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好きになっちゃった?

    婚活三回目で会ったのは、
    品川だった。


    夜の駅前は風が強い。

    ビルの下のガラスに、
    駅の光がにじんでいる。

    店の前のガラスのところで
    待ち合わせだった。



    やっと連絡がついた彼は、
    すでにそこに立っていた。

    メガネの男だった。


    私に気づくと、少し笑った。

    そして、
    楽しそうな顔で言った。


    「俺のこと好きになっちゃった?」




    挨拶みたいな調子だった。
    「え?」
    私は立ち止まる。

    笑えばいいのか、
    否定すればいいのか、
    何か返した方がいいのか。

    よくわからないまま、
    数秒が過ぎた。




    たしかに、
    連絡が来なくなったからメールはした。
    継続するのか、聞きたかった。


    彼はニヤニヤしていた。
    品川の風は冷たい。


    「寒いね」
    彼はそう言った。
    でも店には入らなかった。



    しばらく立ったまま、
    どうでもいい話をした。

    仕事のこととか、
    通勤のこととか。
    何を話したのかは、
    あまり覚えていない。

    ただ、
    寒かったことだけ覚えている。



    少ししてから、
    彼が言った。

    「なんかさ、俺、
    恋愛っぽくなれないんだよね」

    それは、
    告白でもなく、
    断りでもない感じだった。






    私は、少し考えてから言った。

    「じゃあ、やめておきましょうか」

    彼は、あっさりうなずいた。
    「そうだね」



    それで終わりだった。


    駅の改札の手前で、
    「じゃあ」と言って別れた。







    帰り道、
    なんとなく既視感を感じていた。

    この感じを、
    前にも知っている。

    恋人みたいに近いのに、
    どこにも向かおうとしない感じ。



    まだ独身なのに。











    ※この出来事について、
    後日「あとから聞くラジオ」で分析しています。




    あわせて読む「関係っぽいもの・距離の違和感」

    ▶ 女性役は仕事ですか?|「ちゃんとした女性」をやり続けて疲れた話
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