
神話統合体 標本記録簿記録番号N-010「ニーズヘッグ」
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[記録官I・倫理委員会付 第十報告書 提出日:██年██月██日]
記録を開始する。
今回は、器官の報告ではない。
H棟中央区画の調査を続けた。
根の中心部に、空間があった。
部屋だった。
施設の設計図に、この部屋は存在しない。
部屋の中に、記録があった。
前任者の記録ではなかった。
MBIの、最初の記録だった。
最初の記録の表紙に、番号が書かれていた。
標本番号000。
記録を読んだ。
読んで、わかったことがある。
わかったことの一部を、ここに記載する。
一部だけだ。
全部は、記載しない。
記載できない理由は、書かない。
MBIは、器官を発見して設立されたのではない。
器官を、作るために設立された。
最初の記録にそう書いてあった。
ただし、「作る」という言葉は使われていなかった。
使われていた言葉は、████だった。
標本番号000の記録者の名前が、書かれていた。
名前の上に、黒塗りがあった。
黒塗りを施したのは、別の筆跡だった。
黒塗りの下を、確認しようとした。
紙が、そこだけ厚かった。
何かが、貼られていた。
剥がさなかった。
剥がしたくなかった理由が、自分でもわからない。
わかりたくなかったのかもしれない。
標本番号000の記録の末尾に、一文があった。
黒塗りされていなかった。
意図的に残されたのか、見落とされたのかは、判断できない。
「根は腐食しない。根が腐食の源だ。」
記録官I 追記:
G-001からN-010まで、すべての報告書を読み直した。
九話前から、私はずっと同じものを記録していた。
気づいていなかったのではない。
気づかないことに、していた。
この報告書を、提出する。
提出先は、決まっていない。
提出先が最初からなかったのか、なくなったのかは、確認できない。
確認する方法を、私は知っていた気がする。
今は、思い出せない。
記録官I
H棟中央区画の部屋は、翌日、存在しなかった。
壁があるだけだった。
壁は、古かった。
最初からあった壁のように見えた。
記録は、手元にある。
読み返すたびに、一行ずつ、短くなっている気がする。
気がするだけかもしれない。
確認するのが、怖い。
施設の在籍記録を、最後にもう一度確認した。
前任者は、今日も出勤している。
記録官Iの欄も、ある。
私の欄だ。
最終更新日が、確認できない。
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記録番号:Na-011
標本名:「ナグルファル」
分類:移送器官 / 出港確認済 / 処置:不可
船は出港した。
乗船者リストの最終ページ、
記入済みの欄が、前回確認時より増えていた。
名前は、読まなかった。
次回公開:[木曜日]
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