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メー・オン《終》 ターミナル

     暗闇の中、ごうごうと、波の音が聞こえる。
     夜中の海辺に立つのは初めてだったが、同じ海でも昼間とはこうも違うのか、と思うほどそれは不気味で、恐ろしいものであった。
     果ての見えない、どこまでも続く闇、深淵さえもうかがい知れない海面、そして足元には無限の冷たい波がこちらに迫り、私を引きずり込もうとしている。

     ついに岩場は途切れ、目の前には砂浜が広がっていた。
     波打ち際を向き、一人の少女がしゃがんでいる。
     紫桜だ。
     彼女は貝殻を手に目の前の海水を掬っては、砂浜にそれを捨てていた。
     「やめるんだ、紫桜」
     そんなことはするな。
     紫桜はこちらを振り向いた。不思議そうな顔をして、しばらくこちらを見上げたあと、再び元へと向き直り、海水を掬い始めた。
     私はあきらめて、見えない水平線を見つめた。
     

     かなたに、オレンジ色の点が見えた。はじめは目の錯覚かと思ったが、それは確かに波に揺れながら、こちらに近づいてきている。

     その正体は、小舟の舳先に掲げられた、カンテラの明かりであった。


    前話→メー・オン《8》 井戸

    第一話:メー・オン《1》 高原


     
     
    小説・詩・エッセイを書いてます。 詩:ユリイカ  選外佳作(2026年4月号)   現代詩手帖 選外佳作(2026年7月号)(2026年9月号)

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