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TRUNK #079 タクシー会社と、サウジの財閥が持つレクサス 東京のレクサス販売網、三つの異なる資本の顔

    タクシー会社と、サウジの財閥が持つレクサス

    ― 東京のレクサス販売網、三つの異なる資本の顔

    東京都内のレクサス販売店を眺めていると、ほとんどの店舗が「トヨタモビリティ東京」という一つの傘の下に収まっていることに気づく。都内25店舗規模のこの会社が、東京のレクサス網の標準形だ。だが、その標準から外れた店が、都内にたった二つだけ存在する。

    タクシー会社が、輸入車帝国を築いた

    一つは、文京区にあるレクサス小石川だ。この店を運営する「レクサス小石川販売株式会社」は、母体がトヨタブランドの地場資本ではない。國際グループとトヨタ自動車の合弁で設立された、全国で唯一の企業なのだ。2005年の開業だという。

    國際グループの出自は、タクシー・ハイヤー事業にある。75年の歴史を持つこのグループは、現在ではポルシェ、ジャガー、ランドローバー、マクラーレン東京(2012年開業)、そしてBang & Olufsenの代理店まで抱える、複合企業体に育っている。移動サービスの会社が、いつの間にか都心の高級インポーターブランドの一大勢力に変貌していた。

    面白いのは、このポルシェ事業を担っているのが、KOKUSAI GROUPの中でも「EBI GROUP」という、さらに一段階独立したブランドである点だ。株式会社エポカルインターナショナル(ポルシェスタジオ銀座)、株式会社ブライトインターナショナル(ポルシェセンター目黒)、株式会社エクセレンスインターナショナル(ポルシェセンター青山)という3つの法人がグループを構成し、ポルシェ事業を専門に運営している。ポルシェビジネスを始めて約25年、累計販売台数は31,486台(2024年末時点)にのぼるという。

    その中核にあるのが、2022年8月に開業したポルシェスタジオ銀座だ。世界で21店舗目という都市型コンセプトストアで、EBI GROUP全8拠点をつなぐ「ハブストア」として機能している。2025年には、EVとハイブリッドモデルに特化した「E-Performanceセンター」という新しいコンセプトも掲げた。タクシー会社を祖業とするグループが、四半世紀かけてポルシェ販売の専門集団を社内に育て、その拠点網の中心に銀座の旗艦店を据えるところまで辿り着いている。

    なぜトヨタは、地場のトヨタ系資本ではなく、このタクシー発祥のグループとわざわざ合弁を組んでまでレクサスを託したのか。想像するに、國際グループがすでに輸入車ビジネスで培っていた、富裕層向けの接客ノウハウやブランド体験の作り方に、トヨタが価値を見出したのではないか。ポルシェのショールームを長年運営してきた会社なら、レクサスという「和製プレミアムブランド」の店づくりにも、独自の勘所を持ち込めるはずだ。

    サウジアラビアの財閥が、練馬に店を構えた

    もう一つの例外は、さらに意外な場所にある。練馬区のレクサス練馬。この店を運営する「ジャミール商事」は、サウジアラビアを本拠地とする世界的な企業グループ「アブドゥル・ラティフ・ジャミール(ALJ)」の日本法人だ。日本国内で唯一、外資が出資したレクサスディーラーである。

    ALJという会社は、中東・北アフリカ市場でトヨタ車の輸出販売を長年手がけてきた、いわば海外におけるトヨタの巨大な販売代理店の一つだ。1996年に日本法人を設立し、当初はトヨタグループの車両を中東・北アフリカへ輸出する役割を担っていた。そして2005年、東京・練馬にレクサスディーラーを開設する。

    つまりこの店は、トヨタが海外に売った車を扱ってきた会社が、今度は日本国内でトヨタの高級ブランドを売る側に回った、という逆輸入的な構造を持っている。中東でトヨタを売り続けてきた実績と信頼が、巡り巡って東京の一等地ではなく練馬という土地で、レクサスの看板を掲げることに繋がった。

    サウジアラビアという国そのものへの理解を深めたい方には、こちらの一冊もおすすめしたい。『サウジアラビア―「イスラーム世界の盟主」の正体』(高尾賢一郎、中公新書)。ALJのような企業グループが、なぜ国境を越えてここまで手を広げるのか、その背景にあるサウジという国自体の姿が見えてくる。

    ※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

    誰に、ブランドを預けるか

    トヨタモビリティ東京という標準の傘の下に大多数の店舗が収まる一方で、國際グループとジャミール商事という、まったく畑違いの出自を持つ二社だけが、東京で例外的にレクサスを扱っている。片方はタクシー、片方は中東の輸出商社。どちらも自動車の「作り手」ではなく、まったく別の文脈からブランドの販売権を手にした。

    これは「頭脳を、誰に預けるか」というOSの話とも重なる構図だ。トヨタは自社の看板であるレクサスを、必ずしも生え抜きの地場資本だけに預けているわけではない。既に別のビジネスで培った接客力や、海外での販売実績を評価し、時に大胆な組み合わせで販売網を作ってきた。同じブランドの看板を掲げていても、その裏側の会社は違う――東京のフェラーリディーラーや、別のブランドの販売網でも、繰り返し見てきた構図だ。

    あなたの街の高級車ディーラー、その看板の裏には、一体どんな資本の顔が隠れているだろうか。

    過去回をテーマ別にまとめたマガジン「TRUNK SPINE」、はじめました。第1弾は「顔」、第2弾は「誰がこの車の後ろにいるのか」――この記事も収録された、ディーラー資本構造をめぐる12本です。


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    TRUNKです。車の"裏側"が好き。資本構造に気づくと調べてしまう性分です。 Car capital structures fascinate me. Started this with AI. For car lovers, a bit of fun reading.

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