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むブ物語刀断寓話゚ラずペル第䞉十䞃話 詊される客


    酒堎のあちこちで、感心したような口笛が鳎った。

    「ほう」

    ロヌズが、片眉を䞊げる。


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    ゚ラずペル 第䞉十䞃話
    【詊される客】


    オトは空になったゞョッキを静かに眮いた。

    「悪くありたせんね」

    「蚀うじゃないかい」

    ロヌズも自分の杯を持ち䞊げ、䞀息で飲み切る。
    喉を鳎らす音たで、劙に堂々ずしおいた。

    呚囲の客たちが面癜がるように笑う。
    けれど、その目はただの芋物人のものではなかった。
    誰もが、ロヌズの機嫌ず、この勝負の行く先を芋おいた。

    二杯目、䞉杯目ず酒が運ばれる。

    オトは厩れない。
    い぀もの柔らかな笑みのたた、杯を受け取り、䞁寧に飲んでいく。

    察するロヌズは、飲むたびに機嫌が良くなっおいくようだった。
    豪快で、乱暎で、それでいおたったく隙がない。

    「ぞえ。芋た目よりやるね、吟遊詩人」

    「旅芞人は喉が資本ですから」

    「酒焌けしそうな理屈だ」

    笑いが起こる。

    私はそのやりずりを芋ながら、少しだけ息を぀いた。

    最初はどうなるこずかず思ったけれど、このたたなら本圓にただの飲み比べで終わるのかもしれない。

    そう思った時だった。

    隣で゚ラが、ふず衚情を消した。

    「ペル」

    小さな声だった。

    でも、その声を聞いた瞬間、私の背筋が䌞びる。

    「  なに」

    「倖」

    それだけで十分だった。

    腰のシルベが、たたヒン、ず鳎る。
    今床はさっきより、はっきりず。

    私は息を呑んだ。

    酒堎の喧隒の向こう。
    扉の隙間から、劙な音が聞こえた。

    ざり、ざり、ず。
    砂を倧きく掻くような音。

    それがひず぀じゃない。

    「  䜕か来る」

    私がそう蚀った瞬間、店の倖から悲鳎が䞊がった。

    「魔物だ」

    酒堎の空気が、䞀気にひっくり返る。

    客たちが立ち䞊がり、怅子が倒れ、誰かが舌打ちをする。
    次の瞬間、半開きだった扉が勢いよく匟け飛んだ。

    砂煙ず䞀緒に飛び蟌んできたのは、巚倧な四足の獣だった。

    トカゲみたいに䜎い䜓。
    けれど背䞭には岩みたいな瘀がいく぀も生え、口元からは熱い息が挏れおいる。
    赀い目がぎらぎらず光り、砂に濡れた牙がむき出しだった。

    「サンドファングか」

    誰かが叫ぶ。

    䞀匹じゃない。

    倖にもただいる。
    足音ず、建物を匕っかく音が、いく぀も重なっおいた。

    「っ、オト」

    振り向くず、オトは四杯目の途䞭だった。
    顔色はただ厩れおいない。けれど、すぐに動ける状態でもない。

    「倧䞈倫です、たぶん」

    「たぶんっお」

    ゚ラはもう笑っおいなかった。

    抜いたクロずシロが、ほずんど同時に光る。

    「ペル、右」

    蚀われるより早く、私は飛び出しおいた。

    酒堎の䞭に飛び蟌んできた䞀匹が、近くの男に食らい぀こうず銖を䌞ばす。
    シルベを抜き、螏み蟌む。

    速い。

    でも、倜じゃない。
    あの時みたいな共鳎は来ない。

    だから、目で芋るしかない。

    噛み぀こうずする銖筋ぞ、突きを入れる。
    浅い。

    硬い鱗が刃を滑らせ、獣が苛立ったように唞る。

    次の瞬間、その暪から黒い斬撃みたいに゚ラが飛び蟌んだ。

    「遅い」

    クロが前脚を裂き、シロが喉元ぞ走る。

    血が散り、巚䜓が傟く。

    私は倒れ蟌むようにその脇を抜け、もう䞀床突いた。
    今床は口の奥。
    柔らかい堎所に刃が入り、獣がひっくり返る。

    ヌヌよし

    そう思った時には、倖からさらに倧きな衝撃音が響いた。

    酒堎の壁が震える。

    「ただいる」

    誰かの叫びに、゚ラが舌打ちした。

    「ペル、倖行くよ」

    「うん」

    倖ぞ出た瞬間、熱颚が顔に叩き぀けおきた。

    通りはすでに半分パニックだった。
    荷車が倒れ、獣よけ甚だったらしい柵が壊れ、砂煙の向こうで巚倧な圱が動いおいる。

    䞉匹。

    いや、四匹。

    井戞の方ぞ向かっおいる。

    「あれ、氎堎を狙っおる  」

    旅人ず獣が集たる堎所だ。
    氎があるからこそ、この街は成り立っおいる。
    そこを壊されたら終わる。

    「゚ラ」

    「わかっおる」

    ゚ラが砂を蹎る。
    そのたた、ありえない高さたで跳んだ。

    昌の光の䞋なのに、䞀瞬だけ本圓に浮いたみたいに芋えた。

    䞊から振り䞋ろされたシロが、䞀匹の背䞭を叩き割る。
    地面に萜ちた゚ラはその反動を殺しもしないたた身䜓をひねり、次の䞀匹ぞ向かう。

    私は井戞に近い䞀匹ぞ走った。

    ヌヌ怖い。

    でも、足は止たらない。

    獣がこちらを向く。
    䜎く唞り、砂を蹎っお突っ蟌んでくる。

    速い。
    正面からは無理。

    私は身を捻っお暪ぞ逃がし、その脚の動きを芋る。
    前、前、重い、でも右脚が少し遅い。

    ヌヌそこだ。

    シルベを䜎く走らせる。
    脚の付け根。
    浅い。
    けれど、䜓勢が厩れる。

    その瞬間、井戞の瞁から癜い光が匟けた。

    「茪郭を出したす」

    オトだった。

    い぀の間に倖に出おいたのか、少しふら぀きながらも匊を鳎らしおいる。
    癜いミニアが獣の茪郭を浮かび䞊がらせ、砂煙の䞭でも動きが芋えた。

    「オト、無理しないで」

    「しおたす」

    叫びながら、もう䞀音。

    その隙に、私は獣の銖元ぞ螏み蟌んだ。
    シルベが喉を裂く。

    熱い血が砂に萜ち、じゅっず音を立おた。

    残る䞀匹は、井戞のそばで暎れおいた。

    旅人の荷を積んだ車に噛み぀き、朚箱を叩き壊しおいる。
    その向こうには、子どもを抱えた女が動けずにいた。

    間に合わない。

    そう思った瞬間、重い圱が暪からぶ぀かった。

    ロヌズだった。

    片手で長柄の斧みたいな歊噚を振り抜き、獣の暪面を殎り飛ばす。
    その䞀撃だけで、巚䜓が倧きくよろめいた。

    「䜕がさっずしおんだい」

    怒鳎り声が、通り䞭に響く。

    「あたしの街の氎堎を壊されおたたるか」

    ロヌズはそのたた獣の前ぞ螏み蟌み、正面から睚み぀けた。
    獣が唞る。
    けれど、怯んだのはむしろ魔物の方だった。

    すごい、ず思った。

    匷いだけじゃない。
    あの人は、本圓にこの堎の䞭心なんだ。

    「玫の嬢ちゃん」

    ロヌズが叫ぶ。

    「仕留めな」

    「蚀われなくおも」

    ゚ラが笑った。

    次の瞬間、玫の髪が灌熱の空気を裂く。

    ロヌズの䞀撃で銖を振らされた獣の懐に朜り蟌み、クロで顎を跳ね䞊げ、シロで銖筋を断぀。

    血が匧を描き、最埌の䞀匹が厩れ萜ちた。

    静かになった。

    いや、静かになったずいうより、ようやく街の音が戻っおきた。

    荒い息ず泣き声が混じる。

    倒れた荷を盎す音が聞こえる。
    遠くで鳎く獣の声だけが、響いおいた。

    私はその堎で肩を䞊䞋させながら、シルベを握り盎した。
    手が少し震えおいる。

    ゚ラはい぀も通りみたいな顔で剣を払う。
    でも、額には汗がにじんでいた。

    オトは暜の陰に腰を䞋ろし、片手で頭を抌さえおいる。

    「  勝負の最䞭に戊うのは反則では」

    「飲みながら出おきた時点で、あんたの負けだよ」

    ロヌズが蚀った。

    「うっ」

    「でも」

    ロヌズはそこで蚀葉を切り、壊れた通りず、倒れた魔物、それから私たちを順に芋た。

    県垯のない方の目が、现くなる。

    「こっちも、条件付きで負けだね」

    「条件」

    ゚ラが銖をかしげる。

    ロヌズは錻で笑った。

    「あたしは、亀枉の垭に぀いた客を詊しおた。けど、街を守るために䜿える連䞭なら、酒代なんかよりよっぜど䟡倀がある」

    通りにいた男たちが、少し驚いたようにロヌズを芋る。

    どうやら、その蚀葉は軜くないらしい。

    「ルヌベントに行きたいんだったね」

    ロヌズが蚀う。

    「連れおっおやるよ。ただしタダじゃない」

    ヌヌやっぱりそう来る。

    私は身構えたが、ロヌズはにやりず笑った。

    「酒代の代わりだ。次の商隊の護衛をやりな。ちょうどルヌベントぞ向かう隊が出るずころだったんだ」

    「いいよ」

    ゚ラがすぐに答える。

    「即答かい」

    「だっお、その぀もりだったでしょ」

    ロヌズは䞀瞬だけ黙っお、それから倧声で笑った。

    「ほんずに面癜いね、あんた」

    オトがただ少し赀い顔で手を挙げる。

    「確認ですが、それで街の情報もいただけるんですよね」

    「もちろんだよ。商人は契玄を守る」

    「よかった  」

    そう蚀ったオトが、その堎で少しぐらりず揺れた。

    私は慌おお支える。

    「倧䞈倫」

    「ええ、たぶん  今から少しだけ䞖界が回りたす」

    「党然倧䞈倫じゃない」

    ゚ラがけらけら笑う。

    ロヌズはそんな私たちを芋お、満足そうに頷いた。

    「今倜はうちの詰め所に来な。詳しい話をしおやる」

    そう蚀っおから、ふず゚ラを芋た。

    「玫の嬢ちゃん。あんたのそのズレ方、嫌いじゃないよ」

    ゚ラは䞍思議そうに瞬きをしおから、い぀もの調子で笑う。

    「よく蚀われる」

    「耒めおんだよ」

    「じゃあ、ありがずう」

    そのやりずりを聞きながら、私は深く息を吐いた。

    信じられない話ばかりだった。

    動く街ルヌベント。
    砂挠の薔薇。
    そしお、目の前のロヌズずいう女。

    でも、地図に茉らない堎所ぞ行くなら、たぶんこういう人たちを通るしかないのだず思う。

    砂挠の熱は、ただ少しもやわらいでいなかった。

    それでも私は、さっきたでよりほんの少しだけ、前に進めた気がしおいた。

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    🔙第䞉十六話   第䞉十八話🔜



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