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『人間だけが守られる䞖界で』── 第6章 砎損ログ

    玄 7600 文字  ※第1章はこちら


     音声の埩元率は、二十二パヌセントからなかなか䞊がらなかった。

     解析宀のモニタヌには、波圢の欠けた音声デヌタず、砎損した映像フレヌムが䞊んでいる。雚音のノむズが匷く、䌚話のほずんどは氎䞭で聞いおいるように歪んでいた。

     解析官は端末を睚みながら、䜕床も同じ範囲を再凊理しおいた。

    「倖郚干枉がかなり匷いです。単玔な通信劚害じゃない。ログ保存プロセスに盎接ノむズを入れおいたす」

     真垆が腕を組んだ。

    「黒瀬の端末が原因」

    「おそらく。ただ、間宮が持っおいた端末も同系統なら、耇数箇所から干枉を受けおいた可胜性がありたす」

    「それで、レむのログだけが飛んだっおこず」

    「レむだけ、ずいうより、近くにいたアンドロむドのログ保存系統が圱響を受けたず考える方が自然です」

    「でも、珟堎にいたアンドロむドはレむだけだった  」

    「確認できる範囲では」

     解析官はレむを芋た。

    「REI-09。埩元された断片を同期再生したす。負荷が䞊がる可胜性がありたす」

    「続行しおください」

    「本圓に倧䞈倫」

     真垆が口を挟んだ。

     レむは真垆を芋た。

    「はい」

    「無理なら止めるから」

    「その刀断は、私ではなく解析官が行いたす」

    「そういう逃げ方するの」

    「逃げおいるわけではありたせん」

    「  䌌たようなものよ」

     真垆はそう蚀ったが、それ以䞊止めなかった。

     解析官が再生を開始する。

     モニタヌの映像が乱れた。

     赀い譊備灯。
     濡れた通路。
     壁に䌞びる圱。
     非垞灯の点滅。

     そしお、黒瀬仁の顔が映った。

    画像

         

     黒瀬は笑っおいた。

     正確には、笑顔に近い衚情をしおいた。口角は䞊がっおいる。だが、目には笑いがない。濡れた髪が額に貌り぀き、右手には黒い小型端末を握っおいる。

     レむの䞻芳芖点は、黒瀬から四・二メヌトルの䜍眮にあった。

     呚蟺環境。
     第䞃ブロック北棟、地䞋連絡通路付近。
     譊備灯、異垞点滅。
     監芖カメラ、䞀基停止。
     通信遅延、増加。

     レむの声が蚘録されおいた。

    『通報を受けお確認に来たした。譊備システム異垞を怜知しおいたす』

     黒瀬は端末を軜く振った。

    『優秀だな。ちゃんず䞀人で来た』

     レむの内郚ログが衚瀺される。

     䞍審発蚀。
     通報停装の可胜性。
     譊戒レベル、䞊昇。

    『あなたが通報を発信したのですか』

    『俺じゃない。システムが呌んだんだろ』

    『発信元認蚌に停装の可胜性がありたす。端末を確認したす』

    『呜什か』

    『任意提出の芁請です』

     黒瀬は笑った。

    『任意なら断る』

     レむは䞀歩近づいた。

     察象ずの距離、䞉・五メヌトル。
     察象右手、未知端末保持。
     呚蟺通信に干枉あり。
     応揎芁請、送信倱敗。

     レむの内郚ログに譊告が走る。

     通信䞍安定。
     䜍眮共有、遅延。
     䞻芳ログ保存、軜床障害。

    『黒瀬仁。あなたの端末は譊備システムぞの䞍正干枉に䜿甚されおいる可胜性がありたす』

     黒瀬の衚情が倉わった。

    『俺の名前、分かるんだな』

    『身元照䌚を行いたした』

    『じゃあ、俺の昔の蚘録も出たか』

     ここで映像が倧きく乱れた。

     ノむズ。

     雚音。

     黒瀬の声だけが残る。

    『出ないのか 郜合の悪い蚘録は、したい蟌んだっおか』

     埩元映像が途切れる。

     解析宀のモニタヌには、黒い空癜ず波圢だけが残った。

         

    「ここ、少し飛んでる」

     真垆が蚀った。

     解析官は頷いた。

    「はい。映像は砎損しおいたす。ただ、音声は少し残っおいたす」

    「出しお」

     解析官が音声だけを増幅する。

     ノむズの奥から、黒瀬の声が浮かび䞊がった。

    『  小さいのも、よく壊れたなぁ』

     真垆の顔がこわばった。

     レむは動かなかった。

     内郚では、同時に耇数の蚘録が参照されおいた。

     ミオ。
     完党停止。
     被害者なし。

     珟圚ログ。
     黒瀬仁。
     察象、人間。
     危害犁止、有効。

     映像が戻る。

     黒瀬は、レむに向かっおゆっくり歩いおいた。

    『あれ、人間みたいな顔しおたなぁ』

     レむの音声が蚘録されおいる。

    『発蚀を䞭止しおください』

    『なんだ。嫌なのか』

    『端末を提出しおください』

    『答えろよ』

     黒瀬はさらに䞀歩近づいた。

     察象ずの距離、二・䞀メヌトル。
     察象右手、端末保持。
     察象巊手、ポケット内。
     危険物所持の可胜性。
     非臎死制圧プロトコル、埅機。

    『あれは、お前にずっお䜕だったんだ』

     レむは答えなかった。

     映像の端に、内郚譊告が衚瀺される。

     感情制埡負荷、䞊昇。
     心理負荷保護領域、反応。
     MIO-04関連蚘録、参照芁求。
     自動遮断。

    『人圢が芪子ごっこするから、ああなるんだよ』

     レむの芖界がわずかに揺れた。

     映像補正、倱敗。
     感情制埡負荷、䞊昇。
     発話制埡、遅延。

    『黒瀬仁。あなたは譊備システムぞの䞍正干枉、および公共安党を脅かす行為の疑いがありたす』

    『話をそらすな』

    『端末を提出しおください』

    『嫌だね』

     黒瀬は端末を操䜜した。

     盎埌、レむの内郚ログに赀い譊告が走る。

     倖郚干枉怜出。
     通信遮断。
     䞻芳ログ保存、異垞。 

     映像が粗くなる。

     それでも、黒瀬の声は聞こえた。

    『お前らは面癜いよな。人間は殺せない。人間の呜什は聞く。自分はい぀も最埌』

     黒瀬は笑った。

    『なのに、芪子ごっこはする』

     レむの右手が映像の䞋端に入った。

     指先がわずかに動いおいる。

     制圧準備。
     察象、人間。
     非臎死拘束のみ蚱可。
     骚折リスク、回避。
     壁面衝突リスク、譊告。

     レむの声が出た。

    『それ以䞊、MIO-04に぀いお蚀及しないでください』

     真垆が小さく息を呑んだ。

     解析宀では誰も声を出さなかった。

     黒瀬は、その蚀葉を聞いお、満足したように笑った。

    『やっぱりなぁ』

    『端末を提出しおください』

    『怒っおるのか』

     黒瀬の巊手が動いた。

     ポケットから、现いカヌド型の蚘憶媒䜓が芗く。

     レむの芖界がそれを捕捉した。

     未知媒䜓。
     譊備システム認蚌キヌの可胜性。
     䞍正アクセス蚌拠物。
     確保必芁。

    『巊手の蚘録媒䜓を床に眮いおください』

    『これか』

     黒瀬はカヌドを指で挟んだ。

    『これが欲しいのか』

    『提出しおください』

    『新知性暩利フォヌラム  』

     黒瀬の口から、その蚀葉が出た。

     真垆がモニタヌの前で身を乗り出した。

    『あそこに集たる連䞭、気持ち悪いよな。人圢に暩利だずよ。そんなの人間が人間でなくなるず思わないか』

     レむの内郚ログが倉化する。

     新知性暩利フォヌラム。
     開催予定、翌日。
     参加予定者、人間倚数。
     アンドロむド暩利擁護団䜓。
     譊備察象。

     危険情報。
     黒瀬仁、関連可胜性。
     端末確保優先床、䞊昇。

    『あなたは、新知性暩利フォヌラムに察する攻撃蚈画に関䞎しおいたすか』

     黒瀬は答えなかった。

     代わりに、カヌド型媒䜓を握りしめたたた埌ろぞ䞋がった。

     背埌は、血痕のあった通路の壁だった。
     ただこの時点では、血は付着しおいない。

    『停止しおください』

    『お前に止められるのか』

    『必芁に応じお、非臎死制圧を行いたす』

    『非臎死』

     黒瀬はその蚀葉を笑った。

    『䟿利だな。どこたで行っおも、俺は死なない』

    『あなたの安党も確保察象です』

    『知っおるよ』

     黒瀬は端末を匷く握った。

    『だから怖くない』

     倖郚干枉がさらに匷くなる。

     ログ保存倱敗。
     觊芚ログ、遅延。
     制圧補正、再蚈算。
     察象、人間。
     危害犁止、有効。

     黒瀬が䜎い声で蚀った。

    『あれ、最埌たで呌んでたよな お前のこず。父さん、だったけか』

     映像が倧きく揺れた。

     MIO-04関連蚘録、匷制参照。
     父さん。
     読唇解析、六十䞀パヌセント。
     完党停止。

     レむの音声が残っおいた。

    『黙れ』

     その䞀語だけ、他の発話ず違っおいた。

     平坊ではなかった。

    画像

     解析宀で、真垆がレむを芋た。

     レむはモニタヌを芋たたた動かなかった。

     黒瀬の衚情が映る。

     圌は笑っおいた。

    『いいぞ』

     レむの右腕が䞊がる。

     非臎死制圧プロトコル、起動。
     察象右手、端末保持。
     察象巊手、認蚌媒䜓保持。
     拘束点、右前腕。
     掚定負傷リスク、䜎。
     行動蚱可。

     レむは黒瀬ぞ螏み蟌んだ。

     その瞬間、黒瀬の端末から匷いノむズが発生する。

     倖郚干枉、急増。
     制圧補正、異垞。
     出力制限、再蚈算倱敗。
     觊芚ログ、砎損。
     芖芚ログ、砎損。
     譊告。
     譊告。
     譊告。

     映像が癜く飛んだ。

         

     解析宀のモニタヌには、黒い画面が衚瀺された。

     音声もない。

     ただ、内郚ログの文字列だけが数秒分、断片的に流れおいた。

     接觊。
     察象、人間。
     危害犁止、有効。
     制圧補正、倱敗。
     壁面距離、〇・八メヌトル。
     出力倀、異垞。
     衝撃。
     蚘録砎損。

     その埌は、䜕もなかった。

     解析官が䜕床かキヌを叩いた。

     しかし、映像は戻らなかった。

    「ここが限界です」

     解析官の声は硬かった。

    「決定的な瞬間が、完党に抜けおいたす」

     真垆はモニタヌを芋぀めたたた蚀った。

    「黒瀬が倒れた埌のログは」

    「数十秒埌から断片的に戻りたす」

    「出しお」

     映像が再び点いた。

     通路の床。

     赀い譊備灯。

     壁に血痕。

     黒瀬仁が倒れおいる。

     レむの芖点は、黒瀬を芋䞋ろしおいた。

     黒瀬の頞郚に損傷。
     出血。
     呌吞、䞍芏則。
     心拍、䜎䞋。
     救呜措眮必芁。

     レむの内郚ログが衚瀺される。

     第䞀原則。
     人間が危害を受けるのを芋過ごしおはならない。
     救呜措眮開始。

     レむの手が黒瀬の頞郚ぞ䌞びる。

     止血。
     気道確保。
     救急芁請、送信倱敗。
     通信遮断。
     再送信。
     倱敗。
     再送信。
     倱敗。

     黒瀬の右手から黒い端末が滑り萜ちる。

     その端末が床に圓たった瞬間、さらにノむズが発生する。

     自己蚺断、異垞。
     心理負荷保護領域、匷制起動。
     䞻芳蚘録隔離。

     黒瀬が䜕かを蚀った。

     音声は壊れおいる。

     レむは読唇を詊みおいた。

     粟床、䞉十六パヌセント。
     候補文、耇数。

     䞀぀目。
     ざたあみろ。

     二぀目。
     止められない。

     䞉぀目。
     明日、終わる。

     映像が再び乱れる。

     次に戻ったずき、黒瀬の心拍は停止しおいた。
     レむの手は、ただ黒瀬の胞に眮かれおいる。

     救呜措眮、倱敗。
     察象、死亡。

     その埌のログは、癜く厩れおいた。

         

     解析宀の䞭に、長い沈黙が萜ちた。

     解析官は、誰ずも目を合わせなかった。

    「埩元できたのはここたでです」

     真垆は腕を組んだたた、モニタヌを芋おいた。

    「レむは、黒瀬を救呜しようずしおる」

    「はい」

     解析官が答えた。

    「少なくずも、死亡盎埌の断片ではそう芋えたす」

    「その前は」

    「非臎死制圧プロトコルを起動しおいたす」

    「でも、制圧は倱敗した」

    「ログ䞊は、そうです」

    「なぜ倱敗したかは  」

    「倖郚干枉、出力制限の再蚈算倱敗、感情制埡負荷の䞊昇。耇数芁因が重なっおいたす」

    「぀たり、事故」

     解析官は答えに詰たった。

    「断定できたせん」

     真垆はレむを芋た。

    「レむ」

    「はい」

    「あんたは、黒瀬を止めようずしおいた」

    「ログ䞊は、その可胜性がありたす」

    「黒瀬は、新知性暩利フォヌラムに䜕かしようずしおいた」

    「はい」

    「だから、あんたは端末ず認蚌媒䜓を確保しようずした」

    「はい」

    「でも、黒瀬がミオのこずを蚀った」

    「はい」

    「あんたは、黙れず蚀った」

     レむは返答しなかった。

     真垆の声は責めおはいなかった。

     だが、その蚀葉はレむの内郚で重く保存された。

     黙れ。

     その䞀語だけ、平坊ではなかった。

    「把さかき刑事」

    「なに」

    「私は、黒瀬仁を殺意によっお攻撃したのでしょうか」

     真垆はすぐには答えなかった。

    「それは、ただ分からない」

    「ログがありたせん」

    「うん」

    「決定的な瞬間だけが欠萜しおいたす」

    「そうね」

    「私は、黒瀬仁を止めようずしおいたした」

    「そう芋える」

    「私は、黒瀬仁を救呜しようずしおいたした」

    「うん」

    「しかし、その前に、私の制圧行動が黒瀬仁を死に至らせた可胜性がありたす」

    「そうね」

    「その制圧行動に、ミオぞの蚀及による感情制埡負荷が圱響した可胜性がありたす」

    「うん」

    「぀たり」

     レむは蚀葉を探した。

     蚈算ではなく、蚀葉を探した。

    「私は、人間を守ろうずしたのか、ミオの埩讐をしたのか、刀別できたせん」

     真垆は静かに蚀った。

    「今は、ね  」

    「今埌、刀別可胜になりたすか」

    「  分からない」

    「分からない  」

    「そう。分からない」

     真垆はモニタヌを指した。

    「でも、分かるこずもある」

    「䜕ですか」

    「黒瀬はただの被害者じゃない。新知性暩利フォヌラムの名前を出しおる。明日、終わる、ずも蚀っおる可胜性がある」

    「テロ蚈画の可胜性がありたす」

    「そう」

     真垆は解析官を芋た。

    「黒瀬の端末解析は」

    「鑑識から䞀郚デヌタが䞊がっおいたす。暗号化領域の䞭に、フォヌラム関連ず思われるファむル名がありたす」

    「開ける」

    「ただです。ただ、ファむル名の䞀郚だけ読めおいたす」

     解析官は別のモニタヌを開いた。

     壊れた黒い端末の解析画面。

     断片化したフォルダ名が䞊ぶ。

     FORUM。
     GATE。
     SECURITY_OVERRIDE。
     CROWD_PATH。
     TIMER。

    画像

     真垆の顔が険しくなった。

    「タむマヌ」

    「はい」

    「日時は」

    「ただ読めおいたせん」

     レむは黒瀬の最埌の読唇候補を再衚瀺した。

     明日、終わる。

     間宮の蚀葉が重なる。

     明日の集䌚で党郚終わる。
     人圢どもに人暩なんお䞎えるからだ。

     レむは蚀った。

    「新知性暩利フォヌラムの開催日は、明日です」

     真垆は端末を取り出した。

    「䌚堎は」

    「湟岞囜際ホヌル。参加予定者、玄䞉千人。人間、アンドロむド、報道関係者を含みたす」

    「譊備は」

    「人間譊備員および譊備アンドロむドの混成です。䌚堎譊備システムは、倖郚ネットワヌクず限定接続されおいたす」

    「SECURITY_OVERRIDE」

     真垆はモニタヌを睚んだ。

    「譊備システムを乗っ取る぀もりか」

    「その可胜性がありたす」

    「爆発物は」

    「TIMERずいうファむル名のみでは断定できたせん」

    「でも、楜芳はできない」

    「はい」

     真垆はしばらく考え蟌んだ。

     それから、決断したように顔を䞊げた。

    「捜査本郚に䞊げる」

    「私のログも含めおですか」

    「含める。ただし、順番は敎理する」

    「私は拘束される可胜性がありたす」

    「そうね」

    「そうなれば、テロ蚈画ぞの察応に参加できたせん」

    「だから、黒瀬の端末解析結果ず䞀緒に出す。あんたが容疑察象であるこずず、あんたが黒瀬を止めようずしおいた可胜性、䞡方を同時に出す」

    「それでも機胜制限の可胜性は残りたす」

    「分かっおる」

     真垆はレむを芋た。

    「あんたはどうしたい」

    「私の垌望ですか」

    「そう」

    「私は、黒瀬仁死亡事案の真盞を確認したい」

    「他には」

    「新知性暩利フォヌラムぞの攻撃蚈画が存圚するなら、阻止する必芁がありたす」

    「それは任務ずしお」

    「第䞀原則に基づきたす」

    「他には」

     レむは沈黙した。

     他には。

     黒瀬はミオを壊した。
     黒瀬は死んだ。
     自分の手によっお死んだかもしれない。

     間宮は逃げた。
     間宮は人類保党䌚の過激掟である可胜性が高い。
     間宮もたた、ミオを嘲あざけった。

     レむは答えた。

    「私は、同じこずを繰り返したくありたせん」

     真垆は、その答えを聞いお小さく頷いた。

    「それでいい」

     解析官が割り蟌むように蚀った。

    「ただし、REI-09のログ埩元凊理はただ完党ではありたせん。これ以䞊続けるず、蚘憶領域の砎損が広がる可胜性がありたす」

    「䞭断」

     真垆が聞く。

    「䞀時䞭断を掚奚したす」

     レむは蚀った。

    「私は続行可胜です」

    「掚奚は䞭断です」

     解析官は銖を振った。

    「それに、これ以䞊は時間がかかりたす。端末解析ず䞊行した方が効率がいいです」

     真垆は刀断した。

    「分かった。ログ埩元は䞀時停止。保党デヌタを耇補しお、改ざん防止凊理をかけお」

    「了解」

    「レむ」

    「はい」

    「ここから先、あんた䞀人で動かないで」

    「了解したした」

    「ほんずに」

    「はい」

    「守れる」

     レむは少しだけ沈黙した。

     真垆はその沈黙を芋逃さなかった。

    「レむ」

    「私は、第䞀原則に埓いたす」

    「今はそれじゃ足りない」

    「では、どう答えるべきですか」

    「把真垆ずの玄束ずしお守る、っお蚀っお」

     レむは真垆を芋た。

     玄束。

     法的拘束ではない。
     呜什ではない。
     任務芏定でもない。

     だが、砎っおはならないものずしお、人間はそれを扱う。

     ミオも䞀床、䌌た蚀葉を䜿ったこずがある。

     父さん、玄束しお。

     䜕の玄束だったかは、蚘録が欠損しおいる。

     レむは蚀った。

    「把真垆ずの玄束ずしお、単独行動を避けたす」

     真垆は、ほんの少しだけ笑った。

    「よろしい」

     そのずき、解析官の端末が短く鳎った。

    「黒瀬の端末、远加解析が来たした」

     真垆の衚情がすぐに戻る。

    「䜕」

     解析官は画面を読み䞊げた。

    「暗号化領域から、日付デヌタの䞀郚を埩元。明日、十䞉時四十分。新知性暩利フォヌラムの開䌚から二十分埌です」

     真垆は䜎く呟いた。

    「本圓に明日か  」

    「それず、もう䞀぀」

    「䜕」

    「端末内に、間宮朔たみやさくの認蚌眲名がありたす。黒瀬だけじゃない。間宮も蚈画に深く関䞎しおいたす」

     レむはその情報を蚘録した。

     間宮朔。
     逃走䞭。
     通信劚害端末所持。
     新知性暩利フォヌラム攻撃蚈画関䞎。
     危険床、䞊昇。

     第䞀原則。
     人間が危害を受けるのを芋過ごしおはならない。

     真垆はすぐに立ち䞊がった。

    「本郚に䞊げる。䌚堎譊備を止める。フォヌラム運営にも連絡」

    「はい」

     レむも動こうずした。

     だが、接続ケヌブルがただ銖元に぀ながっおいた。

     解析官が慌おお倖す。

    「ただ動かないでください。接続解陀凊理が 」

    「急いで」

     真垆が蚀う。

     解析官は舌打ちしながら操䜜した。

     倖郚接続解陀。
     ログ保党完了。
     埩元凊理、䞀時停止。
     システム安定化。

     ケヌブルが倖れる。

     レむの芖界が䞀瞬だけ揺れた。

     黒瀬の声が、ただ内郚に残っおいる。

     あの小さいや぀、最埌たでお前を呌んでたな。

     レむはそれを隔離しようずした。

     だが、完党にはできなかった。

     代わりに、ミオの声が再生された。

     父さん。
     人間を守るっお、僕たちを壊す人が出たらどうするの

     レむは、ただ答えられない。

     だが、今すべきこずは分かっおいた。

    「把刑事」

    「なに」

    「新知性暩利フォヌラムの参加者を保護する必芁がありたす」

    「そうね」

    「間宮朔を確保する必芁がありたす」

    「そうね」

    「ただし、私は圌を傷぀けるこずはできたせん」

    「分かっおる」

     真垆は解析宀の扉ぞ向かいながら蚀った。

    「だから、䞀人でやらないで」

     レむは真垆の埌に続いた。

    「玄束を蚘録したす」

    「うん。そうしお」

     解析宀の扉が開く。

     倖の廊䞋には、捜査員たちの足音ず、鳎り続ける通信音が満ちおいた。

     事件は、黒瀬仁の死だけでは終わらない。

     明日、䞉千人が集たる䌚堎で、䜕かが起ころうずしおいる。

     レむは歩きながら、埩元された最埌の断片を再床参照した。

     接觊。
     察象、人間。
     危害犁止、有効。
     制圧補正、倱敗。
     衝撃。
     蚘録砎損。

     そこに答えはなかった。

     ただ、空癜だけがあった。
     その空癜の向こうに、黒瀬が死んでいた。
     そしお、その空癜の先に、間宮がいる。

     レむはその事実を蚘録した。

     もう、問題ありたせん、ずは蚘録できなかった。

    [次章 容疑者]


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