
メキシコ怪異禄 第五怪異「展示予定:メヒカリのミイラ」
メヒカリの夏は暑い。全てが乾く。




Bosque de la Ciudadとミイラについて
Bosque y Zoológico de la Ciudad de Mexicaliは、メヒカリ市内にある公園と動物園を合わせたような施設で、家族連れが週末を過ごす身近な場所のひとつです。園内には動物園のほか、歴史自然博物館、植物園、湖、園内を走る小さな列車などがあり、散歩したり、動物を見たり、少し涼しい屋内展示に入ったりできます。
その歴史自然博物館には、グアナフアト由来とされるミイラが展示されています。地元メディアの記事では、このミイラは「マリア」と呼ばれており、長いあいだ展示室に置かれてきたものとして紹介されています。2018年には、破損していたガラスを外し、木製の展示ケースを塗り直すなど、久しぶりの手入れが行われたそうです。
ミイラと聞くと、遠い時代のもの、あるいは特別な怪談の題材のように感じます。でも、メヒカリの暑さの中でその展示を見ると、少し違った身近さがあります。強い日差し、乾いた空気、水を買うか少し迷うような日常の感覚。その延長線上に、展示ケースの中の乾いた身体が、ふと自分の未来のように見えてしまうことがあるかもしれません。
この話は、ミイラそのものが何かをする話ではありません。ただそこに置かれているだけです。けれど、見る側が疲れていたり、暑さでぼんやりしていたり、財布の中身を気にしていたりすると、展示物は急に近いものになる。Tが見てしまったのは、過去の誰かというより、メヒカリで少しずつ乾いていく自分自身だったのかもしれません。

また次の怪異でお会いしましょう。