
昭和、渋谷で、恋をしたり 2-11 |ボロが出るでしょ?
前回のあらすじ(2-10)
両親の期待に反して、医学部を受験せず東京の大学を受験することを宣言した泰輔。母親は落胆するが父親が認めてくれたことで、泰輔は東京で”大学デビュー”する決意を固める。
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ボロが出るでしょ
父と同じ医大に進み、医者になる道を拒んだこと、親の理想から逃げるため、東京を目指したことを話す私に、夏奈恵は口を挟むことなく、時折頷くだけだった。
だが、話し終えたところで、やっと出た言葉に愕然とさせられてしまう。
「やっぱり全然違うんだね……」
まただ。もう言い争いたくはなかった。これで言い争ったら、最後の一縷の望みまでも摘まれてしまう。
「私、大学なんて縁のない人間でしょ。今日はいい記念になった」
幕が降りようとしている。
「どうしたら同じ世界に、同じになれるの?」
「どうやっても無理じゃない?」
焦る私の質問に、夏奈恵は躊躇なく答えると、立ち上がって両腕を空に向かって伸ばした。
傾きだした日差しが、夏奈恵を強く照らしている。
「どっちかがどっちかに合わせて生きようとすると、必ずボロが出るでしょ?」
西陽を背に振り返ったその顔は、さっぱりとしていた。そして私のとなりに座り直すと、一度うつむいてから白い歯をこぼした。
「今日はここに来れてほんとうに良かった。溝口さんのこと、いろいろわかったし」
夏奈恵は両脚を小さく弾ませているだけで、私を一切見ていなかった。
「何がわかったの?」
「いろいろ」
「世界が違うってこと?」
「うん……それもね」
やはりダメなのかと、膝から力が抜ける思いだった。でも、食い下がるしかなかった。
「じゃあ、どう違うのか教えてよ。夏奈恵ちゃんの世界ってどんな世界なの?」
口調はいくぶん強くなった。だからなのか、夏奈恵は弾ませていた両脚を揃えると、髪の毛を耳にかけた。
「そうだね……。きちんと話そうかな」
