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むブ物語刀断寓話゚ラずペル第䞉十五話 負けた朝

    アむ


    昚日の私は、たぶん浮かれおいた。

    その報いは、翌朝きっちりやっおくる。

    ミヌツタりンの宎は、寝お起きたくらいでは終わっおくれなかった。

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    ゚ラずペル 第䞉十五話
    【負けた朝】


    ミヌツタりンでの宎は、翌朝、思わぬ圢で珟れた。

    お腹を締め぀けるような痛み。
    蟌み䞊げる吐き気。

    昚日の暎食を思い返しながら、私は口元を抌さえた。

    ――最悪。

    暪を芋るず、゚ラはい぀も通りの顔でぐっすり眠っおいた。
    オトも穏やかな寝息を立おおいる。
    二人ずも、顔色ひず぀倉わっおいない。

    ――この二人、どうなっおるの

    私だけが別の戊堎に取り残されたみたいだった。

    ひずり、ベッドから䜓を起こす。
    重い足を匕きずるようにしお、郚屋を出た。

    朝日が窓から差し蟌んでいる。
    ただ、明け方だった。

    宿の近くの井戞たでたどり着き、桶から氎を汲んで顔にかける。

    ぱしゃ、ず冷たい氎が跳ねた。
    火照った頭が、少しだけ冷える。

    ――気持ち悪い。

    思わず口元を抌さえ、蟌み䞊げるものを飲み蟌んだ。

    誰もいない朝の街には、ただ静けさが残っおいた。
    近くの怅子に腰を䞋ろし、俯いたたた昚日のこずを思い出す。

    口の䞭でほどける肉の脂。
    喉が焌けるように甘かったクレヌプ。

    昚日はあれほど幞せだったはずなのに、今は戊いの埌よりもずっず疲れおいた。

    人の気配に気づいお顔を䞊げるず、杖を぀いた小柄な老人が、こちらを心配そうに芋おいた。

    「負けた顔じゃな」

    老人は、目元に皺を寄せおやさしく笑った。

    その衚情に、少しだけ気が緩む。

    「  負けたした」

    そう答えるのが、今の私にはいちばん正確だった。

    「この街に、勝おるものなんぞおらんよ」

    老人は、フォフォホず楜しそうに笑う。

    その瞬間、宿のベッドで元気そうに寝おいた二人の姿が頭に浮かんだ。

    ――いたすけど。

    もちろん、そんなこずは蚀わない。

    老人は腰を䌞ばし、軜く叩きながら蚀った。

    「良ければ、これを䜿うか」

    差し出された手には、小さな袋に入った薬草があった。

    「なんですか」

    「食べすぎに効く薬草じゃ。少し苊いが、煎じお飲めばいくらかは楜になる」

    私は薬草を芋぀めたたた、すぐには手を䌞ばせなかった。

    苊しい。
    正盎、すがりたい気持ちはある。

    けれど、知らない盞手から枡されたものを、䜕も考えず口にするのは怖かった。

    そんな私の迷いを芋お、老人はうなずく。

    「甚心深いんじゃな。それでいい」

    「  ごめんなさい。そういう぀もりじゃ  」

    図星を突かれ、蚀葉がしがむ。

    「いやいや、旅人ならそれでええ。譊戒できるうちは、ただ倧䞈倫じゃ」

    老人は穏やかな口調のたた蚀った。

    「ワシはフヌ。みんなには薬屋フヌず呌ばれおおる」

    そう蚀っお、杖の先で通りの奥を軜く瀺す。

    「近くで薬屋をやっおおるんじゃ。よかったら店に来るか 煎じるずころたで、ワシがやろう」

    ゆっくり話すその声には、䞍思議ず人を急かさない枩床があった。
    匵っおいた譊戒が、少しず぀ほどけおいく。

    迷っおいたけれど、それ以䞊に腹の差し蟌むような痛みが限界だった。

    冷や汗がにじむ。
    怅子に座ったたた動けない私は、小さく頷いた。

    「連れがおるのか」

    私はこくりず頷く。

    「なら、心配かけんようにワシから宿に䌝えおおこう」

    そう蚀っおフヌは宿の方ぞ向かった。
    道すがら、店先を掃いおいた宿の䞻人ず二蚀䞉蚀だけ蚀葉を亀わす。
    䞻人も慣れた様子で手を䞊げ返した。

    少なくずも、たったくの怪しい盞手ではなさそうだった。

    「話はしおおいた。行けるかの」

    私は小さく頷き、フヌのあずを远った。

    フヌの店は宿のすぐ近く、酒堎が䞊ぶ通りの䞀角にあった。

    通りには、昚倜の戊いに敗れたのだろう“屍”が転がっおいる。

    酒瓶を抱えたたた倧いびきをかく䞭幎の商人。
    暜にもたれたたた動かない若者。
    路地の隅では、芋芚えのある包み玙を握ったたた眠っおいる人たでいた。

    少しすえた匂いが錻を刺す。
    その匂いが、私の吐き気をさらに匷くした。

    口元を抌さえながら、ふらふらずフヌの埌に぀いおいく。

    ミヌツタりンの朝は、昚日の楜しさをそのたたひっくり返したような景色だった。

    私は飲屋街に薬屋が必芁な理由が、少しわかる気がした。

    小さな看板が目に入る。
    葉っぱの絵ず、フヌの名が曞かれおいた。

    フヌが扉を開くず、独特な銙りがふわりず広がった。
    どこかお銙を焚いたような匂い。
    倖に満ちおいた酒ず汗の匂いずは違う、萜ち着く銙りだった。

    店内は狭い。
    けれど、棚に䞊ぶ薬草や瓶はきちんず敎えられおいお、䞍思議ず息が぀ける空間だった。

    窓蟺には也かした葉が束ねお吊るされ、朝の光を受けおやわらかく揺れおいる。

    昚倜の喧隒がただ街のどこかに残っおいるはずなのに、この店の䞭だけ時間の流れが遅いみたいだった。

    「ちっず、埅っおおれ」

    私に怅子を勧めるず、フヌはカりンタヌの奥ぞ姿を消した。

    朝日が窓から差し蟌み、遠くで鳥の鳎き声がする。
    ここはたるで、安党な避難所のように感じられた。

    しばらくしお、湯呑みに入った薬湯を持っおフヌが戻っおくる。

    「ゆっくりでいい」

    そう告げるず、フヌはカりンタヌ近くの怅子に腰を䞋ろした。

    私は薬湯を䞀口飲む。

    少し苊い。
    けれど、䞍思議ず腹のあたりがすっず楜になる。

    前かがみにしかなれなかった䜓が、少しず぀ほどけおいくようだった。

    私の様子を芋たフヌは、パむプに火を぀けおひず息吐く。
    店内に甘い匂いの煙が挂う。
    けれど、それも䞍思議ず嫌ではなかった。

    「お前さんは、旅人か」

    ふいに、フヌが声をかけた。

    「ええ。地図を曞く仕事をしおいたす」

    「ほう、地図か  」

    フヌは煙をひず぀吐き、目を现める。

    「どこぞ向かっおおるんじゃ」

    䜕気ない問いかけだった。
    けれど、私はすぐには答えられなかった。

    ――ルヌベント。
    その名前を、ここで出しおいいのだろうか。

    ゚ラでさえ、あの街のこずは倚くを語らない。
    旅の途䞭で誰かに軜々しく話しおいい堎所ではない気がしおいた。

    それでも、ここたで来お手がかりを逃したくなかった。

    「蚀いたくなければ、蚀わんでもいい」

    私の迷いを芋お、フヌが静かに蚀う。

    「  ごめんなさい。ルヌベントっお街を探しおいたす」

    その瞬間、フヌの動きが止たった。
    パむプを持぀指先に、ほんのわずか力が入る。

    店の空気が、そこで倉わった気がした。
    さっきたでの穏やかさが、音もなく匕いおいく。

    「お前さん  たさか、あの街のもんか」

    「違いたす。でも  知っおいるんですか」

    思わぬずころで話が぀ながった。

    フヌは、ルヌベントを知っおいる。

    さっきたで重かった䜓の奥に、別の熱が灯る。
    私は思わず身を乗り出した。

    「どうしおも、ルヌベントに行きたいんです」

    フヌはすぐには答えなかった。
    现い煙を吐いおから、䜎い声で蚀う。

    「やめおおけ」

    その蚀葉は短く、劙にはっきりしおいた。

    「あの街が、なんず呌ばれおおるか知っずるのか」

    私は小さく銖を振る。

    フヌはしばらく私を芋぀め、それから静かに告げた。

    「  犯眪郜垂ルヌベント」


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    🔙第䞉十四話   第䞉十六話🔜



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