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小説「あんぱんず匊月湯」第1話党4話



あらすじ

「それだったら、匊月湯に行っおみたらいいんじゃない」

 悩める日々を送るデザむナヌ・悠平は、カフェ・ポヌト・グラスゎヌのマスタヌ、セキネコの蚀葉で匊月湯のnoteを怜玢する。むンタビュヌ蚘事に曞かれた先茩デザむナヌでもある暊の蚀葉に動かされお、悠平は匊月湯ぞず導かれる。

 匊月湯での暊、いずみ、壱子ずの面談で、悠平は瀟䌚課題にアヌトを通じお働きかけたいずいう自分の隠れた思いを知る。やがお悠平は、立ち䞊がり動き出す──。

 「匊月湯からこんにちは」のスピンオフ短線小説。

創䜜倧賞2024 お仕事小説郚門 応募䜜品




第1話




「それだったら、匊月湯に行っおみたらいいんじゃない」
「ぞ」

 北䞉日月町の隣町、巣鎚の駅にほど近いカフェ・ポヌト・ブルックリンのマスタヌ、セキネコさんはあっけらかんずそう蚀った。県鏡の奥のい぀も笑ったような県が印象的な、爜やか奜青幎であるセキネコさんの本名は、関根さん。ネコが倧奜きで、SNSのアむコンも自分で描いたネコのむラストにしおいるから、セキネコさん。街のみんなに愛される、頌れる兄貎だ。

 セキネコさんは、みんなに優しい。売れないデザむナヌである俺、䞀条悠平にも優しい。結婚を考えおいた圌女にフラれた時も、デザむンコンペでうたくいかなかった時も、カりンタヌでクダを巻く俺の話を気が枈むたで聞いおくれた。「出䞖払いにしずくから」ず、い぀もの笑顔でクラフトビヌルもおごっおくれた。

 そんなセキネコさんが、俺になぜだか銭湯を掚しおくる。ツァむトりむルスで仕事が枛っおきお、今埌の掻動に行き詰たっおいる俺に。俺が生たれ育った北䞉日月町にある昔ながらの銭湯、匊月湯を掚しおくる。

「でもさ、セキネコさん、匊月湯っお昔ながらの銭湯でしょ。俺、子䟛の頃に行ったっきりですよ」
「それが最近、話題になっおるんだよ。悠平くん、知らない めちゃくちゃ豪華なお颚呂堎で挔奏した芞倧の子たちの動画が、SNSでバズっおたり。あず文字通りのアヌティスト・むン・レゞデンスみたいな感じで、匊月湯の離れでアヌト関連の入居者募集しおるみたいだよ」
「  なにそれ、超アツい」
「匊月湯、最近発信も匷化しおお、SNSも始めおるから、たず怜玢しおみたらどうかな  あ、いらっしゃいたせ」

 お客さんが入っおきた。セキネコさんはレゞに移動する。俺はカりンタヌで、駒蟌生たれのクラフトビヌルであるこたごめ村゚ヌルを飲みながら、Googleの怜玢窓に「匊月湯」ず入れおみる。あった。出おきた。noteにTwitter、Instagramもあるんだ。

 興味を惹かれお、たずはnoteを開く。たず目を匕いたのは、アむコンずヘッダヌの写真だ。ガりディ いや、違う。ガりディを意識しおいるけれど、ずころどころに日本らしい感芚が混ざっおる。

 そういえば、昔、子䟛の頃に行った匊月湯は異䞖界だった。思い出した。たしか、家の颚呂が故障した時に行ったんだっけ。芪父ず䞀緒に颚呂堎の扉を開けたら、色鮮やかな魔法の䞖界が広がっおた。

 それだ。子䟛の頃は気づかなかったけど、あの颚呂堎の内装はガりディを意識したものだったんだ。アむコンずヘッダヌの写真ず、俺の蚘憶が぀ながった。

 蚘事をあれこれず読むうちに、圫刻家の若月匊二郎ずいう人物がこの颚呂堎の内装を手掛けたこずがわかっおきた。留孊先のバルセロナでグ゚ル公園に感銘を受けた若月匊二郎は、垰囜埌に民藝の思想にも圱響を受け、暮らしの䞭で質の高い芞術を拡げおいくために、家業を受け継いだらしい。いたは、若月匊二郎のお孫さんたちふたりず、スタッフが䞭心になっお運営しおいるらしい。

「かっこいいなあ、匊月湯」

 思わず声が掩れる。こたごめ村゚ヌルをぐいっず飲む。熱を垯びた目でnoteの蚘事䞀芧を芋おいるず、固定蚘事が目に留たった。

「【募集】〈アヌティスト・むン・匊月湯〉匊月湯でアヌト掻動したせんか」

 クリックする。ペヌゞの切り替わり時間がもどかしい。出おきた。スクロヌルしおいく。若月匊二郎のお孫さんのひずりは若月暊さんずいっお、俺ず同じデザむナヌらしい。少幎のような颚貌に、くりくりずした玅茶色の髪。䞭性的な印象だ。その暊さんのむンタビュヌずいう圢で、蚘事は展開されおいる。

──『祖父の思いを継いで、ここ匊月湯が新しいアヌトの発信拠点になるずいいず考えおいるんです。若いアヌティストは、みんな機䌚を求めおいる。そんな埌茩たちが、心眮きなく創䜜や新しく䜜り出す仕事に熱䞭できる環境を䜜れたら  っお、ずっず考えおいたんです。で、構想したのが〈アヌティスト・むン・匊月湯〉。離れが6郚屋ほど空いおいるから、そこを栌安で若いアヌティストのみんなに䜿っおもらえたらっお思いたす』

『いたは、ツァむトりむルス犍でみんな蟛い時期が続いおいるず思いたす。でも、これたでの道が立ち行かなくなっおしたった時っおいうのは、発想を倉えおみるずものすごいチャンスだずも思うんです。これたでの生き方をリセットしお、新しく生たれ倉わるこずだっお出来るかもしれない。匊月湯では、そんな芚悟を持ったアヌティストのみんなを応揎したいず考えおいたす』──

   炎だ。この人の内偎には、炎が燃え盛っおいる。俺は目を䞊げた。ツァむトりむルスで仕事が枛ったからっおなんだっおいうんだ。俺はい぀から、矎術の道を遞んだ頃の初心を忘れおいたんだ。これたでの道が行き詰たっおいるなら、それはこの人の蚀う通り、これからの道を開拓できるっお合図じゃないのか。

 い぀の間にか、暊さんの炎が俺の心の導火線にも灯ったらしい。気が぀くず、蚘事の最埌にあったGoogleフォヌムに自分の名前ず連絡先、そしお蚘事を読んだ感想を熱く曞き蟌んでいた。よし。送信。

 ひず仕事終えお、ふうっず息を吐く。お客さんのドリンクを運んだセキネコさんが戻っおきた。

「どう 匊月湯のSNS、芋おみた」
「早速、〈アヌティスト・むン・匊月湯〉に申蟌みしおみたした」
「はや」
「善は急げっお蚀いたすから」

 ず、スマホが震え始めた。知らない番号からの着信だ。蚝しみながらも、出おみるこずにする。

「はい」
「䞀条悠平さんのお電話ですか」
「はい、そうですが」
「匊月湯の山口壱子ず申したす」

 背筋が䌞びた。善が、猛スピヌドで向こうからやっお来た。

「お  お䞖話になっおおりたす」
「この床は、〈アヌティスト・むン・匊月湯〉ぞのお申蟌みをいただき、誠にありがずうございたす」
「いえ、こちらこそ」
「ちょうどパ゜コンを開いおいたタむミングでしたので、䞀条さんのメヌルをすぐに確認できたした。読んでいたら、ずおも熱い思いを綎っおくださっおいたので、どのような方か、たずはお電話でお話しおみたいず思っお。䞍躟かずは思いたしたが、お電話させおいただきたした」
「ありがずうございたす  」

 俺は、スマホ越しに最敬瀌する。

「ずっず、北䞉日月町にお䜏たいなんですね」
「はい」
「それでも、〈アヌティスト・むン・匊月湯〉にご入居なさりたい理由がございたしたら、差し支えなければお聞かせいただけたすか」

 蚀葉に詰たった。確たる理由はなにもない。俺は少しの躊躇いのあず、口を開いた。

「実は、匊月湯さんのこずを知ったのは偶然なんです。いた、隣町の巣鎚にあるカフェにいるんですけど、そこのマスタヌのセキネコさんずいう方に、匊月湯のこずを教えおいただきたした。そのあず怜玢しお、䞀気にnoteを読みたした。その䞭にあった、若月暊さんっお方の蚀葉が、ものすごく響いたんです。俺も今、これたでの人生が立ち行かなくなっおいたす。でも、匊月湯でなら、これたでの人生をリセットしお、新しくスタヌトするこずができるかもしれないっお、雷に打たれたように思ったんです。理由は、それだけです」

 耳に圓おたスマホから、静寂が流れた。俺は目を぀むった。ああ、だめだ。こんなアホみたいな、䜕も考えおいない理由じゃだめだ。

「  䞀条さん、ずおも面癜い方ですね」
「ぞ」

 俺はあっけにずられた。電話の向こうの女性、山口さんは笑っおいる。

「ものすごくストレヌトすぎお、思わず笑っちゃいたした。ごめんなさい。でも  わかりたす。私も同じだったから」
「え  」
「よろしければ近日䞭に、面談にいらしおいただけたすか 䞉代目ず、暊さんも亀えお、お話できれば幞いです」
「は  はい どうぞよろしくお願いしたす」

 日皋を決めお電話を切るず、セキネコさんがチェシャ猫みたいなニダニダ顔でこっちを芋おいた。

「セキネコさん、たじスゲえっす」
「僕はなんにもしおないよ。行動したのは悠平くんじゃない」
「いや、でもきっかけをくれたのはセキネコさんですから。  村゚ヌル、もう䞀杯ください」
「グラス パむント」
「パむントで。なんだか勢いよく飲みたくなりたした」
「了解」

 セキネコさんは手際よく、サヌバヌでこたごめ村゚ヌルを入れおくれる。ここ、カフェ・ポヌト・グラスゎヌは生のクラフトビヌルが飲めるのが魅力のひず぀だ。

「悠平くん、村゚ヌルほんず奜きだよね」
「うん、味が奜きなのはもちろんなんですけど、ストヌリヌがいいじゃないですか。駒蟌の人たちが仲間になっお、自分たちの手で新しいビヌルを生み出したっお背景が、もう、ぐっずきたすよね」
「ありがずね。  もうすぐ店じたいだから、僕も少しだけ飲んじゃおっかな。なんずなく、悠平くんず飲みながら語りたい気分」
「嬉しいですね、セキネコ兄貎」
「兄貎はやめろっお」

 セキネコさんず也杯をしお、なみなみず泚がれたこたごめ村゚ヌルを喉に流し蟌む。やっぱり旚い。

「金曜日の倜に、グラスゎヌで飲む村゚ヌルがいちばん旚いです」
「嬉しいね、そう蚀っおもらえるず」
「そういえば、セキネコさんっお、どうしおカフェの仕事をしようず思ったんですか」

 セキネコさんは村゚ヌルをひず口飲んで、口を開いた。

「もずもずは、シンプルな憧れからのスタヌトだったんだよ。起業するなら、自分で理想ずするカフェをやっおみたい っお思うようになっお、いたの䌚瀟を立ち䞊げたのが倧孊3幎の時」
「倧孊3幎 俺、バむトしかしおなかった  すごいですね」
「でも、最初はうたくいかなくおね。スヌパヌで60円のあんぱんも買えない時代もあったんだよ」
「そうだったんですか  」

 い぀も笑顔のセキネコさんに、そんな過去があったずは知らなかった。

「ボロ雑巟みたいになっおたんだけど、それでもカフェをやりたいっお気持ちは倉わらなくおね。それで、シアトルズベストコヌヒヌっおカフェで働き始めお。最初はそこでもうたくいかなかったんだけど、䞀日䞀日やれるこずを積み重ねおいるうちに、コヌヒヌマむスタヌの資栌を取ったり、店長をやったり、゚リアマネヌゞャヌやったりしながら、経営のノりハりを孊んでいったんだ」
「セキネコさん、たじ努力の人ですね」
「たあね。努力っお話でいうず、今でこそ僕はコミュニケヌション埗意だず思われおいるだろうけど、最初はめちゃくちゃコミュニケヌションが䞍埗意だったから、それもめちゃくちゃ研究しお、勉匷しお、緎習したんだよ」
「えヌヌヌ」

 知らなかった。セキネコさんは、生たれた時からのコミュニケヌション匷者だず思っおた。

「けどね、䞍埗意だったものほど、䞀生懞呜研究しお、勉匷しお、緎習しお、磚いおいくず、自分の歊噚になっおくれるんだよ」
「それは  いたのセキネコさん芋おるず、すごくわかりたす」
「駒蟌で1号店のカフェ・ポヌト・ブルックリンを開店させた時も、物件決めるたでに16,000件ぐらいの物件をチェックしおいったんだ」
「16,000件  クラクラしおきたすね」
「物件が決たるたでは、店のコンセプトづくりに時間をかけたよ。倧孊時代に孊んだホスピタリティ・マネゞメントを基に〈亀流〉っおいう軞をたずは打ち立おお。そしお、珟代が抱える課題を、異なるバックボヌンや文化を持぀人々が協力しお解決しおいける堎所にしたいず願っお、〈枯〉っおキヌワヌドを店名に入れたんだ」
「それで、1号店はカフェ・ポヌト・ブルックリンだったのか。じゃあ、ブルックリンは」
「〈ブルックリン〉はもずもずはただの倉庫街で、ニュヌペヌクには䜏めない若手のアヌティストや起業家が集たる堎所だったんだよ。その新しいものを生み出しおいく空気感や゚ネルギヌが奜きでね。それで、1号店は〈カフェ・ポヌト・ブルックリン〉っお名前にしたんだ」
「なんか、それっおいたの匊月湯ずちょっず䌌おたすね」
「そうかもしれないね。だから、匊月湯の新しい挑戊もなんだか他人事ず思えないんだよ。悠平くんの挑戊もね」
「俺も」
「うん、そう。僕はい぀だっお、挑戊する人の味方でいたいから」

 県鏡の奥のセキネコさんの目が柔らかい䞉日月になった。

「  俺もい぀でも、兄貎の味方ですから」
「だから、兄貎はやめろっお」

 セキネコさんに笑いを返しお、村゚ヌルをぐいっず飲む。俺の挑戊。俺は、䜕に挑戊するのだろう。俺は、䜕をやめお、䜕を新しく始めるのだろう。わからないけれど、目の前に来たこのビッグりェヌブに乗っおみよう。





぀づく





぀づきのお話


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第4話最終話はこちら


いいなず思ったら応揎しよう