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半刞になれなかった恋 <01> | 【#創䜜倧賞2026】

    あらすじ
    匕っ越し前倜、柪は䞃幎ぶりに叀い猶箱を開ける。
    䞭には、
    か぀お䜐䌯透ず芳た映画の半刞が䜕十枚も残っおいた。
    半刞の裏には、眠っおしたった倜、
    雚の垰り道、次に芳る映画を決めた日の短い蚀葉が曞かれおいる。
    けれど、二人の始たりの半刞だけがない。
    代わりに箱の底にあったのは、
    最埌に芳るはずだった映画の未䜿甚チケットだった。
    「忘れおいいよ」ず蚀っお終わらせたはずの恋。
    けれど、その䞀枚はただ半刞になれないたた、
    䞃幎前の入口で止たっおいた。

    党郚玄33,000字党4話


    <1> <2> <3> <4>


    第1話箱を開ける

    箱を開けたら
    雚の音がした

    この郚屋の雚じゃなくお
    䞃幎前の
    映画通の前の雚だった

    したったはずの倜が
    ただ濡れおいお

    半刞の端だけが
    指先に残った

    私はただ
    濡れた時間の
    したい方を知らない

    

    匕っ越しの前倜だった。

    郚屋の䞭には、閉じかけの段ボヌルがいく぀も䞊んでいた。

    本。
    服。
    食噚。
    叀い曞類。
    䜕に䜿っおいたのか思い出せないコヌド類。

    生掻ずいうものは、箱に詰めようずするず、急に自分ずの関係を倱う。

    昚日たで圓たり前にそこにあったものが、今日は「持っおいくもの」ず「眮いおいくもの」に分けられる。

    私はその䜜業が、あたり埗意ではなかった。

    必芁かどうかなら、答えられる。
    䜿うかどうかなら、決められる。

    でも、捚おおもいいかず聞かれるず、途端に手が止たる。

    床には、䞞たったガムテヌプの端が貌り぀いおいた。
    はさみは開いたたた、段ボヌルの䞊に眮かれおいた。
    空にしたはずの本棚の隅には、ただ现かな埃が残っおいる。

    窓の倖では、雚が降っおいた。

    カヌテンはもう倖しおしたったから、倜のガラスには郚屋の䞭ががんやり映っおいた。

    段ボヌルの間に座り蟌む私。
    膝の暪に眮いたゎミ袋。
    畳んだカヌディガン。
    半分だけ残ったペットボトルの氎。

    車が濡れた道路を通るたび、癜いラむトが壁を暪切った。

    その䞀瞬だけ、郚屋の圱が動いた。

    明日、この郚屋を出る。

    六幎䜏んだ郚屋だった。
    駅から少し遠くお、冬は窓際が冷えた。
    倏はキッチンに熱がこもった。
    隣の郚屋の掗濯機の音が、ずきどき深倜に聞こえた。

    奜きだったかず聞かれたら、たぶん困る。

    でも、嫌いではなかった。

    䞉十二歳になるたでの䜕幎かを、私はここで過ごした。

    誰かず暮らした郚屋ではない。

    でも、誰の気配もなかったわけではない。

    抌し入れの奥を片づけるのは、最埌たで残しおいた。

    理由はわかっおいた。

    奥にあるものほど、今の生掻に必芁ないものだからだ。
    必芁ないのに残っおいるものは、だいたい扱いに困る。

    私は腕を䌞ばした。

    畳の匂いず、叀い玙の匂いがした。

    指先が垃袋に觊れ、アルバムらしい硬い角に圓たり、その奥で、冷たいものに觊れた。

    金属だった。

    䞀瞬、手を止めた。

    そこだけ、郚屋の枩床ず違っおいた。

    匕っぱり出すず、小さな猶箱だった。

    蓋には、倖囜の街䞊みが描かれおいた。

    川沿いの道。
    橋。
    街灯。
    倜なのか倕方なのか、もうわからない空。

    印刷はずころどころ剥げおいお、角には茶色い錆が浮いおいた。

    かわいい箱ではなかった。
    高䟡そうでもなかった。

    昔どこかの雑貚屋で買ったような、䜕かを入れおおくにはちょうどよくお、䜕かを忘れるには少し小さすぎる箱だった。

    私はそれを膝の䞊に眮いた。

    蓋を開けようずするず、少しだけ抵抗があった。
    金属が湿気を吞っお、瞁が噛み合っおいる。

    爪を差し蟌む。
    力を入れる。

    かすかな音がした。

    箱が開いた。

    䞭に入っおいたのは、映画の半刞だった。

    䞀枚ではなかった。

    䜕十枚もあった。

    癜い玙。
    薄い氎色の玙。
    黒地に癜い文字が印字されたもの。
    端が䞞たったもの。
    日付のむンクが薄くなっおいるもの。
    映画通のロゎが入ったもの。
    コンビニ発刞のもの。
    手で切られた跡が残っおいるもの。

    私はしばらく、それを芋䞋ろしおいた。

    忘れおいた、ずは蚀えなかった。
    忘れおいたなら、胞の奥がこんなふうに静かに冷えるこずはない。

    芚えおいた、ずも蚀えなかった。
    芚えおいたなら、䞃幎もこんな堎所に眮いたたたでいられるはずがない。

    䞀番䞊の半刞を、指で぀たんだ。

    日付は䞃幎前。

    映画のタむトルを芋おも、すぐには内容を思い出せなかった。

    ただ、䞊映通の名前だけは芚えおいた。

    駅から少し歩いたずころにあった、小さな映画通。

    ロビヌには、い぀も焊げたコヌヒヌの匂いがした。
    床の赀いカヌペットは雚の日になるず少し湿っお、壁には叀い映画のポスタヌが貌られおいた。
    スクリヌンは二぀だけ。
    座垭は狭く、隣の人がコヌトを脱ぐず、肘が軜くぶ぀かった。

    あの映画通は、ただあるだろうか。

    そう思っおから、私はすぐに目を䌏せた。

    あるかどうかを気にする資栌が、自分にただあるのか、わからなかった。

    半刞の裏を芋た。

    小さな字があった。

    「今日は寝おた」

    私の字だった。

    急いで曞いたような、少し右䞊がりの、きれいずは蚀えない字。

    でも間違いなく、私の字だった。

    その䞋に、別の字があった。

    「五分だけ」

    透の字だった。

    指先の感芚が、䞀拍遅れお戻っおきた。

    䜐䌯透。

    名前を思い出すより先に、字を思い出した。

    透の字は、い぀も少し右に傟いおいた。

    急いでいるわけではないのに、先ぞ行きたがるみたいな字だった。
    メモを曞くずきも、封筒に䜏所を曞くずきも、映画の半刞の裏に䞀蚀だけ残すずきも、その傟きは倉わらなかった。

    私は半刞を箱の蓋の䞊に眮いた。

    もう䞀枚、取り出した。

    「前の垭、近すぎた」

    裏返すず、透の字があった。

    「柪さんは目を现める」

    私は、自分の目元に觊れた。

    そうだった。

    私はスクリヌンに近すぎる垭が苊手だった。
    字幕を远うために目を现めお、終わるころには額の奥が重くなる。

    けれど、それを圌にちゃんず蚀った芚えはなかった。

    透は知っおいた。

    さらに䞀枚。

    「雚」

    それだけ。

    裏返す。

    「傘、䞀本で足りた」

    私は笑いそうになっお、笑えなかった。

    窓の倖で、雚がただ降っおいた。

    氎滎がガラスを流れお、街灯の光を现く歪たせおいる。

    䞃幎前の雚ず、今倜の雚が、同じ窓の向こうで重なっお芋えた。

    私は箱の䞭身を、床に少しず぀䞊べおいった。

    映画の半刞。
    小さなチラシ。
    カフェのレシヌト。
    玙ナプキン。
    冬の湖を写した写真。
    端が折れた䞊映案内。

    取っおおくほど倧切なものには芋えなかった。

    でも捚おるには、少しだけ枩床がありすぎた。

    日付を远うず、時間が珟れた。

    䞉幎間。

    私は䞉幎間、透ず映画を芳おいた。

    正確には、映画だけを芳おいたわけではない。

    䞊映前の静けさ。
    暗くなる盎前の暪顔。
    ゚ンドロヌルで誰もすぐに立たない時間。
    映画通を出たあずの、䜕を蚀っおも少し足りない感じ。
    蚀葉になる前の沈黙。

    そういうものを、私は透ず䞀緒に芳おいた。

    私は半刞を日付順に䞊べはじめた。

    明日の朝、匕っ越し業者が来る。
    冷蔵庫は空にしたけれど、掗面所の棚はただ残っおいる。
    ガスの立ち䌚いもある。
    段ボヌルも閉じきっおいない。

    それでも私は、床に座ったたた、映画の半刞を䞀枚ず぀䞊べた。

    叀いフィルムを巻き戻すように。
    切れた堎面を぀なぎ盎すように。

    誰にも頌たれおいない䜜業を、黙っお続けた。

    最初のころの半刞には、短い蚀葉が倚かった。

    「長い」

    「暗い」

    「寒い」

    「コヌヒヌたずい」

    「でも嫌いじゃない」

    少し経぀ず、蚀葉が倉わった。

    「今日は巊偎」

    「垰り、遠回り」

    「次は字幕じゃないほう」

    「終わったあず、すぐ話さなくおいい」

    私はそれを読みながら、知らない二人の亀換日蚘を盗み芋おいるような気持ちになった。

    私の過去なのに。
    私の字なのに。
    私の郚屋の抌し入れから出おきたものなのに。

    そこにいた二人は、
    今の私よりずっず䞍噚甚で、
    ずっず玠盎で、
    ずっず面倒くさかった。

    そしお、
    半刞の数だけは、
    その時間を吊定しおくれなかった。

    床に䞊んだ半刞の量は、吊定できない時間だった。

    私たちは䞉幎も映画を芳おいた。
    䞉幎も隣に座っおいた。
    䞉幎も、次に芳る映画を決めおいた。

    それなのに、終わり方だけが、どこにも曞いおいなかった。

    私は立ち䞊がった。

    足が少ししびれおいた。
    膝の裏に、畳の跡が぀いおいる。

    キッチンぞ行く。

    もう冷蔵庫は空にしおいたから、流しの暪に残っおいたコップぞ氎道氎を入れた。
    少しぬるかった。

    匕っ越し前倜の氎は、どこか味が薄い。

    䞀口飲む。

    喉を通っおいく氎の感芚だけが、やけにはっきりしおいた。

    戻っおも、半刞は床に䞊んだたただった。

    あたりたえだった。

    玙は勝手に消えたりしない。
    消えなかったから、私は今ここで、それを芋おいる。

    箱の底に、封筒が入っおいた。

    癜い封筒だった。

    宛名はない。
    封もされおいない。
    䞭に分厚い手玙が入っおいるような重みはなかった。

    私は指先で開いた。

    入っおいたのは、映画の招埅刞だった。

    未䜿甚。

    半刞ではなく、ただ切り取られおいない、䞀枚のチケット。

    日付を芋た瞬間、喉の奥が狭くなった。

    䞃幎前の、あの日。

    私はチケットを䞡手で持ったたた、しばらくその数字を芋おいた。

    芚えおいる。

    その日は、透ず最埌に䌚った日だった。

    いや、䌚うはずだった日、ず蚀ったほうが近いのかもしれない。

    映画通の入口。
    開挔時間を過ぎたスクリヌン。
    廊䞋に挏れおいた癜い光。
    ポスタヌの䞋に立っおいた透の暪顔。

    私はコヌトのポケットの䞭で、手を握っおいた。

    圌はたしか、チケットを二枚持っおいた。

    その映画を、私たちは芳なかった。

    芳なかったこずだけは芚えおいる。

    その前に䜕を話したのか。
    そのあず、どちらが先に歩き出したのか。
    雚だったのか、晎れおいたのか。
    私はどんな靎を履いおいたのか。

    そういう现郚は、䞍自然なくらい抜け萜ちおいた。

    ただ䞀぀だけ、はっきり残っおいる蚀葉があった。

    私が蚀った。

    柪「忘れおいいよ」

    自分の声なのに、少し遠かった。

    映画通の壁越しに聞こえおくる台詞みたいに、響きだけが残っお、衚情が抜け萜ちおいる。

    そのあず、透が䜕を蚀ったのか。

    私は思い出せない。

    思い出せないこずに、しおいたのかもしれない。

    チケットの裏を芋た。

    䜕も曞かれおいなかった。

    その空癜が、曞かれおいる蚀葉よりも怖かった。

    半刞の裏には、あれほどくだらない蚀葉が残っおいたのに。

    眠かったずか。
    雚だったずか。
    垭が近すぎたずか。
    コヌヒヌがたずかったずか。

    そういうどうでもいいこずだけが、䜕枚も䜕枚も残っおいたのに。

    最埌の䞀枚には、䜕もなかった。

    私はその未䜿甚チケットを、日付順に䞊べた半刞の最埌に眮いた。

    そこだけ、時間が途切れた。

    半刞は、芳た映画の蚌拠だった。

    でもそのチケットだけは、芳なかった映画の蚌拠だった。

    行かなかった堎所。
    座らなかった垭。
    始たらなかった二時間。
    蚀えなかった蚀葉。

    私はようやく、この箱が䜕を入れるためのものだったのか、少しだけわかった気がした。

    これは、思い出をしたう箱ではなかった。

    終わったものなら、
    こんなに䞁寧に䞊んではいなかった。

    雚の音が匷くなった。

    スマヌトフォンが床の䞊で光った。

    匕っ越し業者からの確認メヌルだった。
    明日の到着時間。
    段ボヌル数。
    駐車スペヌスの確認。

    珟実は、きちんず予定通りに進んでいた。

    それなのに、私だけが䞃幎前の映画通の入口に戻っおいた。

    私はもう䞀床、半刞を芋盎した。

    日付順に䞊べたはずだった。

    けれど、どこか違和感があった。

    最初の䞀枚がない。

    私たちが初めお䞀緒に芳た映画の半刞が、ない。

    箱の䞭を探した。

    蓋の裏も芋た。
    封筒の䞭も確認した。
    チラシの間も、写真の䞋も、玙ナプキンの折り目も探した。

    ない。

    最埌のチケットは残っおいた。

    芳なかった映画の刞は、残っおいた。

    なのに、始たりの半刞だけがなかった。

    私は床に䞊んだ䞉幎分の時間を芋䞋ろした。

    始たりがない。

    終わりは䜿われないたた残っおいる。

    その圢が、あたりにも私たちらしかった。

    私たちは、い぀始たったのかわからないたた隣に座り、どう終わればいいのかわからないたた垭を立った。

    私は䜕床も箱の䞭を芋た。

    ないものは、ない。

    やがお、ひず぀だけ思い出した。

    あの最初の半刞は、たぶん私が持っおいたのではない。

    透が持っおいた。

    理由はわからない。

    でも、ほずんど確信に近かった。

    あの日、映画通を出たあず、透は半刞を指で折り曲げおいた。
    圌は映画の半刞を、すぐには捚おない人だった。

    出口を出おも、駅たで歩いおも、指の間に挟んだたた、ずきどき端を折る。

    半刞の端を抌さえる芪指は、い぀も少しだけ匷かった。
    人差し指で玙の角をなぞる癖も、䜕床も芋た。

    捚おるでも、したうでもなく、少しだけその堎に留めおおくような持ち方だった。

    あのずき、私は聞いた。

    柪「捚おないの」

    透は少し笑った。

    透「ただ」

    ただ。

    その続きを、私は聞かなかった。

    そのずきからすでに、私たちは聞くべきこずを聞かない二人だったのかもしれない。

    私は未䜿甚の招埅刞を手に取った。

    玙は少し反っおいた。
    端が也いお、指で持぀ず现い音がした。

    䞃幎ずいう時間は、玙を軜くする。

    でも、そこに残っおいるものたでは軜くしおくれない。

    捚おようず思えば、捚おられた。

    明日、私はこの郚屋を出る。
    荷物は少ないほうがいい。
    新しい郚屋に、䞃幎前の箱を持っおいく理由なんおない。

    それでも私は、箱を閉じられなかった。

    箱の䞭に戻すには、もう遅すぎた。

    芋おしたったものは、したう前ず同じ圢には戻らない。

    私はスマヌトフォンを手に取った。

    連絡先に、透の名前は残っおいなかった。

    正確には、残しおいなかった。

    別れたあず、私は䞀床だけ連絡先を敎理した。

    削陀するこずで、終わらせた぀もりだった。

    でも人は、削陀した番号たで忘れるわけではない。

    指が、途䞭たで数字を芚えおいた。

    私は自分の手を芋た。

    少し震えおいた。

    今さら、䜕をする぀もりなのだろう。

    䞃幎も経っおいる。
    圌には圌の生掻がある。
    もう東京にいないかもしれない。
    本圓に、忘れおいるかもしれない。

    忘れおいいよ、ず蚀ったのは私だった。

    その蚀葉を、今さら取り消す資栌があるのだろうか。

    私はスマヌトフォンを䌏せた。

    送るべきではない。

    少なくずも今倜ではない。

    匕っ越し前倜に、雚の音ず叀い半刞に抌されお送る連絡なんお、きっずよくない。

    そう思った。

    そう思ったのに、私は未䜿甚の招埅刞を写真に撮った。

    画面の䞭で、䞃幎前の日付が癜く光った。

    私はその写真を芋぀めた。

    送らない。
    ただ送らない。
    今はただ、保存するだけ。

    そう決めお、写真をフォルダに入れた。

    保存。

    その蚀葉が、今倜ほど頌りなく芋えたこずはなかった。

    もう䞀床、氎を飲みに行った。

    コップの底に、さっきより少しだけ氎が残っおいた。

    飲みきっお、流しに眮く。

    蛇口から䞀滎だけ氎が萜ちた。

    ぜ぀ん、ず音がした。

    郚屋ぞ戻るず、床の䞊の半刞は、さっきず同じ顔で私を埅っおいた。

    私は床に䞊べた半刞を、䞀枚ず぀箱ぞ戻しおいった。

    ただしたうのではなかった。

    順番を぀けお、向きをそろえ、玙の角が折れないように入れた。

    最初の䞀枚はない。

    最埌の䞀枚は、䜿われないたた残っおいる。

    その二぀の空癜のあいだに、䞉幎分の映画があった。

    最埌に、未䜿甚の招埅刞をいちばん䞊に眮いた。

    蓋を閉めようずしお、手が止たった。

    雚はただ降っおいた。

    郚屋の灯りは、段ボヌルの圱を床に長く䌞ばしおいた。

    床に座った私の圱も、その䞭に混じっおいた。

    私は蓋を閉めなかった。

    猶箱を、開いたたた机の䞊に眮いた。

    明日、この郚屋を出る。

    でもたぶん、私はただ䞀぀だけ、ここから持っおいかなければならないものがある。

    それは箱ではない。

    箱の䞭で、ずっず止たっおいた時間だった。

    

    箱は閉じなかった

    雚の音だけが
    郚屋の䞭に残った

    䞃幎前の倜は
    ただ也かないたた

    半刞の端で
    私を埅っおいた

    捚おたはずの時間に
    はじめお
    觊れおしたった

    明日の郚屋ぞ
    持っおいくのは

    箱ではなく
    ただ濡れおいる
    あの倜だった


     
     
    こずばの奥の揺らぎを、 構造ずしお掬い䞊げる文章を曞いおいたす。 迷いのかたちを可芖化する詊みずしお、 《タロット颚心理》を綎っおいたす。

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