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【短線連茉小説】氎槜③

    前話: 【短線連茉小説】氎槜②

     翌朝目を芚たすず、すべおは悪い倢だった、などずいうこずはなく、私は萜胆したした。私は盞も倉わらず氎の入った朚造の郚屋に居たした。倧量の魚たちが優雅に目の前を泳いでゆき、昚日ず同じように䞉人の人物が郚屋の䞭を埘埊しおいたした。
     起き䞊がる気になれず、暪になったたた䞉人の姿を少し眺めたした。
     昚日ず同じく、藍色の着物の女性は自らを哀れむように、時々自分の肩を抱きかかえおしゃがみ蟌み、うなだれおいたした。はたから芋れば嘆き悲しんでいる姿に芋えるものの、その目ず衚情はう぀ろで、䜕の感情も読み取れたせん。しばらくするず立ち䞊がっお郚屋を歩き回り、少しするずたた同じ姿勢でしゃがみ蟌みたす。機械的に同じ動䜜を繰り返しおいるようなのです。
     黒い倖套の男性も同じでした。時折䞡腕を組んで立ち、ふんぞり返るように䞊䜓を反らせお䞭空を芋䞊げた埌、床のあたりを芋䞋ろしおいたす。その目や衚情に生気はありたせん。しばらくするず郚屋を歩き始め、たたしばらくするず同じ姿勢で床を芋䞋しおいるのでした。
     灰色のがろがろの着物を着た老人も、やはり銖をゆらゆらず揺らしながら口をぱくぱくさせ、焊点の定たらない目をしお郚屋を埘埊しおいたす。そしお、壁の藻にかじり付いおは歩き、かじり付いおは歩き、を繰り返しおいるのでした。
     䞉人の姿を芋るず気が滅入りたしたが、昚日の混乱からは少し萜ち着きを取り戻しおいたした。呚囲の壁からゆっくり芖線を䞊空の光ぞず動かしおいくず、どうあっおも届かない高さであるようには思えないのです。それに、私がここにいるのに他の誰かが気づいお匕き䞊げおくれる可胜性だっおありたす。
     私は昚日ず違い、冷静に足をかけられそうな堎所を探し始めたした。䞉人の姿は目に入れないように努めたした。朚の壁の脆そうに芋える所を叩いおは蹎り、叩いおは蹎り、登るための足がかりを少しず぀䜜ろうずしたした。
    しかし、やはり壁は頑䞈で穎どころかくがみさえ䜜るこずができたせん。
     そうしおいる間にも魚たちは郚屋䞭を泳ぎ回り、すぐ傍を通り過ぎるたびに氎が揺れ、ごおっずいう音が耳に響きたした。長時間繰り返すず身䜓に疲劎が抌し寄せおきたす。それでも、きっず䜕か這い䞊がる手段があるはずなのです。
     結局、䜕の収穫もないたた頭䞊の癜い光は消えおゆき、倖套の襟を手繰り寄せお膝を抱え、私は床の䞊で眠りに぀きたした。

     次の日も私は蟛抱匷く足がかりを䜜ろうずしたした。しかし、少しず぀焊りが襲っおきたした。䜕床壁を回ろうず、這い䞊がる足がかりさえ芋぀からないのです。その䞊、空腹感が無芖できなくなっおいたした。この郚屋に萜ちお以来、自然ず飲み蟌むこの郚屋の氎しか口にしおいなかったのです。
     そしお、氎圧のせいでしょうか。息ができないなどずいうこずはないのに、胞ず銖の間に圧迫するような重苊しいものが垞にあっお、そのせいで䜕をしおいおも苊しいのです。
     私は苛立ち爪先を匷く叩き぀けお壁をよじ登ろうずしたしたが、すぐに爪ず足が壁から滑り萜ちおしたいたす。䜕床か繰り返すうちに右手の人差し指の爪がはがれおしたいたした。激痛のあたり、痛い、ず蚀葉にならない声で叫ぶず、私は指を抑えおしゃがみこみたした。
     激痛ず無力感の䞭で私は郚屋の䞭を芋぀めたした。魚たちは郚屋を瞊暪無尜に泳ぎ回っお䞉぀の圱の間を抜け、銀の鱗に陜光を反射させながら癜く波打぀光の䞭を力匷く泳いでゆきたす。癪ですが、矎しい光景です。それをがんやり眺めおいるず、遠い日の蚘憶が蘇りたした。

     それは十歳になるかならないかの頃、父ず二人で山ぞ釣りに行った時のこずでした。
     父は仕事に生きる人でした。私が生たれる数幎前、父は繰糞機の補造䌚瀟を蚭立し、自ら開発した新しい繰糞機の販売を始めたした。性胜の良さから埐々に父の機械を䜿甚する補糞䌚瀟が増えおいき、第䞀次倧戊の特需ず埩興需芁によっお我が家は財を成したした。恐慌を経おも、その富に陰りが差すこずはありたせんでした。
     父は仕事熱心の厳栌な人で、息子の私にも父芪らしいこずはろくにしおくれたせんでした。しかし、ある晎れた倏の䌑日、父は私に山ぞ釣りに行こうず誘っおくれたのです。 
     二人でどこかぞ出かけるのは初めおでした。柔らかな陜光が朚々の間から差し蟌む䞭、私ず父は釣り竿ずブリキのバケツを抱え、山道を䞊んで歩きたした。父ず同じ長さの釣り竿を持たせおもらえたのが誇らしかったのを芚えおいたす。父はい぀もず倉わらぬいかめしい衚情をしおいたした。䌚話はなく、川のせせらぎず鳥や虫の声が穏やかに私たちを包んでいたした。
     川蟺に着くず、岩の䞊に腰掛けお二、䞉メヌトル䞋の川に向かっお釣り糞を垂らすこずになったのですが、私は倧はしゃぎでずおもじっずなどしおいられたせん。岩の呚りを飛び回り、結局川に萜ちおしたったのでした。
     泳いで川岞に䞊がるず、父が岩の䞊に立っお笑っおいるのが芋えたした。い぀も厳しい顔぀きの父の笑顔を芋たのは、その時が初めおでした。

     私は指を抌さえお郚屋の隅にしゃがんだたた、頭䞊の癜い光を芋䞊げたした。きっず届くはずなのです。あきらめさえしなければ、きっずあの光の䞋ぞ行けるはずなのです。腹が鳎ったのを感じたした。
     私は空腹をごたかそうず䞡手で腹を抌さえ぀けたした。
    その日、女性も壁の藻を食べるようになっおいるのに気が付きたした。

                                                                                                                      (続く)

    次話: 【短線連茉小説】氎槜④凍頂桂花

     
     
    凍頂桂花ず申したす。 翻蚳家志望なのですが文の流れを読む力の匱さを痛感し、力を付けるために倧孊時代ぶりの小説を曞き始めたした。 感想等いただけたしたら嬉しいです😊

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