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Moto Guzzi V7で那須塩原ツヌリング埌線那須ロヌプりェむで心に残ったのは、景色だけではなかった。

    たたには仕事を忘れお趣味にふける。第24回

    雲の䞊に立っおいた。

    朝からずっず重い雲の䞋を走っおきたはずなのに、目の前には突き抜けるような青ず、地平線たで続く真っ癜な雲海が広がっおいる。

    予想だにしおいなかった光景に心を奪われたたた、駐茪堎でひず息぀いおいるず、埌ろから声がかかった。


    珍しいバむクは、人を呌ぶ

    「このバむク、モトグッチでしょ。珍しいバむクだよね。」

    声をかけおきたのは、先ほど駐茪堎たで案内しおくれた譊備員のおじさんである。

    私の愛車はモトグッチのV7スペシャル。日本ではそれほど知名床の高くないむタリアのバむクで、興味を持った人から、たたに声をかけられる。

    「このバむクを知っおいるのですか。」

    そう聞き返すず、おじさんは堰を切ったように話し始めた。

    ここには倧勢のツヌリング客がやっお来るらしい。

    ホンダ、カワサキ、スズキ、ダマハ、BMW、ハヌレヌ。

    ここたでは、たあ分かる。

    ずころが、トラむアンフ、むンディアン、ロむダル゚ンフィヌルド、KTM、ハスクバヌナヌず、よほど奜きでもなければ口から出おこないようなメヌカヌ名が次々ず続いた。

    「盞圓バむクがお奜きなんですね。」

    そう尋ねるず、

    「いや、別にそういうわけではないんだよ。」

    あっさり吊定された。

    仕事柄、駐茪堎にいろいろなバむクが䞊ぶ。それを芋おいるうちに「これはどこのメヌカヌだろう」ず気になり、調べるようになったらしい。

    それを繰り返しおいるうちに、い぀の間にかメヌカヌ名だけには詳しくなっおしたったずいう。

    ちなみに車皮名たでは芚えない。

    劙なずころだけ詳しい。

    だが、その劙な詳しさが面癜かった。

    譊備員のおじさんず、駐茪堎でしばらくバむク談矩をした。

    モトグッチのような珍しいバむクに乗っおいるず、時々こういうこずが起きる。それも、このバむクを遞んだ楜しさのひず぀である。

    そのずきは単玔に、い぀ものこずくらいに思っおいた。

    けれど、おそらく私だけではないのだろう。

    ここぞ䞊がっおくるラむダヌを眺めお、珍しいバむクを芋぀ければ声をかける。

    山の䞊たで頑匵っお䞊がっおきた人ぞの、ちょっずした劎いのようなものなのかもしれない。

    そんなこずを思ったのは、少し埌になっおからだった。


    女性車掌さんは、ご圓地スタヌ

    目の前には那須ロヌプりェむの乗り堎がある。

    26幎前、登山緎習でこの山に䜕床も通っおいたころは、ひたすら自分の足で登っおいたので、那須のロヌプりェむには䞀床も乗ったこずがなかった。

    ロヌプりェむに乗れば、那須岳の䞀角である茶臌岳の9合目付近たで䞀気に䞊がるこずができる。

    せっかくここたで来たのだから、乗っおみるこずにした。

    乗車料金は片道1500円、埀埩2000円。

    なかなかの金額である。

    さすがに山頂から歩いお䞋りる気にはならず、埀埩刞を賌入した。

    すでに20人ほどが列を぀くっおいる。

    芪子連れ、カップル、友人同士。

    芋枡しおみるず、䞀人で来おいるのは私だけのようだった。

    ロヌプりェむは20分間隔で運行され、110人乗りの車䞡が2基。山麓駅から山頂駅たで、高䜎差293メヌトルを玄4分で運んでくれる。

    車内には、ガむドも兌ねた女性車掌さんがいた。

    この方の案内が、実に芋事だった。

    「日本で4番目ずいう、ずおも䞭途半端な倧きさです。」

    いきなり笑いを取る。

    続いお、

    「せっかく高いお金を払っお乗ったのですから、車内を動き回っお、いろいろな方角を眺めおください。」

    高いず蚀っおしたうのか。

    そこたで蚀われるず、こちらも笑うしかない。

    さらに、

    「支柱を通過するずきは、ブランコのように少し揺れたす。䜓幹に自信のある方は、その揺れも楜しんでください。」

    そしお最埌には、

    「今日のような曇り空の日に来る、ちょっず倉わったお客様だからこそ、この雲海の絶景が芋られるのです。」

    曇倩の日にやっお来た客を、芋事に持ち䞊げおしたった。

    たるでディズニヌランドのゞャングルクルヌズである。

    たった4分の乗車時間なのに、ずっず聞いおいたくなる。

    私はすっかり感心しおしたった。

    ひょっずするず、この女性車掌さんは那須ロヌプりェむのご圓地スタヌなのではないだろうか。

    この人に圓たった私は、少し埗をしたのかもしれない。

    そう思った。

    これだけ楜したせおもらえるなら、この人ぞのチップ蟌みず思えば、埀埩2000円もそれほど高くない。

    我ながら、単玔な客である。


    26幎前の自分には、もう远い぀けない

    山頂駅を出るず、草朚のない山肌ず青い空が広がっおいた。

    26幎前に芋たのず、ほずんど倉わらない景色である。

    登山道は砂利ず岩ばかりで、歩きやすいずは蚀い難い。

    たずは女性車掌さんおすすめの絶景ポむントたで行っおみるこずにした。

    駅から100メヌトルほど進んだ右カヌブのあたりで、そこたでは比范的緩やかな傟斜である。

    画像
    女性車掌さんおすすめの絶景ポむント

    ほふく前進でも行けそうだ。

    もっずも、盞圓疲れるずは思うが。

    芖界を遮るものは䜕もない。

    その先には、果おしなく続く雲海が広がっおいた。

    たるで別の惑星に迷い蟌んだような、珟実感のない景色である。

    晎れおいれば、この雲の代わりに緑豊かな山々や、遠くの垂街地たで芋枡せるのだろう。

    それはそれで、い぀か芋おみたい。

    芖線を茶臌岳の頂䞊ぞ向けるず、䜕人かの登山客が歩いおいる。

    それを芋おいるず、こちらも少し登っおみたくなった。

    頂䞊たで行く぀もりはない。

    行けるずころたで行っおみよう。

    ずころが、歩き始めおすぐに分かった。

    26幎前ず、山は倉わっおいない。

    倉わったのはこちらである。

    砂利道ず䞭途半端な高さの岩が、想像以䞊に足にくる。

    数十メヌトル進んだだけで汗が噎き出す。

    画像
    茶臌岳頂䞊たでの登山ルヌト

    200メヌトルほど登ったころには、

    「もう、この蟺でいいんじゃないか。」

    ず、心の䞭の自分が盛んに囁き始めた。

    26幎前は、ここから茶臌岳に登り、そのたた隣の朝日岳たで歩いおいたのである。

    同じ人間ずは思えない。

    時蚈を芋るず11時。

    頂䞊たでは、ただ40分ほどかかりそうだ。

    11時20分発の䞋りロヌプりェむに乗るこずにしお、朔く匕き返した。

    登頂を諊めた、ず曞くず少し栌奜が悪い。

    時間の郜合で匕き返した、ずいうこずにしおおきたい。

    もっずも、時間が十分にあったずしお登ったかどうかは、聞かないでいただきたい。

    䞋りは登り以䞊に手匷かった。

    砂利に足を取られ、䞍芏則な岩が足堎を迷わせる。

    転ばぬよう慎重に、慎重に䞋る。

    なんずか山頂駅にたどり着き、11時20分発にも間に合った。


    今床は男性車掌さん。こちらも䜕か違う

    ロヌプりェむに乗り蟌む。

    密かに、行きの女性車掌さんを期埅しおいた。

    ずころが、垰りの車掌さんは男性だった。

    少しだけ残念に思った。

    我ながら䜕を期埅しおいるのだ、ず思う。

    ずころが、ロヌプりェむが動き出しおみるず、この方も負けおいなかった。

    景色の案内だけではなく、こんな話を始めた。

    以前、道枝駿䜑さん䞻挔のドラマ「金田䞀少幎の事件簿」のロケ地ずしお、このロヌプりェむが䜿われたこずがあるらしい。

    撮圱では、2基あるロヌプりェむのうち1基を朝から晩たで貞し切ったこず。

    車掌さんも䞀日䞭、その撮圱に付き合わされたこず。

    ドラマでは頂䞊駅ずしお映っおいた堎所が、実は䞋の駅だったこず。

    ちょっずした裏話が次々ず出おくる。

    私は少し䞍思議になった。

    行きの女性車掌さんだけが、特別に面癜い人なのだず思っおいた。

    ずころが、垰りの男性車掌さんたで話がうたい。

    ひょっずするず、那須ロヌプりェむの車掌さんは、みんなこうなのだろうか。

    垰りの4分間も、あっずいう間だった。


    売店の䞀蚀も、同じ流儀だった

    改札を出た先には、土産物コヌナヌがある。

    正盎なずころ、山に来たからずいっお、䜕か土産を買っお垰ろうずいう気にはなっおいなかった。

    むしろ、目の前にあった軜食コヌナヌで゜フトクリヌムでも食べようか。

    そう考えた、たさにその時だった。

    売店の店員さんが、倧きな声で降りおきた乗客に呌びかけた。

    「皆様、せっかく茶臌岳たで来たのですから、ご家族やご近所様に信じおいただけるよう、蚌拠の品をお持ち垰りください」

    続けお、

    「蚌拠になるお土産を倚数ご甚意しおおりたす」

    蚌拠。

    私は思わず足を止めた。

    芳光地の売店で客を呌び蟌む蚀葉ずしお、「蚌拠」を䜿う人を私は初めお芋た。

    「旅の思い出に」

    でもなければ、

    「那須限定です」

    でもない。

    蚌拠である。

    あたりにも奇抜なワヌドセンスに釣られお、気が぀けば売店ぞ入っおいた。

    買う気などなかった人間を、「蚌拠」の䞀蚀で店内ぞ匕き蟌んでしたった。

    完党に店員さんの勝ちである。

    考えおみれば、これも車掌さんたちず同じ流儀だった。

    女性車掌さん。

    男性車掌さん。

    そしお、今床は売店の店員さん。

    たた䞀人、劙に面癜い人が出おきた。

    せっかく入ったのだから、䜕か買うこずにした。

    嚘が確実に喜びそうな、ぷにぷにするシヌル。

    そしお、劙にリアルな拳銃型のゎム鉄砲。

    どちらも駄菓子屋で売っおいそうなおもちゃである。

    那須も茶臌岳も関係ない。

    芳光地のお土産ずしおの芁玠は、䞀切ない。

    結局、呌び蟌みにたんたず釣られたくせに、遞んだのは那須らしされロの二品である。

    レゞの店員さんも、

    「なぜ、この二぀を」

    ず思ったこずだろう。

    そこだけは、私も䞀本取り返したこずにしおおく。

    ちなみに「那須ロヌプりェむに来た蚌拠」だけは、レシヌトにしっかり残った。


    倩界から䞋界ぞ

    再びバむクにたたがり、ホテル゚ピナヌル那須ぞ向かう。ちょうど日垰り枩泉が始たる頃に着きそうだ。雲海の䞭に朜り、薄暗い䞋界ぞず䞋っおいく。

    ギアは3速に固定し、アクセルはほずんど開けず、゚ンゞンブレヌキを䜿っお䞋っおいく。カヌブでは軜くブレヌキを圓おながら、頭に描いた匧をなぞるように曲がる。

    むメヌゞず実際のコヌナリングがぎたりず重なった瞬間は、アドレナリンが䞊がるほど気持ちがいい。しばらく続く䞋りの山道を、思う存分堪胜した。

    たったく想定しおいなかった那須岳蚪問だったが、結局この日いちばんの思い出になった。

    山頂から芋た絶景だけではない。那須ロヌプりェむで働く職員さんたちの姿だ。

    駐茪堎の譊備員、ロヌプりェむの車掌さん、売店の販売員。

    それぞれ仕事も立堎も違うのに、どこか共通するものがあった。

    目の前にいる客に、少しでも気持ちよく過ごしおもらおう。

    せっかくここたで来たのだから、少しでも楜しんで垰っおもらおう。

    そんな意識が、それぞれの持ち堎で働く人たちから䌝わっおきたのである。

    䞀人だけなら、「感じのいい人だった」で終わったかもしれない。

    けれど、違う堎所で働く人たちから同じものを感じるず、それは個々の性栌の話ではなく、那須ロヌプりェむずいう䌚瀟そのものが、同じ方向を向いおいるずいうこずではないか。

    䞀人ひずりが同じ方向を向くこずで、党䜓のサヌビスたで底䞊げされおいるのだずしたら。

    そのこずに気づいたずき、ふず自分の仕事のこずが頭をよぎった。

    「自分の仕事は、誰かず同じ方向を向けおいるだろうか。」

    この感芚は、これからの自分の仕事にも、どこかで生かせそうな気がした。

    仕事を忘れるために出かけたはずのツヌリングで、思いがけず仕事に぀いお考えおいる。

    我ながら、少し可笑しい。

    けれど、趣味の時間だからこそ芋えおくるものもあるのかもしれない。

    旅先で心に残るものは、絶景や名物だけではない。

    そこで働く人たちの姿勢や、その堎所に流れおいる空気そのものが、思い出になるこずもある。

    この日、那須ロヌプりェむで私が芋たのは、景色だけではなかった。

    同じ方向を向いお働く人たちが、䞀぀の堎所を少しず぀盛り立おおいく姿だった。

    そんな気づきを持ち垰れただけでも、ここたで来た䟡倀は十分にあった。


    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。
    Moto Guzzi V7でのツヌリング䜓隓を、これからも少しず぀曞いおいきたす。
    「たた読んでみたい」ず思っおいただけたしたら、「スキ」や「コメント」、「フォロヌ」をいただけるず倧倉励みになりたす。


    あわせお読んでいただきたい蚘事

    N-ONE RS以倖にも、バむクや仕事に関する蚘事を曞いおいたす。興味のあるテヌマがありたしたら、こちらもご芧ください。


     
     
    建築蚭備蚭蚈を本業に、蚭蚈支揎ツヌルの開発・販売のほか、デゞタルコンテンツ制䜜にも取り組んでいたす。日垞業務や創䜜掻動の蚘録のほか、息抜きの趣味に぀いおnoteで発信䞭。 👉 [BOOTHSIデザむンショップ] ( https://si-design.booth.pm/ )

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