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メルヘンチック④スリヌ゚フずムッシュヌ

執筆日④2026幎10月01日

 俺は仕事柄、こういうむベントが近付くず忙しくなっおくるので、圓然䌑みはない。こういう時、事務所にあるワヌプロはずおもありがたかった。

「神嚁君、ちょっず僕が䜿うからワヌプロいい」

「平子さん、あずちょっずだけ」

「神嚁君も自分専甚のワヌプロ買った方がいいっお。そうだ、今から䞀緒に芋に行っおあげるよ」

「え、でも俺 、そんな金持っおないですっお」

「どういうものがあるか芋おおくのも仕事の䞀環だっお。ほら、サンロヌドに西友あっただろ。そこたで行くよ。神嚁君は車の準備しずいお」

「もう平子さん。西友も朰れ、そのあずドヌモになっお、今は藀沢プラザっおパチンコ屋になっおたすよ」

「じゃあ別の家電補品売っおいる店ぞ行けばいい話だろ。早く車に行きなよ」

 結局おじいちゃんに話し、䜿えるようになった家の車、ホンダのレゞェンド。運転するのはいいが、䜕で平子の運転手のようになっおいるのか䞍可解だった。

 家電ショップぞ到着し、ワヌプロを物色する。入門機の普及モデルは五䞇円から八䞇円台。結構するんだな。

 売れ筋の䞻流モデルは、モノクロ液晶ながら画面が倧きく、耇数行をしっかり確認しながら打おるタむプ。この䟡栌垯が最も売れおいるず店員は説明しおくる。䟡栌は十二䞇円から十八䞇円ず、殺人的な金額だ。

 時絊八癟円で十時間働いお八千円でしょ。月の半分以䞊の劎働をこんなものぞ捧げなきゃいけないのか 冗談じゃない。

「神嚁君、これなんおどう カラヌ液晶を搭茉し、高機胜なプリンタやパ゜コン通信機胜が぀いた最先端モデル」

「二十䞉䞇もするじゃないですか 嫌ですよ」

 パ゜コンが非垞に高䟡だったため、文章䜜成や印刷ずいえばこのワヌプロ専甚機が䞻圹なのは理解できる。ただ平子の䌚瀟で䜿う䌁画曞を䜜るのに、䜕で自腹でワヌプロを買わないずいけないんだ。

「俺だったら迷わずこのオアシス買っちゃうなあ。神嚁君これ買えば、うちのキャンペヌンガヌルたちもすごいっおなるはずだよ」

「だっお金どうすんですか。そんな持っおないですよ」

「神嚁君のおじいさんに、ねだっおみればいいじゃない」

「嫌ですよ 䜕でそんなこずをおじいちゃんに蚀わなきゃいけないんですか。今日は芋に来ただけですよね もう垰りたすよ」

「あ、いい方法があるよ」

 平子が目を茝かせる。

「䜕ですか」

「カヌドだよ、カヌド。これさえあればロヌンでもいい。月に䞀䞇ぐらいの負担なら、神嚁君だっお問題ないだろ カヌドがあれば、ファミレスでも䜿えるし、色々ず䟿利だよ。カヌドをこの際䜜っおおきなよ」

 店員ず平子二人に挟たれクレゞットカヌド登録をしおしたう俺。そしお぀いでにロヌンでワヌプロたで買わされた。たあ月に䞀䞇円でいいなら、それでもいいか。の提案曞も、これで綺麗に䜜れるしね。


 十月に入り、地元の川越祭りがやっおくる。二日間で癟䞇人芏暡の人で溢れる街䞊み。暇だった俺は、ゎリを誘うが人混みで嫌だず我儘を抜かす。銬鹿な男だ。

 家でボヌっずしおいるず、ノッポの倧田史兞から電話が掛かっおきた。

「神ダン、祭り行こうよ」

 倧田ず二人でかよ。それでも祭りの高揚感に駆られたのか、準備をしお倖ぞ出た。の掻動がおら、女でも物色するか。

 街を歩いおいるず、女子高生二人組が暇そうにしおいるのを発芋。
日頃から女に飢えおいた倧田は「神ダン、あの子たちナンパしようよ」ずうるさい。

「おたえが声を掛ける分には奜きにしなよ」

 俺がそう蚀うず倧田は電光石火の速さで圌女たちぞ駆け寄る。こっちを指さしながら䜕か話しおいるず、䞉人で近付いおきた。

「䜕お声掛けたの」

「神ダンのほう指さしお、あの人が䞀緒に祭り回りたいっお蚀ったら぀いおきた」

「䜕で俺をダシにするんだよ」

「たあたあナンパ成功したんだからいいじゃん」

 高校生ずはいえ矎人な顔立ちの鈎朚千代、そしお連れの千倏。仕方なく川越祭りを䞀緒に歩いおいるず、千代が突然青耪めた衚情で「普段門限䞃時なんだけど、今日はお祭りだから特別九時たでっお蚀われおいたのに、時間過ぎっちゃった」ず意味䞍明な事を蚀い出す。

 そんな俺たちず䞀緒にいたくないなら垰っおいいず䌝えるず、そうではなく本圓に門限のある厳しい家の子のようだった。目の前で泣きべそを掻く千代を芋お、嘘ではないのが分かる。

 俺はいいアむデアを閃き、圌女たちぞ䌝えた。

「いいかい 今日俺が千代たちの孊校の先生のふりしお君の芪ぞ電話をしおあげる。祭りで偶然䌚っお屋台のものをご銳走しおいる内に門限が過ぎおしたったず」

「本圓ですか」

 瞋るような目で芋おくるので、䜕ずか力になっおあげようず思ったのだ。䞀床家に垰り、家の電話で千代の家ぞ連絡する。俺は先ほど描いた絵図の説明を淡々ずしお、只今亀通芏制で倜の十時にならないず車を出せないから、その時間になり次第、責任を持っお送り届けるず䌝えた。

「先生、い぀もうちの子がお䞖話になっおおりたす」

「いえいえ、こちらこそ 。あ、いや、こちらがお䞖話になっおおりたす」

 どっちだよ。

「ずころで先生、お名前をもう䞀床よろしいですか うちの子から聞いおおりたせんで」

「  え あ、あの、鈎  いや、鈎川です」

 千代の苗字が鈎朚なのに、鈎朚ず蚀いかけた自分を殎りたかった。第䞀鈎川は䞭孊の時の暎力教垫の名前じゃねえか。

「それでしたら先生。うちの子、釘無橋を枡ったずころの山田うどんのあるバス停に自転車を停めお、バスで孊校ぞ通っおいるんですね」

「は、はいっ」

 声が裏返った。咳払いをしお「ええ、存じおおりたす」ず䜎い声を䜜り盎す。圹に培しろ。俺は先生を挔じおいるんだ。

「そこのバス停たで私ども迎えに行きたすので、先生、うちの子をそこたでお願いできたすでしょうか」

「も、もちろんです。ええ、それが担任の責任ですから」

 担任っお蚀っちゃったよ。俺、担任なのか 今さら嘘でしたなんお無理なので、俺は髪の毛をすべお䞊げお䌊達メガネを぀ける。

「ねえ、ちょっずは先生っぜく芋える」

「だ、倧䞈倫だず思いたす」

「芪にはあずで教育実習で来おいる先生だずか適圓に説明しおおいおね」

「分かりたした、ありがずうございたす」

 ん、埅およ 俺はワヌプロを䜿い適圓な文曞を打ち始めた。

「䜕しおんの、神ダン」

 俺は䞍敵な笑みを浮かべ、プラスチックのカセットに入った黒いフィルム状のリボンを芋せる。今こそ緊急事態。巻き戻しお䜿い回したものではない。これ䞀぀で八癟円はする新品だ。節玄するために、぀る぀るした感熱玙でもよかったが、あれは煙草ず盞性が悪過ぎる。感熱玙の䜿甚など、の提案曞ぐらいでいいのだ。

 リボンを䜿っお枅曞した出鱈目なお知らせ。これを二枚持っお車ぞ乗り蟌んだ。

「ねえ、神ダン。来週日曜は䌑みなのに、日曜に補習ず曞いおある 。ここの文章ちょっずおかしいよ 矛盟がある」

「うるせえよ そんなもんどうだっおいいんだっお」

 車で釘無橋を枡り、川島方面ぞ向かう。真っ盎ぐ行けば山田うどん。そこで䞀旊千倏ず倧田を䞋ろし「あずで拟いに行くからそこで倧人しくしおお」ず指瀺を出す。

 千代の䞡芪ずご察面の時間。孊校の先生っぜく振る舞い、非瀌を詫びおから、甚意したプリントを千代ぞ手枡す。

「あ、鈎朚君。これ、孊校で枡す぀もりだったプリントなんだけど、君の仲が良かった田䞭君、しばらく䌑んでいただろ 二枚預けおおくから枡しおおいおよ」

「え、田䞭っお誰ですか 私の友達は田畑千倏ですよ」

 銬鹿、話合せろよ、このアマ。芪が驚いおいるじゃねえか。自衛隊で培った䞊官埩讐劇シナリオを緎った時の経隓を掻かせ。

「あ、ごめんごめん。先生さ、ただ生埒の名前を党郚把握しおいなかったね。その田畑さんにだよ」

 ボロが出る前に「ではたた明日孊校で」ず爜やかに蚀い、速やかにその堎を去る。

 倧田ず千倏を拟い、車ぞ乗せるず「神ダン凄えよ」ず劙に興奮しおいた。自分でもそんな面倒は嫌だったが、乗り掛かった船である。芋捚おおあずは知らないなど、声を掛けおおいおあり埗ない行動だったのだ。

 無力ながらも自身の流れにある正矩に沿う。それを遂行する事が自分のアむデンティティだず、倉に自分を意識しおいた行動だった。

 去り際千倏が「今日は本圓にありがずうございたす。お瀌したいんで、連絡先を教えおもらえたせんか」ず蚀われ、スリヌ゚フカンパニヌから枡されおいたポケットベルの番号を教える。

 翌日千代が圌女から聞いたのか䜕床もベルが鳎った。
䌚っおお瀌がしたい。その䞀蟺倒な圌女。

 俺もタむプだったので千代ず䌚い、気付けば自然ず付き合う圢になる。北海道の女ずの情事を陀けば、これが自身に初めお圌女ができた瞬間でもあった。



 ここ最近のパパンずママンは仲が悪い。だっお垞連客の竹花さんず、過去に関係があった事をママンが぀い口を滑らせおしたったんだから。

 䜕もあのタむミングで蚀う事ないず思うんだ。自分の女房が、過去の話ずはいえ昔からの友人に抱かれたずいう事実。知らないでいるほうが、人間幞せな時だっおある。パパンが気の毒に思えた。

 僕にずっお幞いな事ずいえば、倜オナニヌする時、䞡芪の卑猥な声を聞かずに枈むずいう点である。ゆっくり自分の奜きな時間を堪胜できる蚳だ。

「おい、努 おたえはこんな事もできないのか」

 店を開けお間もないのに、パパンは無理難題を抌し぀けおくる。

 うちの䞡芪はどちらかずいえば、パパンがママンに惚れおいるずいう図匏。パパンはママンに圓たる事ができないので、必然的に僕が八぀圓たりの察象になっおしたう。先ほどパパンが気の毒だず感じたが、そんな気持ちはあっずいう間に吹き飛んでしたう。

「今たで料理を運ぶだけだったのに、いきなりキャベツの千切りをしろっお蚀われたっおできる蚳ないじゃん。包䞁䞀぀、ロクに扱った事ないのにさ」

「気合いだ。気合いさえあれば、䜕でもできるものだ」

 そんなもの、気合いなんかでできる蚳がないのだ。頑固になった時のパパンは本圓に性質が悪い。

「今たで通りでいいじゃんか。別にここを継ぐっお蚳じゃないんだから」

「駄目だ。おたえはここを継ぐ運呜にあるのだ」

 パパンはすっかり僕に継がせる぀もりでいる困ったちゃんだ。職業遞択の自由など、たるでお構いなし。぀い、幎を取った自分を想像しおみる。

 頭に捻りハチマキを巻きながらフラむパンを片手に転がす僕。カりンタヌ垭には、『肥溜めブラザヌス』こず、パパンず竹花さんが二人でい぀も飲んだくれおいる。泚文が殺到し調理堎が火の車なのに、「おい、努。早くレバニラ䜜れや」ずパパンが真っ赀な顔で怒鳎りだす  。

「冗談じゃないよ 小汚い連䞭を盞手に、生涯をたっずうしろっお蚀うのかよ」

「䜕を抜かす、この小僧が 小汚い連䞭だず おたえの絊料はその小汚い客が払う金が収入源なんだぞ」

 自分が小汚いなんお、露ほども思っおいない幞せなパパン。

「䜕が絊料だよ 䞀ヶ月必死に働いたっお、十䞇もないじゃないか」

「ふん、おたえは黙っお俺の蚀う通りに働いおりゃあいいんだ。䜙蚈な事を考えるのは、あず十幎経っおからにしずけ」

「冗談じゃないやい。劎働基準法に違反しおるじゃないか。こんな安賃金でボロボロになるたで働かせおさ」

「䜕が劎働基準法だ。このコッパが。おたえがやっおいる事は仕事じゃない。ただのお手䌝いに過ぎん。それで十䞇ぐらいのお駄賃もらえおいるんだから、俺に感謝しやがれ」

 いくら䜕でも酷過ぎる。僕が毎日ひいひい蚀いながらやっおいる事をお手䌝いだなんお  。

「う、蚎えおやるからな」

「どうぞ、ご自由に。民事䞍介入に過ぎん。たあそんな面倒な事をしたら、もっずお小遣いを䞋げおやるだけだけどな」

「き、汚いぞ」

「汚くねえよ」

 ずがけ顔で口を開くパパン。無性に腹が立っおきた。

「汚いじゃないか」

「いや、北あるよ」

 こんな時にク゜぀たらない駄排萜など䜿いやがっお  。

「぀たんないんだよ」

「ふん、おたえなど黙っお俺の蚀う通りに生きおいればいいのだ」

「酷いや。それじゃあたるで僕は、パパンの道具じゃないか」

「け、道具 おかしな事を蚀うな  」

「䜕でだよ 指図されっ攟しの人生なんお、たるで道具じゃないか」

「チ・チ・チ  。道具は喋らん。愚痎も蚀わん。それに飯も食わん」

 勝ち誇ったような衚情でパパンは蚀った。

「ひぃ、酷いや  」

「ふん、泣いたっおキャベツの千切りを誀魔化せた蚳じゃないぞ ずっずずやれ」

「パパンの銬鹿」

「䜕だず」

「そんなんだから、ママンを竹花さんに寝取られるんだ」

「銬鹿者」

 パチンず也いた音がしお、僕の頬は熱を垯びたように熱くなる。パパンが感情的になり、僕の぀るん぀るんの頬に平手打ちをしたのだ。

「ち、ちくしょう」

 僕は泣きながら、家を飛び出そうずする。その時、階段から足音が聞こえ、二階からママンが降りおきた。

 必芁以䞊にお尻をプリプリ揺らしながら階段を降りるママン。い぀もそんなオヌバヌアクションだから、うちの小汚い客どもに、「あんなケツに、チクワぶっ刺したらどうなんだろうね」ずか蚀われるんだ。ひょっずしたら、あい぀らのマスタヌベヌションのおかずにされおいるかもしれないのに  。

「あらあら努。䜕を泣いおいるのよ」

 僕のキラリず光る涙に気付いたママンは、芗き蟌むようにしお声を掛けおきた。

「パパンが酷いんだよ、ママン」

「うん、䜕でそんな状況になったのか、私は分からないわ」

「あのね  」

「ううん、私はそんな事を聞きたい蚳じゃないのよ、セニョリヌタ」

「が、僕はセニョリヌタなんかじゃないよ」

「いいのよ、今はセニョリヌタで。じゃないず話が進たないから」

「はあ 蚳が分からないよ」

「いいから黙っお私の歌を聞きなさい。ほら、耳を柄たせお。私が唄うなんお滅倚にない事なんだから、耳をかっぜじっおありがたく聞きなさい」

 そう蚀うずママンは階段の途䞭で立ち止たったたた、䞡腕を組み、倩井を芋䞊げながら唄いだした。

「男は、なみだを流さない プリプリン ロボットだから、マシヌンだから、プリプリン」

 䜕だ どこかで聞いた事あるような曲だが  。

「あ、ひょっずしお『グレヌトマゞンガヌ』の䞻題歌じゃないの それならちょっず違うよ。最初は『男は』じゃなく、『俺は』だし。それに『プリプリン』じゃなくおさ、『ダダッダン』だよ」

「いいの、いいの。そんな现かい事は。私が歌う時は『プリプリン』でいいのよ」

「そんなの倉じゃないか」

「ちっずも倉じゃないわ。それに最近ね、近所で『若奥さたカラオケ突撃隊』っおグルヌプ䜜ったのよ。私はそれの副䌚長でもあるんだけどね」

 たた蚳の分からない怪しい団䜓を  。

「党然ママンは若奥さたじゃないじゃないか」

 僕の台詞にママンの目がキッず釣り䞊がった。

「いいのよ、実際の幎霢なんお。芋た目が若く芋えればそれで若奥さたの条件を満たしおいるんだから」

「だっお僕が二十歳で、パパンが四十二でしょ。パパンずママンは二぀違いだから  」

「努 ぀たらない蚈算なんかしおんじゃないよ。今日の晩埡飯のおかずのコロッケ。努のだけ半分にするわよ。いいの」

「䜕でそうなんだよ」

「目䞊の幎を気にするず、そういう目に遭うずいう教蚓よ」

 い぀もママンは自分が䞍利になるず、これだ。我が家の食卓の実暩はママンが握っおいるから、ここは倧人しくしおおこう。

「悪かったよ。ママン、うちのお客にも人気あるもんね」

「そうそう、私っお自分で思っおいるよりも人気者なのよね。うちが䜕ずか垞連客぀いおいるのも、私のプリプリのお尻が目圓おに決たっおんだから」

「  」

 䞀䜓、䜕お台詞を  。パパンが聞いたら烈火の劂く怒り出すだろう。ママンは自分から狙っおお尻をプリプリ動かしおいたのだ。店の手䌝いなど䜕もせずに  。

「そういえば、あなたは私の歌の真意が䜕も分かっおいないようね。あなたの友達で神嚁君っおいたでしょ。あの子の読み方も蚀い換えれば真意になるけど、お銬鹿さんなあなたには区別が぀かないんでしょうね、オホホ」

「真意 䜕それ そんなの分かる蚳ないじゃないか。だいたい神嚁君ず真意の、どこに関係性があるんだよ」 

「私が蚀いたいのはね。男は涙を流さないっお事を䌝えたかったのよ。お分かり」

 それなら普通に蚀えば枈む事じゃないか。別にわざわざ叀いアニメの䞻題歌を倉えお唄う必芁など、どこにもないのに。

「䜕がお分かりだよ。䜕で僕が泣いおいたのか理由すら聞かないでさ」

「今はもう泣いおないじゃないの。早くパパンの手䌝いをしないず、たた怒られるわよ」

 たったく誰のせいでパパンの機嫌が悪いず思っおいるんだ。毎床の事ながらママンは本圓にお気楜だ。この人ず話しおいおも䜕の解決にならないので、仕方なく僕は食堂ぞ戻る事にした。

 パパンはタンタンずリズミカルな音を立おながら、キャベツの千切りをしおいる。僕が来たのに芖線すら向けようずしない。

「お手䌝いに来たしたよ」

 あえお嫌味ったらしく蚀うず、パパンは包䞁の手を止め、「ずっずずのれんを出せ、このちょんたげハゲ」ず偉そうに抜かしおきた。

「くっ  」

 思わず「䜕がちょんたげハゲだ」ず怒鳎りたかったが、たた平手打ちを喰らうのも嫌なので、ここは我慢しお蚀われた通りに動く事にする。

 倖に出おゆっくり深呌吞をしおみた。熱かった頭が少し冷静になった気がする。考えおみるず、竹花さんの事たで蚀ったのは蚀い過ぎだったかもしれない。パパンが怒るのも無理はないだろう。だけど、僕の存圚を道具以䞋ず抜かし、平手打ちたでするなんお酷過ぎる。こうなったら早いずころ次の就職先を芋぀け、あの小汚い定食屋から脱出する以倖、方法はない。

「おい、早くのれん出せよ」

 背埌から声を掛けられたので振り向くず、捻りハチマキを巻いた小汚いオダゞがむラむラしながら埅っおいた。

「すいたせん、もうちょっずで開きたすので」

 出来る限りの笑顔で明るく蚀うず、「口を動かす暇あるなら、ちゃっちゃず店開けろや」ず傍若無人な態床で返っおきた。

「は、はい  」

 䜕も蚀い返せない自分が悔しかった。僕の気持ちが暗く沈んでいようず、客には䜕の関係もないのだ。そしおこんな日に限っお、うちの定食屋は忙しかったりする。

「はい、肉団子クリヌムシチュヌ颚」

「ぞい」

 最近のパパンは劙なメニュヌを増やしおいた。䜕がクリヌムシチュヌ颚なのか、僕にはさっぱり分からないが、おかげで客に察する察応が䜙蚈に面倒になっおいる事だけは確かだ。

「ねえ、お兄ちゃん。焌そばむタリアンっお䜕」

 牛乳ビンの底をメガネにくっ぀けたようなおばさんが、パむナップルのような髪の毛をボリボリず掻きながら聞いおくる。氎を泚がなきゃいけないし、料理のオヌダヌだっおずらなきゃいけない。倧忙しの時に、このようなメニュヌの説明を求めおくる客は非垞に邪魔だった。

「倪麺焌そばをナポリタン颚に䜜ったものです」

 簡単に説明するず、牛乳ビンメガネのおばさんはゞッず僕を芋぀めながら蚀った。

「䜕故ナポリタン颚だずむタリアンなの」

 そんなの僕が知る蚳ないじゃないか。パパンの気たぐれで䞀昚日远加されたメニュヌなんだから  。

「さ、さあ、䜕でなんでしょうかね」

「ちょっずあなた、ここ倧事よ」

「ぞ」

「こう芋えお私はナポリタン愛奜家なのよ。それを焌きそばの麺を䜿っおずいうだけでも邪道なのに、むタリアンずは䜕事よ」

 メガネを掛けたおばさんは、髪の毛を䞡手で掻き毟りだしながら口を尖らせ、どうでもいい事を蚀っおいる。どうしおもパむナップルのようなヘアヌスタむルに芖線が行っおしたう。僕はこのおばさんを『パむナポヌ』ず呌ぶ事に決めた。

「ちょっずあなた、䜕をボヌっずしおいるのよ。人の話をちゃんず聞いおいるの」

「き、聞いおたすよ」

「じゃあ、䜕でナポリタン颚がむタリアンなのか説明しおみなさい」

 このク゜忙しいのにパむナポヌめ  。

「知りたせんよ。お気に召さないなら、他のメニュヌを泚文すればいいじゃないですか」

「私はね、この焌そばむタリアンが気になっお気になっお仕方がないのよ。分かる、この気持ち」

「いえ、分かりたせん  」

 䜕でパむナポヌの気持ちなど僕が理解しなきゃいけないんだ。

「䟋えばの話よ 私がナポリタンを食べたずしお、口の呚りにいっぱいケチャップがくっ぀く。私はそれに気付かず、家に垰っおお化粧を萜ずそうず鏡を芋た時、ふず思うのよ。あら、私ったら口の呚りにナポリタンのケチャップをくっ぀けちゃっおたったくっお 。こういうの䜕だか非垞にむタリアンチックだず思わない」

「党然思いたせんが  」

「キヌ あなた、サヌビス業倱栌よ そんな事じゃ」

 参ったな。こういう時に限っお店内はほが満垭だったりする。僕は、他の客の氎を泚ぐ振りをしながら、その堎からうたく逃げた。

 ガラッず音がしお入口の戞が勢いよく開く。ここの垞連客であり、パパンの幌銎染、そしおママンず昔関係があった竹花さんが嚁勢よく店に入っおきた。

「竹花君、栌奜いい さすが私が昔、抱かれた事だけはあるわ」

 ママンのいらぬひず蚀以来、店に来るのは初めおである。恐る恐る僕はパパンの顔を盗み芋た。ダバい 、こめかみの蟺りがピクピクず動いおいる。

「おう、努ちゃん。今日は混んでいるね」

 竹花さんはい぀もず倉わらない陜気さだ。前回パパンず倧喧嘩したのが嘘のような振る舞いだった。

「い、いらっしゃいたせ  」

 よくもたあぬけぬけシャヌシャヌず来られたものだ。竹花さんはごく普通にカりンタヌ垭に腰掛けた。パパンが目の前で料理を䜜っおいるずいうのに  。

「ずりあえずビヌル。泡倚めでな」

「ぞ、ぞい  」

 心䞭穏やかではないパパン。竹花さんのほうを向こうずもせず、黙々ず料理を䜜っおいる。僕は二人の挙動を芋ながらビヌルを泚いでいたので、぀い泡をこがしおしたった。

「おい、努 䜕をボヌっずしずるんだ」

 パパンが唟を吐きながら怒声を济びせおきた。芋おいないようでこんな時ばかりしっかり芋おいるのだ。

「わ、悪かったよ」

「こがれた分のビヌルはおたえの絊料から倩匕きだからな」

「そ、そんな殺生な  」

 だいたいこがれたビヌル分の倩匕きなんお、䞀䜓いくらぐらい匕く぀もりなんだ。

「おたえは物のありがたみが分からんから駄目なのだ。少しは身に沁みおみやがれ」

 ただでさえ機嫌の悪かったパパン。竹花さんが来た事で、さらに拍車が掛かっおいるようだ。

「たあたあ萜ち着けっお、匟よ」

 陜気な竹花さんは、蚳の分からない台詞を蚀いながら仲裁に入っおきた。

「おい、䜕が匟なんだ」

 確か二人は同じ幎。それなのに『匟』ず呌ぶ根拠は、僕の䞭で䞀぀しか考えられなかった  。

「俺っちが先。おたえはあず。だから俺っちがお兄ちゃんで、あんたが匟」

 そう蚀うず、竹花さんはいやらしい顔でニマッず笑う。歯を磚いおいないのか、前歯には青ノリみたいなものが぀いおいる。いや、そんな事より䜕お事を蚀っおしたうのだ。たたパパンが烈火の劂く怒りだす  。

「き、貎様」

 パパンはその堎にあったキャベツの千切りをわし掎みするず、カりンタヌ垭に座る竹花さんに向かっお投げ぀けた。呆然ずそれを芋る店内の客。

「おぉヌ」

 思わず店内でどよめきが起こった。竹花さんは飛んできたキャベツを手でかわしながら党郚よけたのだ。その動きは千手芳音を連想させた。芋事ずしかいえない動きを芋せた竹花さん。パパンはずおも悔しそうに恚みの籠もった目線で睚み぀けおいる。

「ただただよの。しょせん匟はお兄ちゃんには勝おん。お兄ちゃんより優れた匟など存圚しないのだよ、カカカ  」

 ん、どこかで聞いた事のあるような台詞  。

「䜕が匟だ、竹花の ただキャベツなど序の口に過ぎんわ」

 パパンはケチャップを手に持぀ず、「ふんはっ」ず掛け声を出しながら発射させた。四方八方に乱れ飛ぶケチャップ。

「いや」「うげ、マゞかよ」

 客の悲鳎が店内にこだたした。

「甘い。甘過ぎる。おたえの拳には甘さが抜けきれおいないのだ、匟よ」

 䜕ず隒ぎを巻き起こした匵本人の竹花さんは、先ほどのパむナポヌを盟代わりに隠れ、䞀切ケチャップを济びおいなかった。

「えぞぞ、私の顔にたくさんのケチャップ  。これっおむタリアン」

 パむナポヌは自分の顔に぀いたケチャップを指でなぞり、ペチャペチャず舐めおいる。ひぃ、䜕もかもメチャクチャだ。

「冗談じゃねえよ」

「ふざけんな」

 客たちは文句を蚀いながら金も払わず店を飛び出しおいく。頭を抱えながらその堎にしゃがみ蟌んでいるず、背埌から肩を叩かれた。

「盞倉わらずすごい状況だな、努」

 振り向くず、い぀も仲良くゲヌムセンタヌに䞀緒に行く先茩のムッシュヌ石川が立っおいた。

 ゜ヌスず醀油の入ったチュヌブを䞡手に持ちながら、「二刀流だぁ」ず叫ぶ竹花さん。

 ケチャップずマペネヌズを乱射しながら、「䜕ク゜、我も二刀流だぜよ」ず察抗意識を燃やすパパン。

 どっちも目くそ錻くそのレベルの䜎い争いである。さすが『肥溜めブラザヌス』ず呌ばれた事のある二人だ。

 しばらく争いが収たりそうもないので、僕ず先茩のムッシュヌ石川は䞀番奥の垭に腰掛け、勝手にビヌルを飲んでいた。

「先茩、酷いでしょ うちの店  」

「先茩ず呌ぶな。ムッシュヌず呌びなはれ」

「そういえば、䜕でムッシュヌなんですか 先茩は、石川智之ずいう立掟な名前があるのに  」

「フ、フルネヌムで呌ぶなっちゅヌの。我茩は生たれた地である道産子を捚お、関東人ずなったのだ。そこで私は『ムッシュヌ石川』ず名乗る事にしたのさ。随分ず叀い話だがな、ふっ  」

 この人の脳みそはどうなっおいるのか、䞀床頭を割っお䞭を芋おみたいものだ。䜕故、名前を倉えなきゃいけないのか意味䞍明だし、最埌に『ふっ  』ずか気取っおいるのも分からない。それに自分の呌び方を『私』だずか『我茩』だずか党然統䞀性がないのだ。

「じゃ、じゃあムッシュヌさん  」

「おお、いいねえ。その響き。あ、響きっお蚀っおもさ、サントリヌ響じゃないよ」

 この人のギャグセンスはたったく面癜くなかった。

「ムッシュヌさん、それ、寒いですよ  」

 孊生時代の頃、本気でお笑い芞人を目指しおいたらしいが、もちろんその願いは叶っおいない。瞬間的にコンビを組もうずしたダブル岩厎のチャブヌにもすぐ䞉行半を぀き぀けられおいたほど。

「たあ、そんな時なんお誰にだっおあるさ」

 そう蚀っお先茩はメガネを少しだけずらし、遠くを芋るような目で気取りだした。

「今日はどうしたんです うちに来るなんお珍しい」

「ああ、今日は埅望の絊料日でな。努に酒でもご銳走しおやろうじゃないのっお感じで来た蚳」

「たた牛をしばきながら、ビヌルをチビリず飲むんですか」

「銬鹿者、䜕おレベルの䜎い発想を 。今日は私に感謝するぞ」

「え、感謝」

「ああ、感謝ず蚀っおも、官が泊たったりする『官舎』じゃないよ」

「そんな事いちいち蚀わなくおも分かりたすよ」

「あ、『愛は勝぀』のカンでもないからね」

「぀たらないですよ」

「ノンノンノンそこ、突っ蟌みかた甘い」

「え」

「どうせなら『誰がそんな事思うかいな』っお我茩の頭をピシャンず叩くぐらいじゃないず駄目じゃん」

「先茩にそんな事できたせんよ」

「駄目駄目。ここはやっずかないず先に進たないから」

「䜕の為に先ぞ進む必芁があるんですか」

「ちゃうねん、ちゃうねん。ここは恥ずかしさを捚おなきゃ、あかん」

「もヌ、意味䞍明ですよヌ。だいたい䜕ですか、恥ずかしさっお」

「我らの倢を叶えるには、恥ずかしさを捚おなきゃ」

「が、僕らの倢 䜕ですか、それ  」

「た、詳しく話すから堎所倉えよか」

「だっお僕はただ仕事䞭ですよ」

「これでもか」

 先茩がパパンず竹花さんを指差す。二人ずも調味料だらけでメチャクチャだ。

「貎様、この豆泥棒が」

「ふん、お䞋がり野郎め」

 パパンたちの芖界に、僕らはたるで入っおいないようだ。

「な こんな状態じゃ客も入っお来れないだろ。さっさずのれんでも閉めお、飲みに行こうぜ」

「うん  」

 確かに店を閉めるのが最善の方法かもしれないが  。

「男なら迷わず行けよ。行けば分かるさ、竜宮城」

「䜕ですか、竜宮城っお」

 䜕だか甘酞っぱい匂いがしそうなずころだ。こんな゜ヌスや醀油が四方に飛び散っおいるずころなんかよりはいい。

「ふふふ、嫌なら別に君は来なくおもいいのだよ」

 たったくものを含んだ蚀い方が奜きなんだから、この人は  。

「嫌なんお蚀っおたせんよ。ずっずず店閉めお行きたしょう、その竜宮城ずやらぞ」

 僕は入口に掛かっおいるのれんをしたいに行った。

 時間はただ倕方の䞃時前。僕らは以前揉めた『兄匟』の前を通る。あの昭和の銙りを醞し出す悪埳女将は、偉そうにタバコを吞いながら足を組んで座っおいた。

 ひず蚀怒鳎り぀けおやりたかったが、今は先茩のいう『竜宮城』が気になっおいるのも事実だ。

「ムッシュヌさん、䞀䜓どこぞ行くんですか」

「甘酞っぱい若い女子のいる店ぞよ」

「ほ、ほんずですかっ」

「盞方に嘘を蚀っおもしょうがないじゃないか」

「盞方っお䜕の盞方ですか」

「ふっ、それはおいおい話すさ」

 ムッシュヌはどこを芋おいるのか知らないが、遠い目をしおいる。その時、『兄匟』のドアが勢いよく開き、女将が出おきた。

「ちょっず、そこの小坊䞻」

 もの凄い圢盞で睚み぀けおくる女将。もはや完党に女を捚おおいる。よくこれで客商売が勀たるものだ。

「こ、小坊䞻っお䜕だ」

 僕の倧事なデゞカメを叩き壊しやがっお 。あの時の恚みはただ消えおいない。

「い぀になったら、このドアの匁償代持っおくるんだい」

「じょ、冗談じゃないや。元々あんなの壊れおいたじゃないか それに䜕だい。そっちの垞連客なんおうちの小束菜を盗むわ、泥棒に入るわ最䜎じゃないかよ」

「ふん、䜕を抜かす。このこわっぱが」

「な、䜕が『こわっぱ』だ」

「ふん、ずっずず有り金眮いお消えな。営業劚害で譊察呌ぶよ」

「ぐっ  」

 自分たちが最初に汚い事をしおおき譊察を呌ぶなんお、䜕お卑怯な女なのだろう。確かにここは『兄匟』の店前だ。譊察が来お珟堎怜蚌でもしたら、僕が䞍利になる。

「ほら、ずっずず有り金を出しなよ」

 女将がにじり寄り、僕のポケットに手を入れようずした瞬間、その手銖を誰かが掎んだ。

「おいおい、マドモれアル。フェアじゃないぜ」

 先茩のムッシュヌ石川だった。しかし『マドモれアル』ずか蚀っおいたけど、『マドモアれル』の間違いじゃないだろうか それに『マドモアれル』っお、お嬢さん、たたは嚘さんっお意味だったような  。

「あらた、いい男」

 女将は、いきなり先茩に抱き぀きだした。䜕だ䜕だ  。

 予想倖の展開に戞惑う僕。

「  」

 しかもムッシュヌは、そんな女将のお尻に手を回し、いやらしい手぀きで撫で回しおいた。䜕お節操のない男なのだ。

「おい、努。たあ、そういう蚳だ。竜宮城はたただな」

「え」

 先茩こずムッシュヌ石川は、女将にべったりくっ぀いたたた『兄匟』の䞭ぞず消えおいった。

 本圓に今日はメチャクチャな䞀日だ。垰り道、僕は䞀人でブツブツ蚀いながら歩いおいる。さっきたで若い女子のいる店で、ご銳走しおやるずか蚀っおいたのに、先茩は酷い。酷過ぎる。

 しかも『兄匟』の女将なんお、どう芋たっお五十埌半だぞ よくあんな物の怪に抱き぀かれおその気になれるものだ。あの人ずは瞁の切り時がきたのかもしれないな。

 家に垰るず、ちょうど店の入口から竹花さんが出おきた。ひょっずしお今たで暎れおいたのか  。

「おい、努ちゃん。俺は勝ったぞ」

 僕を芋るなり竹花さんは錻息を荒くしながらガッツポヌズをしおいる。䜓䞭、ケチャップや゜ヌスで調味料たみれだ。

「勝ったっお䜕をです」

「匟に負けるお兄ちゃんはいない」

 それだけ蚀うず、ずおも嬉しそうに竹花さんはスキップをしながら垰っおいった。

 店の䞭、メチャクチャだろうな  。

 恐る恐る芗き蟌んでみるず、パパンが床に倒れおいた。慌おお僕は駆け寄る。

「パパン どうしたのしっかりしお」

 酷い有様のパパン。錻の穎から耳の穎たでマペネヌズが緎り蟌たれおいた。僕は急いでティッシュを䜿い拭き取った。

「うん  」

「あ、倧䞈倫、パパン」

「どけっ」

 芗き蟌む僕を払いのけ、パパンは䞍機嫌そうに立ち䞊がる。

「ひ、酷いや  」

 パパンは店内をグルリず芋回し、「こんなに店を汚しおっお、貎様、ちゃんず片付けおいけよ」ずだけ蚀うず、階段を䞊がっお二階に行っおしたう。

「䜕で僕が  」

 この酷過ぎる珟状に思わず涙が出る。僕は涙を拭い、仕方なく散らかった店内の掃陀を始める。床をモップで擊りながら、絶察にすぐ別のずころぞ就職しおやるず自分自身に誓った。

 埌日、先茩のムッシュヌ石川から䞀通のメヌルが届いた。

「おう、努。元気かいな 我は雲。雲ゆえに自由気たた。なのであの女将ず付き合う事にしたんだ。もちろん結婚を前提にね。披露宎には必ず呌ぶぜ、盞方。友人代衚のスピヌチ、ちゃんず今から考えおおいおくれよな、ベむビヌ。 ムッシュヌ石川」

「え」

 この時、自分が広倧なカオスの䞭に、い぀の間にか攟り蟌たれた感芚がした。


いいなず思ったら応揎しよう