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Photo bymomoro66

士魂の商才 第2話「倱螪」

       䞀 

     「ごめん。」——たった䞀蚀のメッセヌゞを最埌に、黒厎は消えた。
     人事通知を芋たあの日から、真壁は䜕床も電話をかけた。繋がらない。
    「どうした。連絡をくれ。」既読は、぀かなかった。
     黒厎が本郚の゚ヌスずしお積み䞊げおきた六幎間が、たった䞀行の退職通知で消えた。
     あの居酒屋の倜の「ありがずう」。聞き取れなかった「俺のほうこそ」。そしお、「ごめん」。断片が、胞の奥で疌いおいた。
     なぜ消えた。䜕があった。
     黒厎ず最埌に話したのは、自分以倖に誰だ。高校のサッカヌ郚の仲間ずも、仕事に远われお、い぀しか連絡を絶っおいた。友人ずの接点を、自分の手で手攟しおいたこずに、今曎ながら気づく。
     䞀人、思い圓たった。着信が鳎った。由銙子だった。少し黙っおから、「䌚っお話したい」ず蚀った。

       二 

     ラむフコアの流通管理本郚の財前本郚長ず䜐䌯課長が尟道店に来たのは、翌朝だった。
     財前勝則は初老を迎えおいたが、ゎルフで日焌けした肌は赀黒く光っおいた。か぀おは「ゞャスト」ずいう倧手チェヌンの開発郚長ずしお党囜に出店を繰り返し、「小売業の工業化」を掲げお業界誌に登堎したこずもあった。
     財前「真壁店長。お噂はかねがね。CAMOSの件、面癜いこずをやりたしたね」
     握手を求められた。財前の手は、骚が軋むほど握り蟌んできた。財前は笑顔のたた、握る力を緩めなかった。
      財前「地方の、小さな糀屋の商品を、海倖にたで届けた。倧したものだ。  私はね、そういう『海倖向け話』が、倧奜きなんですよ」
     真壁は、財前を芋た。
     財前「日本の小売は、䞖界に負けおいる。アメリカにも、最近では䞭囜にも。なぜだず思いたすか。情に流されるからです。この店は残そう、あの取匕先は矩理があるから、ず。その甘さが、囜党䜓の流通を匱くした。」
     財前「匷いものが、匱いものを飲み蟌む。効率の悪いものは、淘汰される。それでこそ、日本の流通は、䞖界ず戊える。CAMOSは海倖に通甚させた。いい話じゃないですか、ただ、問題は黒厎君です」
     財前の目は、笑っおいなかった。そこにあったのは、悪意ではなく、確信だった。だからこそ、真壁は、背筋が寒くなった。
     この人は、自分が正しいず、本気で信じおいる。
     財前「黒厎君ずは芪しかったそうですね。高校からのご友人だずか。圌が蟞めた理由、䜕か聞いおいたすか」
     真壁「いいえ。私も連絡が取れずにいたす」
     財前はようやく手を離した。真壁の手の甲に、赀い跡が残っおいた。
     財前の隣で、䜐䌯課長は、終始う぀むいおいた。時折、胞元の、銀のネクタむピンに、指先を無意識に觊れさせおいた。
     財前「そうですか。圌に぀いお、少し話たしょう」

       䞉 

     財前が「調査」を切り出したのは、店舗の六畳ほどの商談宀に入っおからだった。
     CAMOSのPR斜策の支払い履歎に、䞍審点があるずいう。むンフル゚ンサヌぞの報酬の䞀郚の流れが、䞍明瞭だずいうのだ。
     財前「この斜策を本郚で通したのは黒厎君です。そしお——この申請者はあなただ」
     財前が䞀枚の曞類を差し出した。CAMOSのPR費甚の承認曞。その䞋に、真壁の抌印があった。
     自分が抌印した蚘憶はない。
     真壁「これは、私の抌印ではありたせん」
     財前「ほう。しかし、あなたが申請し、黒厎君が承認した。曞類はそうなっおいる」
     黒厎が、俺の抌印を停造した   あい぀が、俺を嵌めたのか。
     そんなはずはない。CAMOSの承認で助けおくれお、䞀緒に販売方法も考えた。だが、曞類はここにある。日付は、黒厎ず呑んだ前日だった。
     
       四 

     SNSに蚘事が出たのは、財前が来店した盎埌だった。
     【炎䞊】倖囜人からも倧人気のCAMOS。人気商品の裏で店長が販促費を着服 #CAMOSで肌荒れ  もずもずステマだった #被害続出  CAMOSも本圓に効果があるのか。 #ラむフコア詐欺
     CAMOSを䜿っお肌に合わなかった人たちからの被害報告も、次々にリツむヌトされおいた。
     高橋が事務所に駆け蟌んできた。
     高橋「店長、財前本郚長が、杉山さんのずころに行かれたみたいです」
     真壁は車を飛ばした。杉山糀店の前は、ボむスレコヌダヌやカメラを持った蚘者たちが、店を取り囲んでいた。
     真壁が車を降りるず、蚘者たちが䞀斉に振り向いた。
     蚘者「真壁店長ですよね。販促費の着服に぀いお、ひずこずお願いしたす」
     蚘者「CAMOSの効果は嘘だったんですか。消費者を隙したずいう自芚は」
     マむクずレコヌダヌが、突き出された。真壁は蚀葉を倱った。
     その時、店の䞭から、財前が出おきた。蚘者たちの前で、財前は深々ず頭を䞋げた。
     財前「匊瀟の店長が、このような疑いを招く事態ずなり、誠に申し蚳ございたせん。珟圚、瀟内で調査を進めおおりたす。本人にも、厳正に察凊いたしたす」
     財前は、真壁を䞀瞥した。その目には、既成事実を䜜った䌚心を埗たような含みが芋えた。
     「本人にも厳正に察凊」——その䞀蚀で、真壁は蚘者たちの前で、ほが犯人に仕立お䞊げられた。財前は、悠然ず黒塗りの車に乗り蟌み、本瀟ぞ垰っおいった。
     蚘者たちが、真壁に詰め寄る。フラッシュが光る。真壁は、人をかき分けお、麹店の匕き戞に手をかけた。

       五 

     真壁は、杉山糀店に逃げ蟌んだ。匕き戞を閉めるず、倖の喧隒が、少し遠ざかった。
     咲は、補造宀の真ん䞭に立っおいた。朚桶の前で、背を向けたたた、動かなかった。
     真壁「杉山さん。財前が、ここに」
     咲が、振り返った。その顔を芋お、真壁は蚀葉を止めた。
     咲の顔は、い぀も通り静かだった。だが、目の奥に、真壁が芋たこずのない光があった。䜕かを重く決心したような、鈍い光だった。
     咲「  すいたせん、CAMOSの成分が䞀郚の方には合わなかったみたいで」
     真壁「こちらのほうこそ申し蚳ない。咲さんの商品を守れなくお。財前本郚長に、䜕か蚀われたしたか」
     咲は、しばらく黙っおいた。それから、朚桶に目を萜ずした。
     咲「財前さんは、私に぀くのか、真壁さんに぀くのか、どっちがいいか考えろず。そしお、父のこずも」
     咲は、それ以䞊は蚀わなかった。䜕を蚀われたのか、真壁は聞けなかった。咲のほほを、涙が぀たっおいた。涙をぬぐい、顔を䞊げお、そしお、蚀った。
     咲「麹はね、衚面は癜い菌糞で芆われお、衚を芋ただけだず䜕も起こっおないように芋えるんです。でも、その䞋では、目に芋えないずころで、ずっず発酵が進んでいる。  衚に芋えおいるものが、すべおじゃない。本圓のこずは、い぀も、芋えないずころで進んでいるんです」
     その蚀葉の意味が、真壁にはうたく掎めなかった。
     咲は、癜衣のポケットに、そっず手を圓おた。䜕かを確かめるような仕草だった。
     
       六 

     二床目の真壁の調査面談は、本瀟の䌚議宀で行われた。財前ず䜐䌯が䞊んで座っおいた。
     財前が䞀枚の玙を真壁の目の前に滑らせた。電子マネヌの取匕明现だった。
     財前「あなたの口座に、黒厎君から䞀千䞇円が振り蟌たれおいたす。CAMOSの承認が䞋りた、その䞉日埌に」
     真壁は明现を芋た。確かに、黒厎の名矩で、真壁のアカりントに䞀千䞇円が振り蟌たれおいた。身に芚えのない金だった。
     䞀千䞇円。黒厎から、自分の口座ぞ。
     財前「PR費甚の半分が消えた。同じ頃、あなたの口座に黒厎君から倧金が入っおいる。あなたず黒厎君が結蚗しお、PR費甚を抜いた——そう芋える」
     真壁「知りたせん。受け取った芚えもない。そもそもなぜ黒厎が自分の口座を知っお  」
     真壁は黙った。あの居酒屋の倜。黒厎が割り勘の粟算の時にアプリを出しお、自分の電子マネヌ口座を登録した。
     あの時、あい぀は俺の口座を知った。だが、なぜ。
     財前「正盎なずころ、黒厎君には今回の件以倖にも、怪しいずころがあっおね。『黒厎君に指瀺されお埓っただけだ』ず認めれば、君の凊分は軜くなる。黒厎君はもう連絡も取れない。どうすればいいかは、分かるよね」
     黒厎を売れば、助かる。財前は、そう蚀っおいた。
     ここで黒厎を裏切れば、自分は助かる。知らなかったず返金すればいいだけ。だが——
     お前が倖れる理由が、わからない。
     高校の曎衣宀で、自分が黒厎に蚀った蚀葉だった。今も、黒厎が俺を嵌める理由が、どこにもわからない。
     真壁「  断りたす。黒厎が䜕をしたのか、なぜ消えおしたったのか、ただ䜕もわかっおいない。わからないものに、回答はできない」
     財前の衚情から、急に笑みが消えた。
     財前「もし、あなたがやったのであれば、懲戒凊分どころか民事裁刀にかけられるこずになるでしょう。コンプラむアンス委員䌚は、䞃日埌です。それたでに、よく考えるこずだ」
     財前が垭を立぀ず、その埌を続くように䜐䌯も垭をたった。䜐䌯が去り際、䞀床だけ振り返り、䜕かを蚀いたげに口を開きかけた。だが結局䜕も蚀わず、財前を远っお出お行った。

       䞃 

     由銙子ず䌚ったのは、その日の倕方だった。喫茶店で。ベビヌカヌトで寝おいる湊を連れおいた。湊の手の甲の赀みは、すっかり匕いおいた。
     由銙子「黒厎くんから、電話があっお。『真壁には悪いこずをした。巻き蟌んですたない。これをあい぀に枡しおくれ』ず」
     由銙子は、小さなUSBメモリをテヌブルに眮いた。黒厎ず由銙子は、同じ䌚瀟にいた頃の同じ郚眲だったこずがある。湊が産たれるたでの間は、䞉人で飲んだこずもあった。
     あい぀は、裏切ったんじゃない。䜕かを、守ろうずしおいる。
     真壁「黒厎はどんな様子だった」
     由銙子「黒厎くん、䜕か急いでいるような感じだった。䜕かあったんだなず。ねぇ いったい䜕があったのSNSでも隒がれおいお」
     由銙子は、湊の手を握った。
     真壁「その答えが、このUSBの䞭にあるず思う」 
     由銙子「私、あなたのこず仕事のできる人だず憧れおた。でも、䞀緒になっおから、疲れお垰っおきお。湊の手が荒れおも、気づかなかった。  あなたには、もう䞀床、家族をしっかり芋おほしかった。だから、離れたの」
     真壁は、䜕も蚀えなかった。由銙子が、なぜ離れたのか、その本圓の理由が自分のためを思っおのこずだず。そしお、自分が自分の人生で倧切なものを芋倱っおいたこずを、初めお気づかされた気がした。
     真壁「これたで、すたなかった。CAMOSの件が片付いたらしっかり話をさせおくれ」  
     真壁はUSBを受け取った。それは小さかったが、重く感じた。
     あい぀が倖れる理由が、わからない。
     それが、か぀お䞀緒に青春を駆け抜けた芪友ぞの想いだった。

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    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門

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    流通業に長い間携わっおきたした。セカンドラむフずしお小説家や挫画家の倢に挑戊しおいきたく。これたで出来なかった時間や力の䜿い方ずしお、仕事をしながら、AIの力を掻甚しお小説を曞いおいたす。倱敗の倚い人生ですが、ただただ挑戊しおいきたす。応揎やアドバむス等頂ければありがたいです

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