
『使え』【第6話】
あらすじ
“見続けろ・動くな・音を立てるな”——生き残るためのルール。しかし、それは同時に敵の行動を縛る条件でもあった。限界に追い込まれた主人公は気づく。この恐怖は避けるものではない——“使える”。音を出せば来る。見なければ動く。その性質を逆手に取り、状況を動かすことはできるのか。逃げるだけの存在だった主人公は、初めて“選択する側”へと変わる。
本文
限界は、もう見えている。
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このままじゃ。
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いずれ終わる。
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分かっている。
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守り続けることは。
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できない。
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人間には。
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なら。
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どうする。
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答えは、ひとつだ。
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守るんじゃない。
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使う。
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ルールを。
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あいつらの。
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動きの。
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条件を。
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思い出す。
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音を出せば、来る。
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見なければ、動く。
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動けば、寄る。
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単純だ。
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だからこそ。
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利用できる。
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そのとき。
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足元に、何かがある。
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金属片。
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小さい。
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だが。
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十分だ。
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手に取る。
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冷たい。
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重さは、ほとんどない。
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これでいい。
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息を整える。
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ゆっくりと。
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静かに。
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影を見る。
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正面。
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動かない。
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見ている限り。
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来ない。
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なら。
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横へ。
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ほんの少しだけ。
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手を振る。
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投げる。
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金属片が、床に当たる。
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カラン……
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音が響く。
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その瞬間。
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影が動く。
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一斉に。
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音の方向へ。
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速い。
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一直線に。
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迷いなく。
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分かった。
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優先順位がある。
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音だ。
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まず、音。
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次に、視線。
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そして。
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距離。
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完全じゃない。
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だが。
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十分だ。
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もう一度。
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音を作る。
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違う方向へ。
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ズラす。
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誘導する。
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影が動く。
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流れるように。
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空間が開く。
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道ができる。
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今だ。
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走る。
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全力で。
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音が出る。
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だが。
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問題ない。
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すでに。
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別方向へ。
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引きつけている。
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廊下を抜ける。
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曲がる。
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さらに曲がる。
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止まらない。
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止まったら終わる。
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そのとき。
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理解する。
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これは。
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逃げじゃない。
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操作だ。
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あいつらを。
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動かしている。
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自分が。
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その感覚に。
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ゾッとする。
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だが。
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同時に。
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分かる。
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もう。
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前には戻れない。
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ただ逃げるだけの自分には。
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なれない。
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この施設で生きるなら。
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やるしかない。
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使うしかない。
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恐怖を。
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ルールを。
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すべてを。
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そのとき。
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前方に、ドアが見える。
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今までと違う。
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無機質な扉。
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番号がある。
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読めない。
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擦れている。
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だが。
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分かる。
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ここは。
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“違う”。
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直感だった。
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この先に。
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何かがある。
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答えが。
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あるかもしれない。
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手をかける。
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開ける。
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中に入る。
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閉める。
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息を整える。
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静かに。
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ゆっくりと。
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そして。
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顔を上げる。
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その瞬間。
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目の前に。
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“それ”があった。
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見たことのないもの。
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だが。
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理解できる。
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これは——
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この施設の“中心”だ。
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