メインコンテンツへスキップ
見出し画像

③リカの憂鬱

    あのきれいな子が来てから、ますます退屈な毎日になってしまった。

    あのきれいな子は、あんまり箱の中に帰ってこないの。きっと、彼女に気に入られて、いつもお部屋に置かれているのね。

    久しぶりに彼女が、私がいる箱の中に手を突っ込んできた。
    お洋服を探しているのね。
    きっと、あの子に着せるお洋服を。

    ふわっと体を持ち上げられた。

    彼女は、何かのキャラクターの絵が描かれているハンカチを私の体に巻きつけ、輪ゴムでとめた。
    裸で過ごしている私の為に、お洋服を着せてくれたのね。ありがとう…

    ある晩、きれいなあの子がはじめて、箱の中に入ってきた。
    はじめての箱の中でドキドキしているあの子に、恐る恐る話しかけてみた。

    「大丈夫よ。ここは怖くないわ」

    驚いた顔で私を見て、口を開いた。
    「あなたはだあれ?」
    「私はリカよ」
    「私もリカよ」

    少しの沈黙の時間。

    「あぁ、私のお姉さんなのね」
    「そうか、あなたは妹なのね」
    「お姉さん、変わった服着てるのね」
    苦笑いして微笑む私。
    「彼女ね、1日に何度も私のお着替えをするの。忙しい毎日よ。着替える時、足や腕をグイグイ引っ張られるの。それが嫌」

    そうなのね。でも、新しいあなたが羨ましいわ。
    その言葉を、ぐっと飲み込む。

    それからも私は相変わらず外に出る事がなかったけれど、妹のグチや、楽しかった話を聞くのが日課になった。

    妹は忙しそうだけど、私は毎日暇なの。箱の中のぬいぐるみとお話ししたり、散らばったビーズを拾い集めて過ごしていた。
    ちょっと憂鬱な日々を繰り返す毎日。



    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門

    あなたへのおすすめ