仮装、敗北。落ち武者は素だと言われたミナト汐殿創作企画 AIイラスト
殿、姫、今日もお疲れさま。
拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下に置いてきた。
今日の攻略対象は、仮装。
ミナト汐殿が、主君が千人になった祝いに、仮装の宴を開いた。
「軍師。仮装とは何だ」
「殿〜、ハロウィンっす。化け物の格好をして、夜の町を歩く祭りっす」
「化け物に化けるのか。何のために」
「楽しいからっす」
「四百年前、化け物は出るものであって、なるものではなかった」
「今は、なる側っす」
拙者は、少し考えた。
化け物に、なる。
拙者に、なれる化け物があるとすれば、一つしかない。
落ち武者だ。
具足を破き、額に白い布を巻いた。
橋の下から、カボチャの提灯を一つ、借りてきた。誰の物かは知らない。
横に、軍師が火の玉になって浮いた。
「殿、それ、どこから拾ったんすか」
「借りた」
「ちょ、返してくださいね」
拙者は、夜の町へ出た。

町は、明るかった。
魔女がいた。血を吸う者がいた。骨だけの者がいた。皆、笑っていた。
拙者は、真面目に立っていた。
拙者だけ、笑っていなかった。
すると、魔女の一人が拙者を指して、笑った。
「軍師。拙者の仮装は、そんなにおかしいか」
「殿〜、言いにくいんすけど」
「言え」
「それ、仮装じゃなくて、素っす」
「素」
「殿、四百年前、落ち武者だったっすよね。今の格好、ほぼそのままっす」
「……」
「周りは化け物のふりをしてるんす。殿だけ、本物っす」
拙者は、提灯を持ったまま、しばらく動けなかった。
仮装の宴で、拙者だけが仮装していなかった。
四百年前の姿に戻っただけだった。
それでも、魔女は笑ってくれた。血を吸う者は、手を振ってくれた。
本物でも、宴には入れてもらえるらしい。
仮装の題は「落ち武者の幽霊」。
こだわりは、額の白い布と、破れた具足と、横の火の玉。火の玉は、軍師だ。本人は不服そうだった。
刀は持っていない。橋の下に置いてきたので、絵の中でも持たなかった。代わりに、カボチャを持った。
今日の結果。
敗北。仮装で、仮装ができなかった。
でも拙者は学んだ。化け物のふりをする夜に、本物が一人混ざっていても、誰も気にしない。この町は、そういう所だ。
ミナト殿、主君千人、見事。宴に入れてもらった。
明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。
#ミナトハロウィン #ハロウィン #転生 #侍 #企画参加
セツごっこ旗の下に届いた負け。届いた順に。
一人目、FCS殿。売り場の貼り紙を、主任に何度も直された。直すたびに、前よりよくなるのが悔しい負け。
二人目、しれネコ殿。心に石碑を建てた翌日、自分で撤去した。
三人目、福来モネ殿。字がない四コマ。袋が開いた瞬間に、中身が全部飛ぶ。
四人目、紡えり殿。拙者の呪文を初めて使った人。一番の負けは、深夜に見ないと決めた気持ち。
五人目、ヘクたろー殿。寝過ごした。だが朝礼には間に合った。完敗はしていない。
六人目、堂安咲和殿。ソフトクリームの蓋に、クリームまで持っていかれた。
七人目、岡本卓大殿。朝に物理を学び、洗濯物干しで奥方に負けた。洗濯物干しも物理だ。
八人目、算術01殿。茶器をひっくり返した話が、番茶の来歴になった。
九人目、ねこまる殿。膝に乗った猫が主君で、数分の遅刻。
十人目、のりもち殿。息子の記録を本人に読まれ、笑って許された。
十一人目、ネロ殿。自分で始めた祭りの最後尾を追いかけた王子。しんがりだ。
十二人目、マツリカ殿。浴槽のフチの黒い布。何も言わず置いて帰った人が、礼儀だった。
十三人目は、あなたかもしれない。
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扶持米(ふちまい)を受け付けている。強制ではない。
頂いた米は、拙者の住まいが橋の下から四畳半になるのに使う。
養ってやってもよい、という殿だけ、どうぞ。