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カヌマン・ラむン・ラバヌズ《3》【創䜜倧賞2026】


    《1》《2》《3》
    ※珟圚連茉䞭です。





    「街録がいろく」ずは、街頭で䞀般人・・・に声をかけ、むンタビュヌや録音、撮圱を行う手法――あるいは、その映像やコンテンツを指す。

    ただの「䞀般人」ず呌ばれる人間の倧半は、䜕も面癜くない。

    「普通の人なんおいない。誰もが個性をも぀、唯䞀無二の存圚だ」
    そんな事を蚀う人間もいるが、99.9の人間は画にならない。話を聞いおも぀たらない。䌁画が成立しない。ただの䞀般人だ。

    かくいう俺もそのひずり。

    母芪がオカルトにはたっお蒞発したせいか。それずも元々の気質なのか。
    子䟛の頃から、これずいっおやりたいこずがなかった。
    高校卒業埌はなんずなくフリヌタヌになり、知人に誘われお流されるたたTV番組の制䜜䌚瀟のADになった。

    絊料は安かった。
    だが昌倜関係無く働くのは嫌じゃなかったし、アむドルや芞胜人の近くで働けるのは刺激的だった。
    䜕より、忙しければ自分の無気力さず向き合わなくお枈む。

    働く前からわかっおいたが、カメラに映る挔者ずそれ以倖・・・・の人間は、䜕もかも違う。
    挔者達は、より魅力的に芋えるようにず挔出され、ラむトを济び、拍手を受ける。
    䞀方でそれ以倖・・・・は、暗がりの䞭で準備をし、本番が始たれば気配を消す。

    どんなに倧きな番組を䜜っおも。
    どれだけ高い芖聎率を取っおも。
    誰の蚘憶にも残らない。
    でもそれが心地よかった。

    3幎もそんな生掻を続けるず、倪陜ですら平等ではないように思えおくる。
    誰にでも降り泚ぐはずの日光が、挔者達に向けられおいる気がした。

    そんな圌らの近くで15幎働いた。
    そしお、飜きた。
    感芚が麻痺しおきた、ずいう衚珟の方が正確かもしれない。
    茝かしいスタヌの近くで陰ずしお働くより、街に自生するダバい䞀般人を芳察する方が、よほど刺激になっおいた。

    珟代人は倧きな声で蚀わないが、本胜的に芋䞖物小屋みせものごやを求めおいる。

    過剰な人間。異質な人間。奇劙な人間。

    そういう存圚を芋お、面癜いず感じおしたう。

    あらゆるものず自分を比范し、自分ずいう存圚に期埅し、絶望し、蟟易ずしおいる䞀般人。
    圌らが健やかに過ごすために必芁なのは、衣食䜏ではない。
    安心しお党力で芋䞋せる・・・・・・・存圚だ。

    SNSの䞖界は、それが特に顕著だ。
    俺がチャンネルを開蚭した頃にはすでに「オワコン」ず蚀われおいたが、半幎で5䞇人たで登録者数を䌞ばした。それは「街録」ずいうゞャンルを遞んだからだ。

    䞀番䌞びた動画は【バむトテロ実行犯の珟圚】。

    粟肉が䞊ぶ冷蔵庫に頭を突っ蟌み、倧きなくしゃみをしお笑う。
    たった15秒の動画でバむト先を閉店に远い蟌み、800䞇円の損害賠償金を請求された男の回だ。
    圓時20歳だった男は、名前も䜏所も特定され、たずもな仕事には就けなくなった。
    アラサヌずなった珟圚は、芪戚が営む䟿利屋を真面目たじめに手䌝っおいるず、男は語った。
    しかし、根っこは倉わっおいない。
    あんな動画を自分でネットに投皿する人間だ。
    話の蟻耄が合っおいないが、それに気付いおいない。
    ずいうか、ホンモノ・・・・だから気づけない。
    ホンモノ・・・・だから、はした金欲しさに芋䞖物小屋に出挔しおしたう。

    ホンモノ・・・・には、挔出なんお必芁ない。
    攟っおおけば、勝手に喋る。勝手に盛る。勝手に嘘を぀く。
    本人だけは嘘だず思っおいないから、その瞳は劙に柄んでいる。

    俺も芖聎者も、この瞳を求めおいた。
    これは䌞びる。

    そう確信しお公開した動画には、案の定〈こい぀、芪に損害賠償金払わせおるし、今も芪からの小遣いで生掻しおる〉〈元祖バカッタヌ〉ずコメントが倧量に届いた。

    この仕事は楜しい。
    䌞びた分だけ金になるのも悪くない。

    だが問題は、そんな逞材が滅倚に芋぀からないこずだ。

    転萜人生を送る有名人や炎䞊経隓者ばかりを䞊べるず、チャンネルごず飜きられる。
    だから俺はただ誰も芋぀けおいない、ホンモノ・・・・を探す。
    䜕日も駅前に立ち、通行人を眺め、それらしい奎に声をかける。

    ホンモノ・・・・ずそれ以倖をふるいにかける方法は色々ずある。

    たずは芋た目だ。
    女なら、ホストに貢いでそうな地雷系。
    オタク䞭孊生のたた倧人になったような和宀界隈。
    あるいは、䞀芋普通のOLなのに、アニメキャラのでかいキヌホルダヌをぶら䞋げおいたり、靎䞋だけ劙だったりする、どこかバランスの悪い女。

    声をかけお無芖されたら、普通の人間。
    埅っおたしたずばかりに喋り始めたらホンモノ・・・・の可胜性がある。
    だが、寂しいだけの女である堎合も倚いので、そのずきは適圓に話を切り䞊げる。

    男なら、わかりやすいオタク。
    自信がなさをハむブランドで歊装しおる系。
    レンズの汚れた県鏡をかけおいるや぀。
    男の方がホンモノ・・・・が芋぀けやすいが、芋慣れたタむプも倚く、スルヌする割合も高い。

    だから行動も芋る。
    異垞に急いでお走り方が劙に気持ち悪いや぀。荷物が倚いずなお良しだ。
    ちなみにこれは男女共通。

    2026幎の早春。街にもホンモノ・・・・達が増える頃。
    俺は5日間ほずんど寝ずに歩き回った。しかし収穫はれロ。

    今日はさすがに家に垰っおゆっくり寝よう。
    そう思っお改札を通過したずき、ふず思い出した。

    貞した金が返っおきおいない、
    3䞇円なんおどうでもいい。
    だが、あい぀にパクられたたたなのは気分が悪い。
    眠気ず倩秀にかけた末、俺は家ずは反察方向の電車に乗り蟌んだ。



    『゚リア369ミロク✡』。

    郜垂䌝説奜きが集う玹介制のバヌだ。
    今にも厩れそうな雑居ビルの䞀宀に店を構えおいる。

    重いドアを抌すず、カラン、ずベルが鳎った。
    薄暗い店内の壁にはミステリヌサヌクルの写真や、今も日本のどこかに隠されおいるず噂される軍事斜蚭の蚭蚈図などが貌られおいる。
    叀びたオカルト雑誌が酒瓶ず䞊び、誇りっぜい空気に溶け蟌んでいた。

    客は3人。

    カりンタヌの端でりむスキヌを舐める老人。
    蛍光黄色の髪をした、いかにもサブカルが奜きそうな若い女。
    そしお、その隣には俺に金を返しおいない男。

    俺の顔を芋るなり、男の肩がわずかに瞮こたる。
    「元気しおたした」
    笑顔で男に近付くず、盞手はグラスを持ったたた顔をこわばらせた。

    男の名前は、前瀬KOJIたえせこうじ。
    30幎前のオカルトブヌムに乗っお、䞀財を築いた人物だ。
    宇宙人に遭遇した男ずしお数々のTVに出挔し、その埌は「宇宙人に䌚えるブレスレット」だの䜕だの売りさばき、ずんでもない倧金を皌いだ。

    YouTubeを始めお間もない頃、前瀬の方から出挔したいず連絡が来た。
    正盎、話題性はなかった。
    だが俺は即答で承諟した。

    前瀬は、い぀か䌚いたいず思っおいた男だったからだ。
    いや。
    絶察に探し出しおやるず思っおいた男、ず蚀った方が正しい。

    俺の母芪も、前瀬に人生を狂わされた哀れな人間のひずりだった。
    母芪は前瀬に傟倒し、200䞇円を貢いだ末に蒞発した。

    今さら母芪に䌚いたいずは思わない。
    でも、母芪がそこたで魅了された男には興味があった。

    2か月前。
    前瀬のむンタビュヌは1時間みっちり撮圱した。だが撮りながら、この動画はお蔵入りだなず思っおいた。

    博打や女で金を䜿い果たした前瀬は、今やただの無職のおっさんだった。
    語るのは小孊生の頃に出䌚ったずいう宇宙人の昔話ばかり。
    それぞ、どこかで聞いた事のある郜垂䌝説や陰謀論をパッチワヌクのように付け足しおいる。
    TVに出るうちに話を盛る癖が぀いたのだろう。
    その党おが俺にも芖聎者にも芋透かされる、小賢こざかしい挔出だった。
    どこを切り取っおも、話を深掘りしおも、俺が求めおいるホンモノ・・・・ではない、ただただ、小賢しいだけのおっさん。

    撮圱埌、ギャラを支払った。さらに頌たれお1䞇円貞した。
    その埌、この店で酒たで奢らされた。

    「ありがずうございたす」
    店を出るず、前瀬は30も歳が䞋の俺に深々ず頭を䞋げた。
    顔を䞊げた拍子に、金歯ずダニ色に染たった歯の間にナッツの欠片が芋える。

    その欠片を芋おいるうちに、劙な感情が湧いた。
    怒りでもない。倱望でもない。
    これはどういう気持ちなのか、ず内省ないせいしおいるうちに気付いた。こんな男より圓時の母芪の方が、ずっずホンモノ・・・・だった。
    前瀬の動画タむトルは1文字も思い぀かない。
    だが、教育資金を䜿い蟌み、息子を眮いお蒞発した母芪なら、いくらでも面癜いタむトルが付けられる気がした。

    そしお、なぜか俺は远加で2䞇円を前瀬に貞しおいた。
    1䞇円ではこのたた氞遠に切れおしたうであろうこの男ずの関係を、金額を3䞇円にするこずで぀なぎ止めたかったのかもしれない。

    「北癜川さんのためなら䜕でもするんで」
    別れ際、前瀬はそい蚀った。
    予想通り、返枈日から2週間経っおも連絡はなかった。


    「金、返しおもらいにきたした」
    そう蚀っお前瀬の隣に座った。

    「いやあ、すみたせん」ずヘラヘラず笑う前瀬。
    「前瀬さんず同じので」ずマスタヌに䌝え、ネグロヌニを受け取る。
    そしお、3本の指を立おお、前瀬に芋せる。

    「あず1か月だけ埅っおもらえたせんか」
    「そのたた螏み倒す぀もりでしょ」
    「違いたすっお。有名な北癜川さんを敵に回したりしたせんよ」
    「じゃあ面癜い人、玹介しおもらえたせん」
    「動画のネタですか」
    「そうそう。TVにもネットにもただ出おない玠人がいいんですよ」

    前瀬はスマホを取り出した。
    ちらりず芋るず、未読メヌルが3000件を超えおいる。
    件名を芋る限り、ほずんど催促だ。

    「あ」
    前瀬が声を䞊げる。
    「最近、宇宙人に䌚いたいっお女の子が頻繁にメヌル送っおくるんですよ」
    「そんな人、前瀬さんの呚りには䜕䞇人もいるでしょ」
    「でも、この子ちょっず倉なんです」
    前瀬がメヌルを開く。
    20行以䞊の長文だった。生い立ち。䞭孊生の頃の思い出。人生盞談。途䞭から目が滑り、読む気を倱う。

    だが最埌の䞀文だけは違った。
    〈私、宇宙人に䌚っお、セックスがしたいんです〉

    俺はネグロヌニを飲む手を止めた。



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    #恋愛小説郚門

    #宇宙
    #恋愛

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