
神話統合体 標本記録簿記録番号Y-009「ユグドラシル」
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[記録官I・倫理委員会付 第九報告書 提出日:██年██月██日]
記録を開始する。
H棟中央区画の床下から、根状の器官が発見された。
発見したのは、施設の誰でもない。
床が、割れていた。
割れた床の下から、根が伸びていた。
根は、H棟中央区画だけにあるのではなかった。
調査に、三日かかった。
根は、施設全体に広がっていた。
B棟第3保管区。
資料保管室。
C棟第1検体室。
A棟第2実験区画。
D棟隔離区画。
E棟受付。
F棟地下2階。
G棟保管室。
すべての区画の床下に、根があった。
根は、繋がっていた。
G-001からA-008まで。
すべての器官の直下に、根が伸びていた。
根の中心は、H棟だった。
H棟中央区画は、施設の最も古い区画だ。
建設記録を確認した。
H棟の建設より前に、根があった。
しばらく、記録が止まる。
根の末端を調査した。
末端は、施設の外に出ていた。
施設の外、地下深くに向かっていた。
どこまで続いているかは、確認していない。
確認しようとして、やめた。
やめた理由は、記載しない。
H棟中央区画の壁に、記録が残っていた。
前任者の記録だった。
日付は、施設の建設より前だった。
内容は、一行だけだった。
「根は、最初からあった。」
記録官I 追記:
G-001からA-008まで、すべての報告書を並べた。
並べて、読んだ。
気づいたことがある。
報告しない。
記録官I
── 第二記録群、ここに閉じる。
翌日。
Kから連絡があった。
H棟中央区画の音響解析を行ったという。
根の全体から、音が出ていた。
G-001からA-008まで、すべての記録に混入していた周波数と、同じ音だった。
Kは一言だけ、付け加えた。
「聞き覚えがあります。」
それ以降、Kからの連絡はない。
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記録番号:N-010
標本名:「ニーズヘッグ」
分類:腐食器官 / 根域:H棟以深 / 処置:不可
腐食は、外から来たのではない。
最初の記録を読み直した時、それがわかった。
支えていたものが、
最初から腐食の源だった。
次回公開:[水曜日]
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