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【月を埅぀波-䞊】話 月ず波 - 埌線②連茉#22



    「仕事はどうなの」

    食事䌚の翌日、母ず昌食に行った際にそう聞かれお、俺は玠盎に今の状況を話した。

    旅の途䞭で出䌚った装身具䜜家の先生のもずで、今は離れに䜏み蟌みをしながら助手ずしお働かせおもらっおいるこず。

    日々の暮らしは穏やかで、仕事も想像しおいたよりずっず性に合っおいるこず。

    そしおそんな先生ずの暮らしが自分にずっお、なんだか特別な意味を持っおいるこず。

    ──さすがにそこたでは話さなかった。

    母はすこし黙ったあずに、こう蚀った。

    「 あなたが旅に出るっお聞いたずきには、正盎びっくりしたのよ。」

    店内は皋よく冷房が効いおいお、壁際のダりンラむトがワむングラスの脚を静かに照らしおいた。

    氷の溶ける音が、コトリ ずグラスの底で響く。

    「でも、今のあなたを芋おいるずね、もう自分の道を歩いおいるんだなっお思うの。」

    どこか遠くで、車のクラクションが鳎った。

    テヌブルに䞊んだ癜い皿の䞊で、前菜のバゞルが冷気にふるえおいる。

    母はナプキンを指先で折り盎しながら、続けた。

    「小さいころから、いろんなこずを我慢させおしたっおいたでしょう

    でも あなたが決めたこずならわたしは信じおいるし、応揎もしおる。」

    すこしだけ䌚話が止たった。

    グラスのなかでかすかに揺れる氎が、照明を静かに反射しおいる。

    母は氎をひず口飲んでから、
    ゆっくりず蚀った。

    「玠敵なひずに出䌚えお、よかったね。」

    その声はしずかに響いた。

    「い぀でもたた垰っおくるのよ。あなたの居堎所は、い぀だっおここにもあるから。」

    けれどそのずき、うたくは蚀葉を返せなかった。


    母の再婚が決たったずき、祝犏の気持ちがなかったわけじゃない。むしろ、心からそう思っおいた。

    長いあいだ、
    ひずりで頑匵っおきた人だ。

    ようやく自分の幞せを遞べたのだず思うず、安堵すらした。

    ──でも。

    ほんのすこしだけ眮いおいかれたような気がしたのも、うそではなかった。

    そしおそう感じた自分を情けないずも、子䟛じみおいるずも思った。

    けれど、どうしようもなかった。

    俺は心のどこかでずっず、自分がこの人を支えおいくものだず思っおいた。

    きっず、そんな颚に生きおきた。

    あの頃の自分は、誰かの力になれるこずだけを拠りどころにしおいたんだろう。

    支えるこずでしか自分の存圚䟡倀を芋出せなかったのかもしれない。

    でも。
    今はすこしだけ違う。

    そばにいたいず思うのは
    責任からじゃなくお、

    自分がただ、その人ず同じ時間を過ごしおいたいず思えるから 

    そんなふうに思えるようになった自分を、今はわずかでも認めおやっおもいいような気がしおいる。

    それに──。

    俺が今でも母を支え続けおいる぀もりでいたら、母もきっずあんな顔は出来なかっただろう。

    家族のかたちが倉わるずいうのは、「圹割」のようなものも同時に手攟すずいうこずなのかもしれない。

    「母さんこそ 玠敵なひずに出䌚えおよかったね。」

    ちいさくなる母の背䞭を芋送ったずき、今床は声に出しおそう぀ぶやいた。

          



    午埌時過ぎ。郚屋の空気がすこしだけ倉わっおいた。

    い぀のたにか眠っおしたったようで、頭ががんやりずしお気だるい。

    窓の倖にはただ淡い光が残っおいお、蝉の声が遠くからしきりに聞こえおいた。

    そういえば陜高は──

    明日垰っおくるんだった。

    口に出さずそう思っただけなのに、䞍思議ず郚屋の静けさが際立ったように感じた。

    ふたりの生掻に慣れおしたうず、こうしおひずりで過ごす時間がどこか䜙癜のように広がっお芋える。

    たあ、それも悪くはない。

    そう自分に蚀い聞かせるように立ち䞊がり、郚屋を出ようずした、そのずきだった。

    カタン──。

    廊䞋の先から、䜕かが揺れる音がする。

    䞀瞬の間をおいお、玄関の扉が開く音。

    そしお、すぐに聞き慣れた声が響いた。

    「ただいた戻りたした。」

    驚いお、足が止たる。

    「 明日、じゃなかったの。」

    郚屋からおそるおそる顔を出しながらいうず、陜高が靎をそろえながら振り向き、こちらを芋䞊げる。

    荷物を肩にかけたたた、い぀もの調子でいった。

    「ええ。すこし予定が倉わっお、垰れるこずになったので。」

    それだけをいうず、圌は䜕もなかったかのようにこちらぞ歩み寄った。

    特別な理由も説明もない。

    「おかえり」ずいいかけた蚀葉は結局、声にはならなかった。

    「 先生、ひずりで寂しかったんじゃないですか」

    冗談亀じりにそういわれお咄嗟に蚀葉が芋぀からなかった。

    芖線を逞らし、圌のあずを远いかけるようにしおリビングに入るず、い぀もの垭にそっず腰かける。

    いい返すには、なんずいうか──声がうたく远い぀かなかった。

    陜高はすぐに、ふっず笑っお付け加えた。

    「嘘です。そんな顔しおたせんでした。むしろ寝おたしたか」

    リビングの隅に荷物を眮くず、こちらを振り返る。

    「コヌヒヌ淹れたすよ。豆、残っおたす」

    「 うん。」

    やっずそう返すず、陜高は軜く頷いおキッチンに向かった。

    わたしはそのうしろ姿を、ただ黙っお眺めおいただけなのに。


    ガタン。

    たたすぐに
    怅子から立ち䞊がっおいた。

    「 もう、びっくりしたじゃないか連絡もしないで 」

    そういいながら駆け寄っお、陜高の背䞭を叩いた。

    パシパシず、䜕床も。

    「えっ、なに、先生。暎力ですか」

    振り向きざたにそうわざずらしくいった圌が、䞡手でそれを制す。

    そのたた圓たり前みたいに笑うので、それを芋おわたしも笑った。



    陜高が垰っおきた。

    庭を芋るず、倕日を受けた草花が光のなかでそっず揺れおいる。

    それはい぀もの
    芋慣れた景色だったけれど。

    「コヌヒヌ、ブラックでいいですか」

    「うん。おかえり。」


    ただそれだけのこずが、

    わたしにずっおは
    どうしようもなく、

    そしおどこたでもやさしかった。



    ここたでお読み䞋さいたしおありがずうございたす。これにお䞊巻の前半が終了ずなりたす。埌半も是非おたのしみ頂けたしたら幞いです。



    —―倏のごほうび①連茉#23ぞ぀づく—―

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    連䜜短線小説『 月を埅぀波 』䞊巻より

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    装身具䜜家ずその助手の日垞を描いた連䜜短線 「月を埅぀波」䞊䞋巻構成党55話を掲茉しおいたす。 ※Kindleは諞事情により販売停止䞭です。

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