
大多喜街道1 長柄追分→大多喜宿
大多喜街道は房州中往還とも呼ばれ、房総半島の中央部の長柄(ながえ)町から外房の勝浦市まで、南北に貫く約50kmの街道。道中北側の大多喜宿までは大多喜藩が使用した道、その先の南側の勝浦までは住民が利用した道になっている。
夷隅(いすみ)川沿いに曼珠沙華が咲く、美しい里山沿いの道を、2日間かけてゆっくりと歩いてきました。
2026.09.17
1.スタート地点まで


先ほどまで降り続いていた雨が止みました。ここ1ヶ月近くの天気は、9月には経験した事がない梅雨の様な日々が続いてます。

夏には明るかったこの時間帯の空も、秋の彼岸を前にすっかり暗くなってきました。



早朝の東京は霧雨。
雲に隠れたスカイツリーは絵になります。


街道歩きでは何度も抜かれたりすれ違った、独特の模様をした小湊鉄道のバスにお世話になります

バスを乗り継ぎスタート地点に向かいます。
寄り道 千葉県の街道

千葉県内には五街道が通っていません。
地図を見ると理解できるのですが、東西南の三方を海に囲まれ、残りは利根川と江戸川に挟み込まれており、島のような形をしています。
地図の左上に突き出した角の様な場所が利根川と江戸川の分岐点にある、舟運の街関宿(せきやど)になります。

利根川と江戸川を見下ろす様に関宿城博物館があり、館内には利根川や江戸川の舟運に関する貴重な展示が数多く展示されています。

上の鳥瞰図絵は千葉県の北西の先端部分になり、上が利根川と下が江戸川になります。
千葉県は島のような地形になっている影響もあり、日本で数少ない熊がいない都道府県になっています。その他に熊がいないと言われている都道府県は、愛媛県・香川県・九州7県・沖縄県になります。
2025年は奥州街道で熊に怯えながら歩いたので、2026年の街道歩きは九州と千葉県に絞り込みました。
春は唐津街道と平戸往還を歩き、夏秋は、千葉県内の全ての街道を歩き終えることにしました。

上の地図に記した千葉県の街道が歩き終えており、今月から①②③④の順で歩く予定です。
▽歩き終えた千葉県内の街道
※詳しくは街道名をクリック
水戸街道
成田街道
佐原街道
銚子街道
木下街道
鮮魚街道
御成道
房総往還
南伊房州道往還
2.長柄追分

本日の出発地点は長柄町追分。
伊南房州道往還との追分になります。

前回歩いた時は、この追分に曲がっていく車がたくさん走ってました。

千葉県は熊出没注意の代わりに、イノシシ注意の看板が沢山あります。

改めて雨水に削られた道路を見ると、どうやったら、コンクリートの塊がバラバラに崩されるのか、水の力の恐ろしさが体感できます。



眼蔵寺の梵鐘は千葉県最古のもので、周囲は物々しく金網で覆われていました。



熊がいない千葉県に、親子の熊の木彫り人形が置かれています。魔除けなのでしょうか?

この付近では公民館を、青年館と呼ぶようです。



房総半島を歩いていると、切り通しの風景をよく目にします。
新生代の泥岩や砂岩などの地層が多く、ツルハシなどの人力でも掘りやすかったためで、手掘りのトンネルもよく目にします。





夏の花々と彼岸花の共演。花々に癒される、美しい里山の風景が続きます。


上の画像の小さな川が一宮川。
約3週間前に一宮町内の伊南房州道往還で渡った際には、河口まであと少しの位置にあり、立派な川に成長していました。

伊南房州道往還 千葉県一宮町
川の成長は子どもの成長に似ていて、なんとも嬉しい気分になります。
寄り道 川と街道
街道を歩いてきた中で、移りゆく川の姿に何度も感動しました。
特に印象的だった5つの川の姿を記録にまとめましたので紹介します。源流付近の激しい流れから、河口付近の雄大な流れまでの変化がダイナミックな木曽川がお勧めです。
3.千田


この付近は長生郡、長南町・長柄町・長生村など、長が付く地名が連なっています。





合同資源「水取器」。
この見慣れない柱は、天然ガスを組み上げる、「水取器」と呼ばれるポンプの様な施設がある場所になります。

伊南房州道往還 千葉県茂原市
天然ガスの存在に気が付いたのは、伊南房州道往還を歩いた際に、茂原市内で見たガスタンクに書かれた「天然ガスと七夕のまち もばら」という不思議なキャッチコピーでした。

伊南房州道往還 千葉県長生村
その後歩き続けると、合同資源という立派な会社の工場が現れ、敷地内にはガスタンクがあります。千葉県は国内屈指の天然ガスの産出地で、その付近ではあちこちでガスが湧き出るとの事でした。
湧き水の中からガスを抜き出すための機器が、先ほど発見した「取水器」の様です。
時速4kmの旅ならではの発見ができました。






房総半島南部の街道を歩き始めると、手掘りのトンネルや切り通しが多く、大分慣れてきますが、改めてふり返って見ると迫力があります。

三途川。
ドキリとする川の名前です。


長福寿寺。
めでたい名前の寺院。2頭の象の像がお出迎え。



ホワイトボードに書いてある来訪者のコメントを読むと、宝くじ・投資・競馬・商売などで成功した御礼の言葉が沢山溢れています。
不思議な空間でした。

トンネルを抜けて、三途川を渡り不思議な金運の世界に迷い込み、今度は三途橋を渡り、俗世間に戻ります。
4.長南宿

本日初の宿場町らしい街並み。



渡辺辰五郎。
この地に生まれ、14歳で江戸の和裁仕立屋に住み込みながら寺小屋で学び、223歳で帰省します。の後に近隣の女子に裁縫を教え仕立屋を営み、後に現在の共立女子大学や東京家政大学を設立します。



幼稚園生が手紙の出し方を練習しています。切手が貼ってあるかを確認して、一人一人が投函してました。


左 いちのみや きよみづ道

春雨の
われ蓑着たり
笠着たり
正岡子規が東京帝国大学の学生時代に、市川・船橋・成田・千葉・長柄・長南・大多喜・館山・鋸山を巡り、「かくれみの紀行」を発行した際の一句。この地で雨が降り蓑を購入した様です。


鍵を開けてもらい入館。
撮影禁止でしたが、柴原人形という農閑期に作った素朴な土人形が素晴らしかったです。雛人形の様な形をしていて、春の市で販売していたそうです。



海が近づくと、鮮魚の専門店が増えてきます。房総半島らしい風景です








クサガメが歩道に鎮座しています。
街道歩きでは初めて、道路上で亀に遭遇しました。

顔を引っ込めたりしていましたが、触ろうとすると凄い勢いで、歩道横の1m位の段差がある田んぼ横の草むらに向けてダイブしていきました。
5.熊野の清水



道沿いには材木屋がとても多く、林業が盛んなことが窺えます。

道標に、東京二十一里と刻まれていますので、明治以降のものになります。


寄り道 ゴルフ場と街道
立て続けにゴルフ場の入口前を通過しました。千葉県は日本の人口の約3割が集中する首都圏に立地し、冬場に雪が少ないことから、日本一ゴルフ場の件数が多い都道府県です。ベスト10は兵庫県・北海道・栃木県・群馬県と続きます。
都道府県別ゴルフ場件数ベスト10
1位 千葉県 158
2位 兵庫県 157
3位 北海道 140
4位 栃木県 113
4位 茨城県 113
6位 静岡県 89
7位 岐阜県 81
8位 埼玉県 82
9位 群馬県 65
10位 三重県 66
街道歩きの途中で、ゴルフ場の敷地内を通り抜けた道が3つありましたので紹介します。
中山道 中仙道カントリー倶楽部
2021.07.24 岐阜県瑞浪市
中山道の難所、十三峠の途中を歩いていると、道端にゴルフボールが落ちている不思議な光景に出会います。

そこは中仙道カントリー倶楽部の敷地になっていました。


道標や祠にはゴルフボールが置かれていたり、街道とゴルフ場が一体化していました。中山道を歩いた日の記録はこちら↓
長崎街道 ブリヂストンカンツリー倶楽部
2023.12.27 佐賀県鳥栖市
九州新幹線の新鳥栖駅を過ぎて、朝日山という山の麓に差し掛かると、道がゴルフ場のボール避けトンネル内を抜けていきます。


異空間を歩いている気分。

寒い中プレーする人々、元気ですね。
長崎街道を歩いた日の記録はこちら↓
北陸道 片山津ゴルフ倶楽部 WEST
2024.08.29 石川県加賀市
北陸道で石川福井県境を抜ける際に、片山津ゴルフ倶楽部の敷地内を通過しないといけないことが発覚。

敷地内を通って良いかゴルフ場に電話して確認をすると、心よく許可を出してくださり、道中気を付けてくださいと、暖かいお言葉も頂きました。

かなり立派なクラブハウスです。

ゴルフ場を抜けると、そこは加賀と越前の国境でした。北陸道を歩いた日の記録はこちら↓
大多喜街道に戻ります。




熊野の清水(ゆやのしみず)。
弘法大師が湧き出させたという伝説が残る湧水で、現環境省が選定する名水百選に選ばれています。
室町時代から約一世紀、鶴岡八幡宮直営の湯治場として栄え、当時、周辺地域一帯が湯谷(ゆや)と呼ばれていたことから、熊野の清水と書いて"ゆやの清水"と呼ばれるようになっています。

汲みにきている人がいたので、ペットボトルに汲もうとしましたが、そのまま飲む事は出来ず煮沸が必要でした。



200m強の貴重な往時の山道が残っていました。








道端に天然ガスの井戸がありました。
深さ1000~1500mの深さの場所から、鹹水(かんすい)という昔の海水をくみ上げ、天然ガスとヨードなどを採取し、パイプラインで中間処理施設へ送られます。ガスなどを抜き出した後の水は地盤沈下を防ぐために、再び地下に戻しているそうです。

大多喜町は古くから薬草やハーブ栽培が育まれてきた土地。大多喜有用植物苑という、ハーブの温室や食堂・ショップなどを併設した美しい施設がありました。


6.大多喜宿










房総半島を歩いていると、ヤマト運輸や佐川急便と同じくらいの、コープデリの配送車を目にします。地域に密着出来ている感じがします。









大多喜駅前に気になっていた天然ガスの記念館がありました。


上総掘り井戸の模型が展示されています。この技術は世界に広がったそうです。

天然ガスと一緒に、ヨードが生産されるそうです。

千葉県内に張り巡らされている天然ガスのパイプラインの総延長は約600kmもあるそうです。
天然ガスのさまざまな疑問が、天然ガス記念館で解決できました。



2024年に国吉駅〜上総中川駅間で発生した線路の老朽化による脱線事故の影響で全線運休し、現在もバス代行輸送が続いています。バスには多くの高校生が乗っていました。




質屋跡の釜谷は一般公開されており、スタッフから丁寧に説明して頂きました。




花屋 fumi。
建物は郵便局跡地で、店内の雰囲気など、抜群にセンスが良い花屋です。







宿泊する大屋旅館は、1885年築の国の登録有形文化財に登録された歴史ある宿。
1891年には正岡子規が宿泊したそうです。



明日の朝は大多喜城を目指します。