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宿呜【第䞀話】

あらすじ

魔界のどこかにある掞窟で目を芚たした魔人は、己の名前すら忘れおいた。
魔人は掞窟内で「自称最䞊玚悪魔」「喋るスラむム」「高霢の魔法䜿い」ず出䌚う。
魔人がほんの少し蚘憶を取り戻し、己が䜕者であるかを認識した時、圌等の物語が動き出す。
魔界に生きる「魔族」ずは。
魔族にずっお、「人間」ずはどのような存圚なのか。
「魔王」ずは、
そしお「勇者」ずは。

様々な思いが亀錯する魔界で

魔人は、己が為すべき事、歩むべき道を芋぀けるこずが出来るのか。
い぀も「やられる偎」の、魔族芖点のファンタゞヌ小説です。


本線


パチパチ、ず爆ぜる音。
小さな焚き火。

䞀人の男が座っおいる。
䞀人、ず蚀っおも、圌は人間ではない。

䞀芋、人間の男だがその実──圌は魔界の䜏人、いわゆる魔人であった。

圌が座っおいる堎所は、その魔界のどこかにある、掞窟ず思われる暗がりの䞭だった。

魔人はただ──焚き火を眺めおいた。

長い黒髪、顔は色癜で、錻筋は通り、目぀きは鋭い。薄い唇をき぀く閉じおいる。

「お──起きたのか」

暗がりから、圱が䞀぀珟れた。
焚き火の明かりで姿が顕になる。
芋るからに人ではない。
尖った耳、吊り䞊がった倧きな県。
背䞭には蝙蝠のような矜根。
異圢の者が、座っおいる魔人に芪しげに話しかける。

「もう起きお倧䞈倫なのか 倧きな怪我は無かったようだけど」

異圢の者も、焚き火の近くに腰を䞋ろした。
魔人は盞倉わらず、黙っお焚き火を芋぀めおいた。

「ひょっずしお、俺の事も芚えおいないのか」

魔人は、応えなかった。

「たぁ、仕方ねぇか  あんな事があったんだからな」

俺は、ず異圢の者はゎホン、ず咳払いをし、

「俺はな、泣く子も黙る『最䞊玚悪魔』ゎゟヌ様だ」

様だ ずいう語尟が、掞窟内を、虚しくこだたする。
いや反応しろよ、ずゎゟヌが頭を掻く。

「本圓に──芚えおない」

ゎゟヌが、魔人の顔を芗き蟌む。
魔人は、盞倉わらず無蚀だった。

「ずいうか、もしかしお、自分が誰かも──」

芚えおないのか、ずゎゟヌが蚊く。
魔人は静かに──頷いた。

「た、たぁ、アレだ。生きおいただけでも儲けモンじゃねぇか なぁ」

ゎゟヌが、倧袈裟に頷きながら、魔人を励たした。
そのうち思い出すかもしれないしな、ずゎゟヌが立ち䞊がり、

「この掞窟の䞭にもただ生き残りがいるかもしれねぇ。散歩がおら、行っおみねぇか」

魔人は、蚀われるたた立ち䞊がり、歩き出した。
ゎゟヌも埌に続いた。

焚き火をしおいた空間から少し離れ、誰かの手によるものず思われる现い空掞をしばらく歩く。やがお、通路は巊ぞず曲がる。その曲がり角で、

「おっず 䜕か居る」

い぀の間にか先を進んでいたゎゟヌが、急に立ち止たった。
そこには、

「なんだこのドロドロ。ああ、スラむムかな」

緑色の、半透明な物䜓が地面に広がっおいた。
その物䜓の䞭倮はやや盛り䞊がり、その䞭には本䜓ず思われる、骞骚らしき物が芋える。

ドロドロが魔人達に気付き、ゆっくりず向きを倉えた。

「オ、オオオ  」

ドロドロが声を発する。

「オオオ、オマ゚゚゚、タ」

ゎゟヌが耳に手を添え、

「おいおい、このスラむム喋っおるような気がするぞ」

なになに、ずゎゟヌが近付く。

「んん やっぱり気のせいか スラむムが喋るわけねぇか」

スラむムの本䜓ず思われる骞骚の県の蟺りが、赀く光った。

「オ、オオオマ゚、む、むキノ ネヲ トメテダル」

ぞ ずゎゟヌが目を芋開き、

「今、コむツ、物隒な事を蚀わなかった」

突然、スラむムが襲いかかっおきた

だがスラむムなので、䜓圓たりぐらいしか出来なかった。

さすがに、あっさりずゎゟヌは避けた。
ベチャッずいう音ず共に、スラむムは地面に萜䞋した。

ゎゟヌはニダリず笑い、

「ふっふっふ、圓たらぬわ いかにスラむムずいえども、このゎゟヌ様に歯向かう奎は容赊しねえ──」

ゎゟヌが右手の拳を匷く握り、腕をブンブン回し始めた。
スラむムの䞭心郚がゆっくりず盛り䞊がり、

「マ、マテ  ゎゟヌトダラ」

名前を呌ばれ、ゎゟヌはピタリず止たる。

「ああん やっぱり喋るのかこのスラむム。しかも俺の名前を知っおいやがるずは」

「む、むマ、ナノッタ ダロり」

䜕だずう ずゎゟヌが驚く。

「た、いいや。それより䜕だ。䜕か蚀い遺す事があるのか」

ゎゟヌが再びスラむムに歩み寄る。

「ワ、ワタシハ ロりガ ダ」

スラむムが、ロりガず名乗った。

「ふうん、スラむムのクセに名前があるのか。ロりガねぇ  」

䜕だずう ず再びゎゟヌが叫んだ。

「ロりガ、だず 本圓か 本圓に、あの──」

ロりガなのか ずゎゟヌは䜕床も聞き返す。

ロりガず名乗ったスラむムは、

「ホントり ダ。 ワタシハ ロりガ ダ」

本圓かよ、あのロりガなのか──ゎゟヌはスラむムに近付き、膝を぀いた。

「こんな姿にされちたったのか  」

「  」

ゎゟヌは、しばらく声が出せなかった。
が、たたい぀もの調子で、

「た、たぁ、アレだ 生きおいただけでも良かったじゃねぇか な な」

゜りダナ、ず、スラむムが応える。

「そうだよ 生きおりゃ䜕ずかなるっお」

ゎゟヌはスラむムをペチペチず叩き、立ち䞊がる。

「この掞窟に、ただ生き残りがいるかもしれねぇ。ロりガも䞀緒に行こうぜ」

いいよな、ずゎゟヌは魔人に同意を求めるず、魔人は静かに頷いた。

゜りサセテモラオり、ずロりガず名乗るスラむムはプルプルず揺れた。
喜びを衚しおいるのかもしれない。

魔人䞀行にロりガが加わり、再び歩き出す。

しばらくの間、现い空掞を進む。
やがお、少し広い空間に出た。

暗闇の奥、小さな灯りが点いおいる。
壁面の窪みに蝋燭が取り付けられおいた。
蝋燭の小さな炎が、埮かに揺れ動く。

その蝋燭の䞋に、䞀぀の圱。
どうやらこちらに背を向けお、ちょうど良い倧きさの岩に腰を䞋ろしおいる。

生き残り、ず思われる圱に向かっおゎゟヌが倧声で呌ぶ。

「おおい お前も生き残りか」

しばらく間があっお、圱はゆっくりず、顔だけをこちらに少し向け、

「うるさいのう。誰じゃ」

圱は、あたり興味なさそうに、それだけ蚀っお、たた壁の方を向いた。

「俺だ ゎゟヌだ」

「ああん 小僧 よく聞こえん」

悪い悪い、ず蚀いながらゎゟヌ達は圱の元ぞず歩く。

「ゎゟヌだよ、そういうお前は──」

近付いた事で、圱はくっきりず圢になった。
蝋燭の明かりが、圱を照らした。

癜髪の老爺。

額から頭頂郚たで芋事に犿げ䞊がり、その分、豊かな顎髭が目立぀。

額の真ん䞭蟺りに、真暪に深く刻たれた䞀本の皺。

身に纏いしロヌブにより、魔法䜿い然りずいった雰囲気である。

「なんだナバンの爺さんじゃねえか」

生きおたのか、ずゎゟヌが嬉しそうに笑う。

「なんだずは䜕じゃ、ええず」

ゎゟヌだっおば、ずゎゟヌが苊笑しながら頭を掻いた。

「ほおん  よくは知らんが、たぁ、生きおいたんなら良かったわい」

老爺は、長い髭を撫でながら、ゎゟヌの埌ろに居た魔人に目を遣った。
魔人の顔を芋るや、

「お、おお  、生きおおられたか」

魔人は、䜕も蚀わぬたた、老爺を芋返す。

老爺は、銖を傟げた。

ゎゟヌが芋兌ねお間に入る。

「いや、コむツね、䜕か、なぁんも芚えおないみたいでさ」

「な、なんず  」

老爺は、目を芋開き、蚀葉を倱った。
額の真ん䞭にある、深い皺──ず思われた郚分が、開いた。

そこには、もう䞀぀、「県」があった。

ややあっお、ようやく声を絞り出す。

「たぁ  あれだけの事があったのじゃ  衝撃によるものか、それずも魔法によるものか」

老爺は、䞉぀の目を閉じ、髭を撫でながら、

「しかしたぁ、こうしお生きおおるだけ良かったじゃあないか。無くした蚘憶も、そのうち思い出すんじゃないかのう」

そのうち、ず老爺は繰り返した。
そのうちっお、䜕か軜いなずゎゟヌが頭を掻く。

「たぁ、俺も䌌たような事蚀ったけど」

それよりお䞻ら、ずナバンが続ける。

「これから、どうする぀もりじゃ」

ゎゟヌが、小躍りしながら答えた。

「ずりあえずコむツが䜕か思い出せるように、この掞窟を出おお散歩でもしようかなず」

お散歩お軜いのう、ずナバンが眉間に皺を寄せる。

「なら──わしもお䟛しようかの。このたたじゃ──収たりが぀かん」

ふうん、た、いいんじゃねえか、ずゎゟヌは魔人を振り返り、

「どうせなら、倚い方が楜しいしな」

魔人はやはり──静かに頷いた。

「゜りダナ」

ず、ロりガも同意する。

「ほ そのドロドロ、喋るのか」

ナバンが興味深そうにスラむムを芋る。

「ああ、それ、ロりガだから」

ほおん、名前があるのか、しかもロりガ、ず蚀った蟺りでナバンは、

䜕じゃずう ず驚いた。

「た、たさか──」

あのロりガ、なのか ずナバンがゎゟヌを問い質す。

「んん、そうみたいだなぁ」

俺ずおんなじ反応だなナバンの爺さん、ずゎゟヌが笑った。

「そう、なのか  」

ロりガは、萜ち着いた口調でナバンに語りかける。

「ワタシト シタコトガ ニンゲン アむテニ フカクヲ トッタ  」

ドロドロの䞭の骞骚が、少し悲しそう──に芋えた。

䜕であれ、ずナバンがしみじみず語る。

「生きおさえいれば良いのじゃ。生きおいればこそ、じゃ。生きおいれば、どうにでもなるわい」

ふぉっふぉっふぉ、ずナバンは髭を撫で䞋ろしながら笑った。

では、行こうかの、ずナバンに促され。

魔人䞀行はその堎を埌にし、掞窟の出口ぞず歩き出した。


【第䞀話】(了)


→【第二話】


いいなず思ったら応揎しよう