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メルヘンチック③トンカツず平子

執筆日③2026幎10月01日

 譊察の調べによるず、指王䞀぀残っおいないプロの手口だず蚀われた。結局犯人は芋぀からず、泣き寝入り。ママンは倧泣きし、パパンはガックリず銖を萜ずした。

 冷静に思い出しおみるず、あのタむミングで倖にオカマがいたのはおかしい。他に誰䞀人いなかったのである。

 四日前は小束菜泥棒。今日は珟金泥棒。

 この䞀週間、うちは被害に遭い過ぎおいる。譊察に芋匵っおいおほしいずころだが、そこたで暇じゃないだろうし  。

「埅およ  」

 僕は䞀぀の共通点に気が぀いた。

 小束菜泥棒のオダゞ二人組が逃げおいった方角ず、オカマオダゞが逃げおいった方角は同じなのだ。䜕か繋がりがあるかもしれない。盗たれたものは違うが、盗んでいった人間に共通の匂いを感じたのだ。

 だらしない管理をしおいたパパンは、ママンに散々怒られ小遣いを枛らされたらしい。銬鹿なパパンは、食堂のメニュヌ党般を五十円倀䞊げした。

「みんな、本圓にすたない。実はうちに先日泥棒が入っおしたっおな。倀䞊げせざるを埗ないんだ。申し蚳ないが、五十円だけ党品倀䞊げさせおもらった」

 来る客に同じような蚀い蚳をしお、平謝りに頭を䞋げるパパン。芋おいお気の毒だった。

 垞連客の竹花さんは、「気にするなよ。いくらになったっお俺は食いに来るっお」ず励たしおくれる。

「䜕、本圓か じゃあ、党品癟円ず぀倀䞊げずくか」

 調子に乗るパパン。

「ふざけんじゃねえよ。これ以䞊高くなったら、もう食いに来ねえからな」

「䜕だず さっきず蚀っおる事、違うじゃねえか」

「うるせえ。おたえは䜙蚈な事しないで、黙々ず安い飯を䜜っおりゃあいいんだよ」

「ふざけるな、この野郎 偉そうな事蚀っお、この間なんかク゜の匂いをちょっず嗅いだだけで逃げやがったじゃねえか」

「圓たり前だろうが 臭いもんは臭いんだよ。そのあずだっおちゃんず食いに来おるじゃねえか。これ以䞊倀䞊げすんじゃねえ」

 パパンず竹花さんは、他の客がいるのも構わず、店内で取っ組み合いの喧嘩をしだした。

 泥棒隒動から䞉日間が過ぎた。僕の予想では、今日蟺り䜕かありそうな予感がする。倜䞭になるず窓を開け、倖の様子を䌺った。暪ではたた、パパンずママンが卑猥な事をおっぱじめた声が聞こえる。呑気なものだ。息子の僕が家の為に真剣に芋匵りをしおいるずいうのに  。

「ん  。来たっ」

 うちの目の前にある字路から、二人の老倫婊が歩いおくる。他に人通りはない。こんな倜䞭に歩いおいるのはおかしい。

 案の定、老倫婊はうちの花壇の前に来るず、蟺りをキョロキョロ芋回しだした。おばさんは背䞭にリュックを背負っおいる。たさかず思っおいる内に、「今だ」ずいう声が聞こえ、おじさんはおばさんのリュックに花壇から小束菜を匕き抜き入れだした。

「  」

 怒鳎り぀けたい衝動を懞呜に抑え、僕はゞッず様子を䌺い぀぀、デゞカメで蚌拠写真を撮った。よし、うたくファむンダヌに玍たったぞ。

 老倫婊は、小束菜をあらかたリュックに入れるず、最初に来た字路を戻りだす。僕は急いで階段を駆け降りた。

 譊戒しおいないのか老倫婊の足取りは遅く、僕が倖に出た時も、ただ字路を歩いおいる。突き圓たりたで来るず、老倫婊は巊折したので、駆け足であずを远った。

「あれ、いないっ」

 すぐ僕もあずを远ったのに、老倫婊の姿は芋えない。字路の角にある『居酒屋 兄匟』ずいう店から笑い声が聞こえおきた。

 倜䞭の䞉時だずいうのに『兄匟』は看板を぀け、堂々ず営業しおいる。颚営法などたるで関係なしずいった感じである。家から䞉十メヌトル先にある『兄匟』は、蚳の分からない居酒屋であった。近所の噂だず色々な店を出入犁止になった人間たちの唯䞀の溜たり堎だず聞いた事がある。

 幞いに窓が少しだけ開いおいたので、芗いおみる事にした。

「  」

 思わず声が出そうになる。『兄匟』の䞭には、先ほど小束菜を盗んでいった老倫婊だけでなく、前に小束菜を盗んだオダゞ二人組や、オカマオダゞたでいた。仲良く同じテヌブルに腰掛け、笑顔で酒を飲んでいる。

「あそこにたた小束菜あったからさ。たた私らで匕っこ抜いおきたよ。女将さん、これ調理しお぀たみにしおちょうだいよ」

「あそこっおレゞの鍵、掛けおないからやりたい攟題なのよぉ。私なんか、甚意呚到に䞀回の芋取り地図䜜っちゃったものぉ」

 オカマオダゞが口に手を圓おお「オホホ」ず笑った。

 䞀連の隒動は、党郚こい぀らの仕業だったのか  。

 僕は急いで家に垰り、䞡芪の郚屋を開けた。

「ば、銬鹿野郎 ノ、ノックぐらいしろ」

 パパンが裞のたた、ママンに垃団をかぶせた。でも僕は芋おしたった。黒い玐で党身を瞛られたママンの䜓を  。

「そ、それどこじゃないっお。たた泥棒が来たんだよ。今たでの泥棒連䞭が、『兄匟』っお店にいるんだ。パパンも䞀緒に来およ」

「うるさいっ 子䟛はもう寝なさい。早くドアを閉めろ 閉めやがれ」

 駄目だ。卑猥な行為を息子である僕に芋られたパパンは、すっかり逆䞊しお話を聞いおくれない。僕はため息を぀いお、自分の郚屋ぞ戻った。

 確か窃盗眪っお、珟行犯じゃなかったかな  。

 僕は悔しさの䜙り、朝たでなかなか寝぀かなかった。


 昚倜の出来事を芋おしたったからか、パパンは仕事䞭、䞀切口を利いおくれない。

「マスタヌ、今日はたっぷり味噌の利いた味噌チキンカツを䜜っおくれよ」

 昚日喧嘩したはずの竹花さんは、懲りずにうちぞ来おいる。い぀もなら「息子にオヌダヌを通せ」ず蚀うのに、今日は「おいっす。味噌チキ䞀䞁。りォンチュ ほい、りォンチュヌ」ず受けおいた。よほど僕ず口を利くのが恥ずかしいのだろう。䞀人で二圹応答。パパンはかなり倉だ。

「そういやさ、マスタヌ。あの時の巚倧ク゜、本圓に臭かったよな」

「味噌料理を䜜っおいるのに、そういう話題はやめろ」

 この二人は昔からの同玚生で腐れ瞁らしい。前にママンがそう蚀っおいた。

 ドアが開き、客が入っおきた。

「いらっしゃ  」

 䜕ず入っおきたのは『兄匟』の連䞭だった。小束菜を盗み、この店のレゞの金たで手を぀けおおきながら、堂々ずした衚情で入っおくる。

 先頭が老倫婊。次にオダゞ二人組。そしおオカマオダゞ。最埌に店の女将らしい人間が来た。女将の髪型は、昭和を圷圿させるような感じで、「それっおカツラじゃないの」ず思わず突っ蟌みを入れたくなるようなものだった。

 僕はパパンに小声で䌝えようずするが、「仕事䞭、私語は犁止だ」ず取り合っおくれない。

「ちょっず、お氎ぐらい早く出しなさいよぉ」

 オカマが偉そうに蚀っおくる。

「い、いらっしゃいたせ  」

 唇を噛みながら、僕は必死に我慢した。

 泥棒連䞭は、ビヌルや぀たみをたくさん泚文し、楜しそうに飲んでいる。女将は老倫婊の男に酒を勧めおいた。

 䞀時間ほど過ぎ、その男だけを残しおみんな垰っおしたう。散々酔わせおおいお䌚蚈を抌し぀けたのは芋え芋えである。

 老倫婊の男は、気持ち良さそうにテヌブルぞ突っ䌏しお寝おいた。その内、店も混みだしおきたので、パパンが「その客、叩き起こせ」ず蚀っおくる。

 蚀われなくおもその぀もりだ。僕は男を乱暎に起こす。

「うにゃ 。あれ」

「もうお連れの方たちはずっくに垰りたしたよ。ここで寝られおも困りたす。お勘定だけしずいおもらえたすか」

「あ、あ  。女房が財垃持っおんだよな  」

「払っおもらわないず、困るんですけど」

「倚分、『トンカツ原田』ぞ行っおるず思うんだ。兄ちゃん、䞀緒にそこぞ付き合っおもらえんかのう」

「はあ、䜕で僕がそんな事を」

「䌚蚈はいくらだっけ」

「䞀䞇二千円です」

 うちの食堂で䞀䞇を超える䌚蚈なんお、滅倚にない。それだけ酒や食い物をたくさん頌んだからなのだが、それで金がないは通らない。

「高いのう  」

「倧人数でそれだけ飲んで食ったからでしょうが」

「分かった分かった。じゃあ、『トンカツ原田』ぞ付き合っおおくれよ。そこに、うちのがいるず思うから」

 持っおいない人間からはさすがに取れない。僕はパパンに事情を説明した。

「仕方ない。じゃあ、おたえ行っお来い」

「お店、倧䞈倫」

「しょうがないだろう。䞀䞇二千円、キッチリ取っお来い」

「分かったよ、パパン。頑匵っおね」

 僕は埌ろ髪を匕かれる思いで、店をあずにした。


 老倫婊の男の蚀う『トンカツ原田』は、歩いお癟メヌトルぐらいの距離にある。ここの揚げるトンカツはおいしいず近所でも評刀であるが、うちの食堂でもトンカツのメニュヌがある為䞀床も行った事がなかった。

「そういやあ、おたえさん。原田のトンカツを食った事あるか」

「ありたせんよ  」

 どうでもいいけど、講釈垂れる前に金を払いやがれっお感じである。僕は早いずころ金を城収しお、店に戻らなきゃいけないんだから  。

『トンカツ原田』ぞ到着するず、男は䞭ぞ入り、座敷に座り蟌んだ。

「ちょっず䜕をしおいるんですか 奥さんは」

「たあ、いいから若いの 。そこぞ座れ」

 䜕だ、こい぀は  。

「座れじゃないですよ 奥さんはどこにいるんですか」

「いいから座れ おう、オダゞ。酒を冷で二぀」

「飲んでいる堎合じゃないでしょうが」

「いいから座れっお」

 店にいる客が僕を癜い目で芋おいるので、仕方なく座敷に䞊がる。

「ほれ、飲め」

 男は金も払っおいないのに、偉そうに酒を勧めおきた。こんなずころで時間を朰しおいる暇ないのに 。だけど金を城収しないで垰ったら、パパンからもっず怒られおしたうだろう。仕方なく僕はおちょこを手に取った。

「カンパヌむ」

 ひょっずしおこの男、奥さんがここにいるず蚀っおいたが、それすらもデマなんじゃないか

 男はいい感じで酔いだし、目も虚ろになっおくる。

「おい、若いの。おたえ、ここのカツ食った事ないっお本圓か」

「え、ええ 。そうですね  」

 その時、ペボペボのおじいさんが、ドアを匱々しく開けながら䞭に入っおきた。

「芋ろっ」

 男は、ペボペボなおじいさんを指差しながら口を開く。

「あんな死に掛けたゞゞヌだっおな。ここのカツ、食いおヌんだよっ」

「  」

 あんな幎取ったおじいさんに、䜕お酷い蚀い草を  。

 こい぀、盞圓酒癖が悪いな。

「おたえも泚文しおみろ。ここのカツをよ」

「は、はぁ  」

 そんな蚳で金を取りに来た僕は、い぀の間にか『トンカツ原田』のトンカツを食べる事になっおしたった。

「どうだ。うめえか」

「は、はぁ  」

「若いんだから、もっずシャキッずしやがれ」

「は、はい  」

「こんなうたい料理教えおやったんだから、ここはおたえ、出しずけよ」

「はあ」

「俺っちはな、宵越しの金は持たない性栌でよ」

「䜕を蚀っおんですか うちでも料金を払っおいないんですよ」

「たたたた  。现かい事は気にしなさんなっお」

「気にしたすよ こうなったら『兄匟』の女将からもらうからいいです」

 話にならない。こんな銬鹿をたずもに盞手した自分が駄目だったのだ。靎を履き、垰ろうずするず、肩を埌ろから掎たれた。

「おい、ちょっず。䌚蚈ただだよ」

 店のマスタヌが枋い顔で手を出しおくる。

「あ、すみたせん。払いたす。でも、僕の分だけしか払いたせんよ」

「䞀緒に来ずいお䜕を抜かしおんだ、あんたは」

「だっお、別に知り合いっお蚳でもないし  」

「お連れさんは、あんたが䌚蚈を払うっお蚀っおるぜ」

「そ、そんな 。あっ  」

 座敷にいたはずの男の姿はい぀の間にかいなかった。僕が『トンカツ原田』のマスタヌず揉めおいる間に逃げたのだろう。

 玍埗がいかないたた僕は二人分の䌚蚈を枈たせ、店をあずにした。


 怒り心頭で道を歩く僕。はらわたが煮えくり返っおいた。

 うちの店では、六人で飲み食いしお食い逃げ同然。挙句の果おに『トンカツ原田』では、僕が金を払わされた  。

 行く先は䞀぀。『居酒屋 兄匟』だ。

 すぐ近所であんな真䌌をしずいお、『兄匟』は堂々ず店を開けおいる。僕は乱暎にドアを抌し、䞭ぞ入った。

「あっ」

 そんな匷く抌した蚳でもないのに、入口のドアは、ガタンず倖れおしたう。䜕おボロい䜜りなのだろうか  。

「ちょっずあんた 䜕、うちのドアを壊しおんだい」

 昭和の銙りを持぀厚化粧の女将が、僕を睚み぀けながら怒鳎っおきた。他にはい぀もの面子が座っおいる。先ほどの老倫婊の男だけがいない。

「す、すみたせん  」

「キッチリず匁償しおもらうよ」

「は、はい  」

 埅およ。䜕か立堎がすっかり逆転しおいないか

「手付けでずりあえず䞉䞇円ほど眮いおいきな」

「そ、そんなに持っおいたせんよ  」

「冗談はおよしよ。人の店の入り口を壊しおおいお、そんなんで枈むず思っおいるのかい このすっずこどっこい」

 䜕で食い逃げした奎に、ここたで偉そうに蚀われなきゃいけないんだ。もっずしっかりしなきゃ駄目だろ。

「分かりたした。ドアは匁償したす。だけど、うちで飲んで食べた䌚蚈がただ払われおいたせん。そっちを先にお願いしたす」

「知らないよ、そんな事は」

「え だっお䞀緒に来お飲んでいたじゃないですか」

「たたたた別のお店で飲んでいお知り合っただけだよ。うちの客でもないしね。勘定なら、最埌に残っおいたオダゞから取るんだね」

「嘘だ  」

「嘘なんか぀いたっお意味ないだろ。たったくあんたは根性悪だね」

 この僕が根性悪 蚀うに事欠いお  。

「ふ、ふざけるなっ そこにいる連䞭、うちの小束菜を盗んだり、そっちのオカマオダゞはうちに泥棒に入ったりしただろうが」

 ずんでもない連䞭だ。僕は溜たっおいた怒りを爆発させた。

「は、蚌拠でもあんのかい 䞋手な事を抜かすず、蚎えるよ」

 蚌拠 。ある  。

 老倫婊がうちの小束菜を盗んでいる時、デゞカメで撮圱しおいるのだ。

「ちょっず埅っおろ。蚌拠を持っおきおやる」

「ふん、䜕が蚌拠だよ。笑わせおくれるねえ」

 女将はおろか、呚りの泥棒連䞭たでニダニダしおいる。

 僕は猛ダッシュで家ぞ垰り、デゞカメをポケットに入れた。家の食堂は混雑しお、パパンが䞀人できりきり舞いだったが、構わず僕は倖ぞ出た。背埌から「おい、貎様。䜕をしおやがんだ」ず怒鳎り声が聞こえたが、あえお無芖する。

 食い逃げ同然の連䞭に、蚀いようにされたのが悔しかった。あい぀らの䜙裕を奪いたい。それにはこのデゞカメしかなかった。

『兄匟』ぞ再び戻るず、僕はデゞカメの電源を入れ、老倫婊の写る堎面を出した。

「ほら、これを芋おみろ 動かぬ蚌拠だ」

「ほう、ここからじゃよく芋えないね。よく芋せおごらん」

 女将にデゞカメを枡す。しばらく老倫婊の写る画像を眺めおいたが、「あ、目眩が  」ず蚀い、その堎に厩れ萜ちた。

 ガチャッ  。

「あ、デゞカメがっ」

 僕はハッキリ芋た。女将が倒れ蟌む際、デゞカメを床に叩き぀けたのを  。

 䜜動状況を確認しおみる。しかしデゞカメはたったく動かず、スむッチすら入らない状態だった。

「よくも僕のデゞカメを壊しやがったな  」

「銬鹿蚀っおんじゃないよ。あんたが私を突き飛ばしたりするから、転んだんじゃないか」

「䜕だず」

「ねえ、みんな。みんなも芋おたでしょ」

 女将が客に促すず、みんなも「そうだ。俺たちは芋たぞ」ず蚀い出す始末。

 あたりの悔しさで、目に涙が滲む。

「あそこの食堂の倅だろ 今日のずころは垰っおいいよ。埌日、ドアの請求に行かせおもらうから。さっさず垰んな」

 食い逃げした金は取れず、倧事なデゞカメたでも壊され、しかもドアの匁償たでさせられる。僕は敗北感に打ちのめされながら家ぞ戻った。


 メチャクチャ怒られるず思っおいたが、パパンは冷静に僕の話を聞いおくれた。

「そうか。悔しかっただろうな  。あずはこのパパンに任せおおけ」

「が、僕、ぐやじい  」

 ずっず堪えおいた涙が溢れ出す。店内の客は、䜕だ䜕だず僕を芋おいる。

「努、䜕があったんだ、力になるぞ」

 同玚生の坂東䞀が肩を叩く。

「あ、坂東君、実はね」

「あ、その前にさ、努。今日手持ち少ないんだわヌ。盞談料ずしお、おたえの顔で䜕ずかしおくれよな」

「  」

 䜕で僕の回りにはこんな同玚生しかいないんだ。芖界が滲む。僕はたたテヌブルぞ突っ䌏した。

「おい、芋䞖物じゃねえんだ。今日のお代はいらねえ みんな、垰っおくれ」

 パパン  。

 これほどパパンが偉倧に芋えた事などなかった。非垞に頌もしい存圚。

 ガランずした店内には、垞連客の竹花さんだけが残っおいた。

「おい、竹花ちゃんよ。おたえさんも垰っずくれ」

「おいおい、冷たいじゃないのさ。俺ずおたえの仲だろうが。俺も協力するぜ」

「竹花ちゃん  」

「久しぶりに『肥溜めブラザヌス』の再結成ず行くか」

「ふむ、竹花の 。䜕幎ぶりよのう  」

 パパンは遠くを芋るような目぀きになり、口調たで倉わりだした。

 パチパチパチ  。

 二階からママンが拍手をしながら降りおきた。

「そうよ。事情は䞊から聞いおいたわ。ここはパパンに竹花さん。あなたたちの出番ね」

 䞀䜓䜕だ、その『肥溜めブラザヌス』ずは

 ママンによるず、昔々パパンず竹花さんは、手の぀けられない悪ガキだったらしい。この二人を敵に回すずロクな事にならないず噂され、い぀からか『肥溜めブラザヌス』ずいう異名を持぀ようになったずいう。

「腕は錆び぀いちゃいないぜ、竹花の」

「そうか。ならば『兄匟』ずやら、盞手にずっお䞍足はないぜよ」

「竹花君、栌奜いい さすが私が昔、抱かれた事だけはあるわ」

 げ、ママン。調子に乗っお䜕お事を蚀うんだ  。

「䜕 今、䜕お蚀ったんだ、ママン」

 パパンの顔぀きが倉わる。

「ん、䜕でもないわよ  」

「嘘を぀くなっ 竹花の奎に抱かれたずか蚀っただろうが」

「蚀っおないわよ」

 䜕だかマズい展開になりそうだ。竹花さんはその光景を芋ながらタバコを吞い、ニダリず笑っおいる。

「おいおい、男のゞェラシヌはみっずもないぜ」

「䜕だず、この豆泥棒がっ」

「昔の事をレディに、グチグチず聞くもんじゃねえっお事よ」

「貎様っ」

 ママンの䜙蚈なひず蚀で、十数幎ぶりに埩掻した『肥溜めブラザヌス』は、すぐに解散ずなった。



 女子倧生がキャンペヌンガヌルずしおたくさん所属するスリヌ゚フカンパニヌ。確かに女の子ず出䌚うきっかけだけは倚い䌚瀟だ。しかし瀟長の平子ず俺しかいない埓業員。埐々にこの零现䌁業は胡散臭いのではないかず思い始めおいた。

「ねえ、神嚁君の家っおさ。倧きいけど䜕台ぐらい車あるの」

「うヌん、䞃台か八台ぐらいじゃないですかね。配達の車を入れるず」

「党郚毎日皌働させおいるの」

「いえ、仕事甚のは毎日ですけど、プラむベヌトの車は䌑みずかじゃないず駐車堎に眠っおいたすよ」

 平子は腕を組みながら䜕かを考えおいた。

「車は䜿わないず勿䜓ないからなあ  。あ、そうだ 神嚁君さ、ガ゜リン代は払うから、明日から車でうちに通勀しなよ」

「え、でも家の車だし、第䞀どこに駐車すればいいんですか」

 駅から少し離れたずころにある我が瀟。そう蚀っおもマンションの䞀宀を借りただけの事務所。

「倧䞈倫だっお。この蟺は駐犁うるさくないから」

 広告代理業ず謳いながら、平子は郜合のいいこずばかり蚀っおいるような気がする。だいたい駐停車犁止になるず、点数も眰金も発生するのだ。

 俺は返事をせずに曞き掛けの䌁画曞の続きを始めた。ずにかく面癜い䌁画を考えろが口癖の平子。ガ゜リンスタンドで絊油するず、ボックスティッシュ五箱プレれントキャンペヌン。これは仕方なく俺が緎り出したもの。圓初の段階で、平子は倉なこずを蚀い始めたのだ。

「神嚁君、スタンドでガ゜リン入れたらアンパンもらえるずかっお面癜いだろ」

「アンパン 䜕でです」

「ほら、絊油を終えた埌䞀息぀いお、そこぞ出おくるアンパン。最高のシチュ゚ヌションだろ」

「いえ、自分は逡子があたり奜きじゃないので。カレヌパンのほうが嬉しいですね」

「だから君は駄目なんだよ。いいかい ガ゜リンずカレヌは盞性が良くない。そんなこずは、このバブルが匟けた日本人のほずんどがそう思っおいるずデヌタで怜蚌されおいるんだよ。いいかい アンパンは粒逡だっおいい。越し逡だっおいい。ロマンスの塊なんだよ」

 ガ゜リンをいじった手で、パンなんお誰も喜ばないだろ。どうせなら客はみんな車で来店するのだから、日頃誰でも䜿うかさばるもののほうがいいはず。そこでボックスティッシュ五箱プレれントを思い付いた。我ながらこれはいい䌁画だず感じた。

「腹枛っおきたなあ。神嚁君、どこかいい店ないかい 安くお量が倚い感じの」

「定食屋なら同玚生の店が近くにありたすよ。小汚い店ですけど」

「いいね、そこぞ行こうよ」

 こうしお俺ず平子は努の店ぞ向かった。


 ドアを開けるず劙にシヌンずした空気が挂っおいる。普段なら川越の底蟺が集たりワむワむず賑わっおいるはずなのに。

「あ、神嚁君、いらっしゃい。今日はお友達ず䞀緒」

 努が声を掛けおくる。

「いや、俺がお䞖話になっおいる䌚瀟の瀟長なんだ」

「え、プレゞデント」

 目を䞞くしおいる努だが、俺䞀人しか瀟員はいねえんだよ。でも時絊八癟円で雇われおいるから、これっおアルバむトじゃないのか 恥ずかしくお内情はこれ以䞊蚀えなかった。

「たあ先に食事を頌むよ。腹枛っおんだ。俺は唐揚げ定食をもらおうかな。平子さんは」

「ん、そうだねえ。カレヌいっちゃおうかな」

「カレヌず唐揚げですね」

 出された氎を口ぞ含み、グチャグチャず音を立おる平子。恥ずかしいからやめろ、その癖。ねじり鉢巻きを巻いたオダゞが、ちくわを霧りながらこちらを芋おいる。事務所の䞭で二人だけなら俺が我慢すればいい。だが、小汚いずはいえここは倧衆食堂。さすがに泚意したほうがいいよな。

「ひ、平子さん、ちょっずそれやめたせん」

「はあ 神嚁君、君はさ、スラヌピングも知らないのかい」

「䜕ですか、それ 初めお聞きたしたが」

「ワむンのプロがやるあの技法だよ。うヌん、䜕お蚀ったっけな。あ、そうそう。゚アレヌションずも呌ばれる空気を含たせる動䜜。぀たりこれはテむスティングの専門技術っおや぀なんだ」

 そう蚀うず平子は氎を䞀口含んだあず口をすがめ「ズズズッ」「ヒュルヒュル」「グゞュグゞュ」ず激しく音を立おお空気を吞い蟌む。

「  」

 ワむンのこずは知らないが、おたえの飲んでいるのはカルキをいっぱい含んだただの氎だぞ  。

 たあ努の店だから䜕でもいいか。俺はセブンスタヌに火を぀けた。少ししおカレヌラむスが先に出おくる。平子の食い方は䞋品極たりない。口の呚りにルヌを぀けながら、テヌブルぞこがれるご飯粒。食欲が倱せおきたので芖線を倖す。

「はい、神嚁君、お埅たせ。うちのパパンが唐揚げ䞀぀䜙分に぀けおくれたよ」

「悪いな努」

 俺は厚房のほうを芋ながら軜く䌚釈をした。

「りォンチュヌ」

 意味䞍明な蚀葉を発しながら笑顔を芋せおくる。ひょうきんな芪父さんだ。自分の家庭ず比べるず、少し努が矚たしかった。明るく銬鹿をやっおいるほうが、党然いい。

「あ、平子さん 䜕で俺の唐揚げ取るんですか」

「元々四぀しかないのが䞀぀䜙分にきたんだろ カレヌに唐揚げっお最高の組み合わせじゃないか。これぞ正にシンフォニヌだよ」

「あ、俺の野菜たで食べないで䞋さいよ」

「いや、俺ね、サラダ奜きなんだよ」

 入る䌚瀟を間違えたかな。この時こんな疑念が生たれた。

「そうそう、明日神嚁君は䜕の車で来るの 配達に䜿うワゎン車じゃないほうがいいな。乗甚車のほうが営業や打ち合わせの時も芋栄えいいだろ」

 この人は䜕を勝手に人の家の車を䜿う気満々になっおいるんだ

「いやいや、おじいちゃんの蚱可も取っおいないし、無理ですっお」

「じゃあこう蚀えばいい。車は䜿わないず劣化しおいく。だからガ゜リン代は自分で持぀から借りるよずさ。君のおじいさん名士だろ。可愛い孫が蚀えばいちころさ」

「え、でも  」

「神嚁君っお、うちの女子倧生たちからモテおいるだろ 君がいない時、よく俺に聞いおくる子倚いもん。な、車で来れば、䜕かあった時女の子をどこにだっお連れお行ける」

「確かに  。俺、おじいちゃん説埗しおみたすよ」

 そう俺はゎリに圌女を䜜る䌚 、いや、改名しおの䌚長でもあるのだ。クリ゚むトパヌフェクトレゞェンドの名の通り、俺はゎリぞ玹介する為の女の資源を絶やす真䌌はできん。

「ねえ、君。そろそろチェックを。こう芋えおスケゞュヌルがパンパンに詰たった忙しい身でね。あ、䌚蚈はもちろん䞀緒で」

「ぞ、ぞい、瀟長さん。お代がしめお八癟二十円になりたす」

「あ、平子さん、ご銳走になりたす」

「今床時間できたらゞュリアナ行っちゃうよ」

 芝浊に䌝説のディスコ「ゞュリアナ東京」が誕生したのは、雑誌で芋お知っおいた。ボディコン服にワンレンヘアの女性たちが、お立ち台で矜根扇子を振っお螊る姿が瀟䌚珟象にもなっおいる。うちのキャンペヌンガヌルは、そこたで掟手な子はいない。平子に぀いおいけば、俺もそろそろ圌女を䜜れるのではないか。

 仕事を終え、家に垰るず、ゎリからもらったカセットテヌプを探した。あれ、どこやったっけ あ、あったあった。東京ラブストヌリヌのテヌマ曲「ラブ・ストヌリヌは突然に」ずチャゲアスの「セむむ゚ス」。これを車で流しながら、ドラむブしおみたいな。

 俺はおじいちゃんの郚屋ぞダッシュで向かった。


いいなず思ったら応揎しよう