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昼だけの関係、という逃げ方|第2話

    あらすじ

    ——

    昼の時間にだけ、人と会うことがある。
    決まっているわけではないが、
    気がつくと、そういう関係になっている。

    ある日、コミュニケーションサイトで見かけた
    一行の言葉に惹かれ、一人の女性とやり取りを始める。
    会うのは決まって昼。夜は互いの生活に戻る--そんな
    「踏み込まない関係」は、気楽で、どこか心地よかった。
    けれど、言葉を重ねるうちに、次第に距離は曖昧になっていく。
    触れないまま近づいてしまったふたりが選んだのは、
    関係を続けることか、それとも--。

    ——

    正直に言うと、最初からわかっていた。

    この人とは、深くならないほうがいい。

    画面越しのやり取りは、どこか落ち着いていて、
    無理に踏み込んでこないところが心地よかった。

    だからこそ、少しだけ危ないとも思った。

    こういう人は、気づいたときには、
    距離が近くなっている。

    会う約束をしたのは、自分のほうだったと思う。

    夜じゃなくて、昼。

    それなら大丈夫だと、どこかで線を引いていた。

    ちゃんと帰れる時間。
    ちゃんと戻れる場所。

    そう思っていた。

    最初に会ったとき、思っていたより普通の人だった。

    もっと気を張るかと思っていたのに、
    少し拍子抜けするくらいに自然で。

    それが逆に、警戒を緩めたのかもしれない。

    他愛のない話をして、
    時間が過ぎていく。

    無理に盛り上げようとしない空気が、
    かえって心地よかった。

    こういう時間のほうが、
    あとに残ることを知っている。

    少し慣れてきた頃、
    自分でもよくわからないまま、余計なことを話していた。

    「前に会った人に、いきなり混浴に連れていかれたことがあって」

    どうしてそんな話をしたのか、
    今でもよくわからない。

    たぶん、試していたんだと思う。

    引くか、乗るか。

    どこまで踏み込んでくるのか。

    けれど、その人は、どちらでもなかった。

    「そういうの、嫌いじゃないですよ」

    それだけ。

    踏み込んでこないのに、拒まない。

    その距離が、少しだけずるいと思った。

    別の日、カフェで向かい合って座っていたとき。

    何気ない会話の途中で、目が合った。

    すぐに逸らせばよかったのに、
    ほんの一瞬、止まってしまった。

    ああ、この人も同じことを思っている。

    理由なんてないのに、そう感じた。

    触れようと思えば、触れられた距離だった。

    でも、どちらも動かなかった。

    そのほうが、壊れないとわかっていたから。

    たぶん--
    壊れるのが怖かったんだと思う。

    昼に会って、
    時間が来たら、それぞれの場所に帰る。

    何もなかったみたいに。

    そういう関係を選んだはずなのに。

    帰り道、ふと考える。

    もし、夜に会っていたら。

    もし、もう少し踏み込んでいたら。

    そんなことを考えている時点で、
    もう、ただの「昼だけの関係」じゃないのかもしれない。

    それでも--

    このくらいの距離が、
    いちばん心地いいと思ってしまう自分もいる。

    ---
    ※最初からなら、あの昼から。 
    ---
    ※そこの関係、どこまで許されますか?


     
     
    昼の時間にだけ、人と少し近づくことがあります。 踏み込まない距離の中で、ふと通じてしまう瞬間や、名前をつけにくい関係を書いています。

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