ヘッドホンを外す 3
改札の前で立っていたから、背の高い人の荷物が肩に当たっただけだった。
その時彼は何か言ったのだろうけど、
僕の耳には届かなかった。
ちょっと期待しちまったな。
何かって言うんじゃない、ただ、ただ、僕に話しかける人がいるんじゃないかってことに。
ヘッドホンをかけなおす。
人間は矛盾した生き物なんだ…
そう呟いて、電車に乗るのはやめることにした。
きっとまた僕は戻って来てしまうんだ。
見知らぬ駅で降りたって、どこから来たかはわかっている。
改札を出るよりも、反対側のホームへ行く方が楽だと知っている。
来た道を戻るだけ。
外に出るともう日は沈んでいた。
僕はまた朝来た道を歩き出す。
夜の道がどことなく歩きやすいのは、見たいものだけを照らしているから。
知らない明日は
知らない僕になれるだろうか
もう何度も繰り返す音楽が、ただ僕の帰る場所を示している。