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焼肉店の学生バイトと、個別指導塾を立ち上げた話 ~「いつか一緒に仕事をしよう」という約束が、本当になった~

    この記事で書くこと

    2010年、私は秋葉原で焼肉店「やまの」を開業しました。

    この記事で書くのは、やまので働いていた一人の学生バイトと、後に会社の新規事業を一緒に立ち上げた話です。

    2022年、彼と一緒に個別指導Axis江戸川区役所前校を立ち上げました。 彼はその教育事業を、会社に欠かせない収益の柱に育ててくれました。

    この記事では、彼との出会いから、教育事業を一緒に立ち上げるまでのことを書きます。

    ただ、その話は最初から教育事業として始まったわけではありません。 始まりは、焼肉店での一つの出会いでした。

    焼肉店で学んだ、人との向き合い方

    店を続けていると、スタッフ一人ひとりの得意なことや、伸ばした方がいいところが見えてきます。

    接客で力を発揮する子もいれば、裏方の段取りがうまい子もいる。 周りをよく見て、自然と助けに入れる子もいる。

    一方で、改善した方がいいところが見えることもあります。

    ただ、私はそこを細かく指摘して動かすより、その人の良いところや得意なところを見つけて、伸ばしていく方が自分には合っていると感じてきました。

    任せられるところは任せてみる。 うまくいったところを広げていく。

    そうやって店をやってきました。

    開業当初から、良いスタッフには恵まれていました。 ただ、飲食店はシフトで成り立つ仕事です。

    誰かが出られない日や、急な欠員が出た日には、私一人で営業することもありました。

    一人で店を開け、接客をし、料理を出し、片づける。 体力的にも大変でした。

    でも、それ以上に、店に一人で立つ心細さがありました。

    一方で、人に任せる難しさを感じる出来事もありました。 お金のことで裏切られたこともあります。

    それでも、私は人の良いところを見るやり方で店を続けてきました。

    そんなふうに店を続けていた、開業から数年後のことです。 藤山と出会いました。

    神戸から東京へ来た学生

    きっかけは、店長の英彰でした。

    英彰が神戸で店長をしていた店に、藤山という高校生アルバイトがいました。

    その後、藤山はボクシングの特待生として駒澤大学に進学し、東京に出てくることになります。

    上京するタイミングで藤山から英彰に連絡があり、二人で食事に行きました。 その場で、英彰が「やまので働いたらどうか」と話してくれました。

    その後、英彰から「ぜひ会ってください!」と言われ、私も含めて三人で食事をしました。

    藤山は、とても人懐っこい人間でした。 年齢はかなり離れています。 でも、こちらの懐に自然に入ってくるようなところがありました。

    一緒に話していて面白い。 反応が素直で、可愛げがある。 人との距離の取り方がうまい。

    その食事で、私は藤山に強く惹かれました。

    私は彼のことを、アルバイトというより、友達のようにも感じていました。 それは今でも変わりません。

    初対面でしたが、この人とは長く関わることになりそうだと感じました。

    藤山のために定休日を変えた

    当時、藤山が出勤できるのは日曜日だけでした。 ところが、やまのは日曜日が定休日でした。

    普通なら、そこで終わりです。

    「うちは日曜休みだから、残念だけど働けないね」

    そう言ってもおかしくありません。

    ただ、英彰からも「藤山をやまので働かせたい」という相談がありました。 私も、藤山と一緒に働いてみたいと思いました。

    それなら、日曜日に営業すればいい。

    そう考えて、定休日を日曜日から土曜日に変えました。

    今振り返っても、かなり思い切った判断だったと思います。

    それくらい、彼と一緒に働きたいと思っていました。

    私の家に泊まることもあった

    藤山が、私の家に泊まっていたことも何度かあります。

    彼の所属するボクシング部は、全寮制でした。 年末年始などの長期休みになると、寮を出なければならないことがありました。

    実家は兵庫で、東京からは遠い。 でも、やまので働きたい。

    そんな時、藤山は一人暮らしの私の家に泊まっていました。

    藤山は、泊まりに来るたびに、散らかっていた私の部屋を掃除してくれました。

    初めて泊まりに来た時、家の近くの、ちょっと雰囲気のいいスペイン料理店に連れて行きました。

    学生だった藤山にとって、そういう店に行くのは初めてだったようです。

    前菜を頼み、チーズの盛り合わせを頼み、少しずつ料理を食べながら進めていく。

    その食事の流れに、彼はとても感動していました。

    「こういう頼み方をするんですね」

    本当に嬉しそうにしていました。

    その後、別のイタリア料理店に連れて行った時も、生ハムの盛り合わせやレバーパテを頼むと、また嬉しそうに言いました。

    「大人はこういう頼み方をするんですね。僕もデートで使います」

    そういう反応をするので、藤山は食事に連れて行きがいがありました。 それは今でも変わりません。

    やまのは、ただ働くだけの場所ではなかった

    やまので働いてくれている学生たちは、私にとって、一緒に店を盛り上げていく仲間でした。

    授業があり、部活があり、友人関係があり、就活があり、悩みがあり、将来がある。

    学生生活の大切な時間を、やまのに使ってくれている。 だからこそ、できるだけ楽しく、気持ちよく働いてほしいと思っていました。

    まかないも、できるだけ喜んでもらえるものを出したい。 BBQ、飲み会、フェスのようなイベントも、できるだけ一緒に楽しむ。 誕生日にはプレゼントを用意して、お祝いする。

    そういうことが、やまのでは自然に行われていました。

    その中でも特に印象に残っているのが、藤山のボクシングの試合と、バスケの試合をみんなで応援に行ったことです。

    藤山は大学でボクシング部に所属し、副部長を務めていました。 誇れる成績も残していました。

    ある女性スタッフは、明治大学のバスケットボール部に所属していました。 後に部長になった、かなり力のある選手です。

    同じ学年のバスケ部の仲間も、紹介でやまのに入ってくれました。

    私たちは、藤山のボクシングの試合に、やまのみんなで応援に行きました。 バスケの試合にも、みんなで応援に行きました。

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    バスケの試合をみんなで応援に行った日

    応援に行った後は、決まってみんなで食事に行きました。

    藤山は、そのバスケ部の女性スタッフに好意を持っていました。 ただ、最初はなかなか振り向いてもらえませんでした。

    そんな時期の、ボクシングの試合でした。

    リングの上の藤山は、普段の人懐っこい姿とはまったく違っていました。 本気で戦っている姿が、かなり格好よく見えたのだと思います。

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    ボクシングの試合を応援に行った日

    その試合をきっかけに、彼女は藤山に惹かれていきました。

    その後、二人はやまので働いている間に付き合うようになりました。

    卒業後も関係は続き、後に結婚しました。

    子どもを授かったこともあり、結婚式は少し後になりました。 そして昨年の12月13日、二人は式を挙げ、私は乾杯の音頭を取らせてもらいました。 彼女の誕生日であり、やまのが15周年を迎えた日でした。

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    二人の結婚式。乾杯の音頭を取らせてもらいました

    やまのは、ただ働いて終わる場所ではありませんでした。 人と人との関係が残る場所になっていったのだと思います。

    いつか一緒に仕事をしよう

    藤山が就職でやまのを卒業する時、私たちは「いつか一緒に仕事をしよう」と話しました。

    ただの社交辞令ではありません。 私は本気でそう思っていましたし、その時のことを今でもはっきり覚えています。

    藤山は卒業後、ボクシングでの実績も評価され、当時の東証一部上場企業に就職しました。

    そこでも、彼は全力で仕事をしていたようです。 ただ、頑張っても頑張らなくても給料が変わらないことに、面白さを感じられなかったようです。

    その後、彼は完全歩合の会社に転職しました。

    私が声をかけたのは、その頃でした。

    教育事業の話を聞いて、藤山の顔が浮かんだ

    会社に大きな転機が来ていました。

    コロナ禍です。

    飲食店は大きな影響を受けました。 やまのも例外ではありません。

    一方で、飲食店向けのゼロゼロ融資もありました。

    もちろん借りたお金です。 ただ、手元資金には余裕が生まれていました。

    私はそのお金を、ただ寝かせておくのがもったいないと感じていました。

    コインランドリー、株式投資、不動産投資。 いろいろ考えました。

    ただ、周りから止められたこともあり、踏みとどまりました。

    それでも、現金があるなら何かに生かしたいという思いは残っていました。

    そんな時、資産運用とフランチャイズの展示会に行きました。

    会場では、いろいろな事業の説明を聞いて回りました。

    その中に、教育事業がありました。

    「これは面白いかもしれない」

    そして、すぐに藤山の顔が浮かびました。

    気づけば、藤山がやる前提で説明を聞いていました。

    ボクシング部の副部長を務めていたから、講師をまとめられそう。 人懐っこく、誠実でまっすぐな性格は、保護者に信頼されそう。 私の姪っ子とのやり取りを見ていても、生徒に好かれそう。

    教育事業は、藤山にぴったりだと思いました。 他の候補は考えられませんでした。

    その日のうちに、藤山に電話しました。

    「新しい事業を一緒にやらないか」

    これが、教育事業の始まりでした。

    藤山が選んだ個別指導塾

    その段階では、何をやるかは決まっていませんでした。 個別指導塾をやると決めていたわけでもありません。

    そこから、藤山と一緒に相談しながら、新しい事業を考え始めました。

    子ども向けのスポーツ教室も見に行きました。 担当者から詳しい話も聞きました。

    藤山はもともとスポーツマンです。 だから、彼がやりがいを持つならスポーツ教室なのかもしれないとも思っていました。

    一方で、事業として考えるなら、私は個別指導塾にも大きな可能性を感じていました。

    実際に話を聞き、現場も見て、比べていく中で、藤山は言いました。

    「やりがいがありそうなので、個別指導塾がいいです」

    では、どの本部に加盟するのか。

    それも、最初から決まっていたわけではありません。

    誰もが知っているような大手ブランドもある中で、最終的に私たちは個別指導Axisという塾に加盟することを決めました。

    実際に加盟している校舎も見に行きました。

    物件も二人でいろいろ見て回りました。

    最終的に選んだのは、新小岩駅から徒歩20分ほどの場所でした。 駅から通うというより、家から自転車で通ってくる立地です。

    効率だけで考えれば、もっと分かりやすい場所もあったと思います。

    ただ、視認性や競合の少なさなどを考えると、十分に勝負できる場所だと感じました。

    いろいろな条件を考えながら、藤山と話し合いました。

    ここで勝負しよう。

    そう二人で決めました。

    加盟する本部を選ぶこと。 物件を決めること。 開業までの準備を進めること。

    そうした事業の土台づくりには、私もかなり関わりました。

    その後、藤山は1か月以上に及ぶ研修に参加しました。

    ただ、実際に教室をどう運営するのか。 生徒一人ひとりに対して、どんな指導方針を立てるのか。 講師とどう向き合い、保護者とどう話すのか。

    その中身の部分は、ほとんど藤山が作っていきました。

    この新規事業は、二人で立ち上げました。

    教育事業が会社の柱になった

    2022年、個別指導Axis江戸川区役所前校を開校しました。

    飲食店とはまったく違う事業です。 生徒、保護者、講師、教室運営。 向き合う相手も、求められるものも違います。

    それでも藤山は、教室をしっかり育ててくれました。

    開校から数年で、教育事業は会社にとって欠かせない収益の柱になりました。

    その実績もあり、2024年には別の校舎を引き継いで運営しないかという話をいただきました。

    事業譲渡で別のオーナーから引き継ぐ、経営の厳しい校舎でした。

    本部からは、「藤山さんなら、こちらの校舎も立て直してくれるのではないか」と言われました。

    藤山に相談すると、二つ返事でした。

    「ぜひやりましょう!」

    「自分、2校見るんで」

    その言葉どおり、藤山は2校を見ることになりました。

    会社でバイクを用意し、藤山は15分の道のりを行き来しながら、両方の教室を回していました。

    ただ、2校目の亀戸校が忙しくなり始めると、一人では手が回らなくなってきました。

    そこで、亀戸校には専属の責任者を採用しました。

    現在、株式会社やまのは個別指導塾を2校運営しています。

    2校目も、もうすぐ黒字化が見えてきています。

    藤山と一緒だったから、Axisに加盟することを決められました。 藤山と一緒だったから、江戸川区役所前で始める決断ができました。

    藤山がいなければ、株式会社やまのは飲食以外の新規事業に踏み出していませんでした。

    これから藤山に期待していること

    今、藤山は1校の責任者として、とても優秀です。

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    現在の藤山。個別指導Axis江戸川区役所前校の責任者

    ただ、私は彼が一つの校舎の責任者で終わるとは思っていません。 おそらく本人も、そこにとどまりたいとは思っていないはずです。

    今後、会社として3校、4校、さらにその先へと教室を増やしていきたいと考えています。

    その時に、藤山が教育事業全体を取りまとめる。

    そんな未来を考えると、私はとても楽しい気持ちになります。

    もちろん、簡単なことではありません。 1年や2年で形になる話でもないと思っています。

    藤山はまだ若く、社会人としての経験もこれから積み上げていく段階です。

    次に必要なのは、自分がなぜ結果を出せているのかを言葉にすることだと思っています。

    江戸川区役所前校でやってきたことを、別の校舎で再現するには何が必要なのか。

    それを人に伝えられるようになれば、藤山は1校の責任者から、責任者を育てる側に回れる。

    現在は2校それぞれに責任者がいます。 私も教室に顔を出しています。

    顔を出せば、困っていることや言いたいことは、自然と出てきます。

    ただ、私は教育の専門家ではありません。 個別指導塾の現場業務を、理解しているわけでもありません。

    経営者として見えることはあっても、教務の相談には答えられません。

    たとえば、成績がどうしても上がらない生徒を、どうすればいいのか。 一人ひとりの生徒に、どんなカリキュラムを組めばいいのか。

    そこは、教室の責任者にとって大きな悩みになるところです。

    私が聞いても、「そこは私には分からない」で終わってしまうことがあります。

    でも、藤山なら話ができます。

    江戸川区役所前校を育ててきた経験があり、生徒や保護者、講師と向き合ってきた実感があります。 だから、責任者が抱えている教務の悩みに対して、同じ目線で話ができる。

    実際、藤山は今も週に1回ほど亀戸校に顔を出し、責任者の悩みを聞いています。

    これは、校舎を増やしていく上で、とても大きいと思っています。

    校舎が増えれば、それぞれの責任者に悩みが出ます。 その時に、現場の課題を聞き、解決の方向を一緒に考えられる存在になってほしい。

    私は、藤山にそういう未来を期待しています。

    良いところを伸ばして任せる

    改善すべきところを細かく指摘するより、その人の良いところを見る。 得意なことを見つける。 そこを伸ばして、任せていく。

    その方が、本人も前向きに動けるし、会社にとっても良い結果につながると考えています。

    藤山との関係も、そうでした。

    こちらが細かく管理したというより、彼の良さを見て、任せられることを少しずつ任せていった。 その積み重ねが、今につながっているのだと思います。

    人を人として見る

    アルバイトにも、一人ひとりの人生があり、可能性があり、未来があります。

    藤山とは、最初は焼肉店のアルバイトとして出会いました。

    でも、気づけば友達のような関係になり、卒業後もつながりが続き、今では会社の新しい事業を一緒に作り、これからさらに広げていく仲間になっています。

    もしあの時、彼をただの人手として見ていたら、この未来はなかったと思います。

    人を大切にすることは、私にとって、経営そのものです。


    <「やまのの経営ノート」創作大賞2026 応募シリーズ>

    ▼焼肉店を立て直すまでの話は、こちらに書いています。

    ▼やまのの学生バイトが、友達や妹まで連れてくる理由は、こちら。

    ▼その個別指導塾だけが残った、フランチャイズ4社加盟と撤退の話は、こちら。


     
     
    秋葉原の焼肉店「美味しいお肉の店 やまの」代表。 2010年、飲食未経験で開業。借金800万円からの立て直しを経て、2022年には元学生アルバイトと個別指導塾を立ち上げ、現在2校を運営しています。 実際に試してきたこと、失敗も含めた経営のリアルを発信中。

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