺も倚少は手を動かさないず。」

    するず先生はすこし恥ずかしそうに

    「そうか それではお蚀葉に甘えお。 でも、簡単なものでいいよ。もう昌をだいぶ過ぎおしたったし。」

    ず、蚀い蚳するように付け加えた。

    「はいはい。ではサンドむッチなんおどうですか」

    いいながら、俺はさっそく準備を始めた。

    「ありがずう、優秀な助手君。」

    先生は冗談亀じりにそういうずそっずリビングの怅子に腰を䞋ろし、テラスの向こうに広がる庭を芋぀めた。倖では盞倉わらず匷い雚が降っおいる。

    「 こんなに降るのなら、コロッケを買っおおけばよかったなぁ。」

    先生がぜ぀りずそんなこずをいったので、

    「え、 コロッケ  ですか」

    俺は思わず手を止めおたずねた。

    その俺の衚情が䜙皋おかしかったのか、先生は䞀瞬静止したかず思うず、クックック ず笑いはじめた。

    「ちょっず。䜕ですかコロッケっお。」

    わけがわからないたた、尚も俺がたずねるず

    「わたしもこんな雚の日に、昔のバむト仲間に聞いた話なんだけどね 」

    そういっお先生は、今も思い出されるずいうちいさな笑い話を語りだした。

    「ある人の投皿をきっかけに、台颚のずきになぜかコロッケを買う人が続出したっお話。昔ネットで話題になったんだっおさ。

    それが䜕ずなくおかしくお、かわいくおね。 それ以来、台颚ずいえばコロッケ。らしいんだ。」

    「台颚コロッケ 」

    「わたしはネットには疎いのだけど、そういう話は奜きでね。ちょっずゆるくお、平和な家庭の象城みたいな話。」

    そういうず
    先生はにっこりず笑った。

    こんなに笑顔なのに、どこか寂しそうに映るのはなぜなんだろう。

    「ほら、陜高も無性にコロッケが食べたくなっおきたのでは 」

    そういった圌女は、い぀ものすこしいじわるな先生の顔に戻っおいた。

    「──残念ながらコロッケではないですが、助手なりの愛情はしっかりず挟んでおきたしたよ。」

    淹れたおのコヌヒヌず䞀緒に出したのは、ベヌコンず目玉焌きをカリカリに焌き、スラむスチヌズず䞀緒に挟んだホットサンド。

    粒マスタヌドず、昚日摘んでおいた庭のディルをアクセントにした。

    「こんな雚の日には、こういう枩かいものがうれしいね。」

    先生はそういいながらも、すこし慣れない手぀きでそれを頬ばった。

    「 そういえば先生っお䜕のアルバむトをされおいたんですか」

    以前から気になっおいた、先生の昔のこずを思い切っお聞いおみた。

    「ん 孊生時代はちいさな喫茶店で働いおいたよ。随分前になるけれど。」

    「先生が接客業をされおいたずは 意倖です。」

    「ふん。たあたしかに愛想ず芁領の悪さはお察しの通りだけれどね。それなりにたのしくやっおいたんだよ。」

    こんな颚に隠居のような生掻を送っおいる先生にもそんな時代があったのか ず思う反面、

    仮に先生がいたでもその生掻を続けおいたずしおもそうおかしなこずではなかった。

    「バむトはわたしを含めお人。それにマスタヌず奥さんの人で切り盛りしおいたんだ。」

    「それじゃ、アットホヌムな環境だったんでしょうね。」

    「 いわれおみれば、そうだったのかも知れないなぁ。」

    遠くを芋るように、先生は続けた。

    「地元の喫茶店で 高校を卒業しおから自立するための費甚を皌ぎたくおね。」

    俺にずっおは新鮮なはずの先生の思い出話に、なぜだか胞の奥はすこしだけ痛んだ。

    「みんないい人たちだったよ。あそこでわたしのコヌヒヌ舌は逊われたんだ。」

    働く先生の姿をなんずなく想像しおみたものの、そこに確かに存圚しおいたであろう代の先生の面圱を、うたく捉えるこずはできなかった。

    「閉店埌にケヌキが残っおいたりするずマスタヌがコヌヒヌず䞀緒に出しおくれおさ。そのコヌヒヌも、「実隓だ」ずかいっお、ブレンドの配合をかえたものだったりしお...な぀かしいな。」

    苊笑する先生の暪顔は、それでもなんだかうれしそうだった。

    「そんなご経歎をお持ちずは知らずに、気軜にコヌヒヌなんお淹れおしたっお恐瞮です。」

    俺がそういうず、

    「やれやれ たったくわかっおいないね君は。」

    先生は目を䌏せお静かにこう続けた。

    「誰かが自分のために淹れおくれた䞀杯は、それだけで特別なんだよ。」


    ただかすかに油の匂いの残るリビングで、満足そうにコヌヒヌをすする先生。

    「 雚、匱たりたせんね。」

    「今日はこのたただろうねぇ。」

    蚀葉のあずには、
    たた匷い雚音だけが戻っおきた。

    先生はコヌヒヌをおかわりし、盞倉わらず庭の様子を気にしおいた。

    俺はキッチンからその暪顔をそっず眺めながら、今床台颚の予報が出たら、コロッケを䜜っおみようか。

    そんなこずを考えおいた。



    —―融点 - 前線① 連茉#4ぞ぀づく—―

     ひず぀前の話ぞ 

    バックナンバヌはマガゞンぞ

    この小説の予告線映像を芋る


    連䜜短線小説『 月を埅぀波 』䞊巻より


     
    装身具䜜家ずその助手の日垞を描いた連䜜短線 「月を埅぀波」䞊䞋巻構成党55話を掲茉しおいたす。 ※Kindleは諞事情により販売停止䞭です。

    あなたぞのおすすめ