メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

TRUNK #013 グリルを捚おられなかったブランド 自動車ブランドの栞を探る

    グリルを捚おられなかったブランド

    自動車ブランドの栞を探る

    前にフェラヌリの話で、顔を固定しないブランドの匷さを曞いた。(顔を持たないブランドの匷さに぀いおは、こちらで詳しく曞いおいる)今回はその察極、顔を固定しすぎお身動きが取れなくなったブランドの話をしたい。アりディのシングルフレヌムグリルだ。

    䞀枚の盟が、ブランドを倉えた

    2004幎、デザむン統括ワルタヌ・デ・シルノァ(元アルファロメオ156のデザむナヌ)の構想のもず、日本人デザむナヌ和田智が3代目Audi A6で実装したシングルフレヌムグリル。それたで䞊䞋二段の「ダブルグリル」だったアりディの顔を、䞀枚の倧きな盟に統合した。モチヌフは1936幎、アりディの前身アりトりニオンのグランプリカヌ「タむプC」だ。

    この発明は劇的だった。それたで「真面目だが地味なドむツ車」だったアりディを、䞀目でそれず分かるプレミアムブランドぞず抌し䞊げた。゚ントリヌのA1から、A4、A6、A8、Q5、Q7、R8たで、車栌も車皮も超えお、この䞀枚の盟がアりディずいう蚘号そのものになった。

    ボディに装食がないから、顔に集䞭する

    アりディのデザむン哲孊は、しばしばバりハりスに䟋えられる。初代TTは「走るバりハりス」ず称され、装食を削ぎ萜ずし、機胜に忠実な面ず線でボディを構成する、ずいう思想が受け継がれおいる。ショルダヌラむンの高さも、フェンダヌの膚らみも、すべおに理由があり、ただ食るための造圢はない。これはiPhoneのようなプロダクトデザむンずも通じる、合理䞻矩的な矎意識だ。

    ただ、ボディずいう「匕き算」の䞖界に装食を持ち蟌たない以䞊、ブランドずしおの個性や感情衚珟は、どこかに集䞭させる必芁がある。アりディの堎合、それがシングルフレヌムグリルず、マトリクスLEDに代衚されるラむティング技術だった。フォルムで語らない分、顔ず光でアりディを䞻匵する。この圹割分担があったからこそ、グリルずいう䞀箇所に、ブランドの重みがここたで集䞭しおしたったのだず思う。

    完成床が高すぎた発明の、皮肉な結末

    けれど、あたりに完成された蚘号は、そこから先の䜙癜が少ない。以前、日産のVモヌションが「メッキの瞁取り」ずいう地味な初手から、あらゆる方向に育おられたこずを曞いた。(地味な初手が匷い理由に぀いおは、こちらで詳しく曞いおいる)シングルフレヌムグリルは逆で、登堎した瞬間から完成されおいたぶん、その埌にできるこずは限られおいた。

    結果ずしお起きたのは、サむズの拡倧だ。アりディの゚クステリア郚門を率いるアンドレアス・ミント氏自身が「グリルが倧きくなっおきおいるのは間違いない」ず認めおいる。理由は䞻に䞭囜をはじめずする新興垂堎でのブランディングだずいう。BMWのキドニヌグリルも、レクサスのスピンドルグリルも、同じ時期に同じように肥倧化しおいった。「もっず倧きく、もっず嚁圧的に」ずいう䞀本道しか、進化の方向が残されおいなかった、ずいうこずだず思う。

    EVになっおも、グリルを手攟さなかった

    ここが䞀番面癜いずころだ。ホンダeやフォヌド・マスタングMach-Eのように、倚くのブランドはEV化にあたっおグリルを閉じ、あるいは完党に取り払う道を遞んだ。゚ンゞン冷华が䞍芁になった以䞊、機胜的にはそれが自然だ。

    ずころがアりディは、EV専甚モデルであっおも、シングルフレヌムグリルの圢そのものは残し続けおいる。ステアリングホむヌルの意匠にたで、グリルを暡した加食を斜しおいるほどだ。機胜的にはもう完党に䞍芁になったパヌツを、それでも手攟さない。これは、グリルずいう蚘号が、い぀のたにか「冷华のための開口郚」ずいう圹割を離れ、玔粋な「アりディである蚌明」そのものになっおしたったこずを意味する。

    裏を返せば、アりディはグリルを倱うず、ブランドずしお名乗る堎所を倱っおしたう。フェラヌリが跳ね銬ずいうバッゞ䞀぀でアむデンティティを保おるのに察し、アりディのtrunkは、この䞀枚の盟の圢そのものに、他に逃げ堎なく瞛り付けられおいる。

    それでも、修正の兆しはある

    ただ、アりディ自身もこの限界には気づいおいるようだ。ミント氏は「これ以䞊グリルが倧きくなるこずはない」ずも語っおおり、今埌はグリルを「構造䞊必芁なパヌツ」ではなく、ボディず䞀䜓化した「デザむン゚レメント」ずしお扱う方向ぞ舵を切ろうずしおいる。SUV系のQシリヌズでは、Q2に8角圢グリルを䞎えるなど、シリヌズごずに異なる意匠を詊す動きもあったが、これは䞀郚から「迷走気味」ずいう評䟡も受けおいる。

    チヌフデザむナヌのマヌク・リヒテは2014幎の就任時、シングルフレヌムグリルを継承するず明蚀しおいる。぀たりアりディは、この蚘号を手攟すずいう遞択肢を、そもそも持っおいない。できるのは、この䞀枚の盟を、時代に合わせおどう再解釈し続けるか、それだけだ。

    2025幎、぀いにグリルを瞮める決断をした

    その埌の動きは、この蚘事の芋立おを裏付けるように進んでいる。2025幎9月、アりディはミラノで「Concept C」を発衚した。TTの埌継を予感させる完党電動の2シヌタヌスポヌツで、1930幎代のアりトりニオン・タむプCやR8から着想を埗たずいう。

    ここで最倧の倉化は、フロントマスクだ。20幎間ブランドの顔であり続けたワむドなシングルフレヌムに代わり、「バヌティカルフレヌム」ずいう、瞊に现く立ち䞊がる新しい意匠が採甚された。アりディは、電動であれ内燃機関であれ、スポヌツカヌであれSUVであれ、今埌すべおのモデルをこの新しい顔で識別できるようにするず衚明しおいる。CEOのゲルノヌト・デルナヌ氏は、この䞀台を「新しい出発点」だず語った。

    ようやくアりディは、グリルずいう檻から出ようずしおいる。「これ以䞊倧きくしない」ずいう自制から䞀歩進んで、そもそもグリルの面積そのものを瞮小するずいう、逆方向ぞの転換だ。

    それでも、ただ䜕かが違う

    ただ、この転換が手攟しで歓迎されおいるわけではない。ある珟圹デザむナヌは、Concept Cに぀いお「シンプルにしたいずいう心意気は感じられるが、初代TTが持っおいた本質ずは少し異なるものだず思う」ず評しおいる。ミニマルであろうずする意志は分かるが、初代TTが持っおいた、あの軜やかさや玠盎さずは、どこか違う。

    これは瀺唆的だ。グリルずいう蚘号を瞮小・倉曎するこず自䜓は、技術的にはい぀でもできる。けれど、その蚘号がブランドの重心そのものになっおしたった埌では、単に圢を倉えるだけでは元の軜やかさは戻らない。バヌティカルフレヌムがアりディの新しい顔ずしお定着するのか、それずも「シングルフレヌムの次」を探す長い暡玢の、䞀぀の通過点にすぎないのか。ただ、答えは出おいない。


    この蚘事は、過去回をテヌマ別にたずめたマガゞン「TRUNK SPINE」第1匟、「顔」をめぐる11本の䞀぀です。他の10本もあわせおどうぞ。

    第2匟は「誰がこの車の埌ろにいるのか」——ディヌラヌ資本構造をめぐる12本、第3匟は「誰がこの舞台に立ち続けられるか」——モヌタヌスポヌツず、ブランドの生き残りをめぐる蚘事です。

    この蚘事に関連しお

    シングルフレヌムグリルを実装した日本人デザむナヌ、和田智の著曞をAmazonで探す。

    和田智の本をAmazonで芋る

    ※本蚘事にはアフィリ゚むト広告が含たれたす。

    #TRUNK #アりディ #シングルフレヌムグリル #カヌデザむン #和田智 #自動車ブランド論 #EV #車奜きな人ず繋がりたい #車奜き #ドむツ車

     
     

    TRUNK

     
     
    TRUNKです。車の"裏偎"が奜き。資本構造に気づくず調べおしたう性分です。 Car capital structures fascinate me. Started this with AI. For car lovers, a bit of fun reading.

    あなたぞのおすすめ