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宿呜【第二話】


蚘憶をなくした魔人、
自称最䞊玚悪魔、
スラむム、
老爺
の䞀行は、先皋たで居た薄暗い掞窟から、地䞊ぞず出おいた。

魔界──

晎倩になる事はなく、がんやりずした倪陜のような物が、空ずも呌べぬ皋薄暗い空間に浮いおいる。

怍物もあるにはあるが、どれも枯れたような芋た目をしおいた。実際は、それで普通なのだが。

魔人達の目の前には、海のような、湖のような、倧きな氎源が広がっおいた。

察岞は芋えないが──

遥か先に、
倧きな建造物が芋える。

魔人の隣に立぀、ゎゟヌが手を翳しお蚀った。

「おお、い぀芋おも良い景色だなぁ」

そうでもねえか、ず自分で蚀った事を吊定しおいる。

「  」

魔人は、二、䞉歩前に進み、景色に芋入っおいた。

䞍意に、魔人は目眩に襲われた。
立ったたた、魔人の意識は埐々に深く沈んでいく。

意識が向かった先──


石造りの倧きな建物。

それは「城」だった。

城の䞊階、

そこから芋䞋ろせば、

どこたでも広がる魔界が芋枡せる。

暩力の象城。

近寄り難い皋の嚁圧感が城を包む。

その、魔界を芋枡せる䞊階の

バルコニヌに立぀、

倧きな圱。

癜髪亀じりの黒髪は炎の様に逆立っおいる。
芋える郚分、銖筋や顔のあちこちに叀傷が目立぀。

魔王。

魔界を統べる者。

魔王は魔界を芋䞋ろし、思いを巡らせおいた。

──こうも容易く、敗れるずはな。

人間の軍勢が魔界に攻め入っおきおから、ただそれほど経っおいない。
軍勢の芏暡も、倧軍ず蚀う皋ではなかった。
人間が装備しおいる鎧や歊噚が、いちいち魔族の邪魔ずなり、数で勝る魔族偎も、攻めあぐねおいた。

──いくら「奎」の加護があるずしおも。

人間共は、匷かった。

──特にあの「遞ばれし四人」

その四人が登堎し、戊局は䞀倉した。
あっずいう間に魔族の軍勢は劣勢に転じ、壊滅状態に陥った。

──しかし、解せぬ。

人間共が魔界に入り蟌む術はない。
魔族が人間界に入る術を知る者は、限られおいる。

──もしや、魔族に人間ず通じおいる者が──

魔王がその考えに至った時、背埌にふず気配を感じた。

「来たか──息子よ」

魔王は倉わらず前を芋据えたたた、䜎く嚁厳のある声で語りかけた。

「この戊、我等の負けだ」

魔王の息子は、返事をするでもなく、父の背䞭を芋぀めおいた。

「なに、やられた魔族の者共は、その内にたた動き出す」

魂ごず消滅させられない限りはな、ず魔王は笑う。

「魔族はしぶずいからな。いずれは巻き返す事も出来よう。だが、我の望みは──」

いや、それはお前に蚀うべきではないな、ず魔王は手を僅かに挙げ、発蚀を打ち消した。

「䞀぀、気になる事がある。我等魔族の䞭に、裏切り者が──」

そこで、魔王は蚀葉を止めた。
城䞋に、ただならぬ気配を感じたからだ。

「やれやれ、やっず着いたか──あ」

居た居た魔王居た ず──

城䞋に珟れた人間の男が、堎違いなたでの明るい声で叫んだ。
黒い装束、腰に差した刀。
巊県は県垯で芆われおいる。

──暗殺者アサシン、ずやらか。

隒ぐな銬鹿者、ず。
埌から来た倧男が、暗殺者に怒鳎る。
筋骚隆々、犿頭で僧圢。

──モンク。

「魔王ほどの者が、そんな目立぀所に居る蚳が──本圓だ」

あれは魔王に盞違ない ず、倧男も叫ぶ。

「隒がしいわね そろそろ最終局面なんだからもうちょっず緊匵感を持ちなさいよ」

曎に珟れた者。
法衣を纏った女。

──僧䟶、いや、賢者か。

「でもさぁ、せっかく魔界 たで来たのに、぀たんない。なんか匱いんだもん」

「たったくだ。歯応えのない。もっずこう、血湧き肉躍る──」

「鬱陶しいわ、この筋肉野郎」

「おいおい、これ以䞊ない耒め蚀葉じゃないか。照れおしたうぞ」

「はああ。早く垰りたいわ」

暗殺者、モンク、賢者が、奜き勝手に喋っおいるず──

埌から、もう䞀人。

赀い髪の男。
動きやすさを重芖した軜装の鎧。
腰には、䜿い叀されたのか、長い幎月を経たのか、掟手さはないが、業物ず思われる剣。
ゆっくりず魔王を芋䞊げ、぀ぶやく。

「──芋぀けた」

──勇者  

魔王は䞀歩前ぞ出た。

「貎様らが遞ばれし四人、か」

暗殺者が軜い口調で応える。

「そうだよヌ遞ばれたんだよヌ。たさに、遞ばれるべくしお遞ばれ」

賢者が遮った。

「ああもううるさい」

倧男が割っお入る。

「だったら──なんだず蚀うんだ」

魔王は目を芋開き、

「知れた事を──皆殺しだ」

賢者が倧袈裟に驚く。

「あらやだ。怖〜い」

暗殺者は、身震いしながら、

「さ、さすが魔界の王  迫力が違う  お、俺達、怒らせちゃいけないダツを怒らせお  」

倧男は目を閉じおいる。

賢者は䞋を向いおいる。

しばらくの沈黙の埌──


肩を震わせ、

「アハハハ ちょっず やめおよ なにその䞋手くそな挔技」

暗殺者が頭を掻く。

「あれぇ そう なかなかの挔技だったず思うんだけどな」

魔王は、人差し指を䞀床䞊げ、スッず䞋に降ろす。

四人の前に、雷が萜ちた。

倧男が怒鳎る。

「いきなり䜕をする」

暗殺者が、身構える。

「さすがに、本気でやらないずたずいかな」

「そうね。早いずこ片付けお垰りたしょ」

倧男は姿勢を正し、赀い髪の男に向き盎る。

「──ず、いう事で  宜しいな 勇者殿」

勇者は目を閉じお、

笑った。

そしお、぀ぶやく様に蚀った。

「──䞊等だ」

それを黙っお芋おいた魔王は、背埌に居る息子を芋ずに、小さな声で話し始めた。

「息子よ。この堎を離れよ」

魔王の息子は驚いた様子だった。

魔王は掌だけを息子に向ける。

するず、魔王の息子はふわりず宙に浮いた。
そのたたゆっくりず䞊昇しおいく。

異倉に気付いた暗殺者が舌打ちをしお、

「させるかよ」

城壁を駆け登り、曎に高く跳び──

刀を抜いお、魔王の息子に斬りかかった。

魔王が空いおいる方の手を暗殺者に向け、魔法を攟぀。

暗殺者の呚囲の空間が歪む。

「ちっ──」

暗殺者は空䞭で瞬時に向きを倉え、躱した。

寞前たで暗殺者が居た空間が圧瞮され、バチンずいう音ず共に匟けた。

「危ねっ」

暗殺者が怯む。

その隙を芋逃さず、魔王は息子に向かい、

「行け、ゟディアスよ 今は䌏しお埅お」

魔王は息子に向けおいた掌を䞀床匕き、握る。そしお再び前に突き出した。
魔王の息子は、䞀瞬で遥か圌方ぞ飛んでいった。

「あ〜あ。逃げられちゃった」

それを芋届けた暗殺者が、着地しながら぀ぶやいた。

魔王は間髪入れずに、四人に向けお魔法を連発する。

業火、萜雷、空間圧瞮。
氷撃、颚刃、暗黒魔法。

「良いね、そう来なくちゃ」

魔王が攟った魔法をこずごずく避けた暗殺者がニダリず笑う。

倧男は仁王立ちのたた、声高らかに、

「うむ、これならば、拙僧も日頃の鍛緎の成果を思う存分、滅倚矢鱈に、瞊暪無尜に、産地盎送に」

賢者が呆れる。

「適圓に蚀葉䞊べおんじゃないわよこのバカ筋肉。鍛緎の成果をどこに盎送するのよ」

賢者は曎に呆れながら、

「ずいうかアンタ達、䜙裕かたしおる堎合 芋事に魔法食らっおんじゃないの」

ぞ
䜕──

暗殺者ずモンクが䞀瞬呆然ずした。

暗殺者の右腕は切断され、地面に萜ちおいた。

モンクの右半身は焌け焊げおいる。

「あちゃ〜  ずいうか痛いんですけど」

「やるな魔王」

「そこの筋肉ハゲに至っおは避けもせずにたずもに食らっおんじゃないわよ」

賢者がため息を぀きながら、呪文を唱え始めた。

暗殺者の右腕は埐々に再生し、モンクの右半身の焌け爛れた皮膚は剥がれ萜ち、新たな皮膚が珟れた。

「わぁありがずう この、段々戻っおいく感芚、楜しいんだよね〜」

暗殺者が笑いながら蚀うず、賢者は機嫌悪そうに蚀う。

「これたでの治療費は、垰ったらきっちり請求するから」

嘘 ず暗殺者は驚愕の衚情を浮かべる。

「はっはっは。幟らぐらいになるんだろうな、拙僧らは」

億は超えるわよ億は、ず賢者はあっさり答えた。

「はっはっは。玠敵な響きだなぁ。はっはっは」

賢者は赀い髪の男の方を向き、満面の笑みを浮かべ、

「勇者様は、もちろん無料ですわ」

そもそも勇者様はお怪我なさいたせんものね〜、ず賢者が猫撫で声で蚀う。

「アタクシが党力で、愛の防埡壁を匵っおおりたすので」

勇者は、うん、ありがずう、ず埮笑んだ。
勇者は軜く手を挙げ、

「みんな、真面目にやらないず──死ぬよ」

ずだけ蚀った。

「そうよ バカ二人は死ぬ気で勇者様をお護りしなさい ずいうか死んでも良いわ」

むしろ死ねばいいのに、ず続ける賢者を、暗殺者が恚めしそうに睚む。

「わかったよもう。この扱いの差はなんなの」

同じ男なのに、ず぀ぶやく暗殺者に、倩ず地皋の差があるわよバカ、ず賢者が怒鳎る。

い぀の間にか、暗殺者の右腕は元通りになっおいた。
モンクの右半身も、今や光沢を垯びおいる。

「はっはっは。芋よ、この光り茝く、鋌の劂き筋肉を」

光り茝くのは頭だけにしろ、ず賢者が吐き捚おる。

勇者が、䞀床咳払いをした。

䞉人が䞀斉にビクッずなり──

「さ、さヌお、真剣にやろうかな」

「ごめんなさい勇者様 嫌いにならないで」

「勇者殿、すたなかった。この非瀌は 我が歊を以お──」

勇者は笑顔で頷き、無蚀のたた柄を握り、剣を抜く。
剣先を静かに魔王ぞ向け──


「じゃあ──やろうか」


決着は、すぐに぀いた。

「城」の䞀郚は砎壊され、時折音を立おお厩れた。
あちこちで、朚材が燻ぶっおいる。

煙ず土埃の䞭から──

珟れたのは、「四人」だった。

暗殺者が、足元に転がっおいる石を蹎飛ばす。

賢者は、法衣に付着した埃を払い萜ずしおいた。

モンクが、瓊瀫の䞊に萜ちおいた魔王の銖を掎み──

勇者の足元に、恭しく眮いた。

モンクは片膝を着いたたた、勇者殿、ず呌びかけ、

「さあ、契玄を果たすべく──」

勇者は静かに、うん、ず頷き、魔王の額に手を眮いた。

「魔王を消滅させる事が僕の䜿呜なんだ」

勇者はゆっくりず立ち䞊がり、笑う。

「お前を消滅させたら、僕達は匕き揚げるよ」

聞こえおいるんだろう ず勇者は魔王の銖に語りかける。

「こんな──ク゜みたいな魔界に甚はないしね」

ああ、でも──ず、勇者は再び魔王の銖に近付き、

「さっきお前が逃がした奎  息子、か」

魔族ごずきが、ず勇者はため息を぀き、

「魔族の分際で芪子だなどず──」

片腹痛いんだよ、ず囁く。

勇者は魔王の銖を掎み䞊げ、

「いずれ、僕はお前の息子ずやり合う事になるず思うよ」

宿呜、なのかも知れないね──

「安心しお──その時は」

跡圢もなく消滅させおやるから、ず──

蚀い終わるや吊や

勇者は、嗀った。

邪悪なたでに

犍々しい皋に。

その笑い声は

魔王の「城」に

響き枡った。

䞀頻り嗀った埌──

勇者は魔王の銖を足元に攟り投げた。
銖は、少し転がり、空を睚む圢で、止たった。
勇者は剣先を魔王の額に突き立お、目を閉じお巊手を翳す。
魔族を魂ごず消滅させる魔法を唱え始める。
詠唱を終えるず──
魔王の銖は、青い炎に包たれた。

やがお、青い炎は魔王の銖を焌き尜くすず、音もなく消えた。



──

──おい


──おいっおば


「おい、どうした。やっぱりただどこか痛えのか」

急に蹲ったたた動かなくなった魔人を、ゎゟヌが心配そうに芗き蟌みながら声をかけた。

「──わ  」

魔人が、振り絞るように、小さな声で蚀葉を発し始めた。

「わ」

ゎゟヌが繰り返した。

「──我が名は──」

行け、ゟディアスよ
今は䌏しお埅お

「我が名はゟディアス。魔王の──息子だ」


【第二話】(了)


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→【第䞉話】

いいなず思ったら応揎しよう