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修司|エピローグ 【完結】

    ◀︎前の話(最終話)

    「今日、カレー食べない?」
    「え?」

    「また一緒に、カレー作って食べたい」

    「いいな」
    「ルーとかあると思う」

    二人でキッチンに立った。

    順番に手を洗って、修司がお米を洗っている間にわたしが材料を切った。

    「…炒めるの、やりたい」
    炊飯器のスイッチを入れた修司が言った。

    「じゃあ、お願いね」
    わたしは隣で見てることにした。

    ふとカウンターの隅に目が止まった。

    「あれ?タバコどしたの?」
    「この前まであったじゃん」

    「…もう要らないから」

    「そうなの?」
    「あ、水足そっか」
    と言って、修司に水を手渡した。

    しばらく鍋を混ぜていた修司がぽつりと言った。

    「俺、一人で作った時こんなに煮込んでない」
    「だろうね」
    と笑った。

    「…見た感じ、いけてた」
    「バカじゃん」
    「うるせぇ」

    修司の出して来た甘口と中辛のルーを二人で一緒に落とした。

    「でもさ」
    「あれ美味しかったよ」

    「…隠し味に愛情たっぷり入れた?」
    鍋を混ぜる修司を、わざとらしく肘で小突いて聞く。

    「…いれてねぇよ」
    そっぽを向いた耳が赤かった。

    「ふーん」
    「じゃあ、わたしの勘違いか」

    「嬉しかったのにな」

    反射的に振り返った修司と目が合った。

    「あれ」
    「本当に、嬉しかったんだよ」
    「…そう、なの?」

    「あ、混ぜないと焦げちゃうよ」

    ふと影が落ちて、ほんの一瞬だけ唇が触れた。

    「なに」
    「…別に」
    「はやく混ぜて」
    「はい」

    「味見したい」

    スプーンに少しだけ乗せて修司に食べさせる。

    「どう?」
    「…うまい」

    同じスプーンでわたしも味見する。

    「うん、美味しいね」
    「……」
    「どしたの?」

    「え、いや」
    「…なんでもない」
    「変なの」

    炊飯器からカチッと保温に切り替わる音がした。

    「あ、炊けたな」
    「じゃあわたしご飯よそうね」
    「じゃあ、俺カレーする」

    「修司はこのくらいでしょ?」
    とお皿を見せながら聞いた。

    「…うん」
    「わたしはこのくらいかな」

    「食べよっか」
    「腹減った」

    ダイニングテーブルに向き合って座る。

    「いただきます」

    そう二人で言ってから一口食べた。

    「やっぱ一緒に作ると」
    「うまいな」
    「うん」
    「美味しい」

    水が入ったグラスを口に運びながら、目だけで修司を見て言った。

    「…ねえ」
    「ん?」

    「前さ」
    「カピったご飯で夜中に食べたよね」

    「ブフッ……ッ、ゴホッ!……ゲホッ!」

    「ちょっと!」
    「大丈夫?」
    「何やってんの」

    タオルを手渡した。

    まだ少しむせたまま言った。
    「…それ、言う?」
    「え、だって」
    「思い出じゃん」

    「あれも」
    「修司が作ってくれたのも」

    「…いや、そうだけど」
    「わたしは昔のことも、話したい」

    「だってわたし」

    「それも全部、込みで好き」

    「……重いな」

    「うるさい」

    げしっ

    「っ、いっ──」

    「どうしたの?」

    「…おまえ」
    「覚えとけよ」

    「なにが?」
    よそ見しながら口笛を吹くフリをした。

    「吹けねえの?」
    「弱いな」
    「…できるし」
    「やってみろよ」

    「…...」
    「ほら」
    「お皿洗いに行くよ」

    はははと笑ってから呆れた声で言う。
    「はいはい」

    水を出して、わたしが洗い始めた。

    修司は隣でタオルを持っている。

    「なおみ」

    「ん?」

    「…今日も、帰る?」

    「え、あ、」
    「…うん」
    「…まだ、ちょっと」

    シンクにジャーッと水が流れる音がやけに大きかった。

    「…そっか」

    「じゃあ、送る」
    「え、いいよ」

    「いいから」
    「外、寒いだろ」
    「暗いし」

    「…ありがと」
    「ん」

    「じゃあ、洗っちゃうね」

    そのまま2人で静かにお皿を洗った。


    カコンとギアが入ってから、後ろの方でパーキングブレーキがかかる音がした。

    「…着いた」
    「…うん」

    「送ってくれてありがと」
    ドアに手をかける。

    修司はわたしより先にドアを開けて降りていた。

    「ドアの前まで」

    「え」
    「寒いからいいのに」

    「…ありがと」
    「ん」

    そうぶっきらぼうに言って差し出した手に指を絡めた。

    カン、カン、カン

    手を繋いでゆっくりと階段を登った。

    外廊下を静かに歩いて、一番奥の角部屋の前で止まった。

    ガチャと鍵を回す。

    「…じゃあ」
    「…おう」

    繋いだ手が離せなかった。

    「…なおみ」
    「ん?」

    「…次、泊まる?」

    返事をする代わりに、つま先立ちになって触れるだけのキスをした。

    「おやすみ」
    とだけ言って返事を待たずにドアに入る。

    しばらくしてからカン、カンカンと階段を降りる音がして、音が途切れた。

    携帯が光る。

    「来週、楽しみにしてる」

    少ししてから、外でエンジンの音がかかった。

    「やっぱ、バカじゃん」



    再読はこちらから。
    読み返すと意味が変わります。
    プロローグ1
    小説版『修司』全話一覧

    6月15日より、修司サイドを大幅加筆した脚本版を連載中です。

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    s.

     
     
    優しいのに地雷な男、体験してみる? 『修司』完結しました。 読んでくださった皆さま、ありがとう。 不器用な大人恋愛書いてます。 修司サイドを大幅加筆し、脚本・映像文学形式へ再構成した第三章を投稿しました。 初めての方はプロローグ1(修司視点)からどうぞ。

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