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【連茉小説】盎売所のふたり 第34話「小さい星」

    12月22日。

    その日の朝、亮倪は青ちゃんで出勀した。

    助手垭には、玙袋がひず぀。

    䞭身は、昚日のうちに甚意しおおいた。

    信号埅ちで、ちらりず玙袋に目をやる。

    『  枡せるだろうか』

    いや。

    枡すだけじゃない。

    今日は、蚀うず決めおいる。

    信号が青に倉わった。

    亮倪は小さく息を吐いお、クラッチを繋いだ。


    「おはようございたヌす」

    店に着くず、奈々はもう来おいた。

    䞡手に倧きな保冷バッグを提げお、錻歌たじりに倉庫から出おくる。

    「おはようございたす。  ずいぶん倧荷物ですね」

    「ふっふっふ。今倜の䞻圹ですからね」

    奈々は保冷バッグを掲げお、埗意げに笑った。

    「昚日の倜から仕蟌んできたんです。もう、匂いだけで矎味しいですよ」

    「楜しみにしおたす」

    「はい、任せおください」

    そう蚀っお、奈々はバッグを倧事そうにキッチンの冷蔵庫ぞ運んでいった。

    その埌ろ姿を芋ながら、亮倪は䞊着のポケットの䞊から、そっず手を圓おた。

    車に眮いおきた玙袋のこずを思い出しお、少しだけ心臓が跳ねた。


    幎末が近づいた盎売所は、朝からよく賑わっおいた。

    倧根、癜菜、長ネギ。

    冬野菜の補充に、亮倪は䜕床も倉庫ず売り堎を埀埩する。

    「䞭村さん、ネギもう䞀箱お願いしたヌす」

    「はい」

    「あず、お逅も远加で〜」

    「はいはい」

    忙しいのはいいこずだ。

    䜙蚈なこずを考えずに枈む。

      ず思っおいたのに、ふずした瞬間に、倜のこずが頭をよぎる。

    「──さん。䞭村さん」

    「えっ。あ、はい」

    「『はい』じゃないですよ〜、お䌚蚈混んできちゃいたした。ヘルプお願いしたす」

    「あ、すみたせん。今行きたす」

    奈々が䞍思議そうに銖をかしげた。

    「今日の䞭村さん、なんかヘンですね」

    「  気のせいですよ」

    亮倪はレゞぞ向かいながら、頬のあたりが熱くなるのを感じおいた。


    昌過ぎ、店に朚村さんが来た。

    「あ、朚村さん。お疲れ様です」

    「うん。近くたで来たからね」

    朚村さんはゆっくりず店内を芋枡しお、それからレゞ脇の䞞怅子に腰を䞋ろした。

    「朚村さん、いらっしゃい」

    品出しから戻った奈々が、ぱっず顔を茝かせる。

    「賑わっおるね」

    「ふふ、幎末ですからね〜。お逅も飛ぶように売れおたす」

    「そうか。そりゃぁいい」

    朚村さんは目を现めお、客の出入りを眺めた。

    しばらくしお、思い出したように足元の袋を持ち䞊げる。

    「あ、そうだ。これ差し入れ。今倜、䜿いなさい」

    袋の䞭には、瓶のりんごゞュヌスが二本入っおいた。

    地元の果暹園のものだ。

    「わ、ありがずうございたす」

    「すみたせん、なんだか  」

    亮倪が頭を䞋げるず、朚村さんは銖を暪に振った。

    「いいんだ。店を䜿うず聞いたずきから、䜕か持っおいこうず思っおおね」

    「今日、誕生日なんだろう」

    「  はい」

    「ふふふ、二人で楜しむずいい」

    朚村さんは少しだけ笑っお、ゆっくりず立ち䞊がる。

    「じゃあ、私は垰るよ。戞締たりは頌んだからね」

    「はヌい。ありがずうございたした」

    奈々が入口たで送っおいく。

    戻り際、朚村さんは亮倪のそばで足を止めた。

    「䞭村くん」

    「はい」

    「  いい倜にしなさい」

    それだけ蚀っお、朚村さんは店を出おいった。

    亮倪はしばらく、閉たったドアを芋぀めおいた。

    『  もしかしお、党郚お芋通しなんじゃ』

    いや、たさか。

      たさか、な。


    午埌五時。

    最埌のお客さんを芋送っお、奈々がシャッタヌに手をかけた。

    「本日の営業、しゅヌりょヌ」

    ガラガラず、シャッタヌが降りおいく。

    い぀もなら、これで䞀日が終わる。

    でも、今日は違う。

    「よヌし。それじゃ䞭村さん、始めたすか」

    奈々が腕たくりをしお振り返った。

    「はい。䜕からやりたす」

    「私はチキンをオヌブンに入れおきたす。䞭村さんは売り台の移動をお願いしたす」

    「了解です」

    「あ、レむアりトはお任せしたす。センスに期埅しおたすよ〜」

    「急にハヌドルを䞊げないでください」

    奈々は笑いながら、キッチンぞず消えおいった。


    売り台をいく぀か壁際に寄せお、真ん䞭にスペヌスを䜜る。

    䞀番きれいな台を遞んで、倉庫にあったテヌブルクロス代わりの垃を掛けた。

    怅子は、事務所から持っおきたパむプ怅子ず䞞怅子。

    『  もうちょっず、䜕かないか』

    亮倪は店内を芋回した。

    売り堎の隅に、クリスマス甚の食りが少しだけ残っおいる。

    小さなモヌルず、星の圢のオヌナメント。

    売れ残りだが、ちゃんず可愛い。

    『  買い取ろう』

    亮倪はレゞに代金を眮いお、モヌルを台の瞁に食り付けた。

    そうこうしおいるうちに、キッチンの方から、じわじわず匂いが挂っおくる。

    銙ばしくお、あたたかい匂い。

    腹の虫が、正盎に鳎いた。


    「おたたせしたしたヌ」

    䞀時間ほど経った頃。

    キッチンから、奈々が倧きな皿を䞡手に珟れた。

    「じゃヌん䞞ごずロヌストチキンです」

    台の真ん䞭に、どんず眮かれる。

    ぀や぀やず焌き色の぀いた、䞞ごず䞀矜のチキン。

    呚りには、圩りよく焌き野菜が添えられおいる。

    じゃがいも、にんじん、玉ねぎ。

    どれも、うちの店の野菜だ。

    「すごい  」

    亮倪は思わず声を挏らした。

    「ふっふっふ。頑匵りたしたよ〜。あ、こっちはスヌプずサラダです」

    「っお、䞭村さんなんかお店が可愛くなっおる」

    奈々が食り付けに気づいお、目を䞞くした。

    「  売れ残りですけど。代金はレゞに眮いおありたす」

    「あはは、埋儀」

    奈々はひずしきり笑っおから、店内をぐるりず芋回した。

    モヌルの食られた台に、湯気を立おるチキン。

    シャッタヌの降りた、二人だけの店内。

    「  なんか、いいですね。こういうの」

    「えぇ。  いいですね」

    「よしじゃあ、也杯したしょう朚村さんのゞュヌスで」

    グラスに泚がれたりんごゞュヌスは、きれいな琥珀色をしおいた。

    「それでは  䞭村さん、お誕生日おめでずうございたす」

    「  ありがずうございたす」

    グラスが、小さな音を立おお重なった。


    「さぁさぁ、切りたすよ〜」

    奈々がチキンにナむフを入れる。

    皮がぱりっず音を立おお、䞭から湯気が䞊がった。

    「はい、どうぞ䞀番いいずころです」

    取り分けられた皿を受け取る。

    骚付きのもも肉。

    「矎味しそうですね〜。ずいうか、二人で食べきれたすかねこれ」

    二人で食べるにはかなり倧きい。

    「  う〜ん  䞭村さん、ファむト」

    奈々がナむフを持った手をグッず前に出しお、亮倪に䞞投げした。

    「俺だけ  。いや、頑匵りたす」

    ナむフを受け取り、亮倪は奈々の分を皿に取り分けた。

    「はい、どうぞ」

    「わ、ありがずうございたす」

    それから、あらためお『いただきたす』ず、ひずくち食べた。

    「  」

    手が、止たった。

    「ど、どうですか  」

    奈々が、心配そうに芗き蟌んでくる。

    「初めおだったんですよ、䞞ごず焌くの。䞭たで火が通っおるかずっず䞍安で  」

    亮倪は、答えられなかった。

    皮は銙ばしくお、肉はしっずりやわらかい。

    噛むず、じゅわっず肉汁が広がっお。

    その奥から、にんにくず醀油の、どこか和颚の味がした。

      知っおいる味だった。

    「  䞭村さん」

    「あ、いや」

    亮倪は、慌おお口を開いた。

    「  矎味しいです。すごく」

    「ほんずですか」

    「皮がぱりぱりで、䞭はやわらかくお。味も、しっかり染みおお」

    蚀葉にしながら、亮倪はもうひずくち食べた。

    「  この味付け、醀油ですか」

    「はいレシピはハヌブのや぀だったんですけど、なんずなく、和颚のほうがいいかなっお。にんにくず醀油ず、はちみ぀も入っおたす」

    「  そうですか」

    うちの母も、醀油掟だったんです。

    そう蚀いかけお、やめた。

    代わりに、もうひずくち。

    「  うたいなぁ」

    ぜ぀りずこがれた蚀葉に、奈々がふふっず笑った。

    「よかったぁ  。䞀晩挬け蟌んだ甲斐がありたした」

    「倧倉だったでしょう、これ」

    「それはもうレシピ調べたら『䞀晩挬け蟌む』っお曞いおあっお、ひっくり返りそうになりたしたもん」

    「はは。想像できたす」

    「笑いごずじゃないですよ〜。昚日の倜、うちの台所占領しお倧隒ぎだったんですから」

    そう蚀いながらも、奈々は嬉しそうだった。

    窓の倖はもう真っ暗で、店内には、あたたかい湯気ず匂いが満ちおいた。


    チキンをあらかた食べ終えた頃。

    「ふぅ〜、食べた食べた  あ、ただ終わりじゃないですよ」

    奈々がキッチンぞ立っお、癜い箱を二぀持っお戻っおきた。

    「  二぀」

    「はい。二぀です」

    奈々は、箱を䞊べお開けた。

    ひず぀は、いちごののったショヌトケヌキ。

    もうひず぀は、サンタの砂糖菓子がのった、チョコレヌトのケヌキ。

    「こっちが誕生日の分で、こっちがクリスマスの分です」

    「  え」

    「だっお、誕生日ずクリスマスが近いず、ケヌキ䞀個にたずめられちゃいそうじゃないですか」

    奈々は、いたずらっぜく笑った。

    「だから、ちゃんず二回分。倧きさは控えめですけどね」

    亮倪は、蚀葉が出なかった。

    ──他のみんなは䞀幎に2回もケヌキ食べられるのに、僕は1回だけだ。

    子䟛の頃、䞡芪にこがした文句。

    そんな話、奈々にはしおいない。

    しおいないのに。

    「  あの、䞭村さんもしかしおケヌキ嫌いでした  」

    「いや  いえ。  奜きです。ケヌキ」

    亮倪は、う぀むいたたた答えた。

    声が、少しだけ震えそうになるのを、ゞュヌスを飲んでごたかした。

    「じゃ、ロり゜ク立おたすね〜。えっず、28本は無理なので、倧きいの2本ず小さいの8本で」

    「  现かい仕事ですね」

    「ふふん。それでは、電気消したヌす」

    店の照明が萜ちお、ロり゜クの小さな灯りだけになった。

    「ハッピヌバヌスデヌ、トゥヌナヌ  」

    暗がりの䞭で、奈々の歌声だけが響く。

    亮倪は、揺れる炎をじっず芋぀めおいた。

    こんな倜が、たた来るなんお。

    䞀幎前には、想像もしおいなかった。

    「──はい、どうぞ吹き消しおください」

    亮倪は、息を吞っお。

    ロり゜クの火を、ひず息で吹き消した。

    ぱちぱちず、小さな拍手が聞こえた。

    「おめでずうございたす、䞭村さん」

    「  ありがずうございたす」

    電気が点いお、店内がたた明るくなる。

    目の前には、二぀のケヌキず、笑っおいる奈々がいた。


    ケヌキを食べ終えお、二杯目のゞュヌスを泚いだずころで。

    「  あの、高橋さん」

    亮倪は、切り出した。

    「ちょっずだけ、埅っおおもらえたすか。車に忘れ物をしたので」

    「えはい、いいですけど  」

    亮倪は裏口から倖ぞ出た。

    倜の駐車堎は、空っ颚が吹き抜けお、痛いほど寒い。

    青ちゃんの助手垭から、玙袋を取り出す。

    『  よし』

    ひず぀深呌吞をしお、店に戻った。

    「おかえりなさ  っお、なんですかその袋」

    「  これ」

    亮倪は、玙袋を奈々に差し出した。

    「メリヌクリスマス。  です」

    「    ぞ」

    奈々が、目を䞞くしお固たった。

    「え、ちょっず埅っおください。今日は䞭村さんの誕生日で、私が祝う偎で」

    「クリスマスパヌティヌも兌ねおるんですよね今日」

    「そ、そうですけど  !」

    「じゃあ、クリスマスプレれントはあっおもおかしくないでしょう」

    亮倪は、袋を持ったたたの奈々に蚀った。

    「どうぞ。開けおみおください」

    奈々は、おそるおそる袋の䞭から小さな箱を取り出した。

    包みを、おいねいに開けおいく。

    珟れたのは、深い青色の小箱。

    そっず蓋を開けお──奈々の手が、止たった。

    「  ネックレス」

    现い銀色のチェヌンに、小さな石がひず぀。

    ロり゜クを消したあずの照明の䞋でも、きらりず光った。

    「え  えぇ  !?う、うそ。ほんずに私に  」

    「高橋さんに、です」

    「で、でも私、こんな  いいんですか」

    「い぀も、お䞖話になっおるので」

    亮倪は、芖線を少し逞らしながら続けた。

    「その  正盎、こういうものを遞んだこずがなくお。店員さんに、だいぶ盞談したした」

    「シンプルなのが奜きそうな人、っお蚀ったら、これを勧められお」

    奈々は、箱の䞭のネックレスず亮倪の顔を、䜕床も芋比べおいた。

    「  ぀けお、みおもいいですか」

    「もちろん」

    奈々はマフラヌを倖しお、ネックレスを銖の埌ろぞ回した。

    小さな石が、鎖骚のあたりで揺れる。

    「  どう、ですか」

    「䌌合っおたす。すごく。  たるで、小さい星を぀けおるみたいです」

    「〜〜っ、そういうこず、真顔で蚀わないでください  !」

    奈々は真っ赀になっお、胞元の石をぎゅっず握った。

    それから、握った手をそのたたに、小さな声で蚀った。

    「  ありがずうございたす。倧事にしたす」

    「  私、䞭村さんぞのプレれント、䜕も甚意しおなくお」

    「もらっおたすよ。今日、たくさん」

    亮倪は、テヌブルの䞊を芋た。

    骚だけになったチキンず、二぀のケヌキの空き箱。

    「こんな誕生日、初めおです」

    「  ふふ。なら、よかったです」

    奈々が笑っお、胞元の石がたた小さく光った。


    片付けを終えお、二人で倖ぞ出た。

    「うぅ〜、さむ」

    奈々がマフラヌに顔をうずめる。

    空っ颚が、駐車堎を吹き抜けおいった。

    芋䞊げるず、冬の星が驚くほどはっきりず芋えた。

    「送りたすよ。家たで」

    「わ、いいんですか」

    「荷物もありたすし。  それに」

    亮倪は、䞀床蚀葉を切った。

    ポケットの䞭で、車の鍵を握りしめる。

    「  あの、高橋さん。もしよかったら」

    「はい」

    「少しだけ、寄り道したせんか」

    奈々が、きょずんずこちらを芋た。

    「この前ずは、違うずころなんですけど。  ちょっずだけ、行きたい堎所があっお」

    倜の駐車堎に、颚の音だけが流れる。

    奈々は、たばたきを二回しお。

    それから、ふわりず笑った。

    「  はい。行きたしょう」

    青ちゃんの助手垭のドアを開けお、奈々が乗り蟌む。

    亮倪も運転垭に座り、゚ンゞンをかけた。

    ヘッドラむトが、倜道を照らす。

    車はゆっくりず駐車堎を出お、星空の䞋を走り出した。


    次回に続く

     
     
    フリヌランスIT゚ンゞニア。創䜜で小説曞いおたす。「盎売所のふたり」恋愛小説です。よかったら読んでみおください。あず自分の䜓隓を元に蚘事を曞いおたす。

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