
「連続AI作家苦悩日記〜明日になれば〜 / 第4回 青春小説編」
青春小説『明日になれば』を書き終えた。書きながら、これは良いものができたという大きな手応えに喜びが隠せなかった。自信に満ち、満足感と開放感に包まれていたのはほんの一時間前。しかし今、読み返して、僕は深い絶望の中にいる。
今回は事前に入念な準備をした。恋愛、ミステリー、ホラーと三回連続で失敗してきた経験から、まず最初に「青春とは何か」を徹底的に調べることにした。その結果、青春小説が成立するためには四つの条件が必要であることがわかった。一、年齢の若さ。二、心の若さ。三、感情の豊かさ。四、特有の体験。この四条件さえ全て満たせば、青春小説は完成する。そう確信して書き始めた。
登場人物の年齢は青春寿命の限界と思われる18歳までとした。主人公の健太と親友の翔は16歳、ヒロインの...いや、今回は恋愛要素は極力排除する方針なので、ヒロインは登場させない。これで食パン対策もバッチリだ。
代わりに部活の先輩である田中先輩を登場させた。田中先輩は17歳11ヶ月というギリギリの設定で、青春の尊さや儚さを主人公たちに教える、ストーリー全体に渡って最も重要な存在とした。
ところが、このギリギリすぎる年齢設定が仇となり、18歳の誕生日を迎えた瞬間に青春条件の「年齢の若さ」が失効し、田中先輩は、物語の開始からわずか3ページで失踪してしまい、ストーリー全体の構想が破綻してしまった。
次に舞台だが、資料に「青春小説の舞台は学校である」と明記されていた。これはとても重要な情報だ。厳守せねばなるまい。その結果、登場人物たちは学校から一歩も出られなくなった。
夏休みも学校にいる。冬休みも学校にいる。日曜日も学校にいる。健太と翔は毎日学校の教室で友情を育んでいる。「今日も学校だな」「そうだな」という会話が続く日々。二人の友情はどんどん深まっていき、理想の青春小説が書けているという確かな手応えを感じた。
今思えば「衣食住」的なものに考えが及ばなかったのは浅はかだったとも思うが、なにしろ「青春小説」だ。青春の要素さえ満たされれば細かいことは気にしない。それこそが所謂「若さの特権」というやつなのだろうと理解してしまっていた。
あながち間違えでもないような気もするが、行動範囲が学校内に限定されているため、教室、体育館、図書室、屋上、校舎裏という主に五ヶ所を繰り返し移動するだけとなり、背景の描写のボキャブラリーが早々に底をつき、気がつけば会話のやりとりのみで話を進めざるを得なくなってしまった。
青春小説の山場に「卒業式」というシチュエーションは絶対に欠かせない要素だ。しかし、健太と翔は卒業することは出来ない。何故なら形として卒業式を済ませても、学校から一歩も出られないからだ。
自分たちの立場を放棄して校外に脱出した場合、青春小説の登場人物という重要なステータスを失ってしまう。かといって忠実にルールを守って学校に居座り続けても、不審者と思われ通報されるのがオチだろう。万が一上手く身を隠せたとしても、18歳になった時点で消滅は免れない。これでも駄目なら一体どうすれば……
ここにきて、いよいよ思考の限界に達した僕は、とにかくこの「卒業が出来ない問題」から逃れたいが為に、最初に自ら設定した「青春は18歳まで」という最も重要な掟を無視し、更には、学校を永遠に青春を謳歌できる施設とし、卒業は自己申告制にすれば全ての矛盾が解決すると思い込んでしまった。
書き始めた当初は目論見通りだった。18歳を過ぎても、20歳を過ぎても、2人は学校で青春を育む会話を楽しげに続けていた。40歳を過ぎ、60歳を過ぎたあたりから、会話の内容が青春とは関連性の薄い、お互いの健康問題が主となってきたが、それでも気がつかない振りをした。しかし、100歳を越え、ついに高校95年生となった110歳の時点で、いよいよ会話自体が成り立たなくなってきてしまい、流石に敗北を認めるしかなかった。
改めて読み返してみると、青春の四条件は全て満たしたはずなのに、結局最後まで「青春」とは何なのかを理解できないままだった。そこが敗因なのは明らかだ。
「年齢の若さ」「心の若さ」「感情の豊かさ」は先に書いたあたりで一通り押さえたし、「特有の体験」として「卒業式」も入れた。これで青春小説は完成するじゃなかったのか?いや、もしかすると自分が理解できていないだけで、無理やりにでも話として成り立たせてしまえば、十分「青春小説」の傑作として評価される内容なのではないか?...いや、違う!全然ダメだ。確か前回もこんな逃げの考えが浮かんでしまったんだった。
このどうしようもないやるせなさが、ひょっとして「青春のほろ苦さ」というやつと同系統の何かなのかもしれない……
あああ!!!もうぼやいていてもキリがない!!今日はとっととビール飲んで寝よう。はいはいはいまた明日!書きなおすよ!
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