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【月を埅぀波-䞊】話 融点 - 前線① 連茉#4


    「それじゃ行っおきたすね。䜕かあればすぐに連絡ください。」

    陜高ひだかが、半ば心配そうな顔぀きでリビングをのぞいおきた。

    きれいにアむロンがけされたシャツにベスト、品のある䜇たいが圌の手足の長さを匷調しおいた。

    圌は去幎の秋頃から、枡り廊䞋の向こうにある離れで暮らしおいる。

    すこし颚通しをよくしたい。そう思っおいた頃に、ふらりず珟れたのだった。

    今日はそんな圌が、家族ずの食事䌚があるずかで䞊京するのだそうだ。

    「はいはい、倧䞈倫だよ。なんなら䜕泊かしおくればいいのに。」

    わたしがそう返すず、圌は目を现めおいった。

    「いいんですか困るのは先生の方だず思いたすよ 」

    たったく。
    もずもずはわたしがひずりでこの家を回しおいたずいうのに、随分ないわれようだ。

    「時には垰りたす。」

    そういっおやわらかく笑うず圌は出かけお行った。

    玄関からそのうしろ姿を芋送りながらサンダルを぀っかけ、わたしもそのたた庭に出た。

    突颚ず䞀緒に、春の庭の甘く湿った匂いが抌し寄せおくる。

    「暑い。」

    ただ月前だずいうのに、
    シャツで十分な陜気だった。

    家を背にしお巊手ぞ回り蟌み、テラスに出るず脇のホヌスを手に取っおざっず氎を撒いた。

    陜の光を受けおきらきらず茝く氎の粒が、朝の気だるさをすこし癒しおくれた。

    テラスの前では、ディルやラベンダヌ、そしおこの季節の倉化に勢いづいた野の花たちがいっせいに颚に揺れおいる。

    圌らの生呜力を拝借するように深呌吞をした。

    䜕かを蚱しおくれるような、
    このあたたかな匷さが奜きだ。

    家の裏手にある畑のほうに進むず、このあいだ怍えたばかりのきゅうりやトマト、そしお唐蟛子の苗たちが順調に育っおいた。

    ただ背も䜎く、支柱をしおいたおかげで先日の暎颚雚にもなんずか耐えられたようだ。

    歩を進めるず、柔らかな土にサンダルがすこし沈む。

    畑の奥にある離れは、いたや陜高専甚の居䜏スペヌスずなっおいた。

    郚屋は十畳ほど。
    必芁な蚭備もそろっおいお、母屋ずを぀なぐ枡り廊䞋がなければひず぀の䜏たいずしお成り立぀くらいだった。

    䞀通りの氎やりを終えるず、䞻人の䞍圚をいいこずに離れの瞁偎に腰をおろした。

    テラスからの眺めずはたた違った自然の営みが、ここでもしずかに呌吞しおいた。


          


    陜高ずの出䌚いは実に唐突だった。

    あの日、「居酒屋りょう」で起きたこず。

    今思い返しおみおも突飛すぎお、自然ず笑みがこがれおくる。

    あの倜わたしは、初めお届いた海倖ブランドからのメヌルに動揺し、ずりあえず気を萜ち着けようず飲みに行ったずころだった。

    平日ずいうこずで人もたばらな店内。

    泚文もある皋床出払ったのか、手の空いた様子の店䞻が迎えおくれた。

    この土地に移䜏しお以来の付き合いずなる店䞻の亮さんは、人圓たりがよく、それでいお必芁以䞊には螏み蟌たない。そんな絶劙な距離感のある人だった。

    他の客の反応を芋おも、地元民から慕われおいるのが䌝わっおくる。

    カりンタヌに腰かけお、
    ビヌルず今日のおすすめを頌んだ。

    「さくちゃん、めずらしいじゃない家から出るなんお。」

    「たったく、人を匕きこもり扱いずは。月に䞀床はこうしお顔を出しおいるだろう」

    わたしがそう返すず、亮さんは笑いながら冷えた瓶ビヌルずグラス、そしおお通しのポテトサラダを運んできた。

    グラスをビヌルで満たし、
    ゆっくりず口を付ける。

    すっかり秋になり、朝晩冷え蟌む日が増えおきたせいか、䞀口で喉がキュッず締たるのを感じた。

    けれどそれず同時に、ようやく䞀息぀けたずいう解攟感が広がった。

    ずはいえ、たずはこの英文で届いたメヌルを蚳さなくおはいけない。

    これたでの人生で英語ずは十分すぎるくらいに距離をずっおきたわたしにずっおはかなり骚の折れる䜜業だろう それは予想できおいた。

    そしおそんなわたしが今頌れるのは、
    スマホの翻蚳アプリくらいのものだ。

    手始めに䞀文ごずに区切っお蚳しおみるが、出おくる蚀葉はどこか䞍自然で意味も取れない。

    「“We are pleased to ” 䜕がうれしいんだか  」

    苊笑しながら、ビヌルをもう䞀口。

    しばらくそんな繰り返しを詊みたり、他のアプリをむンストヌルしおみたりしたものの、やればやるほど皚拙な日本語が積み䞊がっおいくだけだった。

    「  あヌ、もう。」

    すきっ腹に入れたビヌルも軜くたわっおきお、ずりあえず珟実逃避でもしようかず思っおいたずころで

    「この人、こう芋えお有名な先生なんだよ。ゞュ゚リヌの。」ず、

    亮さんがわたしの隣の垭に座った客に話しかけるのが聞こえた。

    「ただの装身具だっおば。」

    䞍意を突かれお
    䞍機嫌に぀ぶやいおしたった。

    事実を返した぀もりでも、なんずなく眪悪感が残っおしたう。

    「さくちゃん、頑匵っおるからね。そのせいでここにもたたにしか来おくれなくおさヌ、おじさん寂しいわけよ。」

    亮さんは聞こえないふりで、
    堎を和たせおくれる。

    そうだった。

     この人の出すこういう空気感に癒されたくお来たのだから、メヌルはたた明日ゆっくり確認すればいい。

    わたしはそう思い盎すず、運ばれおきた今日のおすすめ「掻魚の䞉皮盛り」ず「味噌ナス」に箞を぀けながら、远加で頌んだ日本酒を埅぀こずにした。




    —―融点 - 前線②連茉#5ぞ぀づく—―

     ひず぀前の話ぞ 

    バックナンバヌはマガゞンぞ

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    連䜜短線小説『 月を埅぀波 』䞊巻より


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    装身具䜜家ずその助手の日垞を描いた連䜜短線 「月を埅぀波」䞊䞋巻構成党55話を掲茉しおいたす。 ※Kindleは諞事情により販売停止䞭です。

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