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エッセイ|笑顔の裏にあるものを、測りきれないままでいたい

君看双眼色 不語似無憂
(君看よ 双眼の色 
語らざれば 憂いなきに似たり)

私の高校時代の担任の先生は
この言葉が好きだった。

「その目を見てごらん。
何も言わなければ、
憂いなどないように見えるだろう」 

どういう経験が、
あの先生にあったのかは、わからない。

高校時代、私には、ユニークな友人がいて
今も帰省するたびに会うのだけれど
彼女のお弁当は、時々面白かった。

りんごが一個、まるごと入っていたり
バナナが一本、まるごと入っていたり。

愛情を込めて、私を含む彼女の友人たちは
「さすが○○のお母さんやなぁ」なんて
笑ったものだけど

大人になってから
彼女のお母さんは、心の病気で
時々、
子どもたちと離れて暮らしていたと知った。

今思えば、あのお弁当は
身体が辛いお母さんが、せめて、と
入れてくれたものだったのかもしれないし

お母さんはそもそも一緒にいなくて
彼女が朝バタバタと、
袋に詰めたものだったのかもしれない。

人は、本人が語らなければ
今目の前で笑っている人の哀しみにさえ
気づかないのかもしれない。

私は、うつだったことを
ずっと隠してきた。

傍から見ると、
ただ大学を出て、すぐ結婚して、
働いたことがない、
経歴的には、そういう人間だ。

初対面の人に
「子どもがいないのに、専業主婦?
あなた、社会をなめてるの?」って
怒られたこともある。

資格を取って、仕事にしたくて
自分の経歴の振り返りを一緒にやったら、
「平和に生きてきたのね」と言われたりした。

私が隠していたのだから、仕方がないけれど
周りの人に見えているのは
その人の、ほんの一部なのだ。

目の前にいる人の気持ちさえ
人は測りきれない。
少なくとも、私は、全てに気づくことはできない。

だけど、だからせめて
「測りきれない」
「私は全てわかっているわけじゃない」
それだけは、忘れずにいたい。

哀しみを抱えて笑っている人は
思ったよりたくさん、
いるような気がするから。


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もう少し、問いの中にいたい方へ

▶人はどうして生まれてくるのか、わからないままで

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抱えていた、哀しみを
▶あの橋の上、指先に残るもの
▶曇りガラスの冬

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▶ようこそ!つはるの世界へ

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