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物語をつくるひと。Vol.6 白岩ぱんださんへのインタビュー

    マーダーミステリーを作ることは、物語を書くことだけではない。

    謎を設計し、キャラクターを置き、選択の余地を作る。そのうえで、公演型のマーダーミステリーでは、その日に集まったプレイヤーたちがどのように迷い、何を選び、どこへたどり着くのかを最後まで見守る人がいる。

    「その人の物語を見守り、寄り添い、完結まで一緒に歩いてあげること」

    白岩ぱんださんが語ったその言葉には、公演型のマダミスにおけるGM(ゲームマスター:進行役)の役割が凝縮されているように思えた。一方で、ぱんださんの視線は一つの公演だけにとどまらない。
    新しい人がマダミスに触れる入口をどう作るのか。業界全体がより豊かになるために、どんな作品を届けていくのか。その問いもまた、ぱんださんの制作を支えているように感じた。

    「物語をつくるひと。」第6回目は、白岩ぱんださんにお話を伺った。

    うまく遊べない自分でも、楽しめるものを作りたかった

    ーーマーダーミステリーの面白さはどのようなところにあると思っておられますか。
    白岩ぱんだ:マダミスの楽しさ、面白さはいろんな形で体験する人がいると思います。駆け引きを楽しむ人もいれば、作家の作った物語を楽しむ人もいますが、僕にとってのマダミスの魅力は自分が介入することで物語が展開するところでしょうか。
    僕はもともと社会人の頃に、リアル脱出ゲームやリアル謎解きゲームにハマり、作る側に飛び込みました。自分が謎を解明することで物語に介入し、大謎のどんでん返しを味わえる。そういうものが大好きだったんです。

    白岩ぱんだ:ただ、時折、謎解きゲームというのは、物語などなくても良いのではと思うことがあったんです。率直に言うならば、謎と場所だけで十分だな、と。たとえば洋館からの脱出ゲームがあったとして、なぜ自分がここに来て、どうして脱出しなければならないのかという背景は、なくても十分成立してしまうのです。
    さらに、謎が解けず物語に介入できない可能性もあります。たとえば頭のいい人が一人二人いて、何もせず応援していたら成功してしまったり。

    白岩ぱんだ:そんなときにマダミスと出会いました。PL(プレイヤー)は登場人物となり、ハンドアウト(キャラクターの設定や記憶が書かれた文書)を読み、キャラクターの背景や役割に基づいて、自分から能動的に物語に介入することで、展開が変化していく。まさに主人公になることだってできるのです。
    それがマダミスの面白さではないかと思います。

    ーーその「全員が物語に介入できる面白さ」は、ご自身がPLとして遊ぶ中で強く感じたものだったのでしょうか。
    白岩ぱんだ
    :実は、そうじゃないんですよ。
    自分は、何の役をやっても『白岩ぱんだ』になってしまう。誰よりもPLとしてマダミスを遊ぶのがヘタクソだと思っているんです。だから、こんな僕でも楽しめるマダミスがあったらいいのにな、と思って作ったのが「シュレーディンガーの密室」でした。

    白岩ぱんださんにとってのマダミスは、作者が用意した物語をなぞるだけのものではない。PLが役割を受け取り、選び、動くことで、その場の物語を立ち上げていくものなのだ。
    けれど、その考えは「自分が理想的なPLだったから」生まれたものではない。むしろ、自分はうまく遊べない。だからこそ、そんな人でも物語に入っていけるマダミスを作りたい。そこに、ぱんださんの創作の出発点がある。


    舞台、謎解き、デザイン。その経験が“公演”を形づくる

    ーーもともとは謎解きを作っておられたのでしょうか。
    白岩ぱんだ:コロナ前は、舞台脚本を書いている時期もありました。小劇団の朗読劇を作ったり、声優さんのイベントをやったり、イベントとしてゲームを作ったり。劇団から頼まれて、謎部分だけのデザインをしたりもしました。

    ーー関わった演劇はどのようなものがあったのでしょう。
    白岩ぱんだ:たとえば、LINEを使った演劇です。お客さんは、舞台上の役者にLINEを送ることができる。舞台の展開に介入できるんです。これはそのまま企業にもっていって企画にしたりもしていました。

    白岩ぱんだ:ただ、コロナ禍で舞台興行が難しくなってしまいました。例のLINEを使った演劇の実施も各方面からの反発があったんです。多くの役者さんや観客を巻き込んで舞台をやるというのが、やりづらい時期が続いた。ですので舞台は難しくても、小規模でも実施できるコンテンツを模索していたんです。そう考えてマダミスを作り始めました。

    ーーきっかけはありましたか。
    白岩ぱんだ:マダミス作家のNOVAKさんが「謎解きゲームを作っている人は、みんなマダミスを作るべきだよね」とおっしゃっていたのが後押しになりました。
    NOVAKさんは僕が学生の頃から一方的に知っていて、僕からしたら神様のような立ち位置の方だったのですが、その方が仰るならば、とマダミス制作の決意に繋がりましたね。

    ーーお仕事のキャリアは、舞台作家が最初ですか?
    白岩ぱんだ:もともと、デザインの仕事を10年ほどやっていました。なので、自分がマダミスに参入した頃は「マダミスのデザインは、まだまだ改良の余地があるな」と思っていました(笑)。
    ところが、飛び込んでみたら素晴らしいデザインを作る方がいらっしゃることに気が付きまして。2Uプロジェクトのさわださんとか、タロサカさんとか、名前を挙げようと思ったら、まだまだたくさんいらっしゃいますね。

    ーー先駆者として、ぱんださんが業界を引っ張ってこられた部分もあるのではないでしょうか。
    白岩ぱんだ:いやいや、置いていかれないよう必死です(笑)。


    その人に、どんな体験をしてもらうか

    ーーご自身の作品を店舗でGM(ゲームマスター:進行役)もなさっておられますね。
    白岩ぱんだ:舞台経験もあったし、謎解きやイベントの司会もしていたので、GMも苦ではないんです。

    ーーGMをなさるときに、GM配役をしておられると伺いました(GM配役:プレイヤーが担当するキャラクターを、GMが割り当てること)。初対面のPLも多い中で、会って数分でどのように判断して役を渡しておられるのでしょうか。
    白岩ぱんだ:舞台の脚本を書いていた時もそうですが、脚本を作ったら、次にやることはキャスティングなんです。自分の作品だから、どんな展開になるかということはある程度分かっている。

    白岩ぱんだ:入ってこられた時の服装や立ち振る舞いから、その人の趣味嗜好や人柄がある程度伝わってきます。目立ちたいタイプか、場に溶け込む方が落ち着くタイプか。喋るスピードや声の大きさ、会話の順番や席に座ってからの過ごし方からも、人柄がわかる。会話をリードするのか、聞き上手なのか、周りに人がいても自分の世界に没頭するのか。
    そういうことから判断して、その人が輝きそうな役をお願いしています。

    白岩ぱんだ:それから、PLさん同士が知り合いの場合は、その関係性が見えたりもする。たとえば、気が合っていそうな二人がいたら、ペアの要素が強い二人の役を渡すとか。

    ーーGM配役で、外してしまうことはありませんか。
    白岩ぱんだ:勿論あります。その時は反省や後悔をするのですが、ただ失敗してしまったとしても、「GMから渡された役」というところで、PLさんたちがGMの期待に応えてくれようと最大限に楽しんでくれる一面はあるのかなと思っています。結果的に、その役を楽しんでもらえるのかな、と。


    満足感と納得感、その両方を大切にする

    ーーシナリオを作る時に大切にしていることはなんでしょうか。
    白岩ぱんだ:一つは、全員が主人公になること。
    それから、満足感と納得感が得られるかどうかを大切にしています。
    満足感というのは、お客さんがその物語に没頭して、夢中になって遊んでくれること。納得感というのは、謎解きやゲーム、バランスの要素が物語と噛み合って腹に落ちていくかどうか。
    その満足感と納得感の両方が高い作品が、良い作品だと思っています。

    ーーシナリオは、どのようなところから作られるのでしょうか。
    白岩ぱんだ:映画とか小説、漫画、ゲームなどにたくさん触れるようにして、インプットを貯めるようにしています。
    その上で、作り始めは大謎、つまり「実はこうなっていたのか」という物語の真相から考えていきます。そこから逆算して、スタート地点やゲームシステム、PLの人数や関係性、設定などをあてはめていくようにしています。

    ーー途中で変更なさることはない?
    白岩ぱんだ:修正はします。
    ただ、最後の目的地さえ決めておけば、そこに向かうルートは変わっても大丈夫。その中で特に気をつけているのは、それぞれの幕の引きですね。
    三幕構成を取り入れていまして、一幕の引き、二幕の引きが、三幕のクライマックスにつながっていくように常に考えています。一幕の引きが気になれば気になるほど、早く続きに行きたいと思うじゃないですか。その部分をしっかり作れているか判断しながら修正を加えています。

    ーーエンディングは、分岐の数だけ用意されるのでしょうか。
    白岩ぱんだ:できることならば、可能性を全て網羅したエンディングを作るべきだとは思います。でも、僕にはできない。なので、エンディングは最低限のものだけを提案して、お客さんに問いかけてしまうこともあります。
    「あなたはこのような体験をし、こう決断しました。その上で、改めておたずねします。あなたはどういう未来を選びますか?」と。
    物語を作る上で「最終的に自分の手で選び取った」ということも、納得感を増やすために重要だと考えています。

    ーーたしかに、納得感は上がりそうです。ただその分、GM難易度も上がりそうですね。
    白岩ぱんだ:公演型のマダミスだからこそできることだと考えています。オンラインやパッケージのマダミスに比べると、公演型のマダミスはある程度の料金をいただいています。そうである以上、GMとして物語を届けるということは、その人の物語を見守り、寄り添い、完結まで一緒に歩いてあげることではないかなと思います。
    だからこそ、自分の作品をGMできる人が限られてくるというところもあるんですけどね。


    残り続ける作品としてのマダミス

    ーー今までに遊んで楽しかったマダミスを教えてください。
    白岩ぱんだ:たくさんあります。『殺意の特異点』、『ランドルフ・ローレンスの追憶』、『エイダ』、『鬼哭館の殺人事件』、『天使は花明かりの下で』、『何度だって青い月に火を灯した』など。店舗で遊んだマダミスも、オンラインやパッケージをGMレスで遊んだものもあります。

    白岩ぱんだ:舞台経験から、役者コミュニティの人たちと一緒に遊ぶことが多いのですが、物語を一緒に作っていこうという意識が高く、マダミスを遊ぶのがヘタクソな僕でも楽しく遊ぶことができるんですよね。

    ーー今まで書かれたシナリオを舞台化するというお考えはありますか?
    白岩ぱんだ:あります。
    まだ動いてはいませんが、『されど魔女裁判は開かれる』は、舞台演劇として楽しめるといいなと思って短い時間でプレイできるように作っていたりもします。

    白岩ぱんだ:マダミスの利点は、作品が残り続けることなんですよね。
    謎解きの作品は数ヶ月経ったら入れ替わってしまいますが、マダミスは一度作ってしまえば、数年経っても遊べる。昔に作った作品でも、舞台として楽しむこともできるんじゃないかと思っています。

    マダミスは、一度きりの体験でありながら、作品として残り続ける。その不思議な性質は、舞台と本のあいだにあるもののようにも見える。上演されるたびに違う時間が生まれ、それでも作品そのものは残り、次の卓に手渡されていく。


    入口を広げるために、新しいシリーズを作る

    ーーこれからやってみたいことはありますか。
    白岩ぱんだ:あるテーマを題材にしたシリーズを一つ考えています。
    まだ発表することができないのですが、既に同時に動いておりまして、今年パッケージと、公演形式、オンラインの三本をリリースしようと考えています。どれから遊んでもいいようになっています。
    公演でしか遊ばない人、オンラインでしか遊ばない人に、同じシリーズの作品だったら遊んでみようかなと思ってもらうきっかけにしたいと考えています。

    ーーマダミスPLの入り口を広げることを、念頭に置いて制作しておられるイメージがあります。
    白岩ぱんだ:一つの作品を作ることは、誰にでもできると僕は考えています。二作品目、三作品目を作る時に、「どうすれば市場が広がっていくのか」「新しい人を呼び続けるためにはどんな作品を作ればいいのか」ということはいつも考えておきたい。

    白岩ぱんだ:今のマダミス業界には、編集者のような立場の人がいません。「今の市場ではどのような作品や体験が求められているか」「どういうブームを作っていきたいのか」。そういうことは、作家たち自身が切磋琢磨して考えていかなければいけない。でなければ、たくさんの作品が作られてもレベルが下がっていくこともある。二番煎じ、三番煎じの作品が増えてしまう、とか。

    白岩ぱんだ:以前、この界隈内で話題になっていたのを見かけたのですが、「トロッコ問題はもうたくさん」と誰かが発言し、それに対しての賛否が相次ぐとか。それは、似たような物語の繰り返しにPLが飽きていることにも起因していると思います。例えトロッコ問題だろうとも参加者がまた遊びたいと思える物語を作っていくことが重要なんだと考えています。

    白岩ぱんだ:そうやってマダミスを遊んでいる界隈の人だけではなく、もっと多くの人が話題にして、遊ぶきっかけにしてくれるような面白いものを作っていく。身内だけで消費されるコンテンツではなく、常に新しい人を引き込んでいける力をもったコンテンツ作りが大事だと考えています。


    マダミス作家を目指す人へ

    ーーこれからマダミス作家を目指す人に、一言お願いします。
    白岩ぱんだ:そうですね。まず完成させること。その中で面白いものを作るためには、三幕構成を意識すること。その上で満足感と納得感が、しっかり全キャラクターに担保されているかどうかを見ること。これらをきちんと守っていけば、物語づくりの改善の兆しが見つかるかもしれません。

    ーーライバルはいますか?
    白岩ぱんだ:いませんね。というのも、みなさん我流でやっているので、他の作家さんのつくるものは流派が違うという考え方です。他流なので「真似はできないけど、この人のこの芸風いいよね」など「よそはよそ、うちはうち」と思っています。

    白岩ぱんだ:ただ、好きな作家さんはたくさんいます。ひとり挙げるとしたら数羽さん。数羽さんは天才じゃないでしょうか。
    まず作品をリリースするスピードの速さ。それでいて、面白いもの・話題作になるものを常に出し続けている。ライトな作品から本格的なものまで、多くの引き出しを持っているところもすごいなと思います。


    次回予告:NOVAKさんへバトン

    ーー次にお話を聞いてみたい方はいらっしゃいますか。
    白岩ぱんだ:NOVAKさんです。
    2020年にマーダーミステリー『殺意の特異点』を作られた作家さんでありながら、マーダーミステリー作家協会やマダアン(その月に遊んで面白かったアンケートを投票する企画)の運営チームに所属しておられたり、マダミスの流れを長く見ておられる方です。なので、今後のマダミスがどう変わっていくのかというところまで、広い視野で話してくださると思います。
    なにより、この人がいなかったら、僕はマダミスを作らなかったという人なので。

    (文・構成:そらしずく)


    ◎関連リンク
    ・物語をつくるひと。Vol.1 いとはきさんへのインタビュー
    ・物語をつくるひと。Vol.2 イバラユーギさんへのインタビュー
    ・物語をつくるひと。Vol.3 スタジオアーツさんへのインタビュー
    ・物語をつくるひと。Vol.4 ぶるーそにあさんへのインタビュー
    ・物語をつくるひと。Vol.5 とんとんさんへのインタビュー
    ・マンスリーマダミスアンケート #毎月マダアン











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