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むブ物語刀断寓話゚ラずペル第䞉十六話 砂挠の薔薇

犯眪郜垂ルヌベント。

フヌの口から語られる話は、どれも信じがたいものばかりだった。

超叀代皮ギガントタヌトルの䞊に䜜られた、動く街。
街を圱から支配する闇のギルド。

意味がわからない。

けれどフヌは、冗談を蚀っおいるようには芋えなかった。
そしお䜕より、゚ラの故郷が確かに存圚するらしいこずだけは、はっきりした。


゚ラずペル 第䞉十六話
【砂挠の薔薇】


私は薬屋フヌの話を聞きながら、たるで埡䌜話みたいだず思っおいた。

南の砂挠地垯を移動する、倧きなカメの䞊に築かれた街。
生き物の䞊にある街で、しかもそれ自䜓が動いおいるから地図にも茉らない。

そこに集たる人間は、みな脛に傷を持぀者ばかり。
誰も拒たないが、誰も助けおはくれない街――それがルヌベントだず、フヌは蚀った。

店を出たあず、その話を宿で゚ラたちに䌝えるず、゚ラは最初こそ銖を傟げおいた。
でも、少し考え蟌んでから、小さく蚀った。

『  でも、蚀われおみれば、よく揺れおた気もする』

そのひず蚀で、信じがたい話が少しだけ珟実味を垯びた。

地面が揺れる街なんお、そんなもの街じゃない。
もはや生き物だ。

それでも、゚ラの故郷に繋がる手がかりがあるのなら、行かないずいう遞択肢はなかった。

そんな堎所を目指しお、私たちは灌熱の砂挠ぞず続く道を進んだ。

砂挠に入っおから、景色はずっず同じようでいお、少しず぀違っおいた。

足元の砂の色。
吹き぀ける颚の熱さ。
也いた空気に混じる、焌けた石の匂い。
そしお遠くには、蜃気楌みたいに揺れる地平線。

芋枡す限り䜕もないのに、䜕ひず぀同じではない。
そんな堎所だった。

氎堎のある小さな街に着いた時、私は正盎かなりほっずしおいた。

砂色の壁でできた䜎い建物が䞊び、垃の日陀けが通りの䞊に枡されおいる。

井戞の呚りには旅人や商人が集たり、ラクダによく䌌た獣がのんびりず座り蟌んでいた。

也いた町なのに、人の気配があるだけで少し安心する。

「今日はここで情報を集めよう」

゚ラがそう蚀っお、手を額にかざしながら蟺りを芋回す。

オトはずいうず、屋台の䞊ぶ通りを芋た瞬間、すでに目を茝かせおいた。

「情報も倧事ですが、ごはんも倧事です」

「オトはずっずそれだね  」

「旅は䜓力ですから」

い぀もの調子に、少しだけ気が緩む。
でも、頭の片隅にはただフヌの蚀葉が残っおいた。

――ルヌベントは、動く街だ。
――行きたければ商䌚ギルド『砂挠の薔薇』を芋぀けろ。

信じがたい話だ。
地図を持っおいおも、少し䞍安になる。

「この街の酒堎なら、旅人の話が集たるはずだよ」

゚ラはそう蚀ったが、たぶん少し酒も期埅しおいる。

「酒堎ですか  」

オトが、ほんの少しだけ䞍安そうな顔をする。

「䜕その顔」

「前に酒堎で倧倉なこずがあった気がしお  」

「それはだいたいどこでもあるんじゃない」

゚ラは軜く笑っお、先に立っお歩き出した。

通りの奥。
日陀け垃のかかった倧きめの建物の前で、足を止める。

入口の扉は半分開いおいお、䞭からは笑い声ず怒鳎り声、それに食噚のぶ぀かる音が聞こえおきた。

いかにも酒堎、ずいう感じだった。

その時だった。

「うおおおっ」

䞭から男がひずり、ものすごい勢いで吹き飛ばされおきた。

私たちの目の前に転がり、砂煙を䞊げる。

「ちょっず倀切っただけだろうが」

男は顔を䞊げ、錻血を垂らしたたた半泣きで叫んだ。

䜕か蚀いかけたが、酒堎の䞭を振り返った瞬間、顔色を倉え、そのたた逃げおいった。

私はおそるおそる䞭を芗いた。

昌間だずいうのに薄暗い店内。
酒ず汗ず砂の匂いが混ざっおいる。
荒くれ者みたいな客たちが、劙に静かに道を空けおいた。

その先に、ひずりの倧柄の女がいた。

片目に黒い県垯。
灰色の髪ず耐色の肌。
砂挠なのに厩した、海賊みたいな栌奜。
片腕をカりンタヌに乗せ、぀たらなそうにこちらを芋おいる。

立っおいるだけなのに、そこだけ空気が違った。

匷い、ずいうより。
あれはもう、堎そのものを持っおいる感じだった。

「次は誰だい」

䜎い声が、店の奥たでよく通る。

誰も動かない。
さっきたで隒いでいたはずの客たちたで、芖線だけをこちらに向けおいた。

女は、ゆっくりず片方の口元を䞊げた。

「なんだ。客かず思ったら、ずいぶん现いのが来たね」

その目が、たず゚ラを芋お、
次にオトを芋お、
最埌に私のずころで䞀瞬だけ止たる。

倀螏みするみたいな芖線だった。

でも、䞍思議ず芋䞋された感じはしなかった。
品物を芋る目じゃない。
䜿えるかどうかを芋おいる目だった。

「酒か。情報か。甚件を蚀いな」

゚ラが䞀歩前に出た。

「ルヌベントに行きたい」

「  ぞえ」

女の片眉がわずかに䞊がる。

「で」

「砂挠の薔薇を探しおる」

その瞬間、店の空気が少しだけ倉わった。

誰かが息をのむ音がした。
さっきたでこちらを面癜がっお芋おいた客たちの顔が、急に真面目になる。

女は数秒、黙っおいた。

それから、ゆっくり笑った。

「探しおる、だっおさ」

笑っおいるのに、その声には少しも油断がなかった。

「お探しの盞手なら、目の前にいるよ――私が砂挠の薔薇、ロヌズだ」

そう蚀っお、倧きな䜓を揺らしながら笑う。

「じゃあ、教えおやったんだから、情報料でももらおうか」

䜎く通る声が、酒堎の空気を震わせた。

静寂が萜ちる。
圌女の䞀蚀䞀蚀は、ただの蚀葉じゃない。
目の動き、手の動き、呌吞の間合いたで、党郚が堎の空気を支配しおいる。

私は、その灰色の髪の奥からのぞく芖線を前に、思わず固たった。

「いくら」

そんな空気もお構いなしに、゚ラが蚀う。

ロヌズの呚りにいた男たちが腰の剣に手をかけたが、それをロヌズが片手で制した。

「面癜いね。玫の嬢ちゃん。あたしに亀枉をする぀もりかい」

口元はわずかに䞊がっおいるのに、目の鋭さは増しおいく。
たるで、私たち党員を倀螏みしおいるみたいだった。

゚ラは、おどけたように蚀う。

「お酒なら奢れるよ」

私は思わず゚ラを芋た。

――喧嘩売っおるの

でも、゚ラはい぀も通りだった。

「私はルヌベントに行きたいだけ。行き方を教えおくれれば、勝手に行くから」

背䞭に冷たいものが走る。

目の前のロヌズずいう存圚そのものが、本胜的に危険だず告げおいた。

腰のシルベが、ヒン、ず小さく鳎る。
シルベも同じように感じおいるのだず、すぐにわかった。

「あはは」

ロヌズが突然、声を䞊げお笑った。

「あんた、面癜いね。私にそんな口をきけるのは、赀い瞳のク゜女くらいだよ」

誰のこずを指したのかはわからない。
でも、ロヌズに軜口を蚀えるのは、よっぜど床胞がある人間か、゚ラみたいにズレた人間だけなんだろう。

私は劙に玍埗しおいた。

「店䞻 店にある酒、党郚持っおきな」

ロヌズの怒声に、カりンタヌの奥で瞮こたっおいた店䞻が䜕床も頷く。

「あんたらの奢りだろ。この店の酒がなくなっおも知らないよ」

カりンタヌにあった杯を䞀気に飲み干すず、ロヌズはニダリず笑った。

私は無意識に腰の財垃ぞ手をやる。

――無理だ。

いくらなんでも、この店の酒を党郚買うなんおできない。

私の衚情が匷匵ったのを芋お、オトが蚀った。

「ロヌズさん。党郚奢るずは蚀っおたせんよ」

その䞀蚀に、ロヌズの芖線が突き刺さる。

「なんだ。あんたらは酒を奢るず蚀った。それは、あたしら砂挠の薔薇ず契玄を亀わしたっおこずだろ」

「それを守らないっお意味  わかっおるかい」

怒鳎るわけではない。
でも、明らかにさっきより空気が重くなる。

オトは、その空気をものずもせず返した。

「わかりたした。では、こうしたしょう」

い぀も通りの穏やかな声だった。

「あなたず私で飲み比べをしお、負けた方の奢り、ずいうのはどうですか」

――オト、䜕を蚀っおるの

私はオトを芋る。
けれど、その衚情は少しも倉わらない。

「それは、あたしにずっお䜕の埗があるんだい」

ロヌズが返す。

オトは肩をすくめお笑った。

「あなたは酒代が欲しい。私たちは街の情報が欲しい。でも、お互いの䟡倀が噛み合っおいない。商人なら、こういう時どうしたす」

ロヌズは腕を組んだたた答えた。

「亀枉  っおこずかい」

オトはうなずく。

「そうです。お互いが劥協できるずころを探すんです。話し合いで」

「どちらかが音を䞊げるたでの話し合い、ねぇ」

ロヌズの口元が、ゆっくり぀り䞊がる。

「面癜い亀枉になりそうだ」

そう蚀うず、ロヌズが手を䞊げた。
近くにいた男たちが、店の奥から倧きな暜ずゞョッキを運び出し、乱暎にテヌブルぞ眮く。
朚の卓が、重みにぎしりず鳎った。

「盞手はどい぀だい」

「私ず酒を飲みながら亀枉しようっお奎は」

「なんなら䞉人たずめおでもいいよ」

ロヌズは、私たちをひずりず぀眺めながら蚀う。

「私が蚀い出したこずです。私が盞手になりたす」

そう答えお、オトは波々ず泚がれた䞀杯目を、そのたた飲み干した。



🔙第䞉十五話   第䞉十䞃話🔜


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